【第90話】唐揚げ弁当無双!
いつもお読みくださって、ありがとうございます。
ブクマしていただけた方もまた増えまして、これからもよろしくお願いしたいと思います。
49,000PVも随分と過ぎましてビックリです。
みなさんのおかげです。ありがとうございます。
アマクサには一泊しかしなかったが、南側からセンダイを回って復興と更なる繁栄に向けたエネルギーを感じられるクノエの地を見て回った。
南半分にはフィアの像もそう多くはなく、直接の被害を免れただけに「リリースバイフィア」を祝う風習はあると聞いたが、フィアを見ても大騒ぎとなることは無かった。
握手を求められたりはしたし、食事の時に大盛りにしてもらったりと言う特典はたくさんの場所で享受でき、俺たちとしてもそんなことで十分嬉しかったものだ。
しかし、北に戻るにつれてフィアに対する尊敬と感謝の念は大きくなり、どこに行っても大騒ぎになった。
スマホもデジカメもないこの世界では自分の目で見て、記憶にとどめるしかないからこそ、一目でも救国の女神を見たいという人たちで沿道が埋め尽くされ、凱旋パレードになってしまう。
恥ずかしくてたまらないというフィアを宥め、御者席の俺の隣に座らせる。
あっちを向いたり、こっちを見たりしながらフィアが手を振ると歓声が上がる。
「ソウタさん、やっぱり恥ずかしいですよぅ。」
「いいじゃないか、俺たちのやったことっていうのはあの人たちの笑顔を守ったことなんだろう?みんなで成し遂げたって事はあの人達も知ってるんだよ。でも、俺たちに感謝するよりはフィアに感謝する方が盛り上がるにきまってる。
俺もその方がずっと嬉しいし、如月たちを見てみろよ、とっても嬉しそうだよ。」
「でも・・・ソウタさんって本当に私のことばっかり。ありがとうございます。」
「フィア、それはいつまでも変わらない俺の気持ちだ。フィアとシロップとアニエスと如月が満足なら、幸せなら、それ以外に欲しい物なんてない。ユイが睦月が、カーリオがクレイオが母親と一緒に居られて楽しそうなら十分すぎるほどに俺は幸せになれている。」
「ソウタさん、愛してます。」
そう言ってフィアは俺の頬にキスしてくれた。
ただ、公衆の面前なんだがな。
一層、大きな歓声とどよめきが起こり、フィアも人前だったことを思い出したらしい。
真っ赤になって照れているが、それはそれは可愛いとしか言いようがない。
その日の宿に選んだのは小ざっぱりとした二階建ての宿だったが、もうこんな建物が建つほどに復興が進んでいるのかと思えばそれも良かったと思えるし、宿の人達はフィアが来てくれたことに大層喜んでいる。
「公爵様、よくクノエにいらっしゃいましたね。私どものような宿でよろしかったので?」
「ええ、随分と良い宿のようですがお風呂はどうですか?うちの連中は風呂が好きでして広いと嬉しいのですが。」
「それでしたら!うちの宿はアソウの温泉が出ますから寛いでいただけます。」
「ソウタ、じゃぁここで決まりだな。」
シゲさんたちはもう、泊まる気満々なようで、荷物を降ろし始めている。
女性陣も風呂がいいと聞いてか、一緒になって荷物を降ろしているようだし、うちの家族も荷物を降ろすとしよう。
「馬車をお願いしてもいいですか?」
馬番が駆け寄ってきてくれ、厩舎へと馬たちを連れて行ってくれる。
フィアたちの元へと戻ると、みんなも荷物をまとめていたらしく、俺が荷物を引き受けると娘たちを抱いて馬車から降りてきてくれた。
大部屋を二つと個室を二つ借り、男衆と女性陣、シゲさん家と俺たちと言う部屋割りだ。
シゲさんたちも随分と仲良くしてるからそのうちにシノブさんにも子供が出来るだろうし、そうなるようにこちらとしても配慮しないといけない。
シゲさんはいつも遠慮するんだが、こうして特別扱いしないとシノブさんが気を抜く暇もないだろうに。うちの男性陣はそうした配慮がどうにも足りない気がするが、その結果がいつまでたっても誰にも嫁が付かない原因だろうか。
一度といわず、何度も反省会でもしてくれと言いたい。
部屋に入ると畳敷きで俺が一番寛げそうな雰囲気があって、真っ先に部屋に飛び込んで横になってしまった。
い草の香りもいいし、つい転がってしまう。それを見た娘たちも俺の周りで同じように転がって俺にぶつかり、娘同士でぶつかって喜んでいる。
