表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Contractor with blood(血との契約者)  作者: 小西敬
ノブレス・オブリュージュの章
87/161

【第86話】ダイハン無双

いつもお読みくださって、ありがとうございます。

お蔭さまで42,000PV頂きました。

ほんと、凄いです。ありがとうございます。

 ヘッセン子爵に統治を任せた領地に適当な場所を指示して、俺たちが住まう屋敷を建築するように頼んである。

 ただし、優先順位は一番最後だ。

 しかしながら兵卒とは違う人種。屋敷に仕えていたであろうメイドさんや男衆の勤めもあるので、子爵様は同時進行的に作業を始めてくれたようだ。

 整地し、耕作をした土地はわずか一日で湧いて出た土地ではあるが、そこに暮らそうとする者たちにとっては今後一生を掛けて発展させなければならないわけだし、力仕事に向いた者ばかりではない。

 そこで、我が家となる領主の館についてはメイドや家令の全てが住まう事が出来るような館である必要が有るとだけ頼んでおいた。

 アイチでどうであったかは判らないので、以前に勤めていた場所や建物を参考にして整えることを前提に設計を任せた。俺の嫁が四人と娘がそれぞれに居ることも設計に反映してもらわなければいけない。

 商店街や農耕地など様々な必要とされる環境を整えるためにも人がいるだろうかと相談もしたのだが、兵としてメイドとして、庭番としてのみの才覚ではなく、他の道を目指そうとする者も居てくれるそうで、助成金と言う名目で金を出すことにした。

 これによって、結束を乱すことなく1000人からのメイドや家令たちが別の生き方も探すことができているらしい。

 それでも屋敷には700人からの勤めを希望する者も居ることだし、たいそう大規模な領主の館になりそうだった。

 ヘッセン子爵の裁量による都市開発計画をスタートさせ、にわかの兵士から転向した建築家が溢れかえり、豊富な建築資材を利用して戸建ての家がたくさん建つらしい。

 土木作業の全てが昨日まで兵士だった連中によって行われているわけだが、輜重しちょう隊や工兵部隊に所属していた兵士たちにとってはいつもやっていた作業を規模を大きくしただけのような物らしく、工程表が壁に貼り付けられ、作業しやすい服装に着替えられると日本で見た大工の人達と見分けがつかない。

 資金も運営に必要な道具立ても、食料や燃料なども全部用意してやったおかげで早いうちから開拓事業が恐ろしい速さで進んでいくのだった。

 また、ギーフへの街道整備なども早いうちから行われたことで、トサンの人達も容易に山間部に分け入ることができ、狩猟によって得た動物や魔物、山菜に始まり食料の色々が開拓村で消費されることを知り、ダイタクヤの街を抜け狩猟に励み、採集に勤しんだ帰り道にダイタクヤで現金化できるものだから、大変喜ばれた。

 早速にも経済が回り始め、交わりができていることはちょっとした嬉しい出来事だった。

 決闘の翌日、スタッフたちは俺とフィアがダイタクヤの開拓に出掛けていたために一日を休日として待機してくれていた。

 俺たちが戻ったのは日が暮れてからで、みんなは残った嫁たちと一緒にゆっくりと休めたと言ってくれた。

 ありがたくも作ってくれた夕飯を頂き、翌日のダイハンへの旅に備えることになった。

 入浴も済み、馬車に入りくつろぎの時間を堪能していたのだが、やはり話題の中心は新しく増えた領民と開拓した領地についてだった。

 「ソウタさん。私とシロップちゃん、如月ちゃんは新しい領地を見てはいませんがどのような土地なのでしょう。」

 アニエスたちは昨日開拓されたばかりの土地に興味を持っている。

 「ああ、トサンの南の外れになるんだが、平野部にはトサンの人達が開いた田畑でんぱたがあるだろう?だから誰も住んでない処に土地が必要だったんだ。ダイタクヤはギーフへの街道があるだけで宿場も休憩するところもない山間地だったんだが、レネゲイドで山をいくつか吹き飛ばして、飛んだ土砂で谷を埋めて広い場所を作ったんだ。」

