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Contractor with blood(血との契約者)  作者: 小西敬
成り上がり貴族の章
74/161

【第74話】娘、カーリオ

いつもお読みくださいましてありがとうございます。

お蔭さまで27,600PVを超えております。これを励みに更に話数を重ねてまいりますので、読んでやってください。

 アニエスとシロップの妊娠が判ってから都合8か月がたった。

 二人とも大事なく健やかに過ごしてくれており、フィアが先輩風を吹かしているのがどうにもおかしい。

 アニエスもシロップもフィアの妊娠が判った時からずっと側に居た訳だし、その妊娠期間も出産時も、出産後の育児もずっと一緒にしてきたわけだから、全てをその目で見てきているのだが、その時々の自分の様子や気持ちなどを語っているのだ。

 横で聞いていると微笑ましい部分も多いのだが、ともするとその時に俺がどう言ったとか何をしてくれたのだとかまでも覚えていて報告のようにしている。

 それを聞いたシロップが同じことをしてもらえたとか、アニエスが言ってもらってないとか一喜一憂しており、段々と俺への弾劾裁判のようになりつつあるように思えてきたのだ。

 「フィア、色々とアドバイスはありがたいんだが、シロップにもアニエスにも同じことをするかは判らないし、同じことを言うかはその時の状況で違うと思うんだが。」

 「もちろんそうです。でもですね、嬉しかったことはしてもらいたいし、言ってもらいたいと思いませんか?」

 それはそうだろうが、我が家で最初に子供ができたのがフィアで、その全てが初めてのことばかりだったんだ。だからこそ判らないことだらけで不要なことにまで心配してみたり必要なことに気が回っていなかったかもしれない。

 これまでの経験を活かせば、アニエスに言っていなかったことがあったとしても心配していることは変わらないし、シロップにしたことはアニエスにもしていると思うのだ。

 如月も含めてこの四人の嫁たちは俺にとってかけがえのない、誰とも同じでない愛情を持っていると思っている。

 それを伝えると「そんなことは十分に判ってます。」と、四人に異口同音に言われてしまった。

 それじゃぁ、何だと言うのだろうか?

 代表してフィアが言う。

 「私が妊娠した時にはソウタさんは慌てふためき、たくさんの心配をしてくれました。如月さんが一夜にして子供を産んだ時にも、今度からは自分の居るところで産んでくれと言われましたよね。そうしたその時々の気持ちをそれぞれに分けて欲しいのです。

 四人を四人とも大事にしてくださっているのは判っているのですが、それでも自分だけに特別な何かをそれぞれが分け与えて欲しいと思う物なのですよ?」

 そう言うモノかと思う部分もあるが、いつか誰かに言ったことを別の妻に言ってしまうかもしれないじゃないか。

 俺の妻たちはそうしたことをいつも話し合っているので、誰に何を言ったかなどみんなが知っている場合が多いのだ。

 それぞれがそれを自慢したりはしないが、それぞれが報告し合うお蔭で迂闊なことは絶対に言えないのだ。が、日常の会話の全てを覚えていられるわけもなく、それが元で慎重になるあまり会話が減るのも本末転倒ではないだろうか。

 それを伝えると如月が上手いこと言ってくれた。

 「あら、あなたがそれを気に病む必要などないわよ。同じことを言われたとしてもその時々の状況は違うわ。受け取る側にしたってその瞬間に言われたことが嬉しかったならば、誰に言ったことと一緒だったって嬉しいものだわ。

 あなたが私たちを大事に思ってくれているのは誰も疑ってもいないわよ?そんなことを気にしていたらあなたのように何人も妻のいる貴族の嫁なんてやってられないわよ。

 あなたがフィアちゃんに言ったこと。アニエスちゃんに言ったこと。シロップちゃんに言ったことも、私に言ったことと同じだったとしても、言った場所もその時の様子もあなたが考えたこともきっと違うのよ。

