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Contractor with blood(血との契約者)  作者: 小西敬
成り上がり貴族の章
69/161

【第69話】解放の光の最期

いつもお読みくださってありがとうございます。

22,000PV越えました。また最近ブクマしていただけた方もいらっしゃって感謝でございます。

これからもお読みくだされば嬉しく思います。

 「お久しぶりにございます。お兄様がご自分のお力で公爵の御位みくらいを極められたとお伺いいたしました。」

 「アーデルハイド?どうしてお前がここに居るんだ。」

 馬車から駆け降りてきた「妹だった」女性に抱き付かれ、懐かしまれているのだがお父様との約束が有効であれば、これはよろしくない事態と言える。

 思わず癖のように鑑定眼を発動し、正体を確かめてしまったが本人に間違いがなかった。

 そうであればお父様との話し合いの後、わずか二日や三日で訪ねてくるアーデルハイドに違和感しか覚えることができなかった。

 俺の胸に擦り付けるように自分の顔を埋めようとしているアーデルハイドを引きはがし、不満たらたらな顔を正面から見据える。

 「お父様と、母上やアーデルハイドとは会わない約束をしたんだがな。これはどちらが約束を違えたことになるのだろうな。」

 「そのようなことを仰らないでください。お兄様がこちらの世界にやってこられ、私のお家にいらっしゃっていただけたからこそ今があるのではありませんか。

 わたくしもすでに年ごろを迎えております。お兄様に愛していただく資格は十分にあるのです。」

 ん?何を言ってるんだ。

 「アーデルハイド、お前は私が妻を持って、子を成していることを知らないのか?」

 「そのようなこと!何も無かったことにすればよろしいのです。そのために私が今、ここにお迎えに上がったのではありませんか!」

 アーデルハイドの目の色がおかしい。

 「おい、衛兵。」

 「は!?何でございましょう。」

 アーデルハイドを抱いた格好のままではあるが、ここまで連れてきた兵たちに声を掛ける。

 「これはどういう事だ?私はウォルフ侯爵様とのお約束で、この場所についても口には登らせていないはずだが、どうやってここを知って妹を連れてきたのだ。」

 自白強要魔法の準備を整えながら気を高めていく。

 解放の光がトサンから去ったと言うが、調べた訳でもないだろうし実害が無くなった時点で捜査の手が緩むのも当たり前のことだ。

 それをしなかったのは俺と、陛下の放った間諜の仲間たちぐらいだろうと思う。

 何も言い出そうとしない兵たちに自白強要を強いる。

 「お前たちは誰の命を受け、アーデルハイドをここに連れてきた?言え。」

 10人に満たない兵に魔法が効力を及ぼして、最年長の兵が口を開いた。

 「俺たちはセイトの都のご領主にヤマノベ公爵の力をぐように命を受けている。ヤマノベ公爵の弱点と思われるところはそう多くないので、目の届く範囲に影響を及ぼすのは難しいと考えた。

 しかし、数年前に世話になったウォルフ家にはその時に討ち捨てた娘がいることは把握している。これを利用して情に訴えかけるのは今の家庭に波風を立てるに、誠に都合が良いのではないかと思える。

