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ネトゲの中のリアル  作者: 海蛇
4章.ギルド活動!(主人公視点:ドク)

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#7-2.恐怖の千年ネズミ!!

「よーし……行くぞ! 武器を持て!」

これ以上時間を掛けるのも無意味だ。音頭を取って、一気に入り口へと駆け出す。

「おぉぉぉぉぉぉっ」

「やってやる、やってやるぞ!!」

「何が何でも生きて帰る!」

「怖くなんて、ないんだからぁっ!」

「はははははっ、いいぞこの空気! 死の臭いが我を呼んでおるわぁっ!!」

「縁起でもない事言うなっ」

「突撃、突撃ーっ」

皆威勢よく。自分で自分を鼓舞し、そして、その熱気が勢いを生み出した。

『私の愛する隣人たちに、女神の奇跡を与えたまえ――グロリアス・エンゲージ!』

ドロシーの祈りが、駆け出す俺達へと奇跡を届けてくれる。

軽くなった足取りのまま、入り口を押さえていた大男たちに声をかける。

「よくやった! ここからは俺達に任せな! あんた達は奥で休んでてくれ。疲れが取れたら戦闘も頼むぜ!」

「おうっ」

「がんばれよアニキっ!!」

大男二人がニカリと小気味よく笑い……一気に扉から手を離した。

「くるぞぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

怒声を張り上げ、俺の真後ろについていたガードナイトに目配せする。

「――俺に任せろぉっ!!」

一気に最前列に躍り出るガードナイト。

手に持ったハンマーで、めりめりと音を立てひしゃげそうになっている扉を一気に――叩きつける!


 瞬く間に扉は弾け飛び、無理無理に前に前に進もうとしていたネズミどものいくらかが、それによってぐちゃりとつぶれていく。


『チューチュウチゥチーチューチューチュウチーチーチューチューチューチューチューチュウチィーキーキィーキュゥキューチューチゥキゥキューキュゥチューチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチチキチキチキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキ』