 だから、どこの誰からよりもあなたに掛けてもらう言葉に意味があるの。四人ともあなたのことを愛しているわ。だからもっと会話を楽しみましょう。

 皆でいる時、それぞれと居る時、目を見ながら会話してくれればそれでいいのよ?」

 「ああ、それはそうだな。すまないな、変なことを言って。」

 「ソウタさん?私に対して今のお気持ちは?」

 「シロップ、そのお腹で俺の世話をするのは大変だろう?少しぐらい手を抜いてもいいんだぞ。体を大事にしてくれよ。」

 「はい、ありがとうございます。でも、私もソウタさんに触れる機会がほしいのです。今は夜に可愛がってもらう訳にはいきませんが、それで大事にされすぎても寂しい物です。」

 「そうか、そう言ってくれると嬉しいな。俺の子に気を付けながら、同じベットで休んでくれるといいよ。」

 「そう言う風に言ってもらえるのが嬉しいんです。ありがとうございます。」

 「私には何かありますか?」

 「アニエスにもあるぞ。アニエスは俺の嫁の中で一番痩せて見える。ちゃんと食事はとれているのか?俺のいた世界では体重が増えすぎてもダメだと言われるが、痩せすぎていると産むときに大変だと聞いたこともある。まだ二か月ほど面倒を掛けるんだから、その間にちゃんと食事をして体力を落とさないようにしてくれよな。」

 「はい、気を付けます。時々抱き上げて十分に食事がとれているか確認してくれますか?」

 「うん?抱き上げて大丈夫かな。転ばさないように気を付けるか。」

 「あ!?私もして欲しいです。」

 「わかった、わかった。アニエスもシロップも毎日確認することにする。それで足りていないと思ったらご飯を調整してよく食べてもらうからな?」

 「はい!はい!私も如月ちゃんも抱いてほしいです。」

 「フィア、お前と如月は毎日抱くだけじゃないだろう?」

 「う~ん、でも可愛がってもらうときに抱き上げるところから始まってもいいかもしれないわね。」

 「でしょう?そうしてもらいましょうよ。」

 君たち。すでに毎日そうしているようにしか思えないのですが?

 俺の視線に気が付いたようで如月が舌を出しながら「もうしてもらってたわ。」と言った。

 じゃぁ、じゃぁ、と次の手を考えているフィアの頬を柔らかくつねると「ああんだってぇ」とのたまう。

 「みんなに言っておきたいんだが、俺はそれぞれ四人のことが大事だし、如月もシロップもアニエスも、もちろんフィアも。誰もが居なくなってもらっては困る。みんなを愛しているし、みんなそれぞれの愛おしいところやどのくらい大事な存在かを判っているつもりだが、一人一人の俺に対する思いに負けていない自負はあるよ。

 だから、シロップとアニエス。二人は今は元気な俺の子を産むことが一番俺の望んでいることだと自覚してくれるか?シロップと俺の子供、アニエスと俺の子供はユイのように、睦月のようにフィアと如月を俺のためのかけがえのない大事な女性にしてくれているよ。

 二人も俺のためにそうなってくれるかな?」

 「「もちろんです。」」

 俺の妻たちは過不足なく俺にとって大事な存在だという事を全員で話し合い、全員で思いを新たにした。

 結果的に夜のベットの人口密度は今までと全く変わらなかったし、如月が俺と一つになったことでトロトロに溶けて眠りにつき、フィアがその次にトロトロに溶けているのも変わりない。

 俺の左腕を枕代わりに休んでいるシロップが母親モードのおっぱいを楽しませてくれて愛撫とキスだけで溶けているのも、アニエスがボリューム倍増の期間限定サービスタイムを俺に分けてくれ、そのお返しにと存分に可愛がったことで満足して休んでいることも今までと変わりなかった。

 今までと変わりのない事をしていたとしても、言葉にしてみることでお互いを新たな気持ちで感じあえるという事だったのだろうか。俺としても気持ちが新たになって、シロップのオムネもアニエスのオムネも感慨も新たに堪能することができた。

