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ネトゲの中のリアル  作者: 海蛇
4章.ギルド活動!(主人公視点:ドク)

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#2-2.残り物には福がある……?

「いやすまねぇなドクさん。ちょっと遅れちまったぜ。夜更かしした奴がいてよぉ」

「こんにちわー」

「ちわーっす」

「どもー」

そうして説明が完了し、道具を配り終わったあたりでカイゼルたちが登場する。

大体十五名ほど。それぞれの手にはぴかりと光る新品の潮干狩りセット。

「あれ、この間のマジ子ちゃんと剣士ちゃんじゃない。きてたんだ」

「あっ、あの時はありがとうございました」

「私は気を失ってたから解んないけど、お世話になったみたいで。ありがとうです」

そうして金髪のプリエステスがサクヤ達に気付いてにこやかあに手を振る。

「サクヤちゃんと……エミリオちゃんだっけ? 元気そうで何よりだわ」

「今日はよろしくお願いしますね」

「私達もがんばりますからっ」

「お、なんだ、こないだの子達か」

「剣士ちゃんもう回復したんだなあ。いや結構結構」

……その他、ちょっと濃い奴らも集まってきたが、まあ、サクヤが笑ってるのでよしとする。


「そんじゃ人数多いし、班分けするぞー。皆てきとーに仲良い奴と三~四人でチーム組んでくれー」

お互いのギルドメンバーの紹介も終えて和気藹々とした空気の中、カイゼルがでかい声で号令。

「よーしサクヤちゃんエミリオちゃんお姉さんと組もうかー」

「サクヤー、エミリオー、私とくもー」

そして若者二人は二人のプリエステスに誘われていた。

プリエラと例の金髪のプリだ。ほぼ同時に声をかけていた所為で、二人の視線がばちりと交じり合う。

「え、えーっと……その」

「こ、これは……」

サクヤとエミリオは困惑したままどちらを選ぶ事も出来ず間に立たされている。

無理もあるまい。二人が二人とも、自分たちを挟んでにらみ合っているのだから。


「折角気にかけてもらって悪いけれど、サクヤ達は私が面倒見るから、お姉さんはお気になさらずー」

「いやいやいや、ここはギルド間交流ってものが大切でしょう? 男連中に任せるのもアレだし、私が責任を持って! 二人の面倒見るからさー」

二人とも笑顔である。ばちりばちりと火花を散らしながら笑顔の対立が続いていた。

譲る気はないのか、しかし実力行使に出るでもなく二人は眼を逸らせずにいた。

まるでわずかでも視線を逸らしたらそれが負けであるかのように。猫かお前らは。

ていうか三~四人でって言われてるんだから仲良く四人でいけばいいものを。


「わー、この子可愛い! ねえねえ、一緒にお姉さん達とあそぼ!」

「潮干狩りだけじゃなくってー、沢山良い思い出とかあげるし! さあさあさあ!!」

「……えっと」

黄色い声に振り向いてみれば、そこではラムネが年上の女の子たちに囲まれていた。

これは予想できたことだが、本人的にはそれほど嬉しくもないのか、困り顔で途方に暮れている。

――羨ましい奴め!!

