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ネトゲの中のリアル  作者: 海蛇
1章.たまり場にて(主人公視点:サクヤ)

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#2-2.セシリア先生の魔法授業

 到着したのはリーシアから転送一回分のマップ。

一面白い草に覆われた平原だった。

「ここは『白夜の平原』。『始まりの森』と比べてちょっとだけ難易度が高いマップよ。だけど、その分稼ぎも大きいの」

私の前に立つセシリアさんは、そう喋りながら杖を片手にのんびりと歩き出す。

「白夜の平原……名前だけは聞いた事あります。その、プリエラさんから」

私もそれについていく。

始まりの森というのはリーシア西の森のことみたいだけど、この平原にどんなモンスターがいるのかまではよく解らない。

知らないのって怖い。おっかなびっくりだった。


「ここのモンスターは基本的に全部アクティブ。プレイヤーを見かけると襲い掛かってくるわ。ただし、そんなに強くはない」

説明ながらに歩くセシリアさんの前に、不意に赤くて巨大なアリが現れる。

「セシリアさ――」

「邪魔よ――ソニックブラスト」

牙を()いて襲い掛かってきたアリに、だけれどセシリアさんはわずらわしげに杖を軽く振って魔法を発動。

瞬時にアリが爆散していった。断末魔を挙げる暇すら与えない。

声をかけようとしていた私もそこで止まっていた。

(すごいなあ)

正直、何が起きたのかも解らない。一瞬の出来事だった。

「あの位のアリならサクヤでも簡単に倒せるわよ。マジシャンでしょう? あの『ギースアント』はウォーターボールにすごく弱いの。水が弱点だからね」

またも歩きながらセシリア先生の説明は続く。

「ただ、あいつらは一匹に攻撃するとどんどんと近くにいる仲間を呼び寄せ続けるから、一撃で倒しきってしまうか、囲まれる前に逃げられる算段をつけておく必要があるわ。これは『リンク特性』といって、モンスターのよくある特徴の一つなの」

幸いそんなに足は早くないけれど、と、振り向き笑いながら杖をフリフリ。

「攻撃性そのものは大したことないし、万一噛みつかれても即死はしない。でもまあ、基本的にこういう平原地帯だからね。『敵より先に見つけて、敵より先に攻撃』というのが基本よ」

これすごく大事、と、指をぴん、と立てながら真面目な顔をしていた。

「マップによって戦い方が大分違うって事ですか……?」

「そう。始まりの森はスタンダードな森林地形だから、敵からも見つかりにくいし不意を撃ちやすいけど、こういう平原マップって見通しが良い分敵からも発見されやすいの。その分、遠くにいてもすぐに解るし、先に見つけられれば一方的に仕掛けられる」

言いながら、視線を私のずっと後ろの方に向ける。


「ファイヤーボール」

そして杖を斜め上に、私越しに魔法を発動させる。

大きく弧を描きながら私を飛び越えていった炎の弾。

『ふぎゃぁぁぁぁっ!?』

振り向くと、膝位の大きさの何かが炎に焼かれていた。

「うわ……うわあ」

悲鳴をあげていた黒い何かは、やがて丸焦げになり燃え尽き倒れる。

「黒ブラウニーよ。小さな猫頭の小人みたいな容姿をしているわ。こいつは炎に弱い」

とん、と、杖の柄を丸焦げのブラウニーに向ける。

ブラウニーはそのまま消滅したけれど、後には葉っぱが一枚残った。

「ブラウニーは動きが速いのと、水魔法を浴びせると凶暴化するという特性があるわ。動きを鈍らせようとしてウォーターボールを喰らわせてしまう初心者は多いから、その辺り気をつけたほうが良いかもね。これもそんなに強くはない」

「この葉っぱは……?」

「それはリンゴの葉っぱね。そのままだと役に立たないけど、ヒールポーションや燻製(くんせい)の材料になるからとっておくなり、買い取りしてる人がいたら譲ってあげてもいいと思うわ」

