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【第8話】黒い陰謀

 翌日の朝、目が覚めると圧迫感があった。

 いや、圧迫感で目が覚めたんだと思う。

 目が覚めるといつもはフィアが腕に絡みついていることが多いが、今日は俺の上に覆いかぶさるように寝ている。

 まったく身動きが取れない状態。フィアはまだ深い眠りの中にあるようでルビーのような双眸はまだ閉じられている。


 サキュバスは成人後には人の精を受けてその命を長らえていくという事だが、実はその生態については良く判っていない。

 食べるものは全く人と同じものを口から摂取できるうえ、美味しいという感情は普通に持ち合わせており、好き嫌いもあるようだ。

 しかし、それらは体の成長とは関係がなく、日に最低一度の精を受けることで十分なエネルギーを得ているようである。

 その精をエネルギーに変換しているとなるといつ子供を作ることができるのだろうか。

 また、普通の妊娠期間があるとするとその間にはどうエネルギー摂取をすることになるのであろうか。

 人の常識を当てはめるしかないのだが、そうではないのだろうか?

 肌の温度を感じながら長い睫毛をもった少女の整った顔を眺めているとむずがるようにフィアは俺の上で一度小さく身を縮め、ゆっくりと伸びながらその瞳を開いていく。

 「おはよう、ございます。」

 焦点の合っていない目をこちらに向けながら、挨拶をしてきたのでつい、髪をなでながら返事をする。

 「ああ、おはよう。」

 フィアは頭をなでられまた目を閉じてしまった。

 「フィア?」

 その手を止めるとまた目が開いた。

 この状態については何とも思っていないようで、俺の胸に完全に乗っているというのに実に満足そうな表情でこちらを見上げた。

 「朝ごはんにされますか?」

 いいつつも、俺から降りようとしない。

 「いつまで俺に乗っているつもりか?」

 「降りろと命令されるまでです。」

 「じゃぁ、しばらくそうしていろ。」

 フィアはまたゆっくりと瞼を閉じていった。

 眠ってはいないようで俺の胸の音を聞いているようだ。

 唐突に腹が鳴る。

 「ん?」

 俺の腹じゃない腹が鳴ったようだ。

 真っ赤になったフィアが、目を閉じたままポカポカと俺の胸板を殴る。


 「フィア、今日はセキセンの国境を超えるつもりだ。あまり休憩を挟めないががんばろうな。」

 宿を引き払い、朝市の立っている通りで腹ごしらえをすました俺たちは一日休めることができた馬車を駆って西へと国境を目指していた。

 フセモクの港湾地区から海沿いに一刻ほど走り続け、道は狭く片側は寄せる波に洗われ、左手はずっと切り取られたような山肌や雑木林が交互に過ぎ去るばかりだ。

 景色に飽き始めたころにそれは突然起こった。

 結構きつい曲がり角を左に折れたところにそいつが居た。

 四日ほど前の酒場で腕を握りつぶしてやった奴だ。

 「た、助けてくれ。」

 こいつは何を言ってるんだ。

 俺たちからすれば、待ち伏せされたようにしか見えないのだがどんな上手い芝居でも騙されそうにない状況だ。

 「どうした?何から助けてほしい?」

 「俺の腕は、お前のせいでこの有様だ。パーティーからおいて行かれちまったんだよ。国境の手前まで乗せて行ってくれねえか。」

 「お前の腕がその有様なのは俺のせいではない。自分の行動が招いた結果だろう?他人のせいにしないでもらいたいな。」

 疫病の侵入を防ぐために国境には必ず両方の国側に治療院がある。

 ここに来れば大概の病気やけがの治療もできるし、コウリョウの近辺だと粉砕骨折を治療するには確かに高度な技量を持った治癒術師が必要だとわかるが、町には居ないのだろうか。

