【第96話】SS クノエへの帰還
本日もお届けできます。お読みくださってありがとうございます。
連投最終日、5月8日投稿の予定の第100話、書けなくて苦労してます。
100話目と思うと変に力みが・・・
北の地に訪れた春はとても遅かったです。
あちらこちらにラベンダーが咲き乱れ、クノエの地とはまた違った春景色に目を楽しませてもらった。
妻の妊娠が判ってから二度目の春をここエイゾで迎え、息子が生まれてから初めての冬を越えたことになる。
ソウタさんやフィアさんがあまりにも頻繁にいらっしゃるので、寂しがるヒマもなくて妻は子育ての話をフィアさんから聞いたりしながら楽しく暮らせているようだ。
石油プラントもほとんどの工事が済み、稼働は開始している。
汲み上げる原油の量は決して潤沢とは言えないが、陸軍へ供給する燃料を補って余りある程の量にはなっている。
お蔭で灯油の製造量も多くなっているために周辺への供給も間に合っている。
灯油が供給できるようになったころに合わせてまた、ソウタさんが何やらしかけ始めた。
最初は何をやってらっしゃるのか全く分からなかったのだが、少し大きな機械を作っていたらしい。
寒い時期にいらして、我が家の作業小屋でガンガンと大きな音を立てながら額に汗を浮かべお一人でその機械を完成させた。
クランクプレスと言うのだそうだ。
金型と言うメス型とオス型が上下に分かれており、その機械で金型を上下させると間に挟んだ薄い鉄の板がその形に成形された。
何度やっても全く同じ物が出来る。
金型を工夫すると様々な形のものが作れそうだ。
これが迷い人の持つ知恵と言うモノだろうか。産業に革命が起こるかもしれない。
小さな船底状の四角い物がたくさん作られた。蓋を閉じるように二つを合わせ、ぴったりと閉じ合わされてしまう。
上になる方には二つの穴がくり抜かれ、中央に空いた大きな穴に煙突のように筒が刺さり、その内側には石綿で作った煙突の内側にすっぽりと収まる芯が入れられた。
もう一つの端に開けられた少し小さい穴にはねじ込んで締められる蓋が付く。
石綿は火箸で上下させるそうだ。
そこの仕組みがまだ上手にできないと仰っておられた。
いつも完璧でないというところがこの人の人間臭さだと思えるのだ。
とりあえずの試作品が出来上がり、目的の分からなかった下のタンクに灯油が注がれて、しばらくすると石綿が湿ってきた。
火打石で火の粉を飛ばすと火が移り、円周に沿って柔らかな明かりが灯る。
驚いたのはその柔らかな炎の暖かさ。
ずっと燃え続けるのに大きく燃えもせず、部屋を暖めてくれることに驚いた。
「ソウタさん、これは?」
「これはストーブと言います。これで暖を取るために灯油が欲しかったのです。また、シシオさんのお蔭でたくさんの人が寒さを逃れられますね。」
「何を言ってるんですか、全部ソウタさんのしたことでしょうに。私はいつも手伝わせてもらってるだけじゃないですか。」
「いえ、俺一人でやれることなんてそう多くは無いんです。いつも誰かが一緒になって手伝ってくれるからこそ、何でもできてるように見えるんですよ。
錬金術師のご夫妻が居てくれなかったらレネゲイドだってあんなに色々なお役には立たなかったでしょうし、アイアメリカの理不尽を跳ね返す昂暉が空を飛ぶこともありませんでした。
冒険者たちがアルミ製の軽量装備を喜んでいるのだって俺のやったことではないでしょう?シシオさんやサツキさんだったらあのプレス機で何を作って下さるかワクワクしますよ。」
嬉しいことをストレートな言葉で伝えてくださるこの人は一体自分のことをどう思っていらっしゃるのか。
自分の功績をすぐに人に渡してしまい、それで満足しているんだから呆れてものが言えない。
「それと注意ですが、ストーブは点火中に給油すると爆発的に燃焼してしまうので厳重に注意が必要です。本当なら給油のふたが開けられると消えるようにするか、消さないと開けられない方がいいんですがね。
プレスにも注意があります。