 「あなたって本当に何かするたびに桁が違うわよね。一万人以上が暮らすんでしょ?それだけの土地になったのかしら?」

 「うん。田畑を十分に作れるような広さになったと思うよ。陛下から頂いた土地がいくらでもあるからね。レネゲイドに手伝ってもらうと平らにするのに手間もないし、フィアもいてくれたからエネルギーの心配もなかったからね。」

 「フィアちゃんが乗ってなくてもこの距離なら間に合ったんじゃぁ?」

 「シロップの言う通りなんだけどさ、俺だけがヤマノベ家じゃないだろ?ヘッセン子爵を負かして考えを変えさせるのには如月が必要だったし、レネゲイドが動くときにはフィアが必要だと思わせたかった。いずれ出来る屋敷に勤めるメイドたちの手本になるのは、国貴族街にある屋敷で一番頑張っていたシロップとアニエスだろう?

 俺の妻たち全員が俺の妻である理由を示しておきたいんだよ。存在感と俺には勿体ないくらいにいい嫁たちが揃ってるんだぞってね。」

 「また、色々と考えておられたんですね。私たちがそうやって大事にされていることを示せればダイタクヤで暮らすことになった人たちにもきっと、自分たちも大事にしてもらえるって伝わるんですよね?」

 フィアがいいことを言ってくれる。

 そう、ヤマノベ家とその仲間たちが公爵と言う地位だけで今があると思ってほしくなかったし、それまでに冒険者として暮らしていたことや貴族になってよりいい出会いがあったとか、むくわれる気持ちを知ってほしかったんだ。

 そして自分たちの上に立つことになった俺たちが1万人以上を養えると判っていれば、これからを心配しなくても済む。

 行く末を不安に思いながら明日のためにと必死に開拓するのと、食べる心配も他からの脅威もまったく心配が無くて、より良い暮らしのために頑張るのとではプレッシャーが違うだろう。

 現に労災(労働中の事故や怪我など)の発生件数がとても少ない。

 一番大きな怪我が、小指を突き指したという程度。本人は痛かったろうが、舐めときゃ治るようなモノだ。

 工事に入る前と、夕方の解散前に皆が集まり、作業の反省会までやっているそうだ。

 また、自治会もできており、自由を逸脱した勘違いなどが起こらないようにと自分たちで襟を正すための組織もできていた。

 見に行くたびに何某かの進歩が見え、街らしくなろうとしている過程が見ていて飽きない。

 感心したのはその道徳観が広く浸透していることだ。

 アイチに居た時にも真面目な連中が揃っていたのだろうが、多方面に才能を持った兵たちが居たからか、館の中に知識階級が居たからか、ちゃんと統治された都市となりつつある。

 メイド以外にも随分と女性が増えたなと思った時期があったが、子爵様に聞いてみるとアイチから家族を呼び寄せた者がたくさんいたというのだ。親戚の者たちもちゃっかりと付いてきたという一家もあったそうだが、どこに誰が居るとかも把握されており、住民票の登録と発行もされていた。

 冒険者や商業系のギルドに参加している者ばかりでもないから、余所者と居住者の区別がつかなくなることを防ぐために身分証として発行しているのだそうだ。

 住民票を持たない者の活動には制限を加え、自治会が行動を把握しているために犯罪者などが出ることもないと聞く。

 街道沿いの開発が優先して行われており、宿場もでき始めているし、休憩所や土産物屋もある。

 何を土産にしているのかと思ったのだが、半分はトサンの土産物で、半分は手先の器用なものが作った髪飾りや旅に便利な笠、雨具などの実用品もあった。これから菓子や山菜を利用した保存食なども増えるといいねなんて言ったのを真剣に聞いていたからそのうち棚に並ぶんだろう。

