【第95話】海蛇活用
読んでくださって、ありがとうございます。
GW折り返し点、5日目の投稿になります。
朝から風が強くて洗濯物を干せそうにありませんね。
サドサケ島はシンカタ領に属する島で850㎢余りの広さがあるものの、人の暮らすことができない島となっている。
300年ほどの前までは人口6000を数える金鉱が有名な島だったそうだ。
なぜ急にこの島が話に登って来たかと言うと、金を掘りつくして人口が減少するに伴い、魔獣の繁殖が抑制できなくなったことが切っ掛けで、残る200人程が島を離れて現在も無人島である訳だが、この島に海蛇、海獣の類も棲みついており、海の食物連鎖の頂点に君臨するリバイアサンも海軍によって確認されている。
陸に繁殖する魔獣を捕食するために数頭が棲みついているらしいが、人の暮らす島でないことから海軍としても避けて通るだけとなっている。
漁場としては良い場所なのだろうが、改めて人が移り住むような旨みもなく、あるのは知っているがどうしようと言う島でもなかったのだ。
で、俺が何をしようかという訳だが、このリバイアサンに用事がある。
俺のお願いを聞いて引っ越してもらいたいわけだ。
フィリピン=比国とマレーシア=馬国、ベトナム=越国に囲まれる南沙諸島の北端、西沙諸島に近い場所に島を一つ買い与えられた。
俺の島だ。
東西が約4km、南北が3kmほどの熱帯気候ど真ん中という島だ。
比国領に属する島だったのだが、租借地として神国が借りることになり、管理は俺がするという訳だ。
名目上は比国から借りたことになっているが、実は神国を通り抜けて俺自身が購入している。勿論無人島な上に周囲に人の住む島は無い。
いや、あることはあるがそこは西華が要塞化した西沙諸島の小島だ。
この小島にしたところで多分だが越国領のハズだったのだが、そこは西華らしく取った者勝ちという訳である。
目には目をというわけで、俺の島は俺が取った。
正統な経済活動として購入した訳だ。
自然豊かなこの島は周囲の砂浜は薄く、海からすぐに植生の豊かな森につながっているところがポイントだ。
リバイアサンの餌となる魔獣が立派な砂浜の奥にしか居ないと、食事が出来ない上に砂浜に上がると今度はリバイアサンが餌になってしまう。
島の中央には小高い丘しかないが、深層水が湧き出ている場所が数か所あって、陸生生物の命をつないでくれるだろう。
作戦としてはこうだ。
先ずは購入した島の陸生生物が繁殖しやすい環境整備。
湧水を島のあちらこちらへと導き、貯水池なども設けることで淡水魚を持ち込むことも可能となる。
次にサドサケ島から陸に暮らす皆様が引っ越す。
島の環境に慣れてもらってからリバイアサンにもここへ移り住んでもらう訳だ。
周辺の海路に与える影響はすさまじいものとなるだろう。
それが判っていて周辺の国はなぜこんな計画を許可したのか?
