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ネトゲの中のリアル  作者: 海蛇
3章.広がる世界(主人公視点:サクヤ)

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#4-1.漆黒の丘へ

 結局あれからというもの、私はエミリオさんと二人、色んなところに出かけるようになっていた。

初めの内は狩場をよく知らないエミリオさんの為、という感じだったのだけれど、なんだか最近は、普通に二人、ペアで狩りをするのが日常みたいになりつつある気がする。


「お待たせしました」

「ううん待ってない待ってない! 今日もありがとねー♪」

待ち合わせの場所はリーシア南門の前。

エミリオさんは鞘に入ったショートソード片手に、私が来るのをまだかまだかと、いつも待っているのだ。

私はというと、できるだけ急いだつもりなのだけれど、この人より早くここに来れた事がない。

きっと私より寝る時間がちょっと早いんだと思うけれど、なんとなくいつも待たせてしまうのは申し訳なく感じてしまう。ちょっと罪悪感。

エミリオさんは笑顔なのだけれど……


「それで、今日はどこに連れて行ってくれるのかな?」

ワクワクと期待のたっぷりこもった笑顔で私を見つめるエミリオさん。

最初の頃は恥ずかしくて仕方なかったけど、今はもうそんな事はない。慣れた。

「今日は、『漆黒の丘』に行きましょう。ブラックタイガーとかメタルバウとかがいて歯ごたえがありますよ」

「おお……なんか知らないけどすごそう!」

「ここは凶悪なボスの『マタ・ハリ』っていうのがいるらしいんですけど、今は討伐が済んでるらしくて。向こう一週間は出ないらしいので、安心していけちゃいます」

下調べもばっちりしてある。

何せ、友達を連れて行くのだから、あんまり危ないところは避けないといけない。私も嫌われたくないし。

「はえー、相変わらずサクヤはきっちり調べてるんだねー……」

「ま、まあ、一応、ね……」

スケアクロウ位なら私一人でもなんとでもできるけど、流石にそれ以上のボスとかが出てくるとどういうのがいるのかすらよく分からないのだ。

怖い事になる位なら、解る範囲ででも調べておいたほうが、後々の為にもいいはず、なんて。

――ちょっといいところ見せたかっただけなんだけどね。



 漆黒の丘は、リーシアから転送で一回分でいける街『カルナス』の北へ2マップ。

時計台の見えるカルナスの街を出て、そこからのんびりと歩いて少しすると見えてくる。

移動にはちょっと手間取るけど、モンスターは厄介な魔法や特殊攻撃を使ってくることはなくて、動きも鈍いのが多い。

虫系モンスターもいないし、昼間なのに夜みたいに暗黒光(ブラックライト)が射し込むこの丘は、ちょっとロマンティックだったりする。


「おー……なんか、良い感じのマップじゃない?」

敵の襲来に備えてショートソードを抜くエミリオさん。

私は周囲に敵がいないか軽く見回して、とりあえずの安全を確認。

「ふふっ、綺麗でしょう? 私、初めてきた時感動してしまいまして。しばらくじーっと見てました」

このマップ、初級者用のマップとしてはそれなりに難易度が高いのだけれど、モンスターの湧く頻度はそれほど高くないらしくて、突然の不意打ちみたいなことが滅多に起きない。

その分、モンスター一体ごとの強さみたいなのは初級としてはダントツらしいので、じっくりと攻略していきたい人向けのマップと言えるかもしれない。

コンビを組んだばかりの私達には丁度いいマップだと思う。

「ここに出てくる主なモンスター、『メタルバウ』は、スケアクロウ位のサイズの大きな鉄の竜です。魔法にはとことん弱いんですけど、鉄製品以下の剣での攻撃はほとんど通じないらしいです」