「さ、サクヤさん、エミリオさん、組もうっ」

そして、ちらちらを周囲を窺っていたラムネが選択したのは、よりにもよってプリエステス二人がにらみ合っているど真ん中であった。

「うぇっ!? あ、うんっ」

「そ、それじゃ、ウチらはラムネ君と組むから、さよならーっ」

まさに天運とばかりにサクヤとエミリオはラムネと組んでしまった。ギルド間交流もへったくれもないが、まあ、仕方あるまい。

「えぇっ!?」

「ちょっ、そんな、それじゃ私は誰と……」

驚かされたのはプリエラと金髪である。ラムネを追い回してた娘達はどこかにいなくなっていた。

まあ、遊び半分だったのだろう。

だが、この二人は割りと本気だったらしく、他に組むべき相手も見つけずに睨みあいばかり続けていたため、二人が二人とも浮いていた。


「……なんで、こんな」


 そうしてもう一人、浮いてる奴が居た。一浪だ。

一人だけ気が早く水着姿だったが、それが余計に悪かったのか、男も女も寄りつかない微妙な雰囲気をかもし出していたのだ。

本人は必死に女の子に声をかけたりしていたのだが、皆微妙そうな顔をして「ごめんなさい私組む人決まってるので」と断られてしまう。

というか、一浪が声をかける女の子が揃って男と組んでる辺り、彼氏持ちの娘にアタックをかけてしまっていたのではなかろうか。

狙ってやっていた訳でもないのだろうが、一浪の玉砕率の高さの理由が垣間見える瞬間であった。


「ひ、一人でやっても仕方ないし……組む?」

「そうしましょうか。とほほ……」


 そうこうしている内に妥協を重ねたのか、プリエラと金髪プリは二人ともやるせない顔のまま握手していた。

なし崩しの休戦協定。かつてのライバルとの共闘と言えば聞こえも良いが、実際には売れ残り品の詰め合わせである。


「一浪君も、いつまでもたそがれてないで……」

「流石に見るに忍びないわね……」

そして聖職者二人は哀れなピエロにも手を差し伸べる。

「……」

一浪、しばしぼーっと二人の顔を見た後、ほろりと大きな涙の粒を零す。

「う、うぅっ――プリエラとプリさんが天使様に見えるよっ! ありがとう、本当にありがとう!!」

ぐしぐしと腕で涙を拭いながら、ようやくの安息を得た一浪。

思わず涙か笑いを誘う感動的な場面だった。



 だが待って欲しい。

売れ残り品押し付けられたとか負け組トリオとか思いはしたが、一浪は美少女プリ二人と組めて両手に華ではないか。

そして当の俺はといえば――


「いやーなんだかんだでドクさん達が来てくれてよかったぜ! 六人も参加してくれるなんてよぉっ」

既に缶ビール片手に一杯やってるカイゼル。

「うははははっ、そのアロハシャツかっけぇ! どこで売ってるのか教えてくれよ!」

なんか屋台で買ったらしい触手焼きを喰ってる髭もじゃのいかついおっさん。

「うふん、素敵だわぁ! 私好みのか、お、か、も?(野太い男声で)」

なんか女物の服着てるオネエ口調のいかついおっさん。


――おっさんしかいねぇ。なんだろうこのすごい敗北感は。

開始早々カイゼルその他二名と組んだのは良かったが、あまりにも濃すぎるメンバーである。

というか、折角海にきてこいつらと延々潮干狩りなんて作業しなくちゃいけないとか拷問に近いのではなかろうか。

なんだかんだ、特定の相手がいない女性メンバーは女同士で組んだりしてるみたいだし、男は男同士、というパターンでどうしても濃くなっていくのだろうが……

それにしても濃すぎないかと思う。

しかもこいつら、水着になるのだ。今より更に脱ぐのだ。アバンギャルドってレベルではない。


「……よーし、頑張って銀真珠だすぞー」

途方に暮れたまま、せめて目的だけは果たそうと、夏の海に思いを馳せた。



-Tips-

ミルクいちご同盟 (ギルド)

ギルドマスター:カイゼル(グラディエーター)

カルナスに拠点を置くまったり系ギルド。

メンバー間の交流が盛んで、頻繁にギルド狩りや小イベントを企画しており、様々な狩場や街に顔を出す、活動的なギルドである。


中心人物数名を除き全員が若者ばかりで時にはやんちゃもするが、メンバー全員がマスターのカイゼルを慕い、彼の言葉には真摯に耳を傾けようとする。

その他、ギルド内外問わず新人や困った人には手を差し伸べるよう心がけているため、近年善玉ギルドとして知名度が上がってきている。

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