これには後日談ではなく、前日談があってハルシゲさんが多大なる貢献を果たすとともに、不名誉な功績を残した結果によるものであると最初に伝えておかなければならない。
陛下が以前に相談してくださった西華や北華の海洋進出と、越比諸国への影響について神国への海洋航路の安全を図ると共にアイアメリカの影響力が低下している越国の海軍力を補い、資材調達の道を開くために色々と吟味をした結果だったのだが、第三者の介入をコントロールするのが最善との結果を得た。
最短のシナリオとしてはレネゲイドを使って西華の海軍力を削ぎ落とすことが最善であるのだが、西華と神国の経済協力を慮ったうえで西華の軍事行動を封じ込めるためには神国の与り知らない勢力が西華をやり込める方がいいのだ。
ただし、闇雲な戦力を投入してもそれを制御できなければ周り中の友好国にも多大なる影響が及ぼされてしまう。
望むべくは西華の海洋戦力に対しては敵対関係にあり、諸国にとっては何の影響もない様な魔物か魔獣が海洋を跋扈してくれればありがたいのだ。
もちろんそんな都合のいい話は無かったはずなのだが、とあるハルシゲさんの出来事があってそれが可能になったのだった。
サドサケ島に棲み着いたという海洋の覇者、リバイアサンが西華の艦船群を襲ってくれれば西華が当たり前のように働いた不埒をどこの誰もが知らぬうちに正してくれると考えたことがこの作戦の発端だ。、
俺が言い出した訳ではないが、リバイアサンに相談して西華の船だけを襲ってもらえないか相談することにしたのだ。
こんなことを言い出す時点でフィアしか考え付かない作戦なのだが、俺は相談自身は兎も角として、リバイアサンが海洋を航行する船舶を無差別に襲うのかどうかを知りたかった。
フィアが物語を語るように作戦を説明してくれたのは微笑ましくも楽しいという感想しか持たなかったが、出来ることをしようと精一杯に考えているフィアの努力を無駄にはしたくなかったし、リバイアサンと折り合いがつくような手段があるとすれば本当に西華のみを狙う力強い戦力となるハズだから。
向かう先が魔獣の楽園という事もあってハルシゲさんを一人先行させ、みんなが後から船で渡るという訳にも行かず、ハルシゲさんに桶を持たせて船旅をしなければならなかった。
生態を調査するためにサドサケ島へ向かう俺たちは、正に万全の準備を整えていた。
ハルシゲさんに起床後に一切の食事をさせず、乗船時にどれだけ吐いてもいいようにデカい桶を持たせて渡しの船に乗った。
予想通りにハルシゲさんが轟沈し、少しでも気がまぎれるようにと舳先にハルシゲさんをくくり付けておいた。
俺たちは船室でくつろぎ、二時間ばかりの船旅の間にもゲームに興じたり、食事を楽しんだり、娘たちと転がりまわったりしていたのだが、サドサケ島につくまで、近海に近づくまでリバイアサンの洗礼を受けることは無かった。
ところが、俺たちを魔獣の楽園におろした渡し舟は、帰路に就くなりにもリバイアサンの襲撃を受けて沈んでしまったのだった。
目の前で起こった悲劇に乗務員の無事を確かめなければならなかったが、全員をレネゲイドで救い上げることができたのは不幸中の幸いだったと言える。
こうなると更なる迎えの船が必要になり、フィアと俺はレネゲイドを駆ってシンカタの中でもトサン寄りの渡し舟を手配してくれるウエコシという場所へ渡り、チャーター船を手配した。
契約をした中では明日には来てくれるという事だったのだが、島に戻った俺たちを迎えに来る船はその後、二日待っても来ることは無かった。
「お迎えの船はどうしてしまったのでしょうね。」
言いながらもフィアは大剣を振るい、オルトロスやケルベロスと戯れている。
いや、正確には駆逐している。
嫌と言うほどに湧いて出る魔獣がいて、もうフィアのレベリングの足しにもならないが、多くの魔獣がキャンプを襲おうとするのだ。
就寝時は俺には夜の仕事があるからレネゲイドに丸投げだが、フィアと如月はなかなかに忙しい。
如月が忙しい時点で同じだけ俺も忙しいのだが。