細かいのとデカいのがごろごろする様を妻たちが呆れてみているんだが、気持ちは判るらしい。
フィアとシロップが俺のすぐそばに腰を下ろして娘たちを眺めており、アニエスと如月は奥のテーブルまでいって、お茶を用意してくれている。
すっかり我が家は落ち着いた雰囲気になってきたし、妻たちも年齢よりは大人っぽい振舞いを見せるようになってきたように思う。
そうはいってもみんなまだハタチ前なんだから、元気も有り余ってはいるが。
「よ~し、みんな。クレイオのママと睦月のママがお茶を淹れてくれたぞ。ユイのママとカーリオのママを連れてもらいに行こうか。」
「は~い!」
四人の愛娘の合唱を聞き、ユイに引っ張り起こしてもらった。
ちゃんと冷ましてあるお茶は娘たち用。
淹れたばかりのように湯気の立つのは俺たち用らしい。気が利くとお礼を言っていただく。
それからは夕食前に全員が風呂へと集まり、その後に大食堂に集まってにぎやかに食事を楽しんだ。
この辺りも牛肉が旨いとかで随分とたくさん食べさせてもらった。
全く分からないのがフィアの肉だけ必ずマンモスの肉になってる。
そのまま食堂で明日以降の工程を確認してから解散となり、部屋に戻るとすっかり布団が敷いてあり、いつものような時間を過ごすことができた。
いつも先に寝ようとする如月を真っ先に可愛がってから寝かせ、アニエスを壊さないようにじっくりと、たっぷりと可愛がるととろける様ないい笑顔で休んでしまう。
それよりも少し乱暴に抱きしめられるのが大好きなシロップはとにかくしがみついてくるのでそれなりにテクニックが必要だが、フィアの後にもう一度可愛がらないと満足しないようだ。
それでとばかりにフィアを腕の中に納めると満面の笑みを見せて抱き付いてくる。
俺が以前に脱がす楽しみが無いと残念がってからは、ちゃんと夜着を脱がずにいてくれるようになり、夜着の上から楽しんだり、裾から差し入れた手でさんざん楽しんだりもできるようになり、下着姿にしてからも楽しんで、最高の時間をくれる。
一度イってるからか、呆けたような表情でシロップがまたおねだりをしてくる。
二度目はしがみついてくることは無いので、様々な楽しみ方もさせてくれるしで、やはり最後はとろけて休んでしまうのがシロップの愛され方だ。
その後は俺が眠くなるまでフィアと何度も楽しむのだが、フィアは必ず一度目の後に下着だけは着け直すようだ。
それは俺のためにやっていることらしく、俺がその方が嬉しそうにしているという。
実際、それは楽しいので是非にも毎回、着け直しておいてほしいモノだ。
翌朝に宿を出てからフェリーの乗船口にたどり着くまでほとんど時間はかからなかった。
どんよりとした表情を見せるハルシゲさんを先にレネゲイドで対岸に運んだお蔭でハルシゲさんとしては待ち時間が大変なことになるが、船酔いもせずに済んでいるのだからと今までになく感謝された。
最初からこうしてあげればよかったと思うよ。
で、対岸で待つ間に何をしていたかといえば、フグやサバの一夜干しや酒のつまみなどを仕入れていたようだ。
サンコウではまたクレハさんのお社に世話になったのだが、それ以降の野宿の際によく提供されていたから自分一人が特別扱いだったことを気にしていたのだろうか。
トウコン、チョウシュ、ヘイコ、セイトといつか通った道を戻るように一か月ほどの期間で踏破した。
急いでもいなかったので、寄り道も多かったし、グルメも満喫していたからではあるがトウトへの土産もたくさんできたし、楽しい旅となっている。
フセイからセキセンへと来る頃にはダイタクヤがどのように変わっているだろうかと言う話題がメインになりつつ、ギーフやアイチへ向かう旅の土産には何を準備するのがいいかなど実利的な話題も多くなっていた。
「・・・・・・」
街道をダイタクヤまで走ると、目前に広がったのは立派な街だった。
街道の両側にはいろいろな店舗や宿泊施設に材木問屋まであった。また、大きな病院施設まで開設されており、病気やけがで入院することまで出来るようだ。
「すごいな。こんな短期間によくここまで。」
街の景色を見渡しながら、呆れてしまっていた。
フィアも山を切り拓いた以降は来ていなかったし、ビックリしているようだ。
こうも景色が変わると、自分の建築を依頼した館がどこだかわからない。
街道(国道41号線)沿いよりは東側だったような・・・?