「じゃあ、攻撃はサクヤ任せで、私は前で敵の注意を惹き付ける感じかな?」

「そうなりますね。その他、大体のモンスターは動きは鈍いけれどしぶとい、みたいな感じなので、魔法が決まるまでが勝負になると思います。虫はいないのでご安心を」

相手の動きが遅いので、私一人でもなんとか狩れるマップではあるのだけれど。

でも、常時動き回りながら魔法を使うのと、一箇所に止まって安心して魔法を使うのとでは大違いなので、前衛さんがいるのはすごくありがたい。

今回は、ここでエミリオさんにがんばってもらうつもりだった。

「おっけー、任せといて! 虫がいないマップなんてちょちょいのちょいさ!!」

エミリオさんのこの勢い、ノリのよさっていうのかな。こういうのが時々羨ましくなる。

自分にはないところだから、真似できたら良いのだけれど。


「いました、左手の方、ずっと先!」

高台から敵を探していると、遠くに(クロガネ)のシルエット。

敵は四足の鉄竜メタルバウ。まだ私達には気付いてない様子。

「んじゃ、ちょっと行ってくる」

「ええ、頑張って!」

「おっしゃ――ふぅんっ」

剣を腰溜めにして走り出すエミリオさん。

さすが剣士だけあって、足が速い。

私なんかが走ったら、多分あっという間に力尽きてへたれるところだけれど、エミリオさんは素早くメタルバウの近くまで接近していた。

「おっといけない――」

感心して見惚れてる場合じゃなかった。私は私で役目があるのだ。

――詠唱詠唱。敵の接近に合わせて魔法を発動させないと。

『万物を動かせし水玉(すいぎょく)よ、万物を集めし水魂(みずたま)よ、天恵の雨となって、今降り注がん――』

すぐさま杖を前に、範囲魔法『クリスタル・シャワー』を発動させるための詠唱に入る。

本来は複数の目標目掛けて放つのが主な使い方の範囲魔法だけれど、メタルバウくらいに大きなモンスターだと、単体魔法よりも範囲魔法を使うほうが大ダメージを狙えるのだとか。

