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ネトゲの中のリアル  作者: 海蛇
2章.取り巻く世界(主人公視点:ドク)

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#4-2.タウンウォーカー(後)

「そういえば昨日、一浪さんが来てたよ。何か用事があるのか変にそわそわしてたけど、あれは何だったのかな?」

思い出したようにぽん、と手を打ちながら不思議そうに首を傾げるキスカ。


 こいつは見た目だけの看板娘ではなくて、きちんと客一人ひとりの顔と名前を覚えているデキる看板娘だ。

更にいやらしい視線なんかは一発で勘付く位には鋭いのだとか。プリエラといい、女の勘マジ怖ぇ。

一浪なんかもちょくちょくこの店に来てはキスカの尻だの胸だのを遠巻きに眺めているらしいのをキスカ本人から聞かされ、その都度俺が頭を下げて許してもらっている。

本人にはバレバレだが一浪は必死にひたかくしにしている、というのは笑えるといえば笑えるのだが、この辺を本人に話すのは流石に可哀想なので、キスカ達にも黙っててもらっている。


「大方告白でもしようとしてたんだろ。あいつも真剣なんだよ。真面目なんだ」

「えー、それはないよー。だって一浪さん、この間花屋のミクスと顔真っ赤にしながら話してたよ? あれ絶対ミクスに気があるってー」

「マジかよ」

一浪、お前は本気でプレイボーイ目指してたのか、と、呆れを通り越して感心してしまった。

実行に移すのはまあともかくとして、それがキスカにバレてるというのがいっそ哀れだ。

「そうじゃなかったとしたら、あたし一浪さんの事軽蔑しちゃうなー。エッチな人だろうけど、そこまで軽薄だとは思ってなかったし」

うへえ、と、ぐんにゃりとした様子で眉を下げる。一浪は完全に詰んでいた。

「キスカはプレイボーイ的な男は嫌いなのか?」

「プレイボーイ……? よくわかんないけど、軽薄な人は嫌いだよ。誰にでもへらへらする人とか大嫌い。あたし、愛想が良いのと下心でへらへらしてるのは全然違うって思ってるから」

「なるほどな」

別に俺の方はキスカに気がある訳でもないが、『愛想が良いのとへらへらしてるのは違う』というのは中々に参考になる一言だと感心させられた。

リアルでもそういう奴、たまに見るとイラッとするし、共感できる。


 ちら、と、周囲を見ると、やはりというか、キスカに近寄ろうとしてた男どもは完全にその場からいなくなっていた。

下心アリアリで近づこうとしてた輩にとっては、さっきの話は耳も痛かろう。

だが、商売としては台無しにしてしまった気もして、どこか申し訳なく感じてしまう。

「まあ、そろそろ行くぜ。無駄話につき合わせて悪かったな」

そろそろおいとましようかと、ちゃ、と手をあげる。

「うん。ありがとうねー」

「また」

愛想よくニコニコと手を振ってくれる看板娘と、一言ぽそりと呟いて背を向ける店主。うむ、やはり兄妹には見えん。



「どもーっ、ハゲヅラーだぜ!! よろしくっ」

「どもーっ、スキンヘッド一号だ!! よろしくーっ」

「どもーっ、ツルピカマスターとは俺の事だ!! よろしくなっ」

ずびしぃ、と、三人揃ったハゲ頭の男達が、威勢よく左手を挙げて挨拶する。

「三人揃って、ハゲーズ!!」

「スキンヘッズ!!」

「肌色三銃士!!」

ハモらせようとして三人、全く違う決め台詞を叫んでいた。

「ぷっ」

「ふふっ」

まずそれで持っていかれたのか、所々笑いを堪える声が聞こえる。

俺的には、ランニングにトランクス姿の三人のハゲ達にちょっとテレが入っていたのも笑えた。


 パン袋を片手にやってきたのは、中央広場の一角。

日によって大根役者達がへたくそな劇をやっていたり、自称詩人がへたくそな歌を歌っていたり、今のように駆け出し芸人達が奇妙な漫才やコントをやったりして場をにぎわせている。