日本の道路標識のようなモノがあれば楽なんだがと・・・あるよ。「ヤマノベ公爵邸」と書いた看板がでっかく左向きの矢印と共に街道沿いに掲げられている。
分かり易すぎる看板で街道を左折し、緩い登り勾配を少しだけあがると、広大な敷地にバカでかい一部三階建て、ほぼ総二階というトウトの屋敷の数倍の規模の公爵邸に呆れてしまった。
俺の興味がその大邸宅の隣。子爵邸に移ったのは、自分でNGを出したがゆえにその後の仕上がりが気になったからだが、こちらも俺なりには満足のいく仕上がりとなっているようだ。
妻たちや仲間たちの興味は完全に公爵邸に釘付けになっているが、実際には1000人にも及ぶ家令のみんなが暮らす場所だろうから、そう考えればバカげた大きさでもないだろうと思うよ。
そこに俺たちの部屋も加えれば、これぐらいにはなるだろうしね。
10台の大型馬車が平気で並ぶような車宿りに何食わぬ顔で三台の馬車が滑り込んでくると、ヘッセン子爵にメイドが50人ほども駆けるようにして出てきた。
「ご領主、お帰りなさいませ。」「おかえりなさいませ、ご主人様。」
50人のメイドさんに挨拶されると、さすがに圧巻だ。
「ヘッセン子爵様、随分と頑張っていらっしゃる様子ですね。この街並みは驚くばかりです。また、このお屋敷、ビックリしましたよ。」
「そう言っていただけると皆も喜びます。さぁ、中でおくつろぎください。」
「ああ、ありがとう。家族も紹介したいし、突然に来てしまって迷惑じゃなかったかな。」
「ご領主、ここはご領主のお屋敷でございます。いつお出かけになられましても、いつお帰りになられましても全く問題ございません。」
そう言ってもらえるとありがたいんだが、なんか堅苦しいんだよな。
玄関ホールに入ると天井から降り注ぐ陽の光がホールを明るい光で満たしている。
植生もホール内を彩っており、季節の変化さえ楽しめそうな木々や草花が植えられている。
そこを通り、応接間へと入るとまたバカでかい。
よく見ると手作りだとわかるシャンデリアやサイドボード、応接のテーブルにソファーも職人芸的ながらも手作りだ。
「これらは誰が作ったものですか?すごい技術ですね。」
「はい、工兵部隊の中には手先の器用なものも多いですからね、今では木工の工房を開く者やガラス細工に長けた者たちも腕を上げましたので、館の中のほとんどの調度品は自前の物でございます。」
凄すぎる。
木工の里とか、ガラス細工がお土産になってそうだよ。
メイドさんがお茶の用意をしてくれ、自己紹介となった。
ヘッセン子爵と50人のメイドさんが応接間に並んだ。彼女たちは役割毎のリーダー的な立場にあるのだと言う。
「ちゃんとした挨拶がまだでしたね。私がソウタ=ヤマノベです。若輩ではありますが、神国公爵として断罪や監査などの任に着いております。
皆様方がアイチでお勤めしていらした際には大変な目に遭わせてしまい、申し訳なかったと思います。
しかしながら、こうしてここに居てくださる限り、生活に困るような事は決してないように努力させていただきますので、皆さんも新しい暮らしに不便があれば色々と聞かせてくださるとありがたいです。
トウトの屋敷でも私はメイドに叱られてばかりでしてね、堅苦しいのもダメなんです。ランプの交換をさせられたり、椅子を運ばされたりとみんなと一緒に苦労してきました。
皆さんとも同じように汗を流せればと思います。
親王陛下が羨むような我が家にしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。」
俺が頭を下げると、周りが騒めいているのが判る。
どうしていいか判らないと言った処だろう。そこは時間をかけて慣れてもらうしかないな。
「妻たちを紹介しましょう。この子がサキュバスのフィアです。一番最初に妻になってくれたんですが、抱いているのは娘のユイです。