あれは途中で止められないので絶対に手が入ったりしないようにしなければなりません。本来ならカバーを掛けて加工中には触れないようにするものなんですよ。
あっちの世界でもその昔には指を潰して酷いことになる人がたくさんいたんですよ。」
ストーブは8時間ほど燃え続け、部屋はまるで常春だ。
息子が近づかないような工夫が居るな。
フィアさんは妻と一緒に居て、妻から編み物を習っていた。
息子はぐっすりと眠っているようで二人で楽しそうにしているのが見ていて微笑ましい。
見るたびに美しくなっていかれるフィアさんは最近落ち着いた雰囲気も見せるようになり、ますますソウタさんの株も上がるだろう。
ユイちゃんも2歳を過ぎ、フィアさんにそっくりになってきた。
以前のふっくらとした面立ちから、徐々に少女らしい可愛らしさが現れ始め、母親譲りの美人さんになりそうだ。
将来は陛下の御子息とのご結婚のお約束もあるという事だから、ヤマノベ家も安泰と言うモノだろう。
サキュバスらしい朱色の瞳がくりくりと良く動く活発な少女は妻たちのしていることに興味を示し、組紐を習ったらしく、もうずいぶん長いカラフルな毛糸のリボンを編んでいる。
それをシルファと言う姉にあげるのだというのだ。
最近養子を迎えたと聞いたが、私たちの様な獣人だというのだ。
バステト族の少女を拾い、その日のうちに娘にしたんだそうだ。
ソウタさんらしいと言えばらしいのだが、本当に変わったお人だと思う。
私たちも蔑まれたり軽視されたりしたものだったが、今は一切それもない。私たちがこの国一番の公爵家と懇意だと今では誰もが知っているからだ。
クノエでは最初から差別が少なかったものだが、それでも皆無ではなかった。
それが今はどうだろう。
どこへ行っても手厚い歓待を受け、ヤマノベ公爵の話をせがまれる。
ここエイゾでもキョクセンから頻繁に軍人がやって来て私たちと会談を行い、軽油やガソリンの供給に関する打ち合わせなどを行うために、この街でも特別な扱いを受けたりしている。
すっかり獣人と人種の差別がなくなってしまっており、時々自分たちがなぜこれまで差別的な扱いを受けていたのか判らなくなる時があるのだ。
それもこれもソウタさんがサキュバスのフィアさんを娶って、この国を安泰にしていることや私たちのような異種族を全く区別なく扱うからこそ今があるのだと思う。
いつかソウタさんがなぜ種族が違うと仲良くしちゃいけないのか?と問われたことがあった。
最初から人種が優越的だと考えてもいなかったからそう仰られたのだろう。
開闢の頃から人種が神を産み育てたのに対し、それ以外は長い年月の間に人の真似を覚えたのだという神話じみた言い伝えがあったから、今の世まで変わらずに獣人や精霊族などが「人より劣った者」として扱われていたのだ。
誰もがその話を信じ、私たちでさえそう思ってきたのだからそれが真実なのだろうと疑う者はいなかったはずだ。
ところが、神国に降りかかる数多の災厄を祓い除け、数知れない恩恵をもたらす親王陛下の懐刀とも右腕とも言われている、神懸かりとも思えるような公爵にはそのような迷信じみた言い伝えなど全く意味のない戯言でしかなかった。
神さえも手に掛けるその超人は自分の伴侶にサキュバスを選び、ライカン族を重用し、聖霊族をも妻としてしまう。
そしてその様な迷信のことごとくを否定するかのような発言や行動と、その実績でもって一切の種族に貴賤の差などありはしないと証明し続けている。
今回養子に向かえたシルファと言う少女もバステト族であり、自分の大切な娘だと陛下にも目通りさせていると聞いた。
ソウタさんにとって種族とは何だとお考えか?と、私が聞いた時があったが 「種族の生活や生きざまに敵った外見的、内面的な特徴なのではないか。」そう聞かされたのだ。
それぞれの特徴はその方が生きるために良いから見た目に違ったりするんだと考えていると言われた。
いつの頃かまではどの種族も多分、単一の種族として生きてきたはずで、その後に生きる環境が変わったことによってそれに向いた、独自の進化を遂げた結果だろうと仰った。