 それでも関係無しに、灰色の肉の波がぎちりぎちりと前に競り出てくる。

そのすべてがネズミ。ガリガリと壁を噛む音も一気に増える。

百日ネズミ、増えすぎだろ。


「――ハンマーストライクッ!!」

ネズミの群れに飛びかかられそうになったガードナイトが、飛びあがりながら手に持ったハンマーをネズミどものど真ん中に叩き付ける。

ぐしゃりと潰れたように見えたネズミの波が、しかし、まるで水のように形を戻し、またガードナイトへと迫る。

「眼を閉じろっ!!」

その右を守るように俺が飛び込み、予め左手に持ったフラッシュメモリを投げつけた。

ネズミの波はそれを飲み込んでいくが……波の中心点からやがて、強烈な光が漏れ始める。

「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

ネズミが光によって失神してぱらぱらと崩れていく中、サングラスで無事な俺はそのまま手に持った釘バットを叩き付ける。

威力に関してはガードナイトのハンマーよりも強いこの釘バットならば、無数のネズミの群れとて打撃を与えられるはずだ。

肉を潰す嫌な音が響いたが、構わず二打、三打と床へと叩き付ける。

それによって床に傷がつくが気にしない。

「バトプリさん、下がれっ!!」

バトルマスターが、大剣を横薙ぎに構え前に躍り出る。

「ふっ――ごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

通路を響かせるバトルクライをあげながら、その大声に麻痺にしたネズミ達に向け、一気に横薙ぎの一撃が払われる。

バシャリと水を切ったような小気味良い音が鳴り、バトルマスターはそのままこちらを見て『ニィ』と笑った。

「よしっ、じわじわ前に出るぞっ」

「おぅっ」

「任せておけぇっ」

初動は成功。ネズミ達の勢いはかなり削がれ、数こそあるものの波と言えるほど一気に襲い掛かってはこなくなった。

そのままに階段を一段、二段と登ってゆく。

「ライトボム、投げますっ」

「よしこいっ」

後ろからの声に反応し、他の二人に目配せする。

すぐに白いボールがネズミの方へと投げつけられる。即座に閃光。

今度は波に飲み込まれる前だったが、フラッシュメモリと比べて光がやや弱い分長く持つので、これでネズミどもが前に出てくる速度は大分鈍ったはずだ。

「よし、魔法頼んだ!」

「ばっちこーい!」

「いくらでも受けてやるぜぇっ!!」

声を張り上げながら、こちらへと突っ込んでくるネズミに一撃を加えてやる。

「わ、解りましたっ! ニードルライト!!」

「ふはははっ、受けるがよい、我が水魔法っ! ウォーターボールッ」

多少戸惑いながらも針状の風を散弾のようにばら撒きまくる金髪ツインテと、すごく懐かしい初心者魔法をドヤ顔で撃ってくる色白眼鏡。

「ぐへぇっ」

勿論魔法はもろに俺達の背中にぶち当たる。

それでもかなりの数、ネズミの正面に届いてこれをスパスパと容易く切り裂いていく。

まるでハムでも切るかのように輪切りになって解けてゆく灰色の波。

そしてその後に降りかかる鉄砲水が、ネズミどもを呼吸困難に陥らせ弱らせる。

――意外と効果的だな、水魔法。


「……よしっ、上階まで抜けたぞ! 皆上がって来い!!」

水のように襲い掛かってきたネズミの群れを押し返し続けること……もう、どれ位戦い続けたかも解らない。

手持ちのアイテムも半分近く消費した頃、ようやく宿屋の入り口まで綺麗になる。

所々かじられた跡が見える辺り、壁の裏などにも大量にいるのだろうが……とりあえず、最大の危機は脱したかに思えた。

「皆上がって来い! なんか床もメリメリ鳴ってるし、こりゃ近いうちに抜けるかもしれねぇ!」

安全地帯だと思っていた地下だが、このままだと崩落の危機もある。

ひとまずは外からも近いこの出入り口で防戦しつつ、少しずつ村から脱出するか、イベントなりの『キーボス』みたいなのを倒せれば、と思うのだが――

「ドクさん、酒場の壁、壊れ始めていました。地下ももう安全地帯ではありませんね」

丁度いいタイミングで、村人たちを守りながら上がってきたドロシー達が地下の状況を伝えてくれた。

ビンゴだ。まさに危機一髪だったらしい。

「アニキの指示がなかったらちょっとやばかったな」

「やるじゃんバトプリさん」

わーわーやんややんやと褒めてくれるが、まだ喜べる状況じゃなかった。

頬を緩めるには早すぎる。だから、嬉しいのは我慢して、バットを地面に叩き付け、声を荒げた。

「――よし、これからは地下と正面双方の警戒だ! 壁に穴が空くかも知れんからそこも警戒するぞ! そして、一刻も早く村から脱出する!!」



「うひゃーっ、やべぇやべぇっ! そこらじゅうネズミの塊ばっかだよ。さっきまでみたいな壁って感じじゃないけど、人間を見つけると一気に集まってくるみたいだ」

とりあえず、と、素早さを活かして強行偵察に向かった一浪が、一分ほどで戻ってくる。

顔面蒼白。額は汗まみれだった。

「トレインしてきてないだろうな?」

「するわけないだろ。ちゃんとライトボムで引き剥がしたよ」

念のために聞いただけだったが、一浪も解ってるのか、苦笑ながらに答えてくれた。

ともあれ、まずは作戦会議だ。一浪の持ってきた情報を元に、俺たち含めて上位職組でこの後の状況を考える。

「まず、宿屋周辺だけで塊が三つ四つある。これに関しては出た瞬間にライトボムとかフラッシュメモリとか使えばなんとかなると思うんだ……だけど、そのずっと奥に、でかい山みたいなのが見えた」