もう一度港へとレネゲイドを飛ばすと、約束通りに翌日には船を出したのだが、島を前にしてリバイアサンに襲われ、たどり着くことができなかったと言うのだ。
あまりに簡単に島に渡れたことで俺たちの中にも気の緩みがあったのかもしれない。
今回連れてきた妻たちはフィアと如月だけで、娘たちもしっかりしてきているし、ついてきてくれたメンバー全ても旅慣れていることから安心していたのかもしれなかった。
それから更に2隻の渡し舟がリバイアサンによって沈められ、これ以上の被害は看過できないと渡し舟がサドサケ島に近づくことを断られてしまったのだった。
こうした経緯をナガオカやシンカタの漁協や観光組合も情報として入手していたために、以降はどこに依頼しても引き受けてくれる者はいなかったのだ。
最悪の場合にはレネゲイドの両手の上に何人かずつを乗せてくればよかったので、追い詰められたという雰囲気ではなかったが、みんなが一緒に帰れるという旅程は望むことができそうになかったのだ。
最後に協力してくれたのはナガオカのジハクと言う港から出せるというオンボロの貨物船しかなかった。
オンボロ故に技術者が必要となり、やむを得ずにハルシゲさんを始めとしたエンジニアスタッフをレネゲイドの手に乗せてジハクへと戻り、みんなを迎えに行くことになった。
ハルシゲさんも随分頑張りはしたが、乗船後一時間を過ぎるまで機関の面倒を見続け、桶を持って船の舳先へと帰らぬ人になった。
尊い犠牲となったハルシゲさんであったが、そのお蔭であったのか船は無事にサドサケ島にたどり着くことができたのだった。
全員が不安に思うほどに朽ち果てた船ではあったが、娘たちは返って面白かったらしく、不安定に音が変わるエンジンに喜んだり、どこからか染み入ってくる海水に逃げ惑うのが面白いと大騒ぎしたりしたものだ。
出港してすぐにリバイアサンが視界に入り、最悪はレネゲイドでの討伐も考えたのだが、俺たちを押しのけるように舳先へと向かうハルシゲさんが桶を持って走り出すと、リバイアサンは船から離れて行ったのだった。
大いなる疑問を持った俺は吐きそうになっているハルシゲさんを抱えて船倉に戻ってみる。
たちどころにリバイアサンが船を襲うそぶりを見せるのだが、船倉から飛び出してきたハルシゲさんが桶を片手に舳先へ走るとリバイアサンはまた、興味を失ったとばかりに陸へ向かって反転していったのだ。
なんだ?ハルシゲさんなのか、ハルシゲさんはリバイアサンを退ける力があるのか!?とか魔力のないハルシゲさん相手に尊敬の目を向けたのだが、正解は桶だったらしい。
島の近くで漁業を営んでいる爺様連中に聞くと、間違いなくハルシゲさんが持っていた不本意な桶が魔獣避けになっているのだと言う。
漁村に暮らすような爺さんたちしか知らなかったために都合、4隻もの船がリバイアサンに沈められたが、漁村の小さな小舟はどれにも舳先に大小の桶が吊るされているのを見た。
「おれらにしたら迷信みたいなもんじゃったがな、そのおっさんが船酔いで桶を持っててリバイアサンを近づけなんだならやっぱし、本当のことだったんじゃなぁ。」
ハルシゲさんが「おっさん」呼ばわりされているのは棺桶に片足を突っ込んだ爺様たちが言う事ではないと思うのだが、どうせ訂正したところで聞く耳は持たないだろうし、言った側からハルシゲさんを「おっさん」と言うだろう。
ハルシゲさんの肩をポンポンと叩いて、首を横に振るとハルシゲさんも「判ってるから大丈夫。」と健気な返事をくれるのだった。
俺たちにとっては全くの偶然。
爺様たちにとっては迷信ともいえる経験則だったらしいが、これで目途がついた。
陸生の魔獣たちを強制的に引越しさせる日、スタッフたちも俺も大騒ぎとなった。
フィアがレネゲイドで島中を歩き回り、海岸線に湧き出してきた魔獣たちを片っ端から次元断層でつなげた俺の島へと導くのだが、脇に零れる魔獣を次元断層に追い込むために大変な苦労をさせられた。