 この娘は見てわかるようにお前に懸想しており、お前の嫁たちに深い嫉妬と恨みつらみを募らせているのだ。これを利用しないのは政敵の常道に反するとは思わないか。」

 「ああ、その通りではあるな。一つだけ問う。解放の光の首級はセイトの領主で間違いはないか?」

 「他に誰がいるというのだ。打ち捨てられた都。それがセイトだよ。」

 「ありがとう。」

 それだけ言い、俺はアーデルハイドに安眠の魔法を掛け、ひと時の眠りにつかせた。

 フォーセスコンフェッシオンを解除すると兵たちは一時、意識を確かめていたが怒気も顕わに俺に対して刃を向けてきた。

 純粋魔法のブレットを8個同時に生成し、すべてを解き放った。

 ぼちゅん。という破裂音を迸らせ、一人残らずの兵が弾け飛んでしまった。

 俺の頭の中は、怒りで沸騰しているのが良く判った。

 親王陛下が手を尽くした甲斐もなく連中は俺の触れてはいけないモノに安易に触れ、土足で踏みにじってくれたのだった。

 アーデルハイドを抱きかかえ、村へと戻るとフィアたちは時間がかかっていたことに不安を覚えていたようで、慌てるように出迎えてくれた。

 「ソウタさん?そちらの女性は誰でしょうか。」

 先頭を切って走り寄ってきたシロップとアニエスが見知らぬ女性を抱く俺に質問を投げかけてきた。

 しかし、俺の表情を見たことで明らかに狼狽していることが判る。

 怒りに満ちた俺の表情は誰にも口を挟ませないとする顔色をしていたのだろう。

 フィアでさえも口を開こうとはしなかった。

 「フィア、その娘は俺がフィアと出会う前にウォルフ侯爵の家で共に暮らしたアーデルハイドだ。」

 「はい。存じています。ですが、ソウタさんとウォルフ侯爵はその奥方様と、アーデルハイド様とはお会いにならないとお約束されました。

 どうしてここにアーデルハイド様がいらっしゃるのでしょう?」

 「うん。そうなんだ。解放の光の残党がアーデルハイドをそそのかし、ここに連れてきたことは、村の入り口で殺してやった連中が白状したよ。

 それが俺の力を殺ぐと判断したと聞いた。

 それを指示したのは当然ウォルフ侯爵様ではなく、解放の光の首領でもあるセイトの領主であることも判った。陛下は早まったことをしないようにと自制を求められたが、俺とフィア。俺とシロップや俺とアニエスの将来に隔意をもつセイトの領主が取ったこの手は陛下にも申し訳ないが、許せるものではない。

 皆には大変申し訳ないが、俺はこの事態を陛下に報告するよりも早く解決する必要があるんだ。

 いつかフィアに言われたように俺はフィアとシロップとアニエスに嘘はつかない。今日中にセイトの領主にはこの世から消えてもらう事にする。これに関してだけは誰の意見も聞きたくないので先に休んでいてほしいと思う。」

 シゲさんを始め、苛烈なまでの感情を抑えられない俺に対し、意見する者はいなかった。

 「ソウタさん。今から出かけるのであれば、私もご一緒します。」

 フィアだけは毅然とした態度で俺の思いを遮って見せた。

 「ユイはどうする?」

 「私は一人ではないんですよ?シロップちゃんやアニエスちゃんに任せれば問題はありません。ユイがおっぱいを飲むまでに帰ってくればよいことです。ソウタさんはそれが無理だとお考えですか?」

 不敵ともいえる笑みを浮かべているのはフィアだけではなかった。

 アニエスもユイを抱きながら俺を頼もしそうに見てくれ、シロップも同じように全幅の信頼を表情にして、見てくれている。

 「ソウタさん、アニエスちゃんと一緒にユイちゃんの面倒を見て待っています。思うままに覇道はどうを極めてください。フィアちゃんを守って下さいますよね?」

 いつの間にか俺の家族はその心も強くなっているようだ。

 「任せてくれるかい。2時間以内に戻ってくるよ。」

 「ソウタ、後の言い訳は何とでもなる。しかし、お前たちに万が一があっては陛下にもその一端を担ったがための不利益もあろうさ。だからな、セイトの粛清は最低限の規模で最大の効果を挙げるんだ。

 いいか?、お前はこの国の貴族であるからにはその規範から外れちゃなんねぇ。しかし、陛下の治世を乱す者を許してもいけねぇ。それでも残忍であっては正統を評価してはもらえねぇんだ。

 そこんとこを忘れるんじゃねぇぜ。」

 「頭の下がる思いです。シゲさん、残る皆を少しだけお願いします。」

 「問題なんて起こるわけがねぇ。さっさと行ってこいや!」

 「はい!」


 俺の頭の中では解放の光を構成する連中が一人残らずマーキングされてその所在を明確にしている。

 今回加えたのはセイトの領主。

 現在はセイトの都の自宅に居るらしく、影武者のような者もいないらしいことが判る。

 レネゲイドに周辺を調べてもらい、先に屠った8人のほかに周辺に潜んでいたと思われる50人ばかりの兵力もバニシングライフルのシングルアクションの斉射ですべて死体も残らない程度にしておいた。

 バニシングライフルを通常通りに使用すると、せっかくの俺たちの領地が荒れ野原になってしまうので、出力を絞らず、照射時間を短くする手法でパルスレーザーのような使い方をして山間地に組織的に潜む生命反応をすべて消滅させたのだ。