最初から人種が別の存在としてあったのではなく、途中からそれぞれが独自に進化していった結果のはずだと断定された。
そうでなければ説明のつかないことがありすぎるとこの時に聞かされたのだ。
説明されたことのほとんどは私には理解できない難しさで、そんなことをどうして考えたのだろうと不思議にしか思わなかったのだ。
父親似、母親似という違いは何だと思いますか?そう問われて理論的な返事をすることができなかった。
ソウタさんは、父親にも母親にも自分の特徴をその子供に伝える能力が備わっているのだと。それを「遺伝子」と言うのだそうだが、その遺伝子に父親の情報と母親の情報が入っており、夫婦の愛情によって生まれる子供にはその情報が取り込まれるのだと言うのだ。
ただ、足して半分にしているのではなく、より強く影響を受けた方の特徴が顕著に表れると。そして、それは長い年月を経る間にも変化していき、より生きやすいように書き替えられる情報なのだというのだ。
ドラゴンと人の間に子供が出来ないのは、その遺伝子が近しい物ではなく、父親の情報と母親の情報を混ぜ合わせることができないからであり、エルフと人の間にハーフエルフが生まれてくるのは元々の情報がほとんど同じだからに他ならないからだというのだ。
その説からすれば人と獣人の間に子が設けられ、人と精霊族の間にも子が出来る。
そして精霊族と獣人の間にも子ができていいはずで、実際にはその通りとなる。
ソウタさんの言うとおりに説明がつき、迷信の類には説明がつかないことの方が多いのだから、陛下も最近ではソウタさんの説の方が正しいと公言されているそうだ。
元は同じ種族であったが、生きる環境に大きな違いがあったから特徴的な差が生じた。しかし、元が同じであるがゆえに時に交わり子孫を残していけるというのだ。
そうした種族の差をソウタさんは「進化」といい、古い言い伝えを間違っていると断言してしまうのだ。
それが事実だから妻がサキュバスでいいし、養子がバステト族でもいいのだと言う。
「どうせ同じ人なんだから。」
そう言い切られてしまうと最早、違うと言える人さえいなかった。
哲学論や科学でソウタさんを論破できる者が現れず、挑戦者が現れるたびに陛下も面白がっていると聞いた。
互いがよき理解者である陛下とソウタさんはそうした考えの元に私たちを見るからこそ、ライカン族もバステト族も、サキュバスも陛下やソウタさんには同じ隣人でしかないらしい。
シルファと言う少女にどのようなお婿さんが付くのかと言う話題になった時に、ソウタさんが言った言葉が傑作であった。
「いいひと。」なのだ。
性格は重要な選考ポイントだが、種族は全くなんでもいいそうで、実は嫁にやりたくないのが本音だそうだ。
私の息子にもいい嫁が来てくれるだろうか?
さっそう、ずっと先のことに思いを馳せるとソウタさんがうちにいっぱいいるじゃないですか?と言う。
私の息子はもうすぐ生後半年を迎えるのだが、ライカン族らしく頭頂部に耳があり、特に子供のうちは鼻が突出していて犬の特徴が濃い。
成人するにしたがって人と大差ない容貌に変わっていくのだが、今は体毛も濃いうえに手足も短い物だからまさに生まれたばかりの子犬のようにも見える。
ソウタさんは妻たちの編み物教室は邪魔せずに私と摘まみを食べながらお酒を酌み交わしている。
すぐ側に居る私の息子の頭を撫でながら愛おしそうに見つめていらっしゃるのが、面はゆい気分だ。
この人には一見して子犬の様な私の子供も、美しい奥様達の産んでくださった宝石の様な娘さんたちも一緒なのだろうと判ってしまう。
「まさか、公爵様のご息女をお嫁さんにするなど、恐れ多くてできませんよ。きっと息子も萎縮してしまうでしょう。」
「そう仰らず、一緒に遊ぶようになれば判りませんよ?まだまだ先のことでしょう。俺は楽しみにしてますよ。」
向こうの方からフィアさんも声を掛けてくれる。
「私にもう一人子供ができたら、その子を貰ってください。」
「まぁ、フィア様本当ですか?そうしたら私、ずっとフィア様と一緒に居られますね。」