トンネルの向こうに楽園が見えても、そこを潜る度胸のない奴がいて、押し寄せる魔獣の半分以上が脇に逃れるものだから、はなはだ効率が悪い。
もう2、3機レネゲイドがあれば良かったのにと思わざるを得ないほどに大変だったのだ。
そして背後にはお零れに預かろうというリバイアサン。
最初は俺たちのやってることに興味があったのだろうが、俺たちを襲うと反撃が桁違いなために早々に沖合に退避したのだが、魔獣が集まり始めてからは食欲が優先されたようでレネゲイドが離れる隙につまみ食いに来るのだ。
スタッフが狙われてはたまらないのでデストロイウォールを展開して海岸線にグレートウォール、「万里の長城」を築いてみたのだが、乗り越えてきやがる。
さすが蛇の様な姿を持つだけあって、魔獣を見つめ爛々とした視線を寄こしながらヌルヌルとデストロイウォールを乗り越えてきやがった。
お前たちの相手はこの後だというのに。
逆バンクにデストロイウォールを重ね掛けし、高さ20mの垂直な壁の上にもう、20mのデストロイウォールを海上にめがけてせり出すように設置した。
長さも俺たちを中心に片翼が1kmあるので生半可な魔力量ではないのだが、そこに次元断層も加えて、俺はちょっと辛い。
しかし、フィアが追い詰めてくれた魔獣を誘い込まなきゃいけないし、漏斗状に設置したデストロイウォールを2枚加えて同時に使う魔法としては、今世紀最大の出力を発揮しているのだがな。
「あなたって、どんな時も桁が違うのよね。」
睦月とユイを両手につながらせ、デストロイウォールの反対側から魔獣たちを眺めている如月が盛大な溜息をつきながら感想を漏らす。
ハルシゲさんやキヨシゲさん、コウレイさんなど男性スタッフは魔獣の追い込みのために松明を使って後追いをやってくれている。
レネゲイドが追いこんできた魔獣を更に追い込むために松明を両手に持ち、漏斗状の入り口めがけてレネゲイドの脇を大声を上げながら牛追いさながらの奮闘ぶりだ。
女性スタッフは水着でビーチチェア。
如月も艶のある紫のビキニを着ており、レネゲイドの中のフィアも実はピンクのビキニを着ている。
娘たちもワンピースのスク水スタイルでかっわいいのだが、お父さんは忙しい。
こんな作業で片付くんだったらシルファも連れて来てやれば良かった。
シロップもアニエスもビキニを着せたら似合うのに。そう思わずにはいられないほどにスタイルがいいしな。
クレイオもカーリオも可愛いに違いないし、連れてこなかったことを後悔してしまう。
それは結果論だろうから、次の機会に埋め合わせをしよう。
俺の目の保養にもなるしね。
夏の終わりにちょっとしたリゾート気分を味わっている女性たちだったわけだが、比国領の俺の島ならば年中リゾートも可能ではないかと仕事の間中考えていた。
デストロイウォールで海岸線を取り囲めば陸からも海からも影響はない。
波も心配なくなるし、子供たちにも安心だろうし。
妄想が止まらない俺はシロップの水着の色とアニエスの水着の色を吟味し続けており、それを見てまた如月が溜息をつく。
「ねぇ、あなた。そんなことばかり考えてて魔法の方は大丈夫なの?魔力が尽きたりとかしないわよね?」
「ん?うん。全く平気。毎秒で10000くらいしか使ってないから半日くらいなら保つよ。それよりあんまり日なたに居ちゃ危ないぞ。
日焼けしたら後で痛いんだからな。子供たちも寝られなくなっちゃうぞ。」
「そ、そうなの?気を付けるわ。ってか毎秒で10000使ってるのその魔法?」
「え?如月には毎秒50000くらい使ってるだろ?」
「そうだったわね。驚いた私が間違ってたわよ。じゃぁね。」
睦月とユイの手を引いて木陰に避難する如月の後姿を見送りながら、お尻に見惚れていた。
「あなた!」
視線がばれたらしく、振り向いて怒られてしまった。
毎晩見てるのにと思わないではない。
それから3時間ほど続いた牛追い祭りもどうにかほとんどの移動が終了したようだ。
海側の障壁だけを維持してスタッフも休憩に入っている。
