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ネトゲの中のリアル  作者: 海蛇
7章.港街を取り戻せ!(主人公視点:サクヤ)

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#8-1.海鳥の洞窟攻略開始!

「はぇー……ここが海鳥の洞窟ですか……」

装備を整えた私たちは、転送屋さんに直通ポータルを出してもらって、今入り口の前。

一応濡れてもいいように、という事で防水性の高めなローブを羽織って、その中に濡れ対策の水着を着ておいた。

これなら見た目普通っぽいし、意外と身軽だしでお手軽防水。

物理防御だけかなり心もとないので、上手いところ立ち回らないといけないけれど。

「意外と明るいだろ? まあ、奥に入ると流石に松明とか照明用の魔法がないと見えなくなるけどさ。入り口付近で狩る分には(あか)り要らずだぜ」

対して、一浪さんは前衛だからか、軽装ではあるけど一応ライトアーマーとかか丸い盾をつけていた。

「とりあえず、今回は奥に入るでしょうから、早めに照明出しておきますね――『ライト・ウィスプ』」

唱え終わるや、私達の周囲にぽわん、とした光の球が浮かび上がる。

「うん……よし、じゃあ行くか」

中に入る準備も終わり、さっそく中に入ってゆく。


 洞窟の中は、前にエミリオさんと入った『とげ角族の洞窟』と比べてちょっとぬめっていた。

転ばないように気を付けないといけないなあ、と、足場に注意しながら歩く。

「ここのモンスターで一番やばいのは、いつの間にか近くまで迫ってる『ウォーターゼリー』だな」

光に反射し、黄緑色(おうりょくしょく)に光る長剣を手に、前を歩く一浪さんが注意点を説明してくれる。

ライト・ウィスプは一浪さんの周りを回っていて、私はそれを頼りについていっていた。

「はぁ……水弾(みずたま)アーチャーじゃないんですか?」

「そっちも厄介だけど、サクヤがいればそんなに怖くはないんだ。ソロだと倒しにくくて困るんだけどな」

にへへ、と、ちょっとふにゃっとした顔を一瞬見せてから、首を振ってまじめな顔に戻る。

――一体どういう意味で『倒しにくい』んだろうね。

ため息が出そうになるのを我慢しながら、とりあえずは真面目に戻ったらしい一浪さんの言葉を待つ。

「ウォーターゼリーが怖いのは、真上やなんかから奇襲してくるところにあるんだよ。洞窟マップはどこでもそうだけど、目の前だけじゃなく真上や足元、壁なんかにも気を付けてくれ。とにかくいろんなところからモンスターが這い出てくるんだ」

油断ならないんだぜ、と、私の方を振り向いた直後。

ばっ、と、何かが一浪さんへと落下してきたのが目に入る。

「あっ――一浪さんっ」

「……ごぱっ」

それはそう、液体のような何か。

一浪さんの頭へと落ちたそれは、そのまま一浪さんにまとわりつき、その顔を包み隠してしまう。

「……」

一浪さん、動じもせず指を「くいっ」と自分の頭に向ける。

なんとなく「魔法を撃て」って言ってるように見えたので、ちょっと考えてから杖を前に。

「えっと――『ウォーターボールッ!』」

とりあえず、一番弱くて一浪さんに害が及ばなさそうなのを選択して撃ち込んだ。

すぐに発動し、一浪さんの顔面に直撃。

水玉は一浪さんの顔を覆っている謎の物体をひきはがし、一浪さんをずぶ濡れにさせた。

「……はぁっ――!!」

苦しげに息を吸う一浪さん。

だけれど、その手に持った長剣は躊躇なく地面へと落ちた謎の物体へと突き刺さった。

『ぴぎっ……』

謎の鳴き声が聞こえる。断末魔、なのかな?

ずぞずぞとうごめいていたそれは、やがて動かなくなり、消滅していった。

後に残ったのは、小さな布袋。

「……こんな感じに、危険なんだ。ウォーターゼリー」

「なるほど……確かに怖いですね」

一浪さんは特にリアクションを取らなかったけれど、突然真上から落ちてきて窒息させられるのは中々にシャレにならない気がする。

一人の時に受けたらそのまま死んでしまうかもしれない。

「魔法に弱いからなんでも浴びせれば怯むのと、見た目に反して普通に武器で攻撃すれば倒せるってのが救いかな。体力は全然だから攻撃すれば誰でも倒せるんだけどさ、誰かが襲われてる時に相手の顔面に向けて剣や鈍器向けるのはちょっと勇気いるよな……」

「そうですね……魔法の選択にちょっと迷っちゃいましたし……あんまり強い魔法だと危ないですよね?」

「PTの時にウォーターゼリー相手で死ぬ可能性があるとすればそれかな」

落ちたドロップ品をアイテム袋に入れながら、一浪さんが説明を続ける。

「こいつら、意外と素早く動くから攻撃かわしたりするんだよ。魔法は感知できないけど、物理攻撃は結構避ける。んで、顔面に覆いかぶさったのを取り除くために武器を顔面に向けるだろ? だけど、当たる直前に飛び跳ねて逃げてさ、襲われてた人に、そのまま武器が直撃するっていうパターン」