「山……」

「まさか、『千年ネズミ』……?」

ドロシーの言葉に、ごくり、と、誰かの喉が鳴る。

こういう時の嫌な予感ほど当たるというのは、誰しも経験がある事ではないだろうか。今がまさにそれになりそうで辛い。

「あんまり考えたくねぇなあ」

「千年ネズミ相手にこの戦力じゃちょっとな……」

バトルマスターとガードナイトも、互いに顔を見合わせて口元をひくつかせていた。


「あの、千年ネズミっていうのは……?」

傍で話を聞いていた歌姫が、おずおずと会話に混じってくる。

見れば村人達が不安げにこちらを見ていた。

まあ、無理もないだろう。この場で最大戦力のはずの俺たちが嫌な顔をしてるんだ。

何かヤバいものがいる、という雰囲気が伝わってしまっていたら、不安になるのも無理はない。

「んー……見た目はちっこいネズミなんだがな、一度に一万匹くらいの百日ネズミを取り巻きとして連れてくるんだ。そんで、周囲の地形や生物なんかを根こそぎ喰い尽くしていく、無茶苦茶性質(たち)の悪いボスモンスターだ」

「一匹一匹の力は弱くとも、数の暴力という名の理不尽によってそれを覆してくるんですよね……生半可な範囲魔法位では表面の取り巻きしか倒せないので、波状攻撃で内部の千年ネズミに届くまで根気よく攻撃を続けることが大切なんですが……」