 「なぜコウリョウの町で治療しない?そもそもお前とあったのはトサンの町だろうに。ゴウウの町でも良かったんじゃないのか、ここにいることの不自然さが満点なんだが?」

 「だ、だまれ!お前のせいで冒険者稼業を続けられるかわからないんだ。仲間に捨てられる気持ちが判るか!?ここで一矢報いなきゃ俺の気が収まらないんだよ!」

 丸腰かと思ったこいつは懐から赤黒い魔石を取り出した。

 日常生活で使用する魔石は気温調節や煮炊きに使う、灯りや浄化に使うなど役割や用途によって大きさは違うものの、一様に丸く判りやすい鮮やかな色合いをしているものだ。

 しかし、この男の手に持っている魔石は明度の低い赤。そして磨かれたような球体ではなく涙滴型に歪に削り出され、細く絞られた側には角のように四本の突起が生えている。

 投擲時に進行方向を乱さないように、狙いやすくするための安定翼だ。

 「爆裂魔石か?」

 起動時に数秒で爆発する使い捨ての手榴弾のようなものだ。

 「これで死んでくれよ?」

 「そんなものをどうやって手に入れた?軍やギルドでも大規模討伐の編成を組んだ時しか支給されないはずだ。」

 「そんなことはどうでもいいんだよ。お前たちが死んでくれればあのお方は満足される。俺も治療を受けることができてまた、金を稼ぐことができるんだよ。」

 「あのお方だと?」

 この男の目が座っている。ちょっとやばい感じになってきやがった。

 仲間に見捨てられ、誰だかわからない「あのお方」とやらに爆裂魔石を使って俺たちを殺害する条件で治療を約束されたのだろうか。

 有体に言えば騙されているんじゃないのか?と思うのだが、この男の精神状態ではそのようなことを冷静に考えられないのだろう。

 戦闘魔石を容易に準備できるそいつは貴族か軍かまたは冒険者ギルドのそれなりの立場にある者だろう。

 だが、俺たちを狙う意味が分からない。

 政治的にも軍事的にも少なくとも俺は重要な立場にない。

 フィアについては論外だろう。

 ギルドの専属冒険者でもなし、何某かの立場にある連中に狙われる心当たりがなさ過ぎてこの男の行動の一切が理解できない。

 「じゃぁ、あばよ?」

 投擲のモーションを男が取ろうとしたところ、フィアが飛び出さんとした。

 爆裂魔石を起動させた男と、飛び出そうとしたフィア、風の魔法で障壁を起動しようとした俺。

 刹那にそれは起こった。

 街道が前触れもなく隆起し、土槍が男を貫いたのだ。

 どうと言う肉を穿つ音が聞こえ、串刺しになった男の手から起動された爆裂魔石がこぼれ、足元に落ちる。

 俺の起動した風の障壁が眼前に展開されると同時に猛烈な圧力を伴って周囲の空気が吹き飛ばされる。

 「っ!?」

 障壁の向こうで解放される炎と風圧。咄嗟にフィアを抱え込み、炎に背を向ける。

 こうしなければ万が一障壁を抜けた飛来物があるとフィアがけがをする。

 障壁を膨大な圧力が襲い、俺のMPがガリガリと削られる。

 一瞬とはいえ、これを凌いだ自分を褒めてやりたいと思ったころ、静寂が戻り、風の障壁の向こうには街道に大きな穴が穿たれ、あの男の姿かたちは見えなくなっていた。

 「ソウタさん!お怪我はありませんか?」

 俺の腕から這い出るように抜け出たフィアは俺の体中を触って確かめ、抱き付いてきた。

 「何故いつも私を!」

 「当たり前のことを聞くな。それより状況を確認しろ。土槍があの男を攻撃した。どこかに魔術師がいるぞ。」

 目まぐるしく表情を変えたフィアだったが、周辺を探る視線はさすがだ。

 「あそこです。」

