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Contractor with blood(血との契約者)  作者: 小西敬
ノブレス・オブリュージュの章
88/161

【第87話】疑心

いつもお読みくださって、ありがとうございます。

お蔭さまで45,000PVいただきました。

GW連日更新を目指して書き溜めに入っております。しかし、最低週一回の更新は継続したくて、けっこう無茶苦茶やってます。でも、読んでくださっている方が居てくださるので、がんばるのです。

 ナーラでダイハンの軍勢を退けた俺たちはそのまま西進を続け、ダイハンの市街地を通り抜けた。

 国境の検問で5万の兵に襲われたことを告げると衛兵たちに引き留められた。

 襲ってきた兵士たちの特徴を教えろと言うのだ。

 「公爵様にはお手を煩わせてしまいまして、誠に申し訳ございませんでした。ついでと申し上げては大変失礼なのですが、その兵たちの鎧や武器などに特徴はございませんでしたでしょうか。」

 実際に問われて思い出せるような特徴などあっただろうか?

 「いや、すまない。鎧はあなた方と変わらなかったように思うんだが。」

 明らかな落胆の表情を隠せない兵たちが気の毒だ。

 「なんか、まずかっただろうか?魔法兵も居たし、弩弓部隊も破城槌部隊も居たな、他に最初は魔獣が襲ってきたよ。」

 「そうであれば東方部隊だろうな。西方であれば一番手は暗殺部隊だろうしな。」

 「東方部隊も数だけは潤沢だったんだよな。」

 兵同士で話し合う様子から、俺が殲滅したのは東方部隊と言うらしいが、正規軍なのだろうか?

 「ちょっといいだろうか、そちらの話を伺うに随分とたくさんの兵が行方不明なのか?」

 「いえ、正規兵は新しい領主を迎え、正常に機能しております。しかし、前の領主と共に解雇された部隊がございまして、今回の公爵様を襲った部隊は前東方方面部隊と言いまして、およそ数は5万。バランスの取れた攻守にわたり強力な部隊だったのです。

 もう一度お伺いしますが、本当に公爵様お一人で討ち破ったのでございますか?」

 「あ?ああ、あの位の規模なら他の手を借りるまでもないよ。あの倍の数が一度に来られても、俺だけで大丈夫だ。」

 「・・・無敵ですか?」

 「魔獣が居たんですよね?倍でも大丈夫なんですか?ダイハンの正規軍全部隊でもそんなにいませんが。」

 「ごめんな、神国の軍隊が総出でちょっと手こずるかもしれないぐらいなんだ。妻が手伝ってくれればどこの国も一瞬で消えてなくなるよ。」

 「できればこのまま通り過ぎていただけるとありがたいのですが。」

 「・・・もとよりそのつもりだったんだが。」


 国境の衛兵に聞いた話では、解雇となった部隊が二つあって、俺が地面に埋めた東方部隊と未だ行方が知れないという西方部隊だった兵たち。

 西方部隊はセイトからの解放の光に代表されるテロリストや呪術師などを監視し、撃退するための特殊部隊で、その数1万。東方部隊といい、西方部隊といい、なぜ領主の交代に伴って解雇されなければならなかったのか。

 ほとんどの場合は部隊長や指揮系統が、廃嫡された貴族家と血統が近い場合が殆どなんだが、これらの部隊は兵の大部分がその血筋に当たるという珍しさだ。

 それが故に領主が代われば、その責を等しく負うという事になるのだろう。

 問題なのは、西方部隊が前領主が退いた時から行方が知れず、万にも届く特殊兵の所在がつかめないという事なのだそうだ。

 訓練を積んだセイトのテロリストをさえも防ぎ、魔法や呪術に長けた連中を相手に互角以上に戦ってきたという精鋭が姿を見せないことから、見えざる恐怖として恐れられ始めているというのだ。

