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ネトゲの中のリアル  作者: 海蛇
9章.ミルフィーユ・クライシス(主人公視点:サクヤ)

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※『塔の魔女とお姫様』参考台本4


●シーン11

よろよろの魔女がお姫様の元へ戻ってくる。

お姫様は心配して駆け寄る。


魔女:(よろよろと歩き、お姫様の前で膝をつく)なんて強い人なの。負けてしまったわ。


お姫様:(心配しながら魔女を見つめ)大丈夫?


魔女:(その手を受けながら立ち上がり)大丈夫。だけど、追い返せなかったわ。どうしよう。


お姫様:(考えるようにして)そう、困ったわ。どうしようかしら。


※舞台端から勇者登場。


勇者:(剣を手に)魔女め、覚悟しろ!


魔女:(びくりと震えながら)きゃあ、とうとう来たわ!


お姫様:(魔女庇うように両者の間に立ちながら)待ちなさいトーマス! これ以上はやめて!


勇者:(お姫様へと手を伸ばしながら)姫! お会いしとうございました!


お姫様:(胸に手を当て)私も会いたかったわ。だけどトーマス、これ以上はダメよ。この子を傷つけないで!


魔女:(勇者とお姫様の顔を交互に見ながら)え、どうして……?


勇者:(目を見開き剣を構えながら)何故です姫! 貴方を助けるためには、この魔女を倒さなくてはならないのでは!?


お姫様:(どん、と、一歩踏み出し)そうかもしれないけど……私は良いの! (一瞬魔女を見ながら)この子と一緒に居たいから。私はもう心配要らないって、お父様にお伝えして頂戴!


勇者:(胸に手を当てながら)それではいつまでも貴方のお顔が見られません! 私は貴方を毎日見ていたいのです! 愛しているのです!!


お姫様:(驚いたように一歩下がり、頬に手を当て)まあ!


勇者:(手を差し出しながら)さあ姫、どうぞ私と一緒にお城にお帰りください! 共に帰りましょう!


お姫様:(迷ったように魔女と勇者とを交互に見ながら)でも……


魔女:(縋るように無言のままお姫様を見る)


お姫様:(魔女の顔を見て、小さく頷き、勇者の顔を見る)……ごめんなさいトーマス。私は貴方より、この子を選ぶわ。この子と一緒に居たいの。


勇者:(剣をその場に落とし、一歩下がる)そ、そんな……姫、貴方は……


お姫様:(勇者をまっすぐに見つめながら)帰って頂戴。そうして、お父様にお伝えして。私の事は気にしないでください、って。


勇者:(無言のまま、うなだれるように舞台外へ)


魔女:(立ち上がり、お姫様を見ながら)良かったの? ここから帰るチャンスだったのよ?


お姫様:(年下の女の子を抱擁するような優しいお姉さん風のセリフをアドリブで)


※暗転


●シーン12

夜。一つのベッドで横たわるお姫様と魔女。


お姫様:(思い出すように)ねえ、魔女さん。起きてる?


魔女:(目元をこすりながら)なに? 私はもう眠いわ。


お姫様:(魔女の方を向きながら)私ね、思い出したことがあるの。ずっと昔の話よ。ずっとずっと昔の話。


魔女:(お姫様に背を向けながら、目を閉じて無言で聞く)


お姫様:(目を閉じながら思い出すように)私のお母様にはね、双子の妹がいたの。顔もそっくりだったらしいわ。


魔女:(無言のまま)


お姫様:(目を閉じながら)同じ人を好きになってしまったんですって。だけど、その人はお母様を選んだ。


魔女:(目を見開き、お姫様の方を見る)


お姫様:(眼を開いて、魔女と見つめ合いながら)恋に破れた妹は、その後行方知れず。お母様もずっと気にしていたらしいけれど……


魔女:(またお姫様へ背を向け)知らない。


お姫様:(魔女の肩に手を添わせながら)ねえ魔女さん。貴方のママって……


魔女:(お姫様のセリフに被らせるように)知らないわ。


お姫様:(ため息混じりに)そう。


※しばし沈黙。


魔女:(適当なタイミングで)私の事なんて怖がってなかったでしょう。


お姫様:(微笑みながら)そんな事はないわ。すごく怖かった。


魔女:(拗ねたように)嘘、貴方はうそつきだわ。私の事なんて、全然怖くなかったでしょうに。


お姫様:(魔女の身体にぽんぽん、と手を当てながら)嘘なんてついてないわ。私は、貴方がいなくなるのが怖かった。貴方の傍にいられなくなるのが怖かった。お友達じゃなくなるのが、怖かったの。


お姫様:(姿勢を変え、上を向きながら)でも、一つだけ嘘をついたわ。


魔女:(お姫様の方を向きながら)ほら、やっぱり貴方は嘘つきだわ。


お姫様:(魔女を見つめながら)うん、そうね。(にこりと笑いながら)私には友達、一人もいなかったもの。


魔女:(驚いたように)えっ?