 フィアの目に左前方の木立に紛れる人影が捉えられた。

 指さされた先を見ると、丈の長いローブで全身を覆った肩幅の異様に広い大男が茂みにたたずんでいるのが見える。

 ごつい石のような素材でできた長杖を片手で支えた魔術師は体格に似合わない機敏な動きで茂みから街道へと歩み出た。

 すっぽりと被ったローブにより表情はおろか顔さえ見えないが、並ではない魔力量をうかがわせる。

 「だれだ。」

 俺の誰何すいかにも言葉を発しない男を警戒しつつ、栗毛の馬を宥める。

 暴走したりしないだけこの馬は大した胆力を持っている。

 「そこらで拾った奴には荷が重かったか。男には手を出すなとあれだけ言い含めたつもりだったのだが。」

 独り言をつぶやき、まるで俺たちには興味がないかのようなふるまいを見せた魔術師は俺たちが来た道を帰っていくように歩いて行こうとする。

 馬車の横を歩き去り、振り返る俺たちを無視したまま歩み去ろうとしている。

 「おい、お前無視してんじゃないよ。」

 話しかけられ、今はじめて気が付きました。という態度で歩みを止める魔術師。

 馬車の後ろまで歩を進めた魔術師はおもむろに振り向き、それでもこちらを向こうとはしなかった。

 「なにかあり申したか?」

 なんて言いぐさなんだ。

 「こんなことがあって、よくそんなことが言えるものだな。」

 「卿に害をなそうとしたものでな、躾のできていない犬には相応の体罰が必要という事だ。気を悪くせんで頂きたい。」

 フィアはこの男から感じられるプレッシャーに敏感に反応し、すでに大剣を抜刀している。

 「お前はあの男について何を知っている。あの男が言っていた“あの方”と言うのはどこの貴族のことを言っている?」

 「某は、詳しい事情などについては何も知らんのだ。卿に害をなす者が居れば排除するように言い含められておるだけでの。これ以上のことは聞かぬが良いだろうて。」

 疑問をたくさん置いてローブの男は再び歩き始め、もう声をかけても振り向くことはなかった。

 ローブの男は「男に手を出すな」と言った。

 この場合の男と言うのは俺のことだろう。

 では、爆裂魔石まで持たせて襲わせようとしたのはフィアの方なのか?

 増々もって判らないことばかりになってきた。

 「ソウタさん、死んだ男が魔石を投げつけようとしたときにどうして私をかばったりしたのです。こういう場合には私が前に立つべきではないでしょうか。」

 さっきのことを思い出したのかフィアは睨むような視線で俺に意見をしてくる。

 そんなことを言われても無意識のうちにやってしまったことではあるし、フィアが前に立つべきかどうかは何を根拠にそう考えたのだろうか。

 「フィアが前に立つという意味が分からないな。俺たちはパーティーではあって、主従関係にあるわけではないだろう?だいたい、そんなことを考えて行動したわけじゃないし、次にそういうことがあったらまた、フィアをかばうかもしれない。それは契約を結んだとしても同じだろうと思うよ。」

 「むぅ。何だか納得がいきません。こんな方と契約を結んでもすぐにご主人が死んでしまいそうです。」

 無茶言うなよとしか言えない。


 「ぶるるる」

 馬が小さく嘶き、前へ進んでいいのか?という表情で俺たちを見る。

 本気でこの馬の胆力には恐れ入るばかりだ。

 爆裂魔石の破裂の際にも炎、音、光などが目の前で炸裂していたし、風の障壁で守られていたとはいえ、身じろぎもしないなんて肝が据わっているのか鈍いのかこちらが心配になるレベルで落ち着いている。