 民間人に被害は出ていないが、ダイハンの北部を中心に軍関係の施設が襲われたり、食料などの奪取があったりと落ち着かないことになっているというのだ。

 それをどうこうして欲しい訳ではないが、ダイハンを通過する際に襲撃を受けた場合には可能な限りは潰してほしいという事だった。

 本当に俺たちが襲われれば結果的にダイハンに協力する形になるとしても、家族や仲間たちに危害を加えるような素振りがあれば一人残らず殺すことになるだろう。

 これは俺のルールだからね。


 ダイハンの市街でフードファイトが開催され、お好み焼きのお店で当日分の生地とネタが無くなるという珍事が発生した。

 何の集まりか判らない一団が押しかけ、全メニューが複数回制覇されたために緊急閉店となったそうである。

 軽装の冒険者のような者や、明らかにどこかの軍の兵士、メイドに子連れの親子が多数と言うなんとも判らない連中だったと聞いた。

 お好み焼きを8枚ずつ箸に重ねて刺す女の子や、わんこ焼きとか称して一人前を一口で食べ、量を競う奴らも居たという。

 俺たちもその日は同じ店に行っていたはずだが、生憎そんなマナーのなっていない奴らには出会わなかったものだ。

 確かにあのお店のお好み焼きは至福の味だった。

 焼そばを敷いたやつが一番おいしかったなぁ。そうそう、フィアのお好み串はやっぱり冷めたら俺の口に入ったんだった。

 豚玉もゲソ玉も割り箸に重ねて刺され、両手に8枚ずつ連なっていた。

 イクオ君たちもたくさん食べられたと喜んでいたっけ。

 ハルシゲさんもコウレイさんもイクオ君と同じように一枚を一口で平らげて、焼くスピードが追い付かない店員さんに早く早くとせがんでいたもんな。

 腹ごなしに寄り道した「たこ焼き屋さん」も美味しかった。包んでもらったテイクアウトは今、フィアがやっぱり串刺しにして食べている。

 あれも冷めたら食べなきゃいけないんだろうしな。

 ユイも熱いのと格闘しながらタコヤキを頬張っているのが可愛い。タコは全部俺の口へと運ばれているが、ユイのあ~んは断れる訳がないじゃないか。

 睦月は如月に取り分けてもらって、紅ショウガのついていないところをモムモムやっている。ずっと見ていたい可愛さだよ。

 カーリオとクレイオはお好み焼きのお店でお腹がいっぱいになったようで、それぞれのママに抱かれてぐっすりと眠っているようだ。

 六甲山ヘックスシェル辺りまですすみ、ダイハンからヘイコへと国も変わったことで気が緩んでいたかもしれない。

 いきなり右側から兵とは動きの違う一団が襲い来た。

 完全なヒット&アウェーで一撃離脱を繰り返す戦法だ。

 しかも狙っているのは各車両の馬で、中央の生活車両を引く四頭のうち、二頭にクナイが命中したらしい。

 馬たちの悲鳴とも取れる嘶きが、パーティーをパニックに陥らせる間際に破滅壁が間に合った。

 すぐさま、後ろの馬に対してヒールを掛け状態を見る。

 一頭はヒールで間に合ったようだが、もう一頭は全然足りていない。クナイに毒でも塗ってあったのか、痙攣を起こし始めており見るからにやばい。

 「リジェネレーション!」

 完全治療魔法をぶっぱなし、毒もケガも無かった事にしてやるとキョトンとした表情で我に返った馬が立ち上がってきた。

 「キヨシゲさん!その馬たちを落ち着かせてください。」