ドロシーも現状に気がついているのか、やや言いにくそうに説明する。

そう、火力が足りないのだ。マジシャン二人位の火力では、とてもじゃないが千年ネズミまでは届かない。


「すまんが、俺一人じゃ千年ネズミの取り巻き相手に耐えられる自信はないぜ……多分、一瞬で骨だけにされちまう」

ガードナイトが不安そうなのも仕方のないことだった。

火力も不足しているが、ボス相手に攻撃に耐えられる前衛がそもそも根本的に足りてない。

こと物量相手に耐える事に関しては俺や一浪もルーキーたちとそう変わらない辺り泣けてくる。

こういう場面ではガードナイト十人とかそれ位いてようやくまともに戦力扱いされる位なのだ。

攻撃力不足と耐久力不足。とてもじゃないが、千年ネズミの相手はできないと見て良いだろう。

「千年ネズミとは戦わない方向でいければいいんだがな……」

「避けられるなら避けたいですね。どうしても戦わないといけないとなると……覚悟を決める必要があると思います」

命を捨てる覚悟か、あるいは、誰ぞかを犠牲にしてでも生き残る覚悟か。

いずれにしても、ロクなもんじゃなかった。


「一浪、もう一つ聞きたい事があるんだが」

「外にいた人たちの事かい? ……聞かないでくれよ」

思い出したくもないぜ、と、眼を背けながらにため息をつく一浪。

無事逃げおおせるか、同じように篭城でもしていてくれれば、と思ったが、儚い希望だったらしい。

まあ、今確認せずとも、その辺に転がってるのなら嫌が応にも目に入るのだろうが。

「全く……なんて胸糞イベント考えやがるんだ運営サイドは!!」

悪態のひとつもつかずにはいられない。

これがもし、サクヤやラムネなんかを伴っての参加だったら、と思うと心底恐ろしいものを感じる。

「……せめて、私達だけでも生きて帰りましょう!」

惨状を悟ったのか、歌姫は涙目になりながらも、みんなの中心で気持ちを奮い立たせていた。

村娘にしておくには惜しい位の心の強さ。強がっているだけかもしれないが、こういう時にはありがたいメンタリティだった。

「そうだね。頑張ろう、ミレニア!」

「皆で生きて帰るんだ!」

「所詮ゲームなんだって思ってたけど、なんだ、面白くなってきたじゃねぇか!!」

宴の中、歌姫といい感じになっていた剣士がそれに乗ると、その場にいた全員が一斉に盛り上がる。

どうやらこの歌姫、人心を動かすのが上手いらしい。意外と重要ポジションかもしれない。ムードメーカーだ。


「よし……一浪、山の居た方角、覚えてるな?」

「ああ、ここから出て、北の方角だ」

出口真正面が北。南は宿屋の裏へと抜ける必要があるが、そちらの方が幾分マシ、と見るべきか……

「よし……ここからは俺と一浪が前に立つぞ」

「うぇっ!? 正気かよドクさん!?」

視線がまた、俺達に集まる。

一浪は驚いているが、あまり選択肢はなかった。

「足の速さを考えれば、俺とお前が前に立ってアイテム投げまくるのが確実だろ?」

「ああ、うん……まあ、なあ」

なんともはっきりしない態度だが、まあ、こいつは実際に前に立たせれば動ける男だと信じている。

普段はヘタレに見えるが、やる時にはやる奴なのだ。

「攻撃アイテムは最低限の護衛用を除いて俺と一浪が持つ。そんで、敵を目くらましさせるから、その間に皆で先に抜ける。俺がアイテムを使ってる間は一浪が前に抜けて皆を先導して、一浪がアイテムを使ったらその間に俺が先導するんだ」

「足を止めるのは一人ずつって事か……」

ごくり、喉を鳴らす一浪。

割と命掛けだが、まあ、上手くやってくれるだろう。

問題は手持ち数の少なさだが……それに関しては、運を天に任せるしかない。尽きる前に突破できればよし、もし無理なら……その時に考える。

「頼りにしてるぜ兄弟」

「こんな時ばっか頼りやがって……後で美味いもん食わせろよ!」

緊張気味に頬を強張らせているのは俺も一緒だが、ここは二人、ニヤリと笑って余裕を見せ付けてやった。


「そんじゃ、そういう訳で頼むわドロ――」

『私の愛する隣人たちに、女神のご加護を――セント・バレスティナ!』

俺が目配せするのと、ドロシーが胸の前で手を組んで祈りを捧げるのはほぼ同じタイミングだった。

「お、おう……さすがドロシー、解ってるな」

ピシリピシリと肌に何か抵抗を感じるが、これは長期戦を見越しての防護の奇跡で、敵の攻撃を一定時間弾いてくれる。

これ以上なく手際がいい。言いたいことを理解してもらえてるのって本当にありがたいもんだ。

「……ご武運を」

どこか寂しげに、だが、その微笑みは力強く、俺達の背中を押してくれていた。


「よし、いくぞ一浪!」

「おうっ!!」


 そうして、俺達の地獄が始まった。


-Tips-

千年ネズミ(ボスモンスター)

ランダムで様々な廃墟・洞窟マップに出現するボスモンスター。

やや大柄な体格の白いネズミで、常に取り巻きの百日ネズミを一万匹単位で周囲に張り巡らし、肉の壁としている。


単体として見た場合はボスモンスターとしてはかなり弱く、『攻撃が当たりさえすれば』初級マジシャンでも一撃で倒すことが可能なほど貧弱であるが、取り巻きの百日ネズミの群れを引き剥がす事は上級魔法職でも困難な点、ガード系の上級者が複数集まらないと防ぎきれないほどの数の暴力が一度に襲い掛かる点など、その貧弱さとは裏腹に非常に凶悪なボスであると言える。


取り巻き込みでのその存在は圧巻であり、知らぬものが見れば灰色の小山がうごめいているようにしか見えぬほどで、その攻撃は山の如き津波となったネズミが一斉に押し寄せてくるという、物量戦法の究極とも言えるものである。

その有様から『蠢く災害』と呼ばれる事もあり、事実彼らが通った後には草一つ生えぬ廃墟が残ると言われている。


尚、千年間生きそうな名前であるが、実際には出現から三~七日ほどで寿命を迎えて自然鎮火する。

百日ネズミのように増える事もなく、完全に単発で終わる為にこのネズミそのものが群れを成すという事はないので安心して欲しい。


種族:動物 属性:毒

危険度(星が多いほど危険):★★★★★

能力(星が多いほど高い)

体力:★

筋力:★

魔力:★★

特殊:★★★★★

備考:闇耐性80%、炎耐性-50%、水耐性-50%、物理耐性-120%、聖耐性-100%、光耐性-150%、風耐性-60%

取り巻き:百日ネズミ×一万(一時間に一度)

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