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ネトゲの中のリアル  作者: 海蛇
1章.たまり場にて(主人公視点:サクヤ)

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#1-1.ウサギ祭り開催中!!

「サクヤ!! ウサギ祭だよっ!!」

ゲームにログイン直後、ブレていた視界が定まるより前に、私に向けて声がした。

青い司祭服、さらさらの茶髪とくりくりとした栗色の瞳が眩しいギルドメンバー。

プリエラさんだった。何故か頭にウサ耳をつけている。

「こんにちは……ウサギ祭、ですか?」

「うん! ゲーム内イベントだよー。街で『公式さん』がアイテムと交換で限定装備くれるの。ウサ耳とウサ尻尾とウサギのフード!!」

プリエラさんのテンションは既に最高潮らしかった。

興奮気味に話を進めてしまうので、混乱しそうになりながらなんとか飲み込んでいく。

「えっと……つまり、その格好はイベントで貰った装備をつけてるんですね?」

「うん、そうだよ。可愛いでしょ? ほら、しっぽもー」

とてもご満悦な様子で耳をふりふり、後ろを向いてお尻の尻尾も見せてくれる。

「モフモフですね」

「モフモフ天国だよー、えへへー」

プリエラさん込みで可愛かった。その無邪気さがちょっと羨ましい。


「サクヤも参加してみるといいよ。今回のは初心者の人も参加できるようにって、難易度は低いみたいだから」

ぴょこぴょこと動くウサ耳を見ると、確かに私も欲しいかなあと思い始めてくる。

「その、交換に必要なアイテムって?」

「マジックラビットの落とす『桜の花びら』を三つずつかな。街の西通りに特設会場が用意されてるから、そこで公式さんに交換してもらうの」

「公式さん……というのは?」

説明そのものは解ったような気もしたけれど、聞きなれない単語もあったのでついでにそれも聞いておく。

私は初心者。魔法こそちょっとは使えるようになったけど、まだこのゲームの事は知らない事ばかりだったから。

「このゲームの運営・管理をしてる人達の事だよ。イベントとかあると顔を出すけど、そういう時以外は基本的に顔を見せないから、初心者の子とかイベントに参加しない人は知らないかも?」