 これにはフィアも驚いていたが、トリガーを引いたフィアにしても許せないモノがあったのだろう。


 更に索敵範囲を広げたが、俺の領地の周囲にもその遥か遠方にも脅威がないことを確認してからセイトへと飛翔した。

 2時間以内に迫る脅威がないことは確認したからな。

 道中にもマーカーに反応がある限りはすべて同じ方法で殺戮の限りを尽くしていった。

 これが乱心であるか粛清であるかは正直判らないが、金輪際解放の光に悩まされるのはごめんだと今夜だけは確かめることもせずにトリガーを引き続けた。

 四半刻にも満たない飛行でセイト上空にたどり着き、マーカー全てにバニシングライフルを発射した。セイトの都に近づくにつれマーカーの密度が上がり、都周辺では一つの街に匹敵する数のマーカーがあったが、それも今はゼロとなっている。

 先の未来にこの所業が非難されることがあったとしても、それまでの解放の光の所業に比べれば何ほどのことでもないと思った。

 都の上空でも数千のレーザーを発射し、修羅のように人々の命を奪い続けた。

 領主の住まう館も燃え盛る業火に沈み、高野山の空を紅く染めていた。


 「国さえも滅ぼす武装を持ちながら、選択的に的を射抜く技量は心情を考慮してもなお冷静に努めてくれたものと信じている。ヤマノベ公爵の討った者たちは神国に益を成さず、それぞれの国においても手配の掛かっていた者たちであることを確認した。

 よって、その行いは天誅であり、導きを異にする教義を正す物であったと認める。」

 その後に俺からの報告を待たずに親王陛下はそのような声明を明らかにされ、神国に巣食っていた解放の光なるセイト領主に導かれたテロリスト集団が一人残らずこの世を去ったとお触れを出された。

 俺にとってだけ非常に都合のよい、耳障りの良いような発表であったが、苦渋の末の決断だったのだろうと思わせるものであった。

 多分だが、大変な迷惑をかけてしまったのだろうと思う。

 冷静になればなるほど、やったことに対する自責の念が沸き起こるのだが、これをしなければその構成員の数も減らなかったであろうし、フィアや俺たちの行く先々でこれからも同様の心配を続けなければならなかった。

 陛下への報告書に俺が殺した全ての神国国民。セイトの領民の名前を記したものを添付して、間違いであったとは思わないが後悔を覚える部分もあると書き添えて提出した。

 報告書を持参した俺に対し、ユンカーさんは深いお辞儀と共に礼を述べられ、陛下とお妃様は「心痛を察します。」と言ってくれたのだ。

 陛下はこれまで世に放たれている解放の光が何を成していたか知りながらも、正すことを怠ってきたことに詫びを申され、俺を自室へと通された。

 フィアはアニエスとシロップと一緒にお妃様のお茶に付き合い、俺だけが陛下の自室へとやってきている。


 「あの夜はかつて父と呼んだウォルフ侯爵様とお約束申し上げた母と妹とは会わないという話を覆すように妹がやってきました。その真意を問うために随伴の兵に聞くとそうすることで我が家の平穏を乱せるのではないかとセイトの領主が考えて、行動を起こしたのだと言いました。

 それで頭に血が上った私はその瞬間に解放の光に属する者たちとその首領を怒りに任せて討ち取ってしまったのです。このようなことが更にあるとは申しませんが、自分の怒りのままに陛下の国民を討ち取ってしまいました。」

 独白のように口から出た自分の気持ちを伝えると、陛下は俺の肩を抱き、反対の手で俺の手を握りながら口を開いた。

 「確かに、そなたのしたことの全てが正しいとは言い難い。しかしな、ソウタ殿。

 その時、その場で聞いたことが私の立場であってもそれは許し難いモノであったろうと思う。

 その怒りに身を任せる気持ちも理解できる。

 多くの国民の命を奪ったことを悔いている気持ちにも同情を禁じ得ない。

 それでも、ソウタ殿に言う事は一つだ。

 許してくれ。

 それしか言えないのだ。

 そうした者たちを知りながら、そのままにしていた私がソウタ殿の心に傷を負わせたようなものだ。

 すまないことをしてしまったと、今更ながらに心を痛めているよ。

 我が友に心の痛みを負わせてしまったのは、私が甘いからに他ならない。この通りだ。」

 何を責めるでもなくひたすらに頭を下げられるテオバルト殿はその瞬間は陛下ではなかった。

 俺の手を離そうとせずにひたすらに頭を下げるので、俺自身が狼狽を隠せない。

 「テオバルト殿、そうご自分の責任にするのはお辞めください。我を忘れたのは私で、フィアがいなければきっと気が触れていたことでしょう。

 人を恨むという事がこれほどに心すさむものとは知りませんでした。今回のことを教訓としてお役目を続けていこうと思います。

 その責には及ばないとご判断されればいつでも身を退きますので、ご指導とご鞭撻をお願い申します。」

 トンネルの施工工事も済んでいたので、その日の晩のうちにアーデルハイドをウォルフ家へ届け、お父様と事の次第を話し合った、結局母上にも会うことになってしまい、フィアやアニエスにシロップを紹介することになってしまった。