 周辺の山間にたくさんの無花果いちじくの木があるのを見たから、それなんか利用したらいいかもね。

 この分だと俺が頻繁に顔を出さなくても独自に大きくなっていきそうだ。

 笑ってしまったのは子爵の屋敷だ。

 途方もない敷地に1000人が暮らせる俺の屋敷の基礎工事が始まっていたが、そのすぐ隣に小さなちいさな平屋建ての家が建てられていて、そこが自分の屋敷だと言う。

 嫁が居ない独身貴族はそれで十分だというのだが、これだけはやり直しとさせた。

 台所と風呂場にトイレ。他には寝室とリビングがあるだけで、全部で15坪もあるかないか。俺の人格が疑われてしまう。

 部下に与えた住まいがアレじゃぁって事になるよ。


 妻たちにクノエの帰りに寄ることを約束し、フィアのご両親のお墓参りもあるからと言うと全員が楽しみだと言ってくれた。

 それから四人の妻を満足させ、明日に備えてゆっくりと休むことができた。

 翌日はまた、晴天に恵まれて西への旅を続けるためにしっかりと朝食を堪能した。

 明日にはダイハンに入るだろうしと、フィアと如月と護衛班それぞれとミーティングを持ち、戦闘にも備えることにしている。

 それぞれの非常事態の時の役割を再確認し、装備や防具の点検も、剣の状態での如月のこしらえの点検も行った。

 フィアの剣もダイタクヤで表面を整える研磨作業ができていたのでコンディションはベストだ。

 如月が剣の状態の時の鍔や柄つばやつか、刃金や棟金、凌ぎと言った各部を確かめ、異常が無いか細部にわたって点検と整備を行ったが、そのあとでいつもの姿に戻った時に紅潮した頬と潤んだ瞳に困ってしまったものだ。

 始末に負えなくなった如月は俺にまとわりつき、息が荒い。

 前に言っていた通り、剣の姿で魔力をまとっていないと裸でいるようなモノなのだろうか、つぶさに点検したことがあだとなって興奮状態になってしまっているのだが、相手が俺だったために昨夜と同じ状態と言うか、昨夜以上に燃え上がっているようだ。

 「ソウタさん、仕方がありません。如月ちゃんを満足させてあげましょう。」

 それは判るが、なんでフィアがせっかく着た服を脱いでるんだよ?

 そしてそこ。シロップとアニエスが如月の服を脱がし始めてるのも判らないんだが?

 「はぁ、はっ。ああああ、あん。んんんん。」

 5分で如月を昇天させ、なぜだか脱いだフィアをも5分でイかせた。

 この乱痴気騒ぎを見たシロップとアニエスもメイド服を着たまま下着だけ抜き取るものだから、慌てて二人を15分で始末した。

 出発が30分ほど遅れたが、何食わぬ顔で御者席に上がり、何もなかったかのように出発した。

 幸いにもスタッフの馬車の方でも積みこみ準備に手間取ったらしく、俺の早業で事なきを得たような結末となった。

 四人の嫁が寝室でトロトロになっているが、何食わぬ顔で御者席に座り、隣にユイを従えて3台の馬車の車列を進ませた。

 「ねぇ、パパ。ママたちはなんでいつもパパとくっ付くかなきゃいけないの?」

 また答えにくいことを聞くなぁ。

 「ママたちはね、パパのことが大好きなんだって。パパもママたちが大好きだからいつも一緒にくっついていたいんだよ。」

 って言っても判らないか?