これはセシリアさんの受け売りだけど、敵の数よりは、魔法によって与える影響範囲を考えて使うほうがいいらしい。

「てやぁぁぁぁっ!」

がきり、という鉄の弾ける音が、エミリオさんの声と共に響き聞こえてくる。

『グギギギギギ……ギガガッ!』

剣は弾かれてしまうけれど、これでメタルバウの注意は完全にエミリオさんに向いていた。

すぐさまメタルバウが前足でエミリオさんを踏み潰そうとしてくる。

ズシン、という鈍い音と共に土ぼこりが舞う。

これはエミリオさんがすぐに距離を開けていたおかげで難なく避けられていた。

そう、元々まともに攻撃が通らないんだから、無理に距離を詰めている必要も無いのだ。

「ははんっ、こっちにおいで! これるもんならなー!!」

そのまま、挑発するように剣を上に振り回して走り出す。

『グォォォォォォンッ』

不協和音の鳴き声を発しながら、エミリオさんを追うメタルバウ。

『水泡の結晶よ、矛となって敵を討て――』

ギシギシとした鉄の舐め合う音が耳に優しくないけれど、今は我慢。詠唱を終えた。

距離的にはほどよい感じ。私は近づいてきたエミリオさんに向けて大きく腕を振って見せる。

「――ここだぁっ!!」

そして、エミリオさんが足を止め、振り返って再びメタルバウと対峙する。

「りゃぁっ!!」

そのまま突っ込んでくるメタルバウを止めるべく、一撃を鼻先に叩き込むエミリオさん。

『ブギィィッ!?』

斬撃としては効果が薄いけれど、打撃としてはある程度ダメージになったらしく、メタルバウは一瞬怯んだように見えた。

その隙にエミリオさんは横へと大きく飛び退く。

タイミングとしては最高。くるくると私の前を浮かんでいたクリスタル達に、最後の攻撃指示を出す。

『――クリスタル・シャワー、シュート!!』

杖の先端をメタルバウへ。一気にイメージを加速させ、メタルバウへの直撃を想像する。

私の周りを浮かんでいたクリスタル達が、それにあわせてメタルバウへと高速で飛んでいき――その直前で大きく弾けた。

爆散したクリスタル達は小さな結晶となり、メタルバウの身体中に突き刺さっていく。

『――っ!?』

鉄の身体ですら突き破る私の魔法を真正面から浴びて、メタルバウはそのまま音もなく消滅していった。

後に残ったのは、小さなネジがいくつかと、何故かポーション瓶。


「おおー……強いねぇ今の。必殺技! って感じがするー」

ちょっと大げさに感心しながら、落としたドロップアイテムを拾って袋に詰めていくエミリオさん。

確かにあれだけ大きなモンスターを一撃で倒せたのはなんていうか、ちょっと気持ち良い。

私が一人の時は、一撃で倒せた事ってあんまりなかったので。

やっぱり、固定位置で魔法を撃てるのは強いんだと思う。

「おっ、これキュアポットだー、珍しいねー」

「あら、そうなんですか? いいですね、助かります」

ポーション系のアイテムは飲んで良し傷口に塗ってよしで、即効で傷が癒されたりと便利なのだけれど、便利な分だけ高価。

それでも傷を癒すヒールポーション位なら私達でも手が出るけど、毒や麻痺などの状態異常も同時に治すキュアポットはかなり勇気が要る値段だったりする。

メタルバウがこれを落とすのは初めて知ったけれど、ドロップ率次第では中々にお財布に優しいモンスターなのかもしれない。

「よーし、この調子で色々狩ろうぜーっ」

「ええ、頑張りましょう!」

俄然(がぜん)、やる気が出る。出てしまう。

なんか、今日はいい事が起きそうだなあ、なんて。



「こんにちわー!」

「こんちわ、元気いいなー」

「こんー」

「こんにちわー」

「こ、こんにちわ……」


 狩りすがら、三人組の人たちとすれ違う。

逆毛の剣士系、アシンメトリーなガード系の男の人達と、ウェーブがかった金髪のプリエステスさん。

エミリオさんが最初にきさくに挨拶したからか、機嫌よさげに挨拶を返してくれた。

『女神よ、この者達にどうか旅の安らぎを――』

「ふぇっ!?」

「わっ、な、なんか力が――」

そうかと思えば、突然身体に力が(みなぎ)ってきた。

妙に身体が軽くなったというか、ふわふわ浮いてるような……

「ふふっ、頑張ってねー」

振り向くと、さっきのプリエステスさんがニコニコ顔で手を挙げていたのが見えた。

どうやらあの人の奇跡だったらしい。エミリオさんも驚いていた。

「ありがとー!」

「あ、ありがとうございます~」

二人してお礼を言うと、三人ともがニコニコしながら手を挙げて去っていった。


「はえー、こういうのもあるんだねー」

「辻支援なんて初めてです……」

こういうのがあるらしいことはドクさんに教わっていたけれど、いざ自分が貰うと結構びっくりしてしまった。

いいのかな、こんなの、なんて。

「いやー身体が軽い軽い。なんか、いっきに狩れそうな感じだよー」

「そうですね、なんかやる気が出てきました!」

やる気と同時にテンションも上がった気がする。

なんか、動かずにはいられない、みたいな。

「よーしサクヤ、あのなんかもやもやしてるところまでダッシュだ!」

ちょっと小高くなってる丘の先、空間がちょっとモヤってる所を指差して、エミリオさんが笑う。

「ええ! ダッシュです!」

私もそれに乗って、先に駆け出したエミリオさんを追いかけていった。

――何の疑いも持たずに。


-Tips-

漆黒の丘(場所)

カルナスから北へ2マップ移動した場所にある初級狩場マップ。

空からは謎のブラックライトが差し込んできており、常に暗い。

主要モンスターはいずれも初級にしては巨体・高耐久・高攻撃力であるが、総じて動きが鈍く、また魔法や特殊行動を取らない点、単独行動しているものが多い点などから、初級としては難易度が高いもののきちんとパーティーを組んでいれば攻略は比較的容易である。


尚、このマップに生息するボス『マタ・ハリ』は非常に厄介な敵であり、このマップで金銭効率を感じられる位のパーティーでは全滅の恐れもあり、注意が必要である。

主なモンスター:メタルバウ、ブラックタイガー、ライトゴーレム、ストーンガイスト、シャドウムンク

ボスモンスター:マタ・ハリ

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