 やはりユイを見る目は複雑であり、警戒したフィアはユイを離そうとはしなかった。

 気まずいままで屋敷を退出し、そのままトウトへと戻ってきてしまったのだ。

 それから数週間と言うもの、陛下の呼び出しにも応じず部屋に籠っていた俺は、ユンカーさん直々の迎えにようやく今日、登城を果たし陛下の私室にて会談をしていたのだ。

 フィアはトウトに戻った翌日にはアマーリエ様に会うためにユイ共々さっそくと城へ通っていたのだが、いつの頃からかシロップもアニエスもフィアに付いて城へと上がるようになっていた。

 聞いたところではアマーリエ様のたっての希望で城に上がることになったらしく、いまでは第2、第3のお妃様の友人という事になっているようだ。

 俺がこのまま落ち込んでいると陛下まで体を悪くするとフィアたちに叱られ、アマーリエ様にお叱りを受け、ようやく折り合いをつけることができそうな心持ちである。

 お妃様のご懐妊後の経過も良く、お腹を蹴るような仕草があるので、きっと男の子だとテオバルト殿も請け合い、ユイが嫁に来る日が楽しみで仕方ないという。

 まだ安定期にもなっていないのだからそんな事はないだろうと思うのだが、俺を思っての話だという事は良く判っているので、感謝するしかない。

 「そう言う事でしたら、テオバルト殿を”お兄様”、アマーリエ様を”お姉さま”とお呼びした方がよろしいのでしょうか。」

 そう言うと、楽しそうに笑ってくださった。

 優しい人たちに囲まれて、癒される心もある。


 数日の後、俺はフィアとユイを連れてもう一度トサンへとレネゲイドで飛んでいた。

 母上やアーデルハイドとの仲を修復するつもりは最早ないが、俺たちの暮らすであろう場所はアーデルハイドに知られてしまった。

 その上で俺たちが留守の間に隔意を持ったまま訪れる機会があったなら、互いに多分良くない結果しか招かないことになると考えたからだ。

 「私が休んでいる間にいつもお兄様は姿を隠されてしまいます。本日はその様なことがないようにして頂きたいものですわ。」

 「ああ、すまなかったな。陛下にお知らせする用事ができて一息にトウトに戻らなければならなかったのだよ。今日もそう長い時間は滞在できないがまた何かの機会には訪れるので会う機会もあるだろう。

 それと、俺たちもいずれはトサンに戻ることになる。その時にはユイももう少し大きくなっているだろうから街も見せてやりたいしな。」

 俺の膝の上で何か一生懸命に喋ろうとしているようで「だったか、だあだ。」みたいなことを繰り返し言っている。

 涎と共に大きな声を出しており、フィアはタオルで盛んにユイの口元を拭ったりと世話焼きに忙しいようだ。

 それを冷静に見ているアーデルハイドだが、内心を読み取ることはできない。

 「奥様。お兄様とご一緒になられてもう3年も過ぎておりますのね。私、最初はサキュバスと伺っておりましたから使役するために側近くに置かれているのだと思っておりましたが、すっかり仲良くおなりだったのに驚きました。」

 また垂れてきた涎を一つ拭ってから、フィアもアーデルハイドに顔を向けた。

 「はい。私も恥ずかしながらサキュバスですからソウタさんに使役していただければそれで十分でしたが、ソウタさんは契約の際にそれをお断りになられ、結婚してほしいと仰られました。

 それまでも、それからも私は一度も”ご主人様”と呼ばせてはいただけませんでした。ソウタさんがそれをとても嫌がられますので、妻としてソウタさんを支えさせていただくことにしたのです。

 今ではもう三人妻が増え、トウトの貴族らしくしていらっしゃいます。」

 「そ、そうなの?四人も奥さんがいたなんて公爵ともなるとそう言うモノなのでしょうか。」

 そんな訳はない。

 しかもそのうちの一人はひとりと数えていいのかさえも判らないしな。今は俺の腰にぶら下がっているわけだし。

 〔私が四人目のお嫁さんよ。〕

 「ど、どこから声が!?」

 アーデルハイドが素っ頓狂な声を上げ、声の主を探そうときょろきょろとしている。

 「アーディ、ここだよ。」

 俺が腰の剣を柄を握って鞘から抜いて見せた。

 濡れ光るような艶のある輝きを刀身に纏い、刃を横に寝かせて見せてやるとその刀身から直接に声が響いてきた。

 〔私が四番目の妻よ。如月と言うの。お初にお目にかかりますわ、妹君さま。〕

 「け、剣が喋っていますの?お兄様これはいったい!?」

 「この剣はアニエスと言う俺の妻の実家で1000年前に作られた魔剣なんだよ。俺のことを気に入ってくれてな、フィアたちにも認められて四番目の妻とすることになったんだ。」