「なるほど……」

とても便利なものなんだなあ、と思いながらじーっと見る。

セシリアさんは拾わない。

「……」

「……」

そして沈黙。


「……拾わないの? 葉っぱ」

破ったのはセシリアさんだった。杖を葉っぱに向けながら首をかしげている。

「えっ? あ、いえ。だってこれ、セシリアさんが倒した敵から出たものですし……」

ドロップアイテムは倒した人のもの。それ位はまだ慣れてない私にだって解る。

だからこれはセシリアさんの戦利品のはず、と、黙っていたのだけれど。

「いいのよ、拾っても。ギルメンってそういうものだし。それに、PT(パーティー)狩りをするなら仲間が倒した敵のドロップを拾うのもメンバーの役目よ」

気にしないで、と、にっこり。

「なるほど……勉強になります」

納得ながらに葉っぱを拾ってポーチの中に。

どんな時も倒した人が拾うもの、という訳ではないらしかった。

その辺不勉強だったというか、色々解らない事も多いんだなあと自覚させられる。


 のんびりとした狩りだった。お散歩みたいな。

セシリアさんはゆったりと前を歩き、邪魔する敵を魔法で蹴散らす。

その敵が初めて見るものだったら説明してくれて、弱点や注意点なんかも教えてくれる。

ドロップアイテムは私が拾う係らしく、セシリアさんは拾おうとしない。


「セシリアさんは、何種類位の属性の魔法を使えるんですか? 私、まだ水属性と地属性しか覚えてなくて――」

「そうねえ――」

私の質問に、セシリアさんは振り向き、顎に手をやりながら間を空ける。

「――無詠唱で発動できるのは物理と水火の三属性。詠唱込みで扱えるのなら物理と地水火風、それから雷の六属性かしら?」

「ろ、六属性……幅広いんですねえ」

しかも私が使っているものよりずっとランクが高いであろう魔法を。

素直にすごいなあと思わされる。私もそうなりたいと。

「大したものじゃないわ。リアルの方の話になるけれど、サクヤは学校で得意な教科っていくつある? あるいはあった?」

「えっ? り、リアルの話ですか……?」

突然話の方向が逸れて焦る。

別にリアルの話をするのが嫌な訳ではないのだけれど、唐突過ぎるというかなんというか。

「えーっと……言語と科学と異世界史、それから倫理とかも得意ですね」

残念ながら数学とか数字学とかはあんまり得意じゃなかった。体育とかはかなり苦手。

「そう、なら四属性。何が覚えられるかは解らないけれど、サクヤはそれ位までなら無理なく使いこなすことができるようになるはずよ」

指を四本立てながら、にっこりと微笑む。

私はというと「本当にそれで良いのかな」と、首を傾げてしまっていた。

「そういう基準なんですか?」

「そういう基準なのです。魔法って、言ってみればリアルでの学科と同じ感じでね。一言に『魔法』って言っても、属性やジャンルによって全く方向性や習得難易度が違ったりするの」

学科と魔法の意外な共通点だった。


「初歩の魔法なら魔術書(グリモア)を読んで何度か詠唱込みで使ってれば無詠唱で扱えるようになってくるけれど、高位になっていくにつれて大変になってくるのよ。魔法職は、この魔法が扱えないとお話にならないから、序盤の金策もとても大切だわ」

「魔術書一冊買うのにもお金かかりますもんね……」

最初の一冊は地水火風の内から好きな属性のを大学で支給してくれたのだけれど、そこから先は自前。

そろそろもう一冊欲しいなあと思い始めてきたところだったけれど、懐がまだ寂しいのでしばらくは二属性で頑張る事になりそうだった。

「まあ、ここで狩りができるようになれば資金にも大分余裕が出てくるのだけれど……火属性を扱えるようになるまではちょっと厳しいかしらね」

「そうみたいですね。でも、おかげで色々と勉強になりました。どんなモンスターが出るのかと、その弱点とかが解っただけでもすごく助かりましたし――!?」

話していると、唐突にセシリアさんの背後に巨大な影。

「セシリアさんっ、後ろっ!!」

すぐに指差し声を上げる。

「うん――?」

なにごと、と、のんきに後ろを振り向くセシリアさん。



 そこにいたのは、私達の何倍もある、巨大なカマキリだった――


-Tips-

バトルメイジ(職業)

魔法職系上位職の一つ。特にこれといった呼び名はない。

マジシャン系列の強力な破壊魔法で中距離戦闘を制しつつ、前衛としてもある程度戦う事のできるバランス職。


同系列で完全に後衛職なメイジと比べると火力で劣るが、詠唱速度では勝る。

最終的な魔法詠唱の速さ(発動の為に短縮できる範囲の広さ)は全魔法職中トップの為、前衛としての戦闘を好まずとも高速詠唱を極めたい者もこの職に落ち着くことが多い。

その他、メイスなどの鈍器や重量が重い金属製の杖なども扱える為、攻撃魔法がメインのマジシャン系列でありながら物理的な攻撃力も高い。


特徴的なスキルとして、近接戦闘時における付与魔法『スタンロッド』は攻撃力こそ皆無なものの、ボスモンスターすら一時的にスタンさせる強力な効果を誇る。


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