クノエではちょっとした有名人です。私が陛下に知っていただくきっかけになりましたアマクサ領軍での活躍はフィアが居てくれたからこそできたことでして、街のあちこちにフィアのブロンズ像が建ってるんですよ。」
「ソウタさん!やめてください。あれは恥ずかしいんですから。皆さんフィアと言います。私はサキュバスで、15歳になった時にソウタさんに出会うことができました。それからずっと大事にしてもらえ、とっても幸せです。
ソウタさんはご自分の家族を殊の外大事になさいますので、皆さんも新しい家族としてよろしくお願いします。」
一層にざわざわと騒がしくなる。
フィアが翼を開いて見せると、どよめきが起こり、再び翼が仕舞われるとため息があちこちから聞こえてきた。
「そしてもう一人、シロップです。この子はトウトの屋敷に勤めるメイドでしたが、誰よりも頑張り屋さんで強い心とお日様のような笑顔が魅力で妻になってもらいました。
抱いているのは娘のカーリオです。」
「初めまして、シロップです。ソウタさんがお屋敷にいらっしゃったときにはあまりに貴族らしくなくって屋敷中が大混乱になりましたが、私たちメイドの全員を家族と言われました。仕えようとするととても嫌がるんで終いにはメイドみんながメイド同士の会話のようにソウタさんと話すようになりました。
戦いの場においてもとても強くて、どんなことがあってもみなさんを守ってくれます。ですから、みなさんもソウタさんのことをよろしくお願いします。」
メイドさんたちが何を言ってるんだ?って顔をしてる。
「もう一人、アニエスです。この子もシロップと同じメイドでしたが、旅に出る馬車に潜り込んだりする度胸もあります。メイドとしての技量はシロップと二人、トウトの屋敷でもずば抜けていましたし、信頼のおける大事な妻となりました。
抱いている娘はクレイオと言います。」
「初めまして、アニエスと言います。ソウタさんにメイドは兵士や調理師、庭番のようなそれぞれのプロの方々と同じで奉仕するだけじゃないって言われ、快適を提供する仕事のプロだと言われてすごく嬉しかったことを今でも覚えています。
みなさんもご自分の意見や考えはソウタさんに伝えてください。当たり前のことのように聞いてくださいます。一緒に考えて行動するのが一番いいみたいです。よろしくお願いいたします。」
メイドのリーダーたちだという人たちは大分混乱してきているようだ。
「次の妻を紹介します。この子は如月と言います。アニエスの実家は刀鍛冶の一門を束ねるお屋敷なのですが、そこで1000年前に作られた魔剣です。俄かに信じろと言われても難しいでしょうが、戦いを経験する中で成長した如月がこのような姿をしているのです。
子爵様の剣を切り飛ばしたのもこの子です。
抱いているのは娘で同じく魔剣の睦月と言います。」
「初めまして、如月ですわ。元々は神棚に飾られるだけで1000年も過ごした剣だったのだけれど、ソウタさんが使ってくれ、エンシェントドラゴンを私で切り伏せるに至っては聖霊族である私もこのように人の姿になることができたの。
フィアちゃんのようなサキュバスも、私のような聖霊でさえも妻にしてしまうような人だから、貴賤も種族の差もソウタさんにとっては目に見えないほどの小さな問題でしかないわ。こんな考えの貴族もいるんだと思ってくだされば私たちも嬉しいです。
フィアちゃん、睦月をお願い。」
「はい、お任せください。」
「あなた、ちゃんと受け取ってよね。」
「任せろ。来い!如月!!」
「ええ!」
紫の閃光が走り、幼い容姿の如月が一瞬で姿を消した。
光が収まると同時に俺の手に一振りの日本刀が現れ、怪しく濡れ光る刀身に誰もが惹き寄せられていた。
俺の中からものすごい勢いで魔力が吸い出されると同時に薄く刀身が光りはじめ、グングンとその輝度を増す。刃金の側に紫の強大な威圧感を纏った光が輝き、棟金の側に赤黒い光が滲み出てきた。それもグングンと輝度を増し、二色が鮮やかに光り輝き唸りを上げる魔剣となった。