 〔そうなの。早く子を産んでフィアちゃんたちに追いつきたいわね。〕

 「如月さん、そのためには早く人の姿にならないといつまでたっても一緒にお風呂にも入れませんよ?」

 〔あら?フィアちゃん、そう言うならなるわよ。自分で歩くのが面倒だからこのままだったんだけど。〕

 言うが早いか如月の刀身が紫色の強い光を放つ。

 眩しくて見ていられないが、手の中から柄が消えたことが判った。

 俺の左側に居たフィアと膝の上に居るユイ。俺の右側に突如としてソファーが沈み込む感覚が伝わり、誰かが腰かけたのが判る。

 光が収まり、目を恐る恐る開くと俺の右側から覗き込むようにしている女性がいた。

 「え!き、如月なのか?」

 「ええ、他に誰がいるのよ?私が如月よ。改めてよろしくね、あなた。」

 肉声で伝えてくれる女性は緩いウェーブの掛かった紫の髪を背中まで伸ばしており、声や喋り方の印象とは全く違う15歳ほどにしか見えないくりくりとした目が印象的な幼い少女だった。

 「・・・ソウタさん、如月さんですが、声の印象と姿にギャップがありすぎませんか?」

 「あ?ああ、ちょっと驚いてる。」

 「い?痛い痛いわよ?ちょっと、助けてよぅ。」

 喜んで如月の髪をゲットしたユイに如月が助けを求めている。

 俺たちの正面に座っていたアーデルハイドはさらに驚いた表情で声も出なくなっている。

 目の前で喋り出した剣がいきなり人に変わったのだから、声を無くしても当たり前と言うか、俺たちが異常現象に慣れすぎと言うか。

 「お、お、お兄様?トウトではこのようなことも良くあるのですか?」

 「いや、そうそうこんなことはないと思うよ。俺たちも今はじめて見たんだから。」

 「そうねぇ、この間エンシェントドラゴンを切ったでしょ?あれは特に成長が進んだわ。って、ユイちゃん、痛いってば。」

 如月が俺を覗き込んだからユイの手が如月の髪を掴みやすかったんだ。

 ユイの手から髪を取ってやると、助かったとばかりに手櫛で髪を整えて改めてフィアの方を見やる。

 「フィアちゃん、この姿では初めまして。私が四人目の妻の如月よ。今夜からは一緒にお風呂に入るわよ!」

 「はは、ははは。驚きました。でも、仲良くしてくださいね。」

 「もちろんよ!あなた、今夜から子作り開始よね?」

 「ちょ、ちょっと、こんなところで大きな声で言わないでくれよ。」

 「どうしてよ?大事なことよ。」

 確かに、それは大事なことではあるが周りの目と言う物を考えていただきたい。

 俺がそんなことばかりしているようじゃないか・・・してるか?・・・してるな。

 もう、頭を掻くしかない。

 あまりなサプライズに肝心の用事がすっかり頭から抜け落ちてしまっていた。

 日が傾いたところで屋敷を辞することにしたのだった。

 如月はまた剣の姿に戻り、俺の腰に収まっている。

 アーデルハイドも何が何だかわからないという表情のままに送ってくれた。

 玄関先に佇んで待っていてくれたレネゲイドを見ても驚きもしなかったのは、いまだに俺の腰の剣を不思議なものを見るように見続けているからだろうか。


 レネゲイドで飛んでいくと片道はおよそ40分ほどになるだろうか。

 日が暮れる前に屋敷に戻り、レネゲイドに礼を言うと次元断層にいそいそと入っていった。

 今となっては次元断層の中が落ちつける空間となっているようで、嬉しそうに入っていくのが何とも滑稽だ。

 その日の晩の出来事はまた別の機会にでも話そうと思うが、大騒ぎになったのは言うまでもない。

段々ソウタの側に居る嫁たちが幼女まみれと表現しなければいけない状況になってきました。

お巡りさん、こいつです。

その模様は次回か!?

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