 フィアの涎攻撃とユイの涎攻撃に睦月の涎が加わって俺の寒さだけは今まで以上に変化を遂げているようだ。

 風邪を引いたらもう、誰の涎のせいかも判るはずがないだろうな。


 翌朝からシロップとアニエスの二人については特に体重と体調を気にするようにした。

 アンニさんにも協力体制を依頼してアリスさんやキョウコさんをあと二か月ほどの出産まで張り付かせることにしたのだ。

 お城へ上がる際には俺かフィア、如月の誰かが付き添い、二人に何かが起こるような事態を完全に回避するように屋敷のみんなにも気を使ってもらっている。

 散歩に出かけるとき、買い物に馬車で出る時、庭で運動のために歩き回るときなど数名が二人を見守り、転んだりしないようにしてくれている。

 二人には過保護すぎると言われもしたが、シロップは気を許すと体重が増えてくるし、アニエスはどうにも体重が増えてこない。足して二で割ってくれと言いたいところだ。


 それからもう、ひと月半も過ぎたころだろうかシロップが産気づいた。

 「あ、ああ!痛い、ソウタさん痛いです。」

 「ええ?早くないか?ちょっと待ってろよ。」

 夕食の後で寝室に戻った俺たちがお茶を飲みながらユイのパジャマのことなんかを相談しているときのことだった。

 椅子に掛けていたシロップが急に痛がり始め、破水が起こったらしく激しい痛みに耐えているようだ。

 出産のとき用にと準備していたベットにシロップを抱えて急いだ。

 椅子から抱き上げる際にそっと抱き上げたのは言うまでもないが、ベットまでも揺らさないように運んだつもりだ。

 キョウコさんが駆けつけてくれて、アリスさんと手分けしながら出産準備を整えていく。

 アンニさんが女医さんを連れてきてくれたのは僅か30分後のことだった。普段からみんなが気にかけてくれているおかげという事だろうな。

 「公爵様、予定より少しばかり早うございます。母子ともに危険な状態ではございませんがお子が小さいままに生まれることもありますので、出産後はお乳を飲み慣れるまではお会いになる方を増やさないようにした方がよろしいでしょう。

 それと外気が直接お部屋に入らないように気を付けてください。」

 「そ、それで、シロップは大丈夫なのですか?」

 「こうしゃくさま・・・・・・・。落ち着いてください。フィア様の時もそうでしたが、旦那様が慌てますと母親は不安になる物ですよ。半月ほど早いと言うだけですから滅多なことなどあろうはずもありません。