如月を振るい、型を披露するように演舞すると空気が切られ、唸りを上げながら紫の光が舞い踊る。一通り披露し正面に構えると魔剣が喋りはじめる。
〔どうかしら?私をここまで光らせる魔力を持つ者はこの1000年、一人もいなかったわ。〕
俺が剣を横にすると再び剣が紫に閃光を放ち、小悪魔のような姿を現した。
信じられないモノを見たという顔をしたメイドさんたちが口を開こうとしない。
「あの時の剣ですな。私の剣が音もなく切り飛ばされましたが、よもやこのような美しいご婦人であったとは。お蔭で今の私があります。如月様、ありがとうございます。」
「ちょ、よしてよ。どうせほっといてもうちの主人が勝手にやることなんだから、子爵が気にする必要なんてないわよ。」
照れてる、照れてる。
ニヤニヤとしていたら、如月に足を踏んづけられた。
「いてぇ?」
妻たちが笑い出し、娘たちも「パパカッコわる~」とはやし立てる。
それを見てようやくメイドさんたちも表情を緩めたようで、ヒールの痛いのを我慢した甲斐があった。
それからシゲさんを始め、スタッフの仲間たちを紹介し、仲間の中に一人だけメイドの姿をしたシノブさんも紹介して揶揄ったところ、シノブさんに叱られた。
「お館様!冗談が過ぎますとまたジャガイモを買いに行かせますよ!?」
それを聞いた屋敷のメイドさんたちに緊張が走る。
やっちまった!とでも思ったのだろうが、今まででかなり優しい方の怒られ方だよ。
「おお?30個?もっと買って来たらいいかな?」
妻や仲間たちが爆笑し、シゲさんが「シノブさん、100個ほど持たせとけ。」なんて言うものだからもう、どうしたら良いのか判らなくなっているようだ。
頭を掻きながら、困っていると「本当にトウトの方ではこうなのでしょうか?」と一人のメイドさんが手を挙げて発言した。
シノブさんがそれを肯定し、「屋敷の中で一番お使いに行く回数が多いのがお館様ですよ。」とバラシてしまう。
「それでも他の貴族様からは一目置かれています。そして陛下からは絶大なる信頼を得ておられ、奥様方はお妃様の無二のご友人です。
ただ気安く話せるだけでなく、困っていれば必ず助けてくれます。しかし、強大な魔力と聖銀の巨人を従えられ、外国からの侵略も魔獣や神をも跳ね除ける力も持っておられます。
その様な苛烈な面もお持ちですが、それは正しいことをする人が不幸にならないようになさっているだけなんです。
ですので安心してすべてをお館様にお任せください。
へりくだってお仕えしてもぜんぜん喜ばれませんが、働く人をちゃんと見ていますのでみなさんも頑張ってください。」
シノブさんが長台詞を喋り切ると、メイドの皆さんにはかなり衝撃的だったようで、俺にどう接していいのか判らなくなったのだろう。
そのうち慣れてくれるだろうしね。
それから子爵様に屋敷の色々を聞き、食堂や自分たちの部屋を見て回った。
「すごいわね。私たちの個室があるわよ。それとこの大きなベットを見て。」
「シロップちゃん、アニエスちゃん、この広さのベットなら後10人くらい子供が増えても一緒に寝られますね。」
「はい、この広さならもっと激しく求めていただいても大丈夫でしょう。」
あなたたちは一体何を考えているんでしょうか?そんなに激しかったことがあるでしょうか?・・・あるな。
じゃぁ、広い方がいいか。
俺の個室が無いのはなんかの仕様なのだろうか。
日も暮れて夕食の時間になり、若いメイドさんが俺たちの部屋に呼びに来てくれた。
「お館様、ご夕食の準備が整いました。食堂までご案内いたします。」
うっかり他のメイドさんたちの食事の準備もできたのかと聞きそうになったのだが、如月に止められた。
アニエスが首を横に振って言うなという事だろう。
「わざわざ、ありがとう。じゃぁ、みんな行くよ?」