二人で笑顔を交わしながら妻たちは妻達同士で感じ入るモノがあったのかもしれない。
「ユイもおよめさんになるの?」
ユイ殿はパパとママから離れるのがお厭なのか、不安そうにソウタさんを見ている。
「もっと大きくなってからだよ。それにユイのお婿さんはゲオルク様だろう?ユイがお城に住んでもパパたちはいつもすぐ側に居るじゃないか。
ゲオルク様と一緒に毎日だって来たらいいんだよ。」
「そっか、ユイのおむこさんはゲオなんだった。」
じゃぁ、いいか。とばかりに笑顔で納得されてしまった。
夕食時になるとやはりソウタさんが先に腰を上げられ、台所へと入って行かれた。
フィアさんも「それじゃ」と仰って台所へと付いていかれた。
サツキが編み物を片付ける間にもリビングにおいしそうな匂いが運ばれ、息子の様子を眺めているユイ殿にも食事ができつつあるのが判るようだ。
「ユイ殿、タケルを抱いてみませんか?」
息子の目も開いたようでユイ殿を見て興味があるという顔をしている。
「いいの?」
もう、その気満々で喜んでくれているようだ。
私が息子を抱き上げ、ユイ殿の前に持ってくると少し緊張した表情をしたものの、落としちゃいけないと自分に言い聞かせたのだろうとわかる。意気込みを籠めた表情で私を見上げてくれたのだが、わずか2歳を回ったばかりのこの少女の美しいお顔に少なからぬ驚きを覚えてしまった。
これから大きくなるにしたがってどれほどの美貌を備えるのだろうかと恐ろしく思うほどである。
しかし、今は息子を抱くことに夢中になっておられるようで、クッションの上に自ら腰を下ろし、息子を膝に抱いて様子を窺っているのだ。
息子も美しい将来の姫様に抱いてもらえ、ご機嫌な様子だ。
いつの間にかサツキも側に来ており、ユイ殿に抱いてもらっているタケルを微笑みながら見ている。
息子はユイ殿からするいい匂いが興味の的になっており、フンフンと鼻をひくつかせ、身じろぎしながらユイ殿に甘えている。
「ねぇ、この子はどうしたの?」
落とさないように気を付けているのに、その腕の中でモゾモゾと動き回る息子に必死になっている。
「ユイ殿からいい匂いがするのでしょう。興味があるんですよ。」
「そうなの?臭くなくてよかった!」
自分に興味を示す息子にも安心し、「よしよし」とあやすようにしてくれている。
これが2歳児なのか?と思わずには居られないが、フィアさんから聞いた話ではサキュバスと言う種族独特の成長過程で、15歳までの精神的な成長がとても早いのだという事だった。
親に甘えられるのも、守ってもらえるのも15歳になる前まで。
それ以降には自分の人生を任せる男性が必要になるために、成人男性とお付き合いできるだけの大人になっていなければならないからだと。
自分たちが15歳のころなんてどうであったかと思うと、ユイ殿を前にしても恥ずかしいモノがある。
「ユイ!食事の準備ができましたよ。」
「うん。手伝うよ。」
フィアさんからユイ殿に声がかかり、ユイ殿は私にタケルを渡そうとする。
「タケル君のおとうさん、ありがとう。ママを手伝ってくるね。」
落ち着いた動作で動き出すユイ殿だから、息子も驚くこともなく私に手渡されることとなった。
息子はまだユイ殿に抱かれたかったのか、ちょっとむずがって見せたがユイ殿が頬をムニムニと突くと笑顔になった。
ユイ殿がフィアさんの元へ駆けて行き、手渡される食器類を大事そうに運んでいる。
椅子に登って一人分ずつを揃えている姿がまた、微笑ましい。
「女の子もいいわねぇ。見てよあの可愛らしさ。」
「今度は女の子が出来る方法をソウタさんに聞いておこうか?」
「ちょ?恥ずかしいでしょ?」
サツキが照れて頬を染めているのはとても可愛いモノだ。
楽しい夕食の後にソウタさんたちはレネゲイドに乗って帰って行かれた。
こことトウトは片道で半刻ほどと言われる。
レネゲイドと言う鬼神を単なる乗り物にしてしまうこの世にある人々の頂点に立つその人。
もはや「人」と言うのも躊躇われるかもしれないその人は生身に於いても最高の戦力であり、史上最大の魔術師でもある。