「なるほど、それで公式さん……」

「外見は制服で統一されてるから見るとすぐに解ると思う。真っ黒のジャケットに赤いベルト、それから同じ黒のズボンかスカートを履いてるの」

想像の中の公式さん、かなり微妙な感じになっていた。

「……なんか、配色だけ聞くと結構地味なような……?」

「うん、まあ、人によってはそんな事になってる」

プリエラさんも否定しない。やっぱり微妙らしい。

「とりあえず、行ってみますね。私もウサ耳欲しいですし」

プリエラさんを見てるとこういう可愛い装備も欲しくなってきたので、広場へと向かう事にした。

「うん、いてらー」

手をひらひらと振りながら見送ってくれるプリエラさん。ウサ耳がぴょこぴょこしてるのが可愛かった。



 リーシアの西通りには、既に沢山の人達が集まって賑わっていた。

すごくムキムキな剣士風の女の人とか、すごく可愛い格好したエプロンドレスの男の子とか。

私みたいなお一人様もいれば、パーティーを組んでるのか友達なのか、五人位でがやがや歩いてる人達もいた。皆楽しそう。

「はーいっ、現在公式イベント中でーすっ! 皆も参加して可愛い系のウサギ装備をゲットしよーっ」

通り沿いにはところどころ黒い服の人が立っていて、大きな声を上げている。

集まってきた人達はそれぞれ近くの黒服の人達を囲むように立っていた。なるほど、これが公式さんらしい。

「期間限定でマジックラビットの討伐に便利な特設ステージも開放しています!! 初心者でも安心して狩れる素敵マップとなっていまーす!」

私の近くの公式さんは糸目で背の高い女の人だった。

黒いジャケットに黒いスカート。そして黒い日よけ帽子。

実際に見ると意外と悪くない。スタイリッシュだった。

かん高い声で呼びかけてるのはイベントの詳細なんだと思う。気になったので私も近くに寄ってみた。


「あらあら可愛いマジシャンさん。イベントに参加なさいますか? それとも、もう参加中ですかー?」

こちらから話し掛けようかと思った矢先、糸目の公式さんに先手を取られてしまう。

「ふぇっ? あ、え、ええ。そうです。参加しようと思って。どうしたらいいんですか?」

想定外だったので返答もちょっとドモりながらになってしまう。人前なのが余計に恥ずかしい。

「おっけーおっけー、それじゃ、これからイベント限定の特設ステージに転送しますから、そこで沢山『マジックラビット』を狩ってくださいな。最近ウサギが増えすぎで付近の作物に影響が出始めてるんです。彼らの落とす『桜の花びら』を三枚集めるごとに限定アイテムを進呈しちゃいますので、はりきってどうぞ!」

糸目をにんまりさせながら、公式さんが掌を石張りの地面に向ける。

直後に『ぽん』と気の抜ける音を立てながら、地面に光る何かが現れた。

「はい、転送陣出しましたー。これに触れればイベントマップにご招待です。お戻りは同じように光ってる地面に触れてくださいね。どぞどぞ、ご遠慮なさらずに」

一歩下がって「どうぞ」とにっこり笑う。

前に変に道に迷ったのもあって転送陣はちょっと怖いのだけれど、イベントなのでと割り切って恐る恐る踏み出し――



「――はっ!?」

そして気づくと、周りの風景は大分違っていた。

沢山いた人はどこへやら、周りはちょっとした草原になっていた。

『きぃーっ』

『ぴぴーっ』

そして、ちら、と見ると、帽子をかぶったウサギが二羽。何故か噛み付きあっていた。

(なんだろう、あれ――)

マジックラビットなのは解るけれど、何をやってるのか解らない。

見ていると互いに互いを攻撃しあっていて、勝手に傷が増えていく。

『ぷきーっ』

『きしゃーっ』

ウサギたちの戦いは終わらない。もしかしたら縄張り争いとかなのかもしれない。

森を歩いてると襲い掛かってくるのも、そういうのに過敏だからなんじゃ、なんて。

それと、かわいい外見ながら、こういう時にあげる鳴き声はあんまり可愛くない。というか怖い。

この辺り、やっぱり獣なんだなあ、と思わされた。


「とりあえず――ロックシュート!!」


 最初は「このまま見てれば勝手に消耗してくれるかなあ」とも思ったけれど、なんだか時間がかかりそうだったので割って入る事にした。

最近覚えた地属性魔法。拳大の石が掌に展開された魔法陣から現れ――ウサギの片方に飛んでいく。

『ピギュッ!?」

バシン、という痛そうな音と共に崩れ落ちるマジックラビット。

『ぴっ!?』

驚いたもう一頭がその場でぴょんぴょん、と跳んだ。

「――わわっ」

こういう時は横に動けば良い。教わった通りに急いで動く。

直後、ウサギの前面に展開された魔法陣から、水の魔法が勢いよく発射された。

丁度さっきまで私がいた辺りに着弾した水弾は、辺りに水の粒を飛び散らしながら消えていく。

「――シュート!!」

反撃開始。この『ロックシュート』の強みは、その高い連射性能にある。

一回撃ってしまえば、二回目以降は構えて魔法の名前を短縮して言うだけで発動してくれる。

勿論狙いを定める必要はあるけれど、ウォーターボールよりも早く撃てるのはありがたかった。

『ぴぃっ!』

石がウサギの小さな身体に直撃する。

ぐら、と、とんがり帽子が落ちて、そのまま動かなくなった。

「――よしっ」

ちょっとだけ可哀想な気もしたけれど、あわせて二羽分のウサギはやがて消えていき、お肉と花びら、それからさっきのとんがり帽子だけが残った。

「この調子で集めよっ」

ウォーターボールの時は苦戦させられたけど、このロックシュートがある以上、もう大丈夫なはず。

私は全力でこのイベントを楽しむ事にした。


-Tips-

公式さん(人物)

『えむえむおー』世界において最も逆らってはいけない人たち。

全身黒ずくめなのでとてもよく目立つ。

見つけたら笑顔で挨拶しよう。

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