 「それってユイがパパを好きなのと違うの?」

 「う~ん、そうだなぁ。好きっていくつもの種類があるんだよ。パパがママたちを好きなのもママたちがパパを好きなのも、いっぱいの時間を一緒に居て段々に好きになった”好き”なんだ。

 この好きはいつまでも大きくなっていく好きなんだよ。」

 「ユイがパパを好きなのは違うの?」

 「うん。それは違う好きなんだ。パパやママたちがユイと睦月とカーリオやクレイオに思ってる”好き”は最初から一番大きな”好き”で最初からずっといつまでもとっても大きな”好き”なんだ。パパとママのところに来てくれたユイたちを好きな気持ちはママたちを段々好きになったのと違って最初から一番好きなんだね。

 でも、ユイがママやパパを好きなのは次に好きになる人ができた時にはそっちの方がもっと”好き”になるんだよ。だから、ユイのパパやママを好きな気持ちはユイが大きくなった時に二番目の”好き”になる気持ちなんだ。」

 フィアに似た顔に眉間にしわを寄せて一生懸命に考えているらしい。

 「わかんない!なんで二番目になっちゃうの?」

 「ん~と、そうだなぁ。例えばママだ。ママもパパと出会う前はお父さんとお母さんがとっても好きだったんだよ。でもパパと出会ってからはパパのことを一番好きになってくれたんだ。それでもお父さんとお母さんは今まで通りに大好きなんだよ。

 それよりもっとパパのことが好きになってくれたんだよ。

 そしたら、ママの”好き”の一番はパパで、その次がお父さんとお母さんでしょ?

 いつか、ユイの一番好きな人が出来るよ。ゲオルク皇太子様かもしれないね。パパとママを好きな気持ちは変わらないだろうね。でもそれはもう、二番目なんだよ。

 好きの大きさは変わらないけど、もっと”好き”な人が出来るとパパとママを好きなユイの気持ちを飛び越しちゃうんだよ。

 パパとママはそれでもユイのことがとっても大好きだよ。

 だから”好き”って気持ちはたくさんの種類があるんだよ。いっぱいあっても困らないから、ユイもいろんな物やいろんな人を好きになるといいよ。」

 む~?と思案顔のユイの髪を撫で、いつかいっぱいの好きが増えたらいいね。と言ってやると「うん!」と肯定してくれた。


 木曽川を超え、亀山キサンまで進むことができた。

 ここまで来るとダイハンの勢力圏内ともいえる。

 広範囲に渡って探査を続けている。組織立った動きが無いかを探っているんだが、今のところは大丈夫そうか?

 馬車を走らせる視界の邪魔にならないように透過状態でレーダー画面を視界にオーバーレイさせる。

 索敵範囲はセイトにまで及んでいるが、道中に人が集まっている形跡はないようだ。

 大型の動物が何頭か映っているが、山間部であればこんなもんだろうか?

 寝室から衣装を整えた嫁たちがようやく出てきた。

 「朝からえらい目に遭ったわ。」

 如月がそれを言うのかよ?

 シロップとアニエスが紅茶を淹れる準備をしてくれており、フィアがユイの隣に上がってきた。

 「ママはパパが一番?」

 「な!?なんですか?何の話をしてたんです!?」

 「へへへへぇ、ユイは知ってるんだもん。」

 「ユイ、ないしょだぞ?」

 「うん。わかったよ。」

 「だから、何の話なんですか?」

 「パパはユイとママが一番だ!」

 「あ~ん、教えてくださいよぉ。」

 国道1号線から25号線に入り、セイトへ向かわずにダイハンへと直行するルートを選ぶ。

 伊賀から奈良へと進むにつれて大型獣が目立ち始め、視界に投影しているレーダーの輝点が増えている?

 それも寄ってきてないか?

 グウォ――――ン!