女性陣が食事の準備をしてくれており、バーベキュースタイルで肉が焼かれていた。
フィアがまたマンモスの肉を手にもって齧り付いているのが不思議でならないのだが、ユイも小ぶりなマンモス肉を美味しそうに齧っている。
如月は網焼きステーキを小さくして睦月に食べさせており、ジューシーな味わいに俺を見ていい笑顔を見せる。
「あなた、魔力の消費はどう?」
いつも心配してくれてるようでありがたい。
「今は回復分と一緒ぐらいの消費量だから、全く心配ないよ。如月とフィアのこんな姿が見られるんだから、回復量の方が多いくらいだな。」
「ば、バカじゃないの?」
真っ赤になって向こうを向いてしまった。
ホントに如月は1000歳の嫁とは思えないな。
「ソウタさん、お疲れではないですか?」
半分ほど減っているマンモス肉を俺の口に突っ込みながら問われてもしゃべれないじゃないか。
でっかく一口を齧り取り、フィアを撫でながら満足そうにしてやると、ユイを抱き上げてユイの持つ小さなマンモス肉をお裾分けしようとする。
ユイのマンモス肉も小さく齧ってやると、ユイも嬉しそうにした。
「パパもおいしい?」
「ああ、ユイに貰ったお肉が一番おいしいな。」
「へへへへ。よかったね。」
天使の微笑みかと思った。
最近のユイは顎の線もはっきりしてきており、フィアに負けない美貌を見せる。
これはゲオルク皇太子もメロメロだろうな。
そうしていると足元にしがみつくのがいて、視線を下げると睦月もユイに負けまいと如月に切り分けてもらった美味しそうな肉をフォークに刺して持ってきてくれた。
「睦月も俺に分けてくれるのかい?」
「うん、パパもちゃんと食べてね。」
俺の娘たちが優しい。
可愛すぎて溶けてしまいそうだ。
ありがとうを言って、睦月の持ってきてくれたステーキも味わう。
「ああ、これも美味しいなぁ。睦月、分けてくれてありがとうな。」
「うん!ユイねぇもたべる?」
娘同士でもご馳走するようで二人が如月の元へと走っていった。
「ソウタさん、本当に疲れてはいませんか?」
フィアが心配してくれているが、全く問題ない。
ピンクのビキニが可愛いフィアを抱いてキスをしてやると、ちょっとだけ照れたような仕草をし、「良かったです。」と囁く。
「ああ、全く問題ないよ。フィアも大変だっただろう?」
何度も島内をレネゲイドで歩き回り、結構頑張っていたからな。
「大丈夫です。戦闘もなかったですし、私の魔力量も結構増えて来たみたいで気分も悪くなりませんでしたから。」
鑑定で見る限り28,000/50,000MPと言った処だ。
まだ半分ほどは魔力もあるし、これから魔力を使う用事もないので心配ないのは本当のようだ。
順調に魔力総量も増えており、フィアの成長も俺を嬉しくさせる。
今夜ちゃんと全回復しておこうじゃないか。
と思ったとたんに交感でフィアにバレて真っ赤になってしまった。
「嬉しいです。」
そう言うフィアがまた可愛くてしょうがない。
俺に寄り添うように立つフィアの髪をワシワシと混ぜてから如月の元へと二人で歩く。
娘たちはお腹もいっぱいになり、満足して二人でビーチチェアに乗って寛いでいる。
如月はクラッシュアイスをグラスに詰め、コーヒーをブラックで楽しんでいた。
「二人も飲む?」
「ああ、自分でやるからフィアも掛けてて。」
熱いコーヒーを淹れ、フィアの分に砂糖を多めに溶かす。クラッシュアイスをグラスに詰めてコーヒーを注いでからゆっくりとミルクを注ぐと、ゆっくりと混じり合っていく。
そのゆっくりとした変化をフィアに楽しませるために急いでグラスを渡すと、如月が珍しそうな視線をグラスに向けている。
如月のグラスを俺が貰い、同じものを作って如月に渡してやると如月はフィアに向かってグラスを合わせるように差し出した。
「私たちの優しい旦那様に。」
「はい。」
二人でグラスを合わせるとチンと涼しそうな音がしたんだ。
娘たちはそうした俺たちの仕草も楽しいのかニヤニヤとしながら眺めている。
「どうした?ユイと睦月はまだ飲んじゃダメだぞ。」
