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ネトゲの中のリアル  作者: 海蛇
3章.広がる世界(主人公視点:サクヤ)

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#6-2.新人は素直になれないお年頃

「それはそうと、筋力トレーニング……ですか? 前衛職って、そういうのもするんですか?」

別の話題になりそうだったのを戻して、気になっていたところを聞いてみる。

職業ごとに施設で学ぶ事は違うんだろうけど、少なくともメイジ大学では筋力をつけるための何がしかなんてのはやった覚えがない。

だけど、今見た通りにエミリオさんには筋力で勝てないと言うのが個人差じゃなくて職業差だというなら、これはかなり大きな違いなのでは、なんて思ってしまう。

「ああ、うん。前衛職はどれもやってるはずだよ? 剣とか斧とか、重い武器や防具を扱うには基礎の体力とか筋力が必須だから……」

ちら、とエミリオさんを見ながらに、プリエラさんが答えていく。

エミリオさんもうんうんと頷いてそれを肯定。

「確かにやってた。最初のうちはきつかったけど、慣れれば大したことはないかなー。今でもログイン後とログアウト前に1セットずつやってるよー」

「剣士系なんかは足回りも重要だから、ただの筋力だけじゃなく瞬発力とかのトレーニングもするらしいね」

「そうなんですよー! このゲーム始めるまで運動なんてしたこと無かったから、もうきつくてきつくて!」

大変だったんですよねー、と、しみじみ語るエミリオさん。

どうやら普段の俊敏な動きの裏には、涙せずには居られない普段の頑張りがあったからこそ、という事らしい。

「魔法職はどんな事教わってるの? 剣士の道場は、始めのころはなんか偉そうなおじさんに剣の持ち方とかしまい方とかすっごく退屈な事叩き込まれてさー、もう死ぬかと思ったよー」

「メイジ大学は、座学が多かったですよ? 実技も、魔法の使い方というよりは教わった理論の証明とか、属性の勉強とかがほとんどで……あ、あと、瞑想とかしました」

最初の頃は普通の学校とそんなに変わらない感じで、夢の中でまで勉強漬けな生活でちょっと大変に感じていたものだけれど。

でも、そんな日々も今は昔。

今でも新しく覚える魔法を調べる為にちょくちょく顔を出したりはしているけれど、以前ほどは勉強の必要はなくなってる気がする。


「職業ギルドはどこもこの世界を生きる上で基礎的なことと、その職業で覚えるような基本から叩き込まれるからねー。因みに聖職者系はお祈りの大切さとか命を貴ぶ事の重要性だとか、そんな精神的なお勉強を重視してるよ」

「その割りにはドクさんは全然命を大切にしてない気がしますが……」

プリエラさんはわかるけど、ドクさんと狩りをしているととてもじゃないけどそういうのを大切にしてるようには見えない。

むしろ嬉々として殺しに行ってる気がする。心強いけども。

「ドクさんはだってほら……ドクさんだもん」

流石にフォローしようが無いのか、プリエラさんも困ったように眉を下げて視線を逸らしていた。


「なんか、楽しいなあ。サクヤのギルドの人たちって、善い人がいっぱいだね?」

そうやってお喋りをしている私達を交互に見ながら、エミリオさんはニコニコと笑っていた。

「うん、善い人ばっかりですよ。あ、そだ、エミリオさんも――」

「うちは新人いつでも歓迎だよー?」

私と同じタイミングでプリエラさんもエミリオさんをお誘いする。

だけど、エミリオさんは少し悩んだ風に見せてから、小さく首を横に振った。

「ううん。折角だけど、私は遠慮しておくよ。ギルドって、今一よくわかんないしさ。始めのうちから色んな人と知り合いすぎると、混乱しちゃいそうで。私、あんまり頭よくないからなー」

こまったこまった、と、おどけて見せながら、エミリオさんはベッドから降りる。

そうして、わざとらしくぴょこぴょこ跳ねたり屈伸したりしてから、ぐぐ、と背伸び。私の方を向く。

「うん、よし! 完治してるし、私はもう帰るよ」

「もうちょっと安静にしていたほうが良いのでは?」

「私もそう思うよー? 他に頼れるところもないなら、何日かここで休んでたっていいんだから」

元気よく手をあげて部屋を出ようとするエミリオさんに、私もプリエラさんもなんとか留めようと声をかける。

だってもっとお話したいし。それに、エミリオさんの元気が、空元気に見えてしまったから。

だけど、エミリオさんは振り向かずにドアノブに手をかける。

「ありがと。でも大丈夫だよ。また明日ね、サクヤ」

「そうですか……はい。また、明日」

去り際に再会を約束して、エミリオさんはそのまま去って行ってしまった。


 後に残された私達は、お互い顔を見合わせていたけれど、やがてぷくく、と笑い出してしまう。


「素直じゃないね~。照れちゃってたんだねきっと」

「でも、なんとなく解る気がします。初対面の人に優しくされるとびっくりしちゃうし……嬉しいけど、素直に受け入れられないっていうか」

「サクヤもそうだったの? そういえば最初の頃はぎこちなかったね?」

「うぐっ……え、えぇ、まあ」


 なんとなくエミリオさんを笑っていられなくなっていた。

私は、エミリオさんと同じなのだ。

きっと、普通に誘われてたのならエミリオさんと同じように逃げちゃってたかもしれない。

私の場合はプリエラさんが親身に接してくれたから、その分だけ打ち解けられて、お誘いを素直に受けられたけれど……エミリオさんはきっと、まだ時間がかかるんだと思う。


「のんびりと待ちますよ。お友達ですし」

「うんうん。それでいいよー、急ぐ必要もないしね。ギルドの子じゃなくたって、私は可愛い後輩は大好きだけどね~」


 楽しげに笑ってくれるプリエラさん。

私のいる場所は、こんなにも明るく温かい。

だから、エミリオさんにもその温かみを知って欲しいな、なんて。

ちょっと勝手なことを思いながら、残りの時間をプリエラさんと雑談して過ごした。


-Tips-

メイジ大学(組織・施設)

魔法の道を志す者を支援するため設立された組織であり、始まりの街に設置されている職業訓練施設でもある。


敷地内にはマジシャン、ウォーロックから始まり、メイジ、バトルメイジ、ウィッチ、ウィザードなど、双方の系列の魔法習得の為の基礎理論や応用力学、物理法則などを学ぶことが出来る学び舎と、瞑想ルーム、魔法の試し撃ちの為の試験場、プレイヤーが自発的に調べられるように関連書物が豊富に取り揃えられている図書館、グリモアやマジックアイテム、魔法薬などを取り扱うショップ等が併設されている。


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