 「心得た!」

 「コウレイさん、タケヨシさん、馬車の下に敵兵が居ないか目視確認!」

 「任せろ!」

 「サチさん、妻たちを!」

 「はい!任されました。」

 「如月、来い!」

 「ええ!」

 俺が叫ぶと同時に如月が紫の閃きとなって俺の手に飛び込んできた。

 ヴン!と唸り、俺の手の中で一振りのまばゆい紫色に輝きを放って、日本刀に姿を変える。

 「フィア、中央で周辺警戒たのむ!」

 「はい。」

 レベル10の俺にも見えない速さで大剣を閃かせながら生活車両の屋根に立つ。

 俺は馬車を降り、山側に敵と対峙するように仁王立ちとなった。

 タケヨシさんから車両に異常がない事を報告され、障壁を一気に足元にも展開する。

 と、どうだ。

 地面から飛び出そうとでもしたのか下側に展開した破滅壁が人の存在を感知して反撃した。

 足元で急激な重力異常が発生し、ベキベキと骨格が崩壊していく音と、複数の体が紙の薄さまで圧縮される手応えが伝わる。

 障壁の向こう側から浴びせられた言葉は「バケモノが!」といった嬉しい賛辞の言葉だった。

 「お褒めにあずかり光栄だ。西方部隊とやらのなれの果てと言った処か。」

 探知魔法ですでに全体像が把握されはじめ、約1万の兵たちが俺には見えるようになった。

 最初からレーダーに映らなかったのはなんでだ?

 この前のラビオリ伯爵と言い、こいつらと言い、俺の魔法が完全優位じゃなくなりつつあるようだ。

 と言ってもレベルは10以上は無いはずだし、ランクはS以上はないはずだ。自分を磨くって方法しかないのかもしれないね。

 障壁の効果を目の当たりにしたからか、誰も仕掛けて来ようとしない。

 「ずっとこのままかな?それでもいいが、持久戦で俺の魔力は切れないぜ。待っててもお互いにトイレに行きにくいだろう?」

 俺の正面には誰も立っていない。

 正確には何人か見えるのだが、頭巾のような被り物のお蔭で誰が口を開いているのかも判らない。

 「そうだな、じゃぁしばらく待っててもらおうか。次の手でも考えてみるよ。」

 見える範囲の誰かからそう言われ、仕方なしに待つことにした。

 カウンターアタックをフルオートにするのは忘れない。

 対峙している何人かが森の中へと消えていき、5分ほど待たされた。

 再び、数人が森から現れ、俺の目がおかしくなければM-16マシンガンに見えるそれを数丁肩に掛けている奴らが歩み出てきた。

 「これを試してみたかったんだよ。」

 俺の右側頭部に無意識の痛みのようなモノがあり、障壁に操作を加えた。

 通常の魔力防護優先ではなく、対衝撃性を優先させて硬軟合わせた複合装甲にした。その内側に通常の魔力防御機能を持った障壁を追加したところで、プレッシャーが遠のいた。

 兵たちが肩から肩ベルトスリングを外し、片膝で照準を俺に定める。

 安全装置を外し、セレクトレバーを連射に合わせたことも見えた。

 使い方を分かっているようだ。

 パン!パパパパパパパパっ

 乾いた破裂音が連続して起こり、M-16から空薬莢やっきょうが足元へと散乱した。

 俺の顔面とその周囲を狙った弾丸の全てが障壁の表面でひしゃげ、ポロポロと地面へと落ちて行く。障壁の方は歪みも傷もないようだ。

 「ちぃ、バカみたいな魔法を使いやがる。グレネード!」

 ポウン!