 シロップ様のお手を取って、励ましてあげてください。」

 「そうだな、ちょっと落ち着こう。シロップ、聞いた通り問題ないらしいから安心しよう。俺がずっとここに居るからな。」

 「あぅ、ありがとうございます。っつう。ソウタさん、手を離さないでくださいね?」

 シロップの左手をしっかりと握って見せ、髪を撫でてやると痛みをこらえながらも微笑んで見せた。母親って本当に強いよな。

 フィアの時と同じで、痛みがやって来る間隔が少しずつ短くなる。

 一時間としないうちに連続した痛みが続くようになり、シロップは両手で俺の手を握りしめているのだが、こんな握力があったとはと、驚くほどに握りしめている。

 うんうんと唸りながら息んでいるシロップの髪を撫で、額に浮かぶ汗を拭う。

 そのたびに少しだけ嬉しそうにするのが愛おしくてならないが、本人にとってはとてもつらい時間のはずだ。話しかけることはせずに髪を撫で、汗を拭う。

 一際大きな痛みに絶叫するシロップの肩を抱きしめ、応援すると悲鳴が二重になった。

 「ほぎゃぁ!」

 よし!生まれた。

 あっけにとられ放心状態になっているシロップにキスしてやり、こっちに視線を向けたシロップに微笑みながら声を掛ける。

 「よくやった!ありがとうシロップ。シロップにそっくりなお姫様だよ。」

 「ソウタさん。嬉しいです。私に言ってくださった”ありがとう”のなかで最高に嬉しいありがとうを貰いましたね。」

 そう言って涙を流すシロップにもう一度、心からのキスをプレゼントした。

 汗と涙を綺麗にしてあげていると、女医さんが看護師さんと手早く臍の緒の始末をし、産湯で綺麗にした赤ん坊を産着に包み、見せに来てくれた。

 「おめでとうございます。綺麗な赤ちゃんですね。」

 俺が背中を支え、シロップを起こしてやると自然と両手が伸びて赤ん坊を抱きしめていた。背中が楽な様にベットの傾斜調整機能を使って立たせ、枕を腰に入れて寄り掛からせる。

 「ねぇ、見てください。」

 シロップが俺に自分の産んだ子を見せようとする。

 俺はベットの縁に腰を下ろし、シロップに並んで赤ん坊をよく見る。

 「鼻筋と目元は本当にシロップに似てるようだな。口元が俺に似てしまったんじゃないか?」

 「あら、私はソウタさんの口元が好き。上手にキスしてくれますから。」

 「おいおい、この子に関係ないだろうに。名前を考えないといけないな。」

 「ちょっと早く生まれてしまいましたからね。お願いします。」

 医師や看護師の皆さんが挨拶をして帰って行かれると、フィアや如月、アニエスが見舞いに来てくれた。

 「わぁ!綺麗な子ですね。シロップちゃんみたいに可愛くなりますね。」

 フィアの言う通り、かわいい子に育ってくれると良いと切に願う。

 「ユイと睦月はどうしたんだ。」

 「アリスさんとキョウコさんが見ててくれます。子供は思わぬ事をする場合もありますから、もう少ししてからご対面です。」

 嫁たちも気を使ってくれているようで安心だ。

 しかも、医師の説明だと半月は早く生まれたが子供の健康状態はとても良いので、先に説明したほどの気を付ける必要ないだろうという事だった。

 「シロップちゃんに先を越されてしまいました。私が最後にお母さんになるんですね。先輩の皆さまよろしく教えてくださいね。」

 「アニエスちゃん、私まだ何が何だかわかりません。今度お話を聞いてください。」

 「わかったわ。シロップちゃんも赤ちゃんも元気なことが判ったし、私たちは向こうに行ってるわね。」

 「みんなありがとうな。寝る時間になったら一度そっちに行くから。」

 「はい、よろしくお願いします。」

 フィアには毎晩必要なことだし、他のみんなも心配してくれたんだからお礼はしておかないといけないしね。

 またシロップと赤ん坊と俺の三人になり、シロップは赤ん坊におっぱいを上げ始めたようだ。見るからに元気そうな赤ん坊は夢中でおっぱいを飲んでいる。

 母親が子供におっぱいを飲ませる姿と言うのはどうしていつ見ても神々しいのだろうかと思わせられる。

 フィアがユイに飲ませる姿も、如月が睦月に飲ませているときもやはり聖母のようだと思う物だ。シロップも誰に教わった訳でもないだろうに上手に赤ん坊を抱き、幸せな顔をしているのだ。

 赤ん坊を優し気に見つめながらシロップが語り掛けてくる。

 「ソウタさん、私こんなにたくさんの幸せを感じられるなんて思っても見ませんでした。農家の六人兄弟の六番目なんて両親にしてみれば恥子はじごですよ。そんなに産んでどうするのか?なんて言われていたそうです。

 それでも大きくなるまで育ててもらえただけ感謝していました。

 だからどこへ丁稚奉公として出されてもその後にどうなっても仕方がないんだと思って、いたんです。

 メイドの学舎に通う事になったのは両親のせめてものと言う気遣いだったんだと思います。どこかの貴族家に上がり、街の誰かと結婚するか貴族様の目に留まって妾になるか。

 生きてさえいければ文句は言わないつもりでした。

 ところがどうでしょう。

 たくさんの仲のいい姉妹のようなみんなに囲まれ、優しい旦那様が公爵様だなんて。そして私に一人目の子供が授かり、出産を見届けてくれるソウタさんのような旦那様に巡り合えるなんて想像もできませんでした。