冒険者ギルドの記録によればレベルS、ランク10と言う誰も到達し得なかった高みを極め、戦闘力においては国軍全体を相手取って遥かにそれを上回ると言う。
魔法もこの世に現される全ての魔法を組み合わせ、世界の事象に干渉すると言う。
その魔法量は無尽蔵であり、魔力は神をも遥かに超える力を持ち、二柱を瞬時に屠ったというのだ。
その妻に選ばれた4人の巫女は一人がサキュバスであり、15歳の時に見初められ妻となった。
契約後にはやはりその膨大な魔力を継承し、稀代の魔法使いを遥かに上回る魔法を行使する。
他にも1000年を超えて娶られた魔剣もいる。
極大な魔力量を消費する魔剣はこの主に見初められたがゆえに、溢れかえるような魔力を与えられ、あらゆるものを切り伏せると言う。
残る二人は人種だと言うが、その美貌は選ばれた者であると言え、癒しとなり、大きな存在感を示している。
そして聖銀の巨人。
外の世界から来たという1000年の昔の鬼神。
あらゆる魔を寄せ付けず、あらゆる障害を吹き飛ばす、想像を絶する狂気を司るその巨人を配下に納め、クノエを永きに渡って苦しめた破滅の巨人をいとも容易くねじ伏せ、誰にも手を出すことが叶わなかった巣さえも叩き潰してしまった。
そのような神ならぬ人が我が家を尋ねてくださっていたのだが、あの方は私たちの友人であり、良き夫で、良き父でしかなかった。
妻に頭が上がらず、娘に相好を崩す様は私たちと何ら変わらず、なんの距離も感じない人柄なのだ。
楽しい時間を過ごし、明日からまた神国の困りごとを聞いて回るのだろう。
ちょっと手を貸せばそのほとんどが解決してしまい、ちょっと本気になると世界が変わってしまうのだが、美味しい物と美しい妻たち。可愛い娘たちに囲まれてさえいれば幸せそうにしているあの人は、やはり私たちにとっては友人でしかないのかもしれない。
来週には私たちもクノエへと帰ることになっている。
ここはもう、順調に動き出しており、久しく離れていたクノエに帰ることが何より楽しみだ。
少しずつ引っ越しの準備を始めているのだが、荷物はすべてソウタさんが運んでくださるそうで、セキセンの商業ギルドにはお世話になっていない。
私たちは身一つでの馬車旅となるのだが、途中の宿はすべて手配されており、野宿の予定はないと聞いている。
こちらは陛下よりゴーランド公爵へのお礼と言う形で手配されたものだそうで、私たちへの褒賞の一部だという事だ。
道中のスケジュールについても、ソウタさんの計らいによって完璧に準備されており、私たち一家は本当に身一つで十分なようだ。
来週に入ると私たちの旅を引率してくださる護衛がやって来るという事で、ちょっとばかり恐れ入ってしまう。
わざわざそこまでと思わないでもなかったのだが、護衛のメンバーを聞いて断るのをやめた。
ソウタさんの手配なのだろうクノエ連邦の軍からナノハさんを始め、懐かしい人たちが来てくれるのだそうだ。
片道2か月も掛けてなんとまあと思うだろうが、迎えの出発は私たちの出発する前日だというのだ。
ソウタさんの次元断層で、ほんの数秒の旅なんだと。
私たちがそうして帰らせてもらえればと伺ったのだが、旅のいいところがそれでは何もないと、どこに何という食があるとか、この土産は買うべきだとか、ここの湯は素晴らしいとか熱弁されてしまうと、もう断ることができなかったのだ。
前日はソウタさんのトウトのお屋敷に泊まり、当日にここへと入られるそうなので、そこからはクノエに帰るメンバーだけの楽しい旅になるだろう。
なんとも呆れたお金の使い方ではあるが、そうしたことに真剣に取り組むあの公爵様のサービスに甘えるのもいいのかもしれない。
私たちが楽しそうにしていると、あの人もとても楽しそうにされるから。
エイゾの話にもひと段落が付いたことになります。
この後また、別のところで変化が現れますが、それがちょうど100話辺り。
結構大変で、筆が止まりがちなんですね。
書いては消して、まとまらない!嗚呼へこみます。