 「デストロイウォール」

 リントヴルムだよ。太い首と控えめな翼が特徴的なドランゴンだ。

 飛んでいる奴もいるが、ほとんどは俺たちを迎え撃つつもりなのか幅も広く展開して、厚みのある縦陣を築いている。

 そして、亜種のくせにドラゴンブレスを吐くリントヴルムが一斉にあぎとを開き、蒼より紫に近い炎を火炎放射器のように吐き出してきた。

 破滅壁デストロイウォールが涙滴型に展開して、幅5m×高さ5m×奥行き30mのうつぶせにした椀のようになって業火を滑らせている。

 「次元断層!」

 見通し距離で幅が50mに奥行きが30mの範囲内にひしめくようにドラゴンが集まっているが、いきなり底が抜けたようになり、サツマイモが鍋に転がり落ちるようにボトボトとリントヴルムが消えて行った。

 幸いにして飛んでいて難を逃れたリントヴルムは10体ほど。

 更なるブレスで敵を討とうというのか青紫の炎が襲い来るが、反撃をオートにすると白に近い蒼炎が破滅壁から噴出し、残った芋を焼き上げてしまった。

 2000℃をゆうに超える高温でこんがりと炙られたリントヴルムは、他の仲間たちに遅れて次元断層の中に消えて行った。

 断層が口を閉じるとオーバーレイされた探知魔法によるマップに蛇のように連なる兵たちが幾筋もの模様のように浮かび上がってくる。

 多分だが、高い練度を持った兵たちなのだろうと思うのだが、統率のとれた蛇のような縦陣は有機的に連携し、デストロイウォールを深く懐へ呑み込むように包み込もうとしている。背後にも多くの蛇が回り込んで厚みのある攻撃が出来るのではないだろうか。

 備えを十分にと、カウンターアタックをパッシブディフェンスからアクティブオフェンスとし、障壁に近づく側から積極的に攻撃を行う。

 ファイヤーアローが近づく兵たちに降り注ぎ、弓兵や弩弓を引いてきた工兵が撃ちだすボルトを弾き返すとともにレーザーのようにエネルギーラインが迸る。

 5万ほどの輝点がレーダー上にあったが、近づくものから順に消えていっている。

 後から押し寄せる兵たちが俺の魔力を消耗させられれば、いつか障壁が維持できなくなるのかもしれなかったが、アクティブオフェンスのままで全力攻撃を続けていても毎秒の消費MPは3000を超えない。

 回復量が毎秒5000MPを越えてしまっているので収支はこのままでもずっとプラスだからね、立食でサンドイッチでも食べながら相手してても一週間でも一か月でも維持できる。

 真正面からの兵たちの進軍に変化が現れた。

 どうやら魔法耐性の高い盾かなにかを装備した部隊が居るのだろう。身を守るすべを装備した部隊の後ろに魔術師の部隊と破城槌はじょうついを引く工兵部隊が続いているらしい。

 多種の攻撃方法を同時進行的に展開し、手数と厚みがダイハンの兵力の特徴なのだろうか。

 魔力量の収支があってる間は何をしてもらっても構わないが、俺の家族と仲間に害意が及ぶようであれば瞬間的に全滅させてやればいいことだ。

 周囲におびただしい数の死体が積み上がる中、それでも進軍をやめようとしない兵たちには正直、辟易し始めている。

 また、娘たちに見せたくもないので破滅壁の地上から2mくらいまでの高さに白やピンクの不透明な部分を設け、花畑や樹木の絵を出現させる。

 木立の間を猫や犬が走り回ったり、妖精や小人たちが踊りを踊ったりしている。その向こうは殺戮の嵐が吹き荒れているのだが、障壁の内側は幼稚園の遊戯室のような温かい雰囲気になっている。

 魔法兵が俺たちの近くにたどり着くとアローやサンダーのような直接攻撃魔法ではなく、エクスプロージョンやコンプレッションという広範囲殲滅魔法が安売りされている。

 エクスプロージョンにはヒュージエクスプロージョン、コンプレッションにはハイコンプレッションをカウンターしている。

 爆破魔法エクスプロージョンひとつのお返しは極大爆破ヒュージエクスプロージョン10ほど。

 圧縮魔法コンプレッションひとつのお返しは超圧縮ハイコンプレッション5個ほど。

 かなり遠くの方までヒュージエクスプロージョンによって直径500mにもおよぶクレーターが出来上がり、蛇のような進軍を覆い潰すような超重力変動が直径300mに渡ってあちらこちらで発生し、人も弩弓もイージスの盾も何もかもが紙のように潰されていた。