 今こうして隣に居てくださることが信じられないくらいに幸せなんです。」

 とてもいい笑顔でそう言われると、ことらもとっても嬉しい。

 またシロップの髪を撫で口づけを交わすと、向こうから舌を入れてきた。

 「っ!?」

 お茶目な表情をしたシロップと目が合い、思わず微笑んでしまったのは不覚だ。実にあざとい。

 ゆっくりとお互いの舌を絡めながら、ねぎらいの気持ちを籠めて行く。

 するとシロップが自然受け身になり、俺がシロップの口中をくまなく愛撫する形になった。

 「ふあぁ、気持ちいい。やっぱり私、ソウタさんに受け入れてもらえてよかったです。」

 「また直ぐに可愛がってあげられそうだな。楽しみにしてるよ?」

 「私だって楽しみです。」

 お互いの顔を見て笑い合うとシロップが送り出してくれる。

 「まだまだ妻はいるんですからね。頑張ってきてください。」

 「おう、後で戻ってくるからな。」

 「はい!いってらっしゃい。」


 フィアたちの待つ寝室に帰るとそれぞれに椅子に腰かけ、楽しそうに話し合っている様子だった。

 「みんな随分楽しそうだな。何の話?」

 「あら、お帰りなさいあなた。シロップちゃんもお母さんになったしね、アニエスちゃんももう少ししたら生まれるでしょう?子供たちが落ち着いたらシロップちゃんとアニエスちゃんのご実家に孫を見せに行かないかって話してたのよ。」

 「如月ちゃんにとっても、アニエスちゃんの実家に行くのは里帰りでもある訳だし、アニエスちゃんのお父さん、きっとビックリすると思いませんか?」

 「そりゃ驚くだろうな。如月がこんなかわいい子だったと知ったら返してくれって言われそうだよ。」

 「ば!?何言ってるのよ。私はあなたの妻。どこにも行かないんだからね。睦月まで産ませておいて変なこと言わないでちょうだい。」

 「あははは、悪かった。そんなつもりなんて絶対にないからこそ言える冗談だよ。如月は俺が死ぬまで俺のオンナで、ヤマノベ家の家宝だ。それからもずっとヤマノベ家を守ってくれるんだろ?」

 「そ、そうよ、判ってるんならいいわ。」

 照れて真っ赤になりながら言われても可愛いとしか言いようがないよ。

 それから俺も混じっていつ頃に行くのがいいだろうかなど、季節や気候の話を踏まえてより現実的な旅の話になるように考えてみた。

 今は秋の始まりごろだ。冬の移動は無いので当然春になってからという事になるのだが、そこまで来れば子供たちも生まれて半年過ぎる。外に出ても心配はないだろうという事で梅雨の季節に入る前、日本で言う5月のゴールデンウィークを狙って旅行に出ようという事になったのだった。

 ユイはそのころなら1歳半になるな。最近おしゃべりが大好きなユイは「きゃーらじ」がりっぱに「きしゃらぎ」に進化している。

 フィアのことはママとハッキリ発音しているようだが、俺のことはまだパパと呼んでくれない。いつも俺に用事があるときはじっと俺を見つめ、目が合うと「あい!」と言いながら両手を突き出してくるのだ。