「うわあ……」

「まあ、ウォーターゼリーに限らず、不定形型モンスター相手の時はよくある事故だな。こいつらはとにかく死角から襲い掛かってきて窒息を狙ってきたり、服や装備、肉を溶かそうとしてくるんだけど、同時にPTの混乱も狙ってくる。油断ならないんだ」

不定形型モンスター、怖い。

なんかよく解らない物体だと思ったけど、意外と凶悪なモンスターなのかもしれなかった。

動物型とかと違って、そこにいるのが解らないのも相まって要注意なんだと理解した。


「そういえば、ウォーターゼリーのドロップって何だったんですか?」

よくよく注意しなくちゃいけないと肝に銘じたものの、さっき拾ったアイテムが気になり、歩き出す前に質問した。

ここに来るのは初めてなのだ。いろいろ知りたいことはあった。

金銭効率の面でも気になるし、役に立つアイテムなら後々集めに来ることだってあるかもしれないし。

「今拾ったのか? あれは『ゼラチンの水体(すいたい)』だよ。ゼリーとかの材料になる」

「へぇ……えっ? 今のを食べるんですか……?」

「ああ。そのままじゃ使わないけど、洗って煮詰めるといい感じに使えるようになるらしいぜ? 俺も菓子作りはよくわかんないから詳しい事までは教えられないなあ」

なんとなく、ちょっとためらってしまう瞬間だった。

だって、洞窟に普通に湧くモンスターを材料にって……いや、確かにプルプルしてたけども。

「アルケミストなんかが結構高額で買い取ってくれるから、自分で作るのに抵抗があるならそっちにうっぱらえばいいと思うぜ? ラムネに任せてもいいし」

「んん……まあ、そうですね……」

気になるところもあるけど、もしかしたら他に代用の利かないものかもしれないし。

モンスター由来の食材自体は実際に食べたりもしてるから、慣れればなんてことないのかもしれない。

「まだまだ入り口だ。そろそろ進もうぜ」

「あ、そうですね……はい」

説明途中で敵が出たから足が止まったけれど、私たちの目的はもっと奥に居るのだ。

入り口近くでいつまでもお喋りしていたらお昼になってしまうのだから、これ以上足を止めている理由もなかった。


-Tips-

海鳥の洞窟(場所)

カルナスから船で渡航することのできる離島『カンパレッタ島』にある初級者~中級者向けの洞窟マップ。

全4層構造で、地上の高台にある入り口から下ってゆき、次第に水路、最終的には海や崖に繋がっている、比較的広めの洞窟である。


1層は足場が若干ぬめつく以外は普通の洞窟で、『ウォーターゼリー』『ザザザムシ』『青いまるキノコ』『フルーツ蝙蝠』などが出現する。

ウォーターゼリーとザザザムシは天井や壁の隙間からも出現し、また、フルーツ蝙蝠は天井にぶら下がっていて近づくと羽ばたくため、地上マップしか経験した事のないプレイヤーにとっては戸惑う事の多い構成となっている。


2層は足場の水気が増えてきて、洞窟脇や進路上などにところどころ水路が見え始める。

主には『ウォーターゼリー』『ザザザムシ』『うに』『うにモドキ』『うにモドキだまし』『にせうにモドキだまし』などが出現する。

うにとそれに類似したモンスターは水路にいてほぼ動かないため、狙って狩ろうと思わなければ遭遇することはない。


3層は水路と地面とが入り混じった地形で、それまでの階層と比べて歩きにくくなっている。

ザザザムシは引き続き出現するが、このあたりから『水弾アーチャー』『光るまるキノコ』『シロヒトデ』などが出現する。

この中でも特に水弾アーチャーは攻撃能力こそ低めであるが、初級者程度のプレイヤーとあまり変わらない思考ルーチンの為、注意が必要である。

また、シロヒトデの麻痺攻撃は非常に強力で、迂闊に近づくと文字通り痛い目を見る事になる。


4層は大人の膝程まで海水が入り込んでいて、移動能力はかなり制限されることとなる。

また、上層から流れてくる水が天井から染み出て小さな滝のようになっている事も多く、視界なども制限されやすい。

こちらには『水弾アーチャー』『クロコ』『グランゲ』『まーまん』『魔カジキ』などが出現する。

ここで狩りをするレベルのPTにとって問題になるようなモンスターはほとんど居ないが、水弾アーチャー以外のモンスターはほぼ水中から出現・攻撃してくる為、索敵・攻撃には若干コツが必要となる。

クロコや魔カジキのドロップする蒐集品が防具や料理の材料になる為、金銭的な効率を出す為に訪れたPTはここで狩りをする事が多い。

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