 「フィア、今は俺たちが言い争っている時ではないようだ。」

 「そ、そうですね。先を急ぎましょうか。」

 なんだか、夫婦げんかの後のようなバツの悪さをお互いに感じながら、そそくさとフィアは荷台に引っ込み、俺は御者台に戻り手綱を取った。

 道の真ん中に空いた穴を木立の側へ避けながら馬車を進ませ、会話もないままに二刻ほどひたすら馬車を進めた。

 いよいよセキセンとの国境が見え、数か月に通れなかった検問を再度受けることになる。

 「おや?おまえさん方、久しぶりだな、この間は引き返したようだが今度はちゃんと身分証明書を準備できたのか?」

 「ええ、お蔭さまで時間はかかりましたが二人とも冒険者カードを用意できましたので確認をお願いします。」

 御者席へ顔を出してきたフィアから冒険者カードを受け取り、俺のと合わせて兵士に預ける。

 別の兵士が荷台の積み荷などの確認を行う間に俺たちのカードの確認が進み、カードの確認を終えた兵士が冒険者カードを持って戻ってきた。

 「お嬢ちゃん、Eランクスタートなのか?こりゃすごいね。」

 「はい、元々この子は私と一緒に狩りを行っていましたのでアドバンテージはありましたから。」

 「じゃぁ、気を付けていくんだぞ。トサンに比べて魔物の出る山などは少ないから道中などは楽なもんだが、フセイへ抜けるんだったらオオヒの山辺りには気を付けるんだ。」

 「そこまで行くと魔物が多いのでしょうか。」

 「ああ、聞いた話じゃオオヒの山の山頂にヒドラだかドレイクだかが棲みついたらしくてよ、海岸線を回る連中にも被害が出ているらしい。」

 「いきなりのドランゴンクラスか。ご忠告、ありがとうございます。」

 「いいってことよ。嬢ちゃん、気を付けるんだぞ。」

 「はい、ありがとうございます。」

 追い返された時にはあんなにも高圧的だったにもかかわらず、二人とも無事に通行できるとなるとこの兵士たちの変わり身はどうだろうか?

 まぁ、それだけ厳格な審査によって不正や密輸品の取り締まりにあたっているという事なんだろう。

 国境の兵士が言うとおり、山間地を馬車でゆるゆると流しているというのに、魔物御三家さえも現れる気配がない。

 セキセンの首都キンタクまでも約二刻、陽も大分傾き、空が赤く焼け始めるころに到着することができた。

 トサンに比べてはるかに大きな規模の街が城下町として整備されており、様々な商いの中継基地としての役割も果たしていることから、空が藍色から黒へと移り変わってもその賑わいは衰えることを知らないようだった。