お姫様:(微笑みながら)嘘じゃないのよ。家族からも、別に愛されていなかった。友達っぽいのはいても、友達じゃなかったわ。だから、ずっとお友達が欲しかったの。


魔女:(お姫様に背を向け)そうなんだ。


お姫様:(魔女に背を向けながら)ええ、そうなの。初めから、それ以外要らなかったの。


魔女:(段々と眼を閉じながら)そうなんだ。それじゃ、私と同じ……


※魔女とお姫様、そのまま眠ってしまう。暗転


●シーン13

魔女の夢の中のシーン。

暗闇の中一人立つ魔女。

光に照らされた人々との会話。だけれど誰も魔女の事を見ない。


魔女:(困惑したように)何なの? なんで誰も私の話を聞いてくれないの!? 私はお姫様なんじゃないの!?


国王の声:何をゆっくり食べているのだ。早く食べなさい。無駄話をするな。


魔女:(びくりと身をすくませる)


メイドの声:つまらない子だわ。話していても何も面白くない。お姫様だから一緒に居てあげるけど、そうじゃなかったら絶対ごめんよ!


魔女:(悲しそうに目を押さえる)


貴族Aの声:あのお姫様と結婚すれば国王になれるぞ!


貴族Bの声:富が手に入る!


貴族Cの声:名声も手に入る!!


魔女:(俯きながら)なんで!? なんで愛してくれないの!? (うろうろとしながら)お姫様になれれば! お姫様として暮らせれば、きっと幸せな毎日が待ってると思ってたのに! あの娘は、私よりずっと幸せな毎日を送ってたはずなのに!!


魔女:(客席へ向き、大仰に手を広げ)もういや! こんなところに居たくない! 逃げ出したい!! 助けて! なんで私だけがこんな目に遭わないといけないの!? 許して! (その場にしゃがみ込みながら)許してよ……!!


※暗転


●シーン14

魔女の回想。

まだ生きていた魔女の母親と魔女。


母親:(何か適当な意地悪な事を魔女と村娘A・Bに言ってください)


魔女:(母親の行動に合わせて辛そうな表情やセリフを適時アドリブで)


村娘A・B:(何か嫌な目に遭った的な反応をアドリブで)


※暗転


●シーン15

魔女の回想シーン

母親のいなくなった後、魔女が村を歩く。


魔女:(無言のまま村を歩く)


村娘A:(怯えたように距離を取りながら)魔女だわ。あの、私たちに酷い事をした……


村娘B:(怯えたように距離を取りながら口元に手を当て)やだわ……何しに村に来たのかしら。さっさといなくなればいいのに。


魔女:(村娘Aに近寄りながら)あ、あの、ママの事は謝ります。ママも、もういないから……食べ物、売ってください。


村娘A:(無視しながら離れていく)


村娘B:(無視しながら離れていく)


魔女:(村娘たちに手を向けながら、その場に立ち尽くして)あっ……そんな。なんで、私だけこんな……


※暗転。スポットライトが魔女に当たる。


魔女:(胸元で手を組みながら)私は……ずっと、気づけなかったんだわ。あのお姫様も、私と同じだった。同じように苦しんでた。なのにあのお姫様は、私と一緒にいようって……


魔女:(客席を向き、大仰に手を広げながら)目を覚ましたら、お姫様と話そう。私の事。私がずっと思っていた事。ずっとお友達が欲しかった事。一緒に居てくれて、嬉しかった事。全部、全部話そう!


※暗転


●シーン16

朝。ベッドにて。

目を覚ました魔女は、お姫様が隣にいないのだと気づく。


魔女:(目を見開き、ベッドから起き上がり)あ……


※魔女、信じられないように周囲を見渡し、窓が開いている事に気づく。

ベッドから立ち上がろうとして、泣き崩れてしまう。


魔女:(ベッドに身を預けながら泣いてください)


※お姫様、舞台端から登場し、魔女の前に。


お姫様(飾られていた魔女の帽子を手に取りながら):どうしたのかしら。すごく悲しそうに泣いているわ?


魔女:(泣き止み、顔をあげながら)なにそれ。その格好は?


お姫様:(ドヤ顔で箒を片手に)せっかく一緒にいるんだから、私も魔女になって見ようと思って、形から。


魔女:(立ち上がり、お姫様の前に立って)何それ、意味わかんない。


お姫様:(魔女の手を取り、にっこりと微笑みながら)だって、味わわせてくれるんでしょ? 貴方と同じ何かを。これからも、ずっと一緒に居て、ね!


※ファンファーレ。舞台端から勇者現る。


勇者:(花束を手に)姫! 今日という今日こそは一緒に帰ってもらいます! 一緒に帰って、僕のお嫁さんになってください!!


お姫様:(勇者の方を見ながら)まあ、懲りない人ね。


お姫様:(魔女の手を引きながら)私にはこの子がいるわ。この子と一緒じゃなきゃ、嫌。


勇者:(その場に膝をつきながら大声で)そ、そんなぁぁぁぁっ!


魔女:(ため息混じりに)……勝てないなあ。この娘には。(お姫様に抱き付く)


お姫様:(にっこりと笑い、客席を向きながら)だって私、寂しがり屋だもの。ずっと一緒よ、私達は。放してなんてあげないんだから。


魔女:(笑顔で)うん!


※終幕


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