「パパ、らぶらぶ?」
「ママたちもらぶらぶ?」
「そうだよ、いつもらぶらぶで困っちゃうくらいだ。四人のママといつもラブラブだよ。」
「やっぱり!」
そう言って娘たちは満足そうにしている。
フィアと如月もクスクスと笑っていて、我が家に心配事が何にもない事がわかる。
食後の休憩も済み、ここからは俺の仕事だ。
未だに俺たちの周囲を興味深そうに回遊しているあいつらを捕まえないといけない。
レネゲイドは潮風に大層落ち込んでいるので、次元断層へと帰って行ってしまったし、天敵が減ったとでも思ったのだろうか。
レネゲイドは行動中、ずっと俺の障壁でコーティングされていたので実は一切潮風に当たっていないのだが、気が付いていなかったらしい。
自分でメンテナンスモードに移行すれば気がつくだろうが、仲間が困るような事はなるべくしたくは無いしな。
「あの、マスター?」
「なんだよ?今忙しいんだけど、後じゃだめなのかよ!?」
リバイアサンが俺に絡みつこうと大暴れし、十重二十重の大捕物になっているというのに、遠慮がちなレネゲイドのコンタクトがうざい。
後ろから噛みついてくるリバイアサンに左腕を噛ませ、正面の奴を蹴りつける。
左腕を前に持ってきて上あごを右手で掴み、強引に口を開かせると燃えるような双眸で睨みつけてくる。
「いえ、お忙しそうでしたら後でもよろしいのですが、私の行動中にマスターに守っていただいていたようで、機内塩分濃度が危険値を遥かに下回っており、正常値でした。
異常のない状態を報告するとともに、深い感謝の気持ちをお伝えしようかと思ったのです。
また後で聞いていただければ幸いです。ありがとうございます。」
もう、全部聞いたよ。
左手から引っぺがしたリバイアサンを次元断層に放り込んでやる。出口は南海の俺の楽園だ。
右手で正面の奴をもう一度殴りつけ、海面にたたきつけてから間髪入れずに次元断層に放り込む。
もう一匹正面から時計回りに回り込もうとするリバイアサンに掴みかかり、首元を抑える。尻尾から攻撃を頂くが、押さえつけた首から次元断層にねじ込むようにしてやった。
少しばかり引越しの手段としては強引だったろうが、自分たちの餌と共に引っ越させてやったんだからありがたく思ってもらいたいものだ。
「レネゲイド、今度からも今回みたく海岸近くではコーティングしてやるから、戦闘に協力してくれよ?」
「このようにしていただけるなら水中でも大気圏外でも大丈夫です。どこへなりと連れて行ってください。」
レネゲイドも大満足だったらしい。
ここからは後日談となるのだが、俺の島が魔獣で溢れかえり、サドサケ島よりもリバイアサンにとって食生活が改善された。
また、海に暮らす魚が豊富な上にデカい獲物が多いことから、肥え太っているらしい。
リバイアサンが食べ過ぎて太っているとか、冗談の様だった。
周辺国とは調整が済んでおり、近海に現れるリバイアサンにも緊張は無い。
陸に近い場所での網を入れる笹船にも桶がぶら下がっており、漁師も被害は全くないと言う。
まぁ、人を襲うまでもなく食料が豊かで、日本海のように冬季に水温が下がり凍えることもないわけだからか、丸々と太ろうと言うモノだ。
結果、どうなったかと言うと越国の領土を不法占拠した島から西華の兵が居なくなった。
全部食べられてしまったのだ。
俺のようにリバイアサンを防ぐ術を持たない場合はほとんどの場合は餌になるしかない。
最初の頃は果敢に挑み、兵力を持って撃退を試みていたのだが、食料が尽き、補給が来ないとなれば餓死するか餌になるしかなかったもの。
数多の戦艦に護衛された補給艦が来ること数度、リバイアサンの縄張りとも言うべき海域に入ると同時に襲われていた。
戦艦クラスで全長が200m以上ある訳だが、リバイアサンも体長は200m近くある。
それが縦に伸びあがって襲い来ると、駆逐艦など体当たり一発で二つに折れている。巡洋艦も噛みつかれ、深海に引きずり込まれればただの棺桶だ。