 ここまでさせられると魔力の使用量が毎秒で10000MP近くなり、自分の懐から魔力を調達しなければならなくなる。

 だが、俺がそれだけの魔力量を使うときには兵だけで町の人口が変動するほどに減っていかなければならず、一領主の保有する軍事力では明らかにムリだ。

 あれだけいたはずのダイハンの兵たちも既に数えられるほどしか輝点とならない。

 輝点の数を数えている間に何分か過ぎると毎秒5000MPの回復によって魔力が溢れ始めるんだから、地方領主が何かしようと思う方が効率が悪いと思うのだ。

 全ての輝点ブリップに指向し、ため息を一つついてからエネルギーブレットを射出する。

 垂直に放たれた光の数々は薄い煙をたなびかせ、VLS(垂直発射装置)から発射されたハープーン対艦ミサイルのように指定された目標に向かい急激なカーブを描きながら軌道修正を行って一目散に加速する。

 放射状に散開し、30ほどのブレットが木立を避け、丘陵を回り込み、地を這うように猛進する。

 視界の外からいきなり飛び込んできたように見えただろうブレットをその身に受けた兵たちのことごとくが破裂し、血も肉も内臓さえもぶちまけたのだろう。

 さらに広範囲を索敵するが軍事行動を取るような生き物はいないようだ。

 障壁を解除する前に土魔法を広範囲に行使し、死体をすべて掘り返した土の中へと埋め込んでいった。アンデットになるようなまともななりをした死体もないし外の惨劇を娘たちに見せたくもない。

 土魔法が収束し、土壌のうねりなども収まってから、破滅壁を解除したが、外の空気に嫌な臭いも残っていなかった。

 「あなた、終わったの?」

 如月が御者席へ上がって来て、俺に確かめる。

 俺は如月をそっと抱き上げて膝の上に抱え上げた。

 「あなた?」

 背中から回した両腕で如月をそっと抱きしめて、髪の匂いをかぐ。

 芯のある如月の体から伝わる体温と柔らかさ。

 呼吸の様子。

 されるがままにじっとしている如月は、腕を回して俺の頬を触ろうとしている。

 両手が俺の顔を探り当て、挟み込むように掌を押し付けてくる。

 掌から伝わる体温にゆっくりと俺の中の緊張が解かれていく。

 如月の後頭部に顔を埋めるようにすると日向のような匂いが気持ちいい。

 「いい匂いだな。」

 「なによ?汗臭いとでも思ったのかしら。」

 「ううん。そんな訳ない。よし、行こうか。」

 「ええ、終わったのね。私たちの為にありがとう。」

 そんな風に言われるとは思っていなかった。ちょっとびっくりして如月の顔を覗き込んでしまう。

 まっすぐ前を見つめ、群青の瞳は力強い光をたたえていたが、口から零れた言葉は優しいモノだった。

 「あなた、いつも一人で先に行かないで。ちゃんと私たちを見て、ちゃんと一緒に連れていって欲しいの。だれも置いていかないで。お願いよ、絶対に居なくならないって誓ってほしいの。」

 「なんだよ、俺はお前を置いてどこにも行かないよ。フィアもアニエスも、シロップも置いてなんていかない。まだお前たちと何十年も一緒に居たいと思ってるよ。」

 「違うのよ。・・・違わないけど、違うの。貴方は自分でわかってないわ。私たちはそれぞれがひとりで生きていけるほど強くはないの。たとえあなたがどこの誰より強くても私抜きじゃ寂しいはずよ。フィアちゃんが居なければきっと慰められる人はいないかも。シロップちゃんが居なければ心の傷は埋まらないわ。アニエスちゃんが居ないとあなたはきっと笑えなくなるわ。