 それも垂涎モノの可愛さなのだが、パパと呼んでも欲しいのだ。

 そんな話で盛り上がって夜も更けると子供たちも落ち着き、全員が布団へと入る。

 アニエスは重そうなお腹を抱えながらだから、横になるときはいつも俺が支えながらだ。夕べまではシロップも同じようにしていたが、後ちょっとでそれも終わりになる。

 フィアに生まれたのはサキュバスなんだから女の子で当たり前なんだが、如月にも女の子。シロップにも女の子だった。

 そう言う遺伝的な何かが俺にあるのだろうか。

 アニエスも女の子を産んだりすると、次からもそうなるような気がしてならないのだ。

 嫁に行く娘たちのことを想うと、泣けてくるじゃないか。

 如月とたっぷりと楽しみ、フィアともいつも通りかそれ以上に楽しんだあとに、アニエスを大事に可愛がると全員がシロップのところへ早くいくようにと俺を送り出す。

 ユイと睦月の寝顔を確かめ、頬にキスをしてからシロップを休ませている隣の控えの間へと歩いた。


 シロップは寝てはいないものの、横になって右脇に娘を大事そうに抱え休んでいた。

 「どうした?疲れてないかい。」

 こちらを向いたシロップは微笑みながら小さく首を左右に振った。

 「ううん。大丈夫。それより見てよ、お腹が元に戻ったの。体重もちゃんと戻っているかしら。」

 もうそんなことを心配しているのかと思うと、おかしくなってちょっと笑ってしまった。

 シロップは「大事なことなのよ!」と頬を膨らませていた。

 「大丈夫だよ、すぐに元に戻るさ。育児も大変だからね、それより体力を落としたりしておっぱいが出なくなったりしないように気を付ける方が優先だぞ。」

 「判ってるもん。この子が大きくなるのが楽しみでしょうがないのよ。ソウタさんと一緒だからあんまり心配してないけど。」

 「そうそう、春過ぎくらいにシロップとアニエスのご両親に孫を見せに行こうって話してたんだよ。」

 大きく目を見開き、喜んでくれているようだ。

 「ホントですか?嬉しいです。待ち遠しいですね。」

 もう春になるのが待ち遠しくて仕方がないという顔をしている。髪を撫でながらシロップに子供の名前について相談する。

 「シロップってご両親はどんな意味でつけたのかな?」

 「私は聞いたことが無いんです。砂糖みたいだって小さいときは良く揶揄からかわれましたよ。」

 ちょっとヤなことを思い出したと言う表情をしたが、髪を撫でられていることで機嫌はすぐに戻ったようだ。

 これは娘にシュガーなんて付けた日には泣かれるな。と言うくらいには気が回る俺だった。

 「この子の名前なんだけど、カーリオにしたいな。」

 「カーリオですか?どんな意味があるの?」

 説明がまた難しい。

 「本当ならカリオペーなんだが、昔の神話に出てくる女神の名前なんだ。姉妹9人の女神でね、カリオペーは美しい歌声の女神さまなんだよ。元々は発音の難しい国の言葉だったんで、言いにくいしヤマノベっていう名前との相性もあるだろ?少しだけもじってカーリオ=ヤマノベにしたいんだよ。」

 「フルネームにするとおかしくありませんね。いいんじゃないですか?」

 「よし、では俺たちの初めての子はカーリオとするね。元気に育てよカーリオ、愛してるぞ。」

 シロップの腕の中でぐっすりと眠る我が愛娘に向かい、名前を呼んでやると腕だけが上下に動いた。

 眠っているからか、了承の合図か否定されたものかは判らない。

 シロップと顔を見合わせて笑ってしまったのだった。

 今度、アニエスの子も女の子だったらもう、どうしようという思いで深いため息が出そうである。

 そんな俺を不思議そうに見つめながら、シロップは自分の考えを口に出してくる。

 「アニエスちゃんの子供もきっと女の子です。妊娠が判ってから悪阻つわりもなかったですし、安定期に入るまでもとっても楽そうにしていましたから。」

 それには俺も同意するよ。

 じゃぁ、次も女の子と思って名前を考えることにしよう。

シロップにもようやく生まれました。

という訳で、次にはアニエスもお母さんになるのでしょう。

もう、名前考えるの辛いっすよ。

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