廊下を先導してもらい、食堂へと歩きながらアニエスが囁くように話しかけてくる。
「こちらは多くのメイドさんたちが居らっしゃいます。一度に全員が食べられるような構造ではありませんから、いつものようにしては逆に迷惑が掛かりますよ。」
「そうよ、あなたと一緒になった人とそうでない人が居るのは良くないわ。建築当初に要件を言わなかったのでしょう?」
むむ?それを言われると仕方がない。
食堂は一度に食事が出来るのは100人程までだと思う。10日掛ければいいという訳でもないし、1000人規模の食堂を作るのもいかがなものか。
何とかしたいと思う気もするが、一過性の物では意味がない。
俺はいつもここに居るわけでもないし、ムリを通すのは自分で許せないしな。
そこで考え付いたのが厨房に立つことだった。
翌日の昼間から、厨房に入ると調理師たちがビックリしている。
「俺に協力してくれ。」
そう言い、何のためにそれをするのかを聞かせると俺が公爵だという考えが頭から抜けたようで、楽しそうに付き合ってくれると言う。
ここの厨房には5人の料理人が居るのだが、彼らもアイチから来たメンバーだ。
しかし、すでにトサンに馴染、市場にも顔が利くと言うので大量の鶏肉と白身の魚の調達をお願いした。
すぐにもと、3人の調理師たちが馬車を出してくれて、俺は残ってくれた二人と次元断層から取り出したスの国で入手した柑橘類をマーマレードにする作業を行っていた。
珍しい調理を横で見学する二人にどのような料理か伝え、他に必要なものやすぐ近くで入手できるものなどを手分けして揃えていった。
妻たちや仲間たちは街の様子を見て回るのに丸一日を費やし、疲れた顔で帰ってきた。
「広いですねぇ。ソウタさん、山側には広大な田畑がありました。フィアちゃんに上から確かめてもらったのですが、ものすごい広さでした。これだけの土地を使うにはここに暮らす人が随分と少ないように思いました。」
アニエスがフィアと確かめたと言う土地の広さは驚くほどだったのだろう。
「やっぱりあなたのやることは桁が違うわ。向こう100年くらい人口が増えても大丈夫そうだったわよ。」
そうじゃないんだ。
ここは冬季の降雪量が多く、雪に閉ざされると思えば活動できる期間は年間の四分の三になる。
残りの3か月はひたすら雪に閉ざされ、我慢することになるんだ。
保存食や穀物類、雪の下で保存できる野菜類などの生産を奨励し、冬の主食として蕎麦などの育成も入念に仕込んでいた。
お蔭で米や麦などの穀物の量も潤沢にあるし、蕎麦も順調に育ったようで雪の降る前くらいには新蕎麦の収穫が出来るだろう。
厳冬期に現金収入が全くないのも心細いので、雪を利用したビジネスも興させた。
レネゲイドにもうひと仕事頼み、街に向かっての見晴らしも考慮しながら山肌を削り、傾斜を徐々につける作業を行った。
街に非常に近いところは穏やかな傾斜で、高いところに上がれば急峻な山肌を利用したコースの設定をした。
スキー場だ。
初心者や子供たちは傾斜の穏やかな場所で練習したりソリで遊んだりできる。
中級者はそのすぐ上で。上級者は山頂に近いところから一番下まで滑り降りることができる。
そんなコースを準備し、蒸気機関を利用したスキーリフトも建築した。
それぞれのコースの一番下には飲食も可能な休憩所を用意し、上級者が一番下まで来なくても食事や休憩が取れたり、繰り返し上級コースに挑んだりできる。そうした工夫をしたのだ。
街道沿いまでの無料馬車も用意したし、温泉が楽しめる宿泊施設も冬季限定で開業できる施設として準備した。
骨折や怪我に対応するための早馬車も準備して、麓の例の病院まで一目散に運べるようにもしてみたのだ。
どんなふうに営業するか、どんなふうに客が楽しんだらいいのかを雪もないが、子爵様に一から説明しておいた。冬の営業がどうなるかも楽しみである。