 という空気の抜けるような音がして、一丁のM-16の銃身の下に取り付けられた筒からハンドグレネードが射出されたが、障壁に一度当たり、跳ね返ってから爆発した。

 エクスプロージョンと比較して爆発のエネルギーは小さいが、グレネード弾の外殻が散弾のようにはじけ、障壁に爆風と共に襲い掛かってきた。

 手応えからするとどうと言うこともないが、この近代兵器をどこで入手して、使いこなしているのか。

 AR-15とか狙撃ライフルまで持ち出されるとおちおち馬車旅もできなくなりそうだ。

 「どれもダメかよ。かってぇな。」

 「お前たちはそのマシンガンをどこで手に入れた。」

 「教えるわけが無いだろう?お前も欲しいのか?」

 「いや、そうではないが有っていい物でもないだろうからな。」

 フォーセスコンフェッシオンを無詠唱で発動させ、辺り一面を効果範囲に設定する。

 「あと幾つの向こうの兵器を所持している?」

 「俺たちが持っているのはこの銃だけだ。予備の弾倉も無限にある訳じゃないからな。」

 「で、どこで入手したんだ。」

 「シンコのブローカーから買ったんだよ。色々とあるらしいが、使い方の分からないモノが多いらしくてな、俺たちがそれを試しながら必要なものを購入してるんだ。」

 「わかったよ。ありがとうな。」

 自白魔法を解除すると、「何をした!?」と喚きながらマシンガンを乱射し始めた。

 さっきやってダメだったものは、今使ってもダメだろうに。

 森の南側全域までに効果範囲を広げ、輝点を逃さないように調整して魔法を発動させる。

 「次元断層!」

 六甲の山並みから瞬間的に広範囲に渡って樹木が消えた。その足元や樹上に居た者たちを飲み込んでいった。

 逃げる暇もないだろう。

 瞬間に口を開けた異次元への扉は地上物全部を飲み込んで口を閉じてしまった。

 赤茶や黒の土壌が六甲山の中腹まで見えており、南側斜面が丸裸になったと思う。


 レネゲイドや軍艦に戦車と言ったものがサンプルとして流入しているからには、銃器の類だってあって不思議はないのかもしれない。

 それが今までは国軍や領軍の統制下におかれていたからおかしなことにはなっていなかったが、それを所持する者たちが組織から外れ、野に放たれるとなるとこれも厄介なことになりそうだ。