ちょっとしたライブ会場のような感じで、暇をもてあました奴らがここに集まって、こういうちょっとしたイベントを見て時間を潰したりしていた。

今、コントをしている三人組のハゲは、勿論プレイヤーだ。

何を望んでかハゲ頭、そしてさえない顔の男達は、だからこそその動きの一つ一つが滑稽に見え、観客を笑いの渦へと巻き込んでいく。


「こんなに息がぴったりの俺達だが」

「実は昨日出会ったばかりなんだ」

「だが、こんなに息ぴったし!!」

三人同時にぴょこぴょこと謎のスクワット運動。しかし、やはりズレていた。

「もっとあわせろよハゲヅララー!!」

「ハゲヅラーだよ!!」

「なんでもいいよ」

「よくねぇよ名前でこんがらがったら俺達見分けつかねぇじゃん!」

「バカ言えよ、この三人で誰が一番美形かって言ったら俺だろ?」

「じゃあ俺筋肉担当な」

「見分けつかねぇよ!」

一番左のスキンヘッドとかいうハゲがツッコミ担当らしい。

何か言うごとにズレたタイミングでスクワットをするのが妙に笑える。

本当に即興で作られたグループだったのだとしたら大したもんだが、このゲームならそういう事もあったりするから侮れない。


 出会いとは、どこであるのか解らないのだ。

決められた空間の中、決められた人としか顔を合わせない現実とは全く違う。

どこで誰と会うのか、それがどういう出会いなのかなんて、誰にも解らない。

乱数ではない。数学では分析できない『偶然』という名の要素が、このゲームには確かに存在しているらしい。


「うむ、美味いな」

広場の隅っこに腰掛け、もしゃりとパンをかじりながら、三人組のコントを眺める。

途中通りがかったティーショップでコーヒーを買っておいたので、長居の準備は万全だ。

時々予想外の掛け合いが始まって口の中のモノを吹きそうになるが、それをなんとか堪え。

パンを食い終わる頃には、三人組の即興コントが終わっていて。

客の一部から飛んできたおひねりなんかをハゲ頭達が受けとっていなくなると、別のグループが何やら準備を始めていた。

がやがやとおしゃべりが始まり、席を立つ者、空いた場所に座る者、色んな奴らの色んな音が場に響き始める。

こういう雰囲気、結構好きだった。

ここのところ狩りに行く日が多いが、たまにはこうしてのんびりと過ごすのも良い。


(……ハゲも悪くないかもしれん)


 飲み終わったコーヒーのパックを潰しながら、笑いを取るためのファッションの新たな構想を思いつき、立ち上がった。

これからはハゲが天下を取る時代かもしれない。

何せハゲというだけで観客は笑っていたのだ。些細な行動が笑いを誘うのならば、戦いの際にも油断を誘えるかもしれない。

狩りに役立つとは思えないが、狩りに疲れた仲間たちを笑わせるくらいの役には立つだろう、位の気持ちで歩き出す。

向かう先は、街一番のスミスの工房。

ハゲヅラをどうやって依頼しようかと、あれやこれや考えてるだけで、遠いはずの距離はあっという間だった。


-Tips-

肌色三銃士(ユニット名)

メンバー:ハゲヅラー(リーダー)、スキンヘッド一号(首領)、ツルピカマスター(マスター)

リーシアに突如旋風を巻き起こした新進気鋭のコントユニット。

抜群のズレ芸と自分達の外見からくる自虐ネタ、そして謎のスクワットによるごり押しなどがあわさり一躍リーシア中央広場の人気者に。

元々は『ハゲーズ』『スキンヘッズ』などのユニット名も候補に挙がったが、最終的に発案者のツルピカマスターが他の二人にワカメスープを奢る事によって軟着陸した。


毎週水曜日と金曜日の昼一時に芸をお披露目する予定。

この定期的な公演が人気に拍車を掛けているという噂もある。

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