あとで思いついてダイタクヤに取って返し、レンタルできるスキーやウェアを準備することも伝えた。職人が豊富なことから早めに取り掛かれば今からでも十分に間に合う。
で、日の暮れる前から俺が何をやっているかと言うと、白身の魚を捌き、すり鉢で練りに練っていた。
竹輪を1000本以上作っていたのだ。
できた物を揚げる準備もしたし、ジャガイモを蒸かし、潰してコロッケを1000個以上作った。
鶏肉も捌き、タレに漬け込み、味を染み込ませる。
それから1000人を満足させるご飯を炊き、夕食時の戦場を迎えた。
唐揚げを揚げ、パスタをゆで、コロッケを上げて竹輪も天婦羅にする。アツアツのご飯とおかずをワンプレートにまとめ、量は少し多めに。
妻たちを始め、仲間たちは久しぶりの唐揚げ弁当をたいそう喜んでくれた。
屋敷の従業員はだれもが見たことのない料理に不思議そうにしていたが、食堂に出てきた調理師たちが俺の作った弁当を食べ始めると、メイドたちも箸をつけ始めたようだ。
「っ!?おいしい!」
メイドさんの誰かが大きな声を出した。
それからと言うモノ、無心に皆が箸を進めてくれ、やはりこの量で満足するらしい。
食べたことのない料理に驚きと満足感が溢れていたが、ローテーションで入れ替わりで食事をするメイドさんたちが下げたプレートを洗い場に持ってくると、調理で死にそうになっている俺を見つけてビックリしている。
「な!?こ、公爵様が厨房に。あれは公爵様がお造りになったのですか?」
「旨かったか?」
いい笑顔で訪ねると、「美味しかったです!」と思わず答えてしまい、「しまった」という顔をするのだが、俺が満足そうに頷き「また作ってやるよ!」と言えば、若いメイドは「やったぁ!」と言う。
ニコニコ顔で答えてやると、自分たちが丁寧な言葉遣いを忘れていることも気が付いていないようだ。
年上のメイドたちも若いメイドが叱られもせずに俺を喜ばせている姿を見て、下げたプレートを洗い場に入れて「ごちそうさまでした。」と伝えてくれる。
「また、楽しみにしてくださいね。」と話しかけると、「ええ!」と気軽な返事をくれる。
入れ替わりにやって来たメイドさんたちは俺から唐揚げ弁当を受け取り、驚いた表情を見せている。
「な?公爵様!?」
「冷めるぞ!早く席に着いて、食べてみてよ。」
急かされればキョトンとした表情もそのままに席に着いて箸をつけるしかない。
一口唐揚げを齧ると、それはもういい笑顔で無心で食べてくれる。
次々とやってくるメイドさんたちに同じようにすると、食堂は華やいだ雰囲気となり、誰もが盛んに会話をしているようだ。
晩も遅くなって、片付けも済んでから部屋に戻ると、フィアたちが出迎えてくれる。
「ソウタさん、お疲れさまでしたね。今日の唐揚げ弁当も美味しかったです。皆さん喜んでましたよね。」
「あなたって本当に公爵なのかしら?」
「ホント、どうだろうな。」
笑いながら会話を交わす。
「アニエスちゃんが、唐揚げの秘密が判ったっていってます!」
「し、シロップちゃん、言っちゃダメって言ったのに。今度作るときにソウタさんを驚かせたかったのにもう。」
「あ!ごめんなさい。」
シロップの髪をワシワシと撫で、アニエスの髪もかき混ぜてから「アニエス、答えは?」と問う。
「多分ですが、山椒じゃないかと思うんです。いつもソウタさんの作ってくれる唐揚げだけが舌にちょっとだけピリッとした味を感じるんですよ。違いますか?」
アニエスにキスをプレゼントし、「良く判ったな!」と解答を教えた。
恥ずかしそうにしているアニエスをもう一度抱き寄せて、キスから始めてしまった。
「あん、ま、あああ、まだお風呂にいい。入ってないのに、や、はぁ。」
この屋敷もいい雰囲気になってきたよ。
GWに向けて一生懸命書いております。
現在は94話まで準備できております。95話目は全くこれからですが、10話先行を目指しております。