戦艦の胴体中央に噛みつかれて大穴が空けばいかに戦闘に特化した船舶と言えども沈むよりない。
退艦する兵たちはリバイアサンがシラス丼を食べているかのように大口を開け、奴らに踊り食いされていった。
それでも西華の兵だと思うと同情する気にもならなかったが。
都合で5回ほどもそうした艦隊がやっては来たが、全てがリバイアサンのご馳走となっただけだったのだ。
島からの逃亡を図る兵たちも連絡艇や救命ボートで沖に出て、「ごちそうさま」されていたわけで、今となっては無人の島になってしまっている。
その間にも比国や越国が漁に出ており、漁船を追い越した救命ボートを更に追い越したリバイアサンが尾でボートを返して投げ出された兵たちを平らげていた。
その追い越された漁船に乗っていた俺たちは皮を剥いて中の実を食べるような仕草に感動すら覚えたものだ。
同乗させてもらった漁船で、漁を手伝うことで白身の魚を分けてもらっていたのだが、唐揚げ弁当の竹輪を作る材料の新鮮なのを狙っていたからだった。
今度は妻たち全員と来ているので、シルファも来ている。
シルファは魚がたくさん入った網に夢中になっており、瞳孔が全開になっている。
どの魚を分けてもらおうかとシルファと相談しながら漁港に戻る前に俺の島に寄って、降ろしてもらった。
誠に自然な形で西華の脅威が取り除かれ、周辺国のみんなからの受けもいい。
俺たち家族はどこへ行っても大歓迎で、安く食材を分けてもらえたりしてみんなご機嫌なのだった。
どこから来たのか判らないリバイアサンが相手では仕方がないものな。
西華もとんだ災難だったねと、周辺国も神国さえも適当な見舞いを言っただけだった。
西華にすれば周辺国に被害もないのに西華に集中する被害を訝しみもしたろうが、リバイアサンをテイムするなんて話は聞いたことが無いうえに訳が分からないと言った処だろう。
南国の無人島西側に障壁でセーフティーゾーンを作り、子供たちと海水浴を楽しみ、妻たちと釣りやビーチバレー、外での料理などをさんざん楽しんだ。
夕方になると目前の大海原に日が沈む絶景に全員で息を飲み、日が暮れるまで地球の美しさを堪能できたのも良かった。
夜の帳が降り、大きな松明を灯すと小学生の頃にクラスで行った林間学校を思い出すようなキャンプファイヤーになる。
昼間にたっぷり遊んだせいでシルファさえもハンモックでスヤスヤと寝息を立てている。
娘たちの休む姿を見回りながらハンモックを5個確かめ、満足してから別の満足をすることにしなきゃ。
白のビキニを着て、大きくなった胸を恥ずかしそうに隠していたアニエスを捕まえて、砂浜で愛し合う。まだ熱い砂の上に寝転がるアニエスには満天の星空が見えており、ロマンチックな時間を満喫したようだ。
淡いオレンジ色のビキニスタイルだったシロップも砂浜の上でする営みは初めての経験で、気持ちが良かったらしい。いつもよりも随分と嬌声が激しかった。二回目も楽しみだな。
紫のツヤツヤな水着を脱いだ如月は、日焼けが少しひりひりするようで寝転がるのをためらうものだから、フィアのようにうつ伏せにしたりして楽しんでしまった。
深く満足感を味わったらしく、今度から癖になるかもしれないと聞かせてくれた。
いつも待っていてくれて、とても嬉しそうにするフィアを抱き寄せる。
明るい朱色の水着だったのだが、俺にもみくちゃにされ砂まみれとなった。それも楽しく抱き合ったまま転がるとそのまま海へと入る。
二人ともそのままで一つになり、それもまた楽しかったものだ。
羨ましいとシロップもやって来て、そこから三人で水の中で楽しんだのだが、海から上がりシャワーを浴びるとまたフィアとシロップが絡まって来て、今夜は何度も楽しむことになってしまった。
この二人が獣すぎるよ。
自分で書いててなんですが、この話で睦月とユイを木陰に連れて行く如月のお尻がどんなだったか気になってしょうがありません。
アニエスが白で、シロップがオレンジの水着、如月が紫でフィアが赤って事にしましたが、似合ってますよね?