 加えてシンコに居るという兵器ブローカー。誰彼かまわずに金で売るとなれば魔法だけではない争いが起こる可能性がある。

 なんとも複雑な世界になって来たものだ。

 「ソウタさん、これで西方部隊については片付いたんでしょうか。」

 俺の側にフィアがおりてきた。

 フィアの探知魔法にも何も気配がないのだろう、俺の方にも何も見えない。

 「ひとまずは大丈夫そうだが、あいつらの武器は始末が大変になるよ。」

 少し不安そうな表情をするフィアの髪を撫で、「大丈夫。守れるから、任せろ。」そう言うと微笑んでくれた。やっぱり可愛いよ。


 「ソウタ、馬の具合は大丈夫なのか?」

 そうだった、いきなり回復させて戸惑ってたはずだった。

 生活馬車に走り寄って先頭の二頭の傷を確かめる。

 明るい茶色の毛色をした馬は背中にクナイが刺さったはずだったが、ヒール一発で回復しており、すでに落ち着きも取り戻しているようだ。

 お礼なのか肩口をガフガフ言いながら甘噛みしてくる。

 鼻の頭を撫でてやり、「よかったな。」と言うと「ぶるん」とご機嫌な返事をくれる。

 もう一頭の黒い毛並みのも見たが、脇腹に入ったクナイによる臓器へのダメージも毒の影響も綺麗になくなっているようで、機嫌も良く俺の頭の毛をもうとする。

 「おいおい、勘弁してくれよ。」

 二頭に挟まれ、もみくちゃにされたがどちらも全く平気らしくて安心したよ。

 なんとか抜け出ると今度はフィアが手荒い歓迎を受け、「あひゃぁ!うひゃぁ」と舐められていた。

 他の馬たちも順に機嫌を伺い、どの馬もまったく心配ないことが判った。

 俺たちの馬車に戻り、ユニコを慰め、ウィングと旦那も確かめたが、平常運転のご機嫌の様子だった。


 馬車の車両も点検を済ませ、少し前進させるとすぐにも日が傾いて来て、西日が正面になり眩しい。

 さっきの場所では馬たちの食べる草が無かったからと、3kmほど場所を変えたんだ。

 草が無くなったのは俺がどこかへ飛ばしてしまったからなんだが、連中が信用できないから近辺の草も食べさせたくなかったという理由もある。

 そう言えば結構な戦いの中で次元断層にたくさん呑み込ませてるけど、冥王星軌道上に全部いるのかな。

 生きてる奴がいるかも興味のあるところだけど、いつか天体望遠鏡とか人工衛星とかで観察出来る時が来たら驚くよな。

 デブリが人とか魔獣とか。

 バカなことを考えながら馬車から馬たちを外し、キャンプの準備に入る。

 昼間に結構な量をみんな食べたはずなのに嫁たちが「お腹空いた」合唱隊になっている。

 それを笑いながら夕食の準備に取り掛かると、シゲさんたちが鍋の準備を始めたので「何鍋にしますか?」と聞いてみた。

 いつの間にか斥候に出たサチさんたちが、近所の農家でたくさんのベーコンを買わされたそうで、リゾットにしたいという。

 チーズは良いのがふんだんにあるし、野菜とベーコンをたっぷり入れたミルク粥風もいいなと思う。

 そんな感じで夕食のメニューが決まり、調理に取り掛かった。

 鶏の香草焼きとベーコンリゾットが出来上がり、全員で頂きますを言ってから娘たちには熱いからと注意を促して食べ始める。

 食事の間に今日の襲撃のことなんかを話しながらだったが、やはり気になるのは探知魔法に最初は映らなかったことが話題になった。

 「ソウタやフィアちゃんの探知魔法は何に対して反応してるんだろうな。」

 「多分ですが、生命反応を捉えてるんだと思うんですよ。」

 「でもそれでは説明がつかなくなりますよね。」

 フィアの言ってることに間違いはない。でもチカゲさんの言う事ももっともだ。

 今もずっとオーバーレイさせているが、やはり動物の類は映りこんでいる。

 敵意があるかどうか。魔法力が高いかどうか。色々な条件設定が許されているが、絞り込まなければ植物まで映りこんでしまうし、精度を上げると虫や精霊の類まで見え始める。

 フィアは無意識にフィルタリングしているらしく、人より生命反応の強い者しか探知しないようにしていると言っていた。そうしないとえらい輝点の数になるもんな。

 俺の場合はこちらに向かいう意識を検索条件にしてる。その他に魔法力や視線、殺傷能力のある武装なども同時に監視しているが、フィアと違う条件検索しているのにどちらにもヒットしないで近くまで来れる条件とは何だろうか。

 万に近い人間が同じような状態を保つという事は恐ろしく高度な何か、テクニック?良く判らないモノが必要になるハズだと思う。

 ただ、西方部隊はすでに殲滅してしまったために確認を行うことはできない。

 さらに言えば、次元断層で放逐すると回収できないのだ。

 場所を決めて回廊をつないだり、空間のように指定したところへは自由にアクセスできるし、出し入れもできる。

 が、これまでのように落っことした物は二度と拾う事が出来ないんだ。

 向こう側を完全に把握していればダイタクヤに1万数千人をゼロタイムで移動させたようにトンネルを作ることも可能だ。途中で観光や買い物もできないが。

 魔力消費量も少ないし、コスパに優れた優秀な魔法だと思う。

 ・・・?

 あの伯爵も小さいながらに次元断層を使ったな。

 他にも使う奴がいるのか?1万の兵を瞬時に移動させられるくらいの。

 俺ぐらいの奴がいるのかもしれない。いや、居たとしても不思議ではない。自分がこうしてこの世界に居るのだから、他に同じようにこの世界に来た向こうの人間がいると考えた方が良さそうだな。