 「随分とにぎやかな街なんですね。宿は取れるのでしょうか?」

 「うーん、これだけ栄えているんだから、そうした施設も十分にあるとは思うんだが、どのあたりに多いのか聞いておくべきだったな。」

 今、馬車を進ませている街道はあきらかに商売がメインの通りであるらしく、魔石灯によって昼間のように明るくなっている。

 「すまないが、宿場はどちらの方だろうか?」

 行き交う人を適当に捕まえて宿の多い場所を聞いてみる。

 「それならこの街道を四半刻(30分)も行けば犀の川を渡る。川の両岸が宿場町になっているから気に入った宿を探すといいよ。」

 丁寧な説明をもらうことができ、道も間違っていないことが判ったおかげで馬車を進めるにも気が楽だ。

 礼を述べ、馬車を進めると本当に川が見えてきた。

 その両岸にこれでもかと宿が軒を並べ、嗜好を凝らした佇まいを競っているようだった。

 節約を心掛けている都合、見栄えの良い宿や街道に近いところは避け、少し海側へ下るように進み、大人しい風情の宿へと入ってみた。

 宿の入り口に受付があり、女性が宿帳を守っているようである。

 「今夜、部屋は取れるだろうか。」

 この女性に話しかけたところ、上品にお辞儀をされて中へ通された。

 「お二人様でよろしいでしょうか?」

 「馬車があるので馬屋も借りたいのだが、大丈夫か?」

 昼間のこともあるから馬にもゆっくりと休ませてやりたい。

 「大丈夫ですよ。一泊でお部屋をご利用ですか?」

 「いや、二泊で頼もうかな。」

 「承知いたしました。冒険者の方であれば冒険者カードを拝見しても?」

 二人分の冒険者カードを提示すると、女性自ら宿帳に写しを書き入れた。

 「こちらが部屋の鍵でございます。」

 手渡された鍵を受け取り、部屋へと案内してもらう。

 二階へ上がり、最初の部屋へと入ることになった。

 案内の女性はすぐに引き返して行ったのだが、夜の食事はどうしたものだろうか。

 部屋はほどほどに広く、窓も大きくとられており開放すると城下町の様子も楽しめる。

 「いいお部屋です。」

 フィアにも気に入ってもらえてなによりだ。


 手荷物を取り敢えずはベットの上に置き、夕食を食べるために階下へと降りる。

 先ほどの女性に食事について聞いてみると、この界隈では宿場と酒場が少し離れているためにほとんどの宿泊客は宿の食堂を利用するとのことだった。

 それではと、食堂に繰り出すと時間も時間だからだろうか随分の客が食事を楽しんでいる最中であった。

 窓際には少人数用の席が配されており、自然と外の見える席に着くことになったのだが、夜風も心地よくいい席を得られたものだと思う。

 給仕の女性がやってきて品書きをお茶と共においていった。

 この宿の自慢の料理などがあれば聞きたかったのだが、愛想のないことだ。

 品書きを開くと、一通りの食事が付いた膳と酒と共に食べるような一品物がいくつかあるばかりで選ぶような程の数ではなかった。

 「俺はエールを一杯と膳をもらうことにする。フィアも膳でいいか?」

 「はい。それでお願いします。」

 品書きを閉じると同時にさっきの愛想がなさそうな女性が注文を取りに来た。

 ちょっとすごくない?


 少し待つと二人分のご膳、大きめのワンプレートに仕切りがされており、様々な料理が盛り付けられているセットが配膳された。

 俺のエールとフィアの果実水も揃ったところで器を合わせ、乾杯した。

 「食事を食べながら聞いてくれるか?」

 熱心に料理と格闘していたフィアはフォークを置き、こちらに顔を上げた。

 いや、食べながらでよかったんだが。

 「今日の昼間の出来事を思い出してほしいんだが、自爆野郎を魔法使いが止めた時に“男には手を出すな”と言ったのを覚えているか?」

 「いいえ、私は聞いていませんでした。」

 「あの大柄な魔法使いは確かにそういったんだ。そこから考えるに、あの襲撃で目標にされていたのが俺でなかったとしたらフィアを狙っていたのではないかという事になる。」

 「私をですか?」

 「どのような理由でフィアを狙うのかは判らないが、俺をも手に掛けようとしたためにあいつは魔石を持った男を止めたんだと思うんだ。」

 話の流れからすると、怪我をした男はパーティーから脱落し、困窮しそうなところを魔法使いに誘われたか利用されたかしたのだろう。

 魔法使いもまた、やんごとない身分の誰かに依頼されてフィアを狙うと同時に、俺にその累が及ばないように監視も行っていたのではないだろうか。

 俺たちがパーティーを組むようになってからそうした要件が発生したのだと考えると、あまりいい話ではないが、それまで厄介になっていたウォルフ家の誰かという事になりはしないだろうか?

 そうした俺自身の考えをフィアに聞かせる。

 「ソウタさんのおっしゃることについては理解できます。しかし、お館様はクノエの大陸へ行くようにソウタさんへご指導しておられました。そのような方が私ごときに刺客を向けるものでしょうか。」

 「俺もそれについては同感だ。しかし、ウォルフ家の貴族と言うのはお父様だけではないと思わないか?」

 「!?」

 「しばらくは周囲への気配りを怠らないようにしよう。まずは食事を終えて早々に部屋に戻りたいのだが、どうだろう。」

 二人ともすっかり食事をとることを忘れてしまっていた。

 内容が内容だけにもうちょっと考えを深めてみる必要と、このおかしな襲撃に対する今後の対応や調査なども話し合っておきたかった。

 このあたりをしっかりと詰めるために二泊でこの宿に逗留することにしたのだが、自由にできる間諜などもいないし、都合が悪いことになった。


 部屋に戻り、作り付けの浴室を利用するために俺は服を脱ぎ、浴槽に湯を張る。

 桶で湯を頭からかぶり、宿の石鹸で体を洗い、善後策を練っていたのだが良案が浮かぶとは思えなかった。

 背中を洗われ、湯をかけてもらい、代わりにフィアの背中も流してやる。

 控えめな胸やお腹、足の先までこすったころに恥ずかしそうに洗われているフィアと目が合った。

 「――――――――――――!」

 「あの、あの、前は自分で洗えますので。」

 「うわぁ!いつからいたんだ!!」


判りやすい陰謀だと思うでしょ?

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