 自分が傷ついてるって気づいてないのよ。ご覧なさい、フィアちゃんが泣きそうな顔してるじゃない。それを見ればアニエスちゃんだってシロップちゃんだってすぐに気がつくわ。

 いつも振り返ってみて欲しいのよ。みんな心配してるの。

 あなたが壊れちゃうんじゃないかって。

 敵を討つたびに、自分が大怪我を負ってるのに気づいてないの。」

 御者席から振り返ると、動揺しているフィアと目が合う。ユイを抱きしめてこっちに飛び込んできそうな表情をしている。

 アニエスもクレイオを抱いて心配そうな表情だ。シロップはもう涙が止まらなくなってるようで、カーリオにしがみついている。

 「ほら、これでも抱いて癒しなさい。」

 如月が俺の膝から降り、俺に新たに預けたのは睦月だった。

 「パぁパ!」

 正面からがっつりとしがみついてくるフワフワの紫髪はまだ本当に小さい。

 「これもあるわよ。」

 下から差し上げられたユイを如月が受け取り、俺の膝に乗せる。

 「パパ、疲れた?」

 「ほら、まだまだいるのよ。」

 アニエスが下からクレイオを如月に渡す。如月が俺の膝にクレイオを乗せるとまた振り向いて今度はシロップからカーリオを預かり、俺の膝に乗せる。満員御礼だ。

 「あぶぶ、あうあう。」

 クレイオがなんて言ってるのかは判んない。

 でも、俺の顔が緩んでいくのは仕方がないな。

 「如月、わかったよ。ありがとうな、フィアありがとう。シロップ心配を掛けるな。アニエスもう大丈夫だ。」

 四人の娘を膝一杯に居載せ、抱きしめると娘たちが大喜びしてくれる。

 「俺はもう大丈夫だ。さぁ、先を急ごうか。フィア、御者をちょっと代わってくれないかな。紅茶が欲しくなったんだ。

 シロップ、美味しいのを一杯頼めないか。

 アニエス甘いモノ、なんかなかったっけ?

 如月、俺の膝の上をどうにかしてくれないか。」

 仕方ないわね。と膝の上の娘たちを取り上げようとした如月を捕まえてキスをした。

 驚いた表情をしたままされるがままになっている如月を見て、ユイが一言云う。

 「またパパ、ママたちとくっつくの?」

 「もちろんだ。パパはママたちが大好きだからな!」

 「もう、いきなりは止めて頂戴。んんん!?」

 少し赤くなって怒っている如月をもう一度抱きしめて、キスしてから娘を一度に抱え上げて全員にも順番に頬にキスをして回った。

 きゃっきゃと喜んだ娘たちを一人ずつ下におろし、フィアと場所を交代してもらう。

 当然その時にフィアにもキスをしてもらう。

 「ゆっくり休んできてくださいね。」

 「熱いから気を付けてくださいね。」

 そう言ってテーブルに紅茶を置いてくれるシロップにも礼を言って、キスしてもらった。

 「ソウタさん、これなんかどうですか?」

 砂糖漬けの果物をガラスの器に取り分けてくれたアニエスにも礼を言いながらキスをした。

 心から流れた血は、こうやって癒して傷を治療しなきゃいけないんだな。

 そしたら次からもう少し強くなれるのかもしれない。

 それにしても俺の嫁たちは俺をよく見てくれているものだ。

 だから俺は大丈夫なんだろう。

貞淑な妻たちとはいきませんが、ソウタのことを心配してくれる存在が居るって事だけでまだがんばれるでしょう。

そろそろユイがおませなことも言い出して家族の会話が楽しいです。

睦月ももう少ししたらちゃんと喋るようになるでしょうし、エッチな旦那様は子供の前でも平気らしいので、その辺に突っ込みが入れれたりするかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