 そいつも俺と同じように豊富な魔力量に恵まれ、様々な魔法を行使するのだろうか。

 他人をけしかけてくる限りは俺の側でも対処はできる。

 しかし、対処できることが判ったなら俺なら・・・直接に手を下そうと思う。

 誰にも任せられそうにないんだからな。

 「ソウタさん?どうかしましたか。」

 フィアが不安そうな表情で覗き込んできている。

 「いや、ちょっと考えることができたな。」

 「それは大変なことになりそうでしょうか?」

 アニエスも鋭いことを言う。

 俺の疑問をみんなに聞いてもらうかは考えをまとめてからにした方がいいだろう。

 「今晩、布団に入ってから相談に乗ってもらうよ。」

 「ええ?せっかくの夜なのに難しい話をするんですか?」

 シロップの心底残念。という表情に思わず笑いが出てしまうじゃないか。

 「そうか、そうだな。シロップ、今度話すことにするよ。たっぷり慰めてくれよな。」

 「任せてください。」

 俺の嫁たちは本当にいい嫁たちだ。

 くよくよと悩み始める俺を笑い飛ばしてくれたり、一緒に泣いてくれたりするんだから明日の移動の間にでも相談することにしよう。


 レネゲイドが歩哨に立ち、それぞれが自分の場所へと引き上げていった。

 「レネゲイド、テレポートに注意してくれ。」

 「マスター、それはどういう意味でしょう?」

 「まだ確証はないんだが、今日の戦闘は見ていたな?」

 「もちろんです。」

 「何か気が付いたことは無かったか?」

 「敵の部隊が出現する際に45秒前から次元変動を感知していました。」

 やはり、出現したんだな。元から居て隠れていたんじゃなかった。

 「移動人数によって次元変動の発生する時間に差はあるんだろうか。」

 「いえ、45秒プロセスはたとえ一人の移動でも変わりません。次元を隔てた空間をつなぐ際には座標固定の手続きに必ず45秒かかります。マスターが行う瞬間移動も実際には視線で目標を定め、魔力が発動して移動するまでに45秒かかっています。

 ですので、出現する側でも45秒前から空間固定のために現状を改変する次元変動が発生し始めますので察知することは容易です。ただ、どれだけの規模の移動が行われるかは判りません。」

 「十分だ、良いヒントを貰えたよ。では、次元変動があった場合にはその場所をバニシングライフルで撃ってくれ。俺たちと距離が近い場合は変動点に移動し、空間固定を阻害するんだ。」

 「了解。マスターへの警報と同時に行動を起こします。」

 「すまないが頼む。」

 馬車に入り、嫁たちとくつろぎの時間を迎える。

 「ソウタさん、余り一人で悩まないでくださいね。」

 フィアからありがたい忠告を頂く。

 「ありがとうな。でも、いま悩んでんのは誰から慰めてもらおうかって事なんだよ。贅沢な悩みだろう?」

 「あら?それ以上の贅沢なんてないわよね。」

 「そうですよ。ソウタさんは私たちにメロメロなんですから。」

 メロメロっていつの時代なんだ。

 笑いながらシロップを捕まえた。

 この子は抱きしめると伝わる体温と、優しさがこぼれる。そして最近すっかり育ったオムネも俺の目を楽しませてくれる。

 「やっ、噛んじゃダメです。ああ?はぁ。」

 柔らかい桃源郷のようなオムネを楽しみ、ひとつになってその命を実感してしまった。

 シロップはやはりその陽だまりのような笑顔とこのしっとりと密着するような肌が特別すぎるよ。

 アニエスはいつも俺とシロップの愛し合う姿を観察している。

 「どうした、気になることでもあったかい?」

 「いえ、そうじゃないんですけどあんなに抱きしめて壊れちゃったりしないのかなって。」

 「おいで、アニエスをシロップのように抱くとホントに壊れちゃうだろ?でもね、アニエスを大事に抱きしめるのもまた良いもんなんだよな。」

 「はい。ありがとうございます。」

 やさしく微笑んでくれるアニエスを抱き寄せ、自分の胸の中に納めるように、割れ物を預かるように抱きしめるのがいい。

 「はっ、はぁ。はん。」

 静かに我慢するように、快感を楽しんでいるのが判る。

 シロップと違う快感の味わい方なのだろう。押し寄せる気持ちの良さを堪えるようにするのがいいんだと言う。

 俺と一緒になっても大きな声を出さず、「ん。んん!」くらいしか言わないのだが、いつも意識をなくしているところを見れば、ちゃんと満足してくれているんだろう。

 如月を差し置いてフィアが抱き付いてきた。

 だが、その瞳には不安が宿っているようだ。

 「大丈夫ですか?」

 それはこっちのセリフだ。レネゲイドに貰ったヒントで実は心の引っ掛かりも取れて、解決策も見えた。

 故に、フィアを楽しむしかない。

 この子は本当にこの数年で恐ろしいほどに美しくなった。

 契約を交わしてから日々、美しくなっているような気がする。

 その自分の妻を腕の中に抱くと、これ以上の満足は無いだろうという抱きしめ甲斐を感じるのだ。引き締まった肢体と柔らかくも張りのあるオムネ。くびれた腰に筋肉のハリが気持ちのいいお尻などをグイグイと押し付けてくる。

 押しつけ返せば素直によがり、気持ちいいと素直に伝えてくれるんだ。

 毎日のことなのに、毎日新しい感動がある。

 たっぷりと愛し合ったフィアを休ませる。

 どうしたことか、如月はもう夢の中に旅立っていらっしゃる。

 だがしかし、それで見逃す俺ではなかった。

 「はっ、はぁ、やめ!やめなさあああああ!?」

 寝ていたにもかかわらず愛撫されると準備が整うようで、如月に断りもなくひとつになった。

 それで目が覚めると、急激に快感が押し寄せるらしく、いつも怒っている。

 そして、怒りながら嬌声を上げるものだからそれが俺を昂らせるのだ。

 如月には理不尽そのモノかもしれないが、俺がドSでないはずなので、それさえも可愛いのだろうと思う。

 明日の朝にはまた、きっと照れながら怒ってくるんだろうがモーニングキスの一つで許してしまうのだから、心底イヤなわけではないのだろうね。

 もう一度呆けたようになっているシロップを捕まえ、楽しませてもらい、その肢体を抱きしめる喜びを分けてもらう。

 アニエスは帰って来そうにないのでそっとしておいた。

 如月も完全に飛んでしまってる様子から、今度やったら腕も一本も切り飛ばされそうだ。

 と、フィアを抱きしめると、また幸せそうに笑顔をくれる。

 「おかえりなさい。」

 そう言って抱き付いてくるのがたまらなく愛おしい。

 「フィア、お前が居るとそれだけで俺は生きていける。それなのにシロップがその笑顔で俺を癒し、アニエスがその献身で傷を埋めてくれる。如月が居てくれるお蔭で何者をも恐れることなく進むことができる。

 だからな、今以上の幸せはないよ。

 前にも言ったが、これ以上妻は増やせないよ。そうすれば俺はきっと失礼な奴になる自信があるんだ。

 無意識にも誰かとこの四人を比べてしまうかもしれないだろ?それは俺自身が許せないんだよ。判ってくれるかな?」

 「本当はもっとお嫁さんを増やしてほしいんです。前にも言いましたがそれにも意味があると信じてます。

 でも、ソウタさんはそうじゃないんですね。最近気が付いたのですがアニエスちゃんや如月ちゃんに何か言いましたよね。

 それがソウタさんの考えなんだったら、そう私にもシロップちゃんにも直接言ってくださいね。それを聞かないわけじゃないんですから。

 ソウタさんは心の通わない恋愛が出来ないんですよね?」

 ようやくまともに話が通じるようだ。

 「ああ、その通りだよ。増えれば増えるほど似た様な女性が出てくるよ。それで比べでもしようものなら、俺は自分を呪うかもしれない。

 そんなのは絶対嫌なんだよ。判ってくれるかな。」

 「はい。判りました。ソウタさんがそう仰るならもう、勧めたりしませんね。」

 「気を使ってくれたのにごめんな。」

 「謝ったりしないでください。私たちが無理をさせたんですからこっちこそ謝らないといけないのに。」

 フィアの胸に顔を埋めながら話していると心が落ち着きを取り戻してくる。

 そして心が安寧を得ると別の気持ちが戻ってくる。

 気持ちの良いオムネをつい、口に含んでしまう。

 「ひゃん?そ、ソウタさん、いきなりは、ああ、んんん。」

 フィアを抱き上げるまでにあと二回楽しませてもらった。

話が段々にややこしくなってきてます。

しかしながら、徐々にではありますが世界の裏側に触れて行くような展開になるかもしれませんし、書いてて鬱な展開も時にはありますが、基本的に砂糖多めで乗り切るつもりです。

読んでくださった結果、鬱展開でも勘弁をしてやってください。

検索ワードにもあります通り、必ずハッピーエンドになりますから。

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