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Contractor with blood(血との契約者)  作者: 小西敬
成り上がり貴族の章
67/161

【第67話】エンシェントドラゴン

いつも読んでくださってありがとうございます。

目的地も間近に迫り、次話ではトサン入りです。

道中最後のイベントでしょうか。

 ノシリの広大な湖にたどり着いたのは意外にも早い時間帯だった。

 西に見える御巣鷹山におかしな雲がかかっているのが気になるのだが、穏やかな天候に恵まれた道中は変わったこともなく、湖畔に映る青い空と雲を眺めて楽しめるほど暖かく快適な一日だった。

 昨日出会った家族の手助けをして今朝、それぞれが東と西に向けて旅立ってから、麗らかな日差しにぼうっとしてしまうほどに平和な一日だった。

 キャンプの場所を定め、シロップやアニエスがお茶の準備を始め、みんなが旅装を解きながら夕食の仕込みを始めるころ湖の表面が波立った。

 風もないのにどうしたのかとみんなして不思議がったが、それ以降変化もなくそのうちそれぞれの仕事に戻っていった。

 日が傾き始め、フィアがユイにおっぱいを上げているときのことだった。

 「だ!だぁだ!」おっぱいを飲んでいたユイが盛んに指を差し向けながら大きな声を出す。

 指さす先は御巣鷹山。

 陽の高いうちに見たおかしな雲が夕日に焼かれ更に大きくなっている。とぐろを巻くように山頂を覆い隠している雲は高さが低かったはずなのだが、今では相当に分厚い雲になっている。

 気になり出すとそのおかしさが際立っているように思う。

 嫌な予感しかしないのだが、地震雲のようにも見える。何かの予兆とでもいうのだろうか。

 ユイはいまだに山に向かって盛んに話しかけているようだ。

 「ソウタさん、ユイは何を伝えようとしているのでしょう。」

 「今は判らないな。ただ、あの雲には良くない予感がするんだ。俺はあの雲を知っているような気がしてならないんだよ。

 シゲさん、あの山はやばいかもしれない。

 今のうちにキャンプを畳もう。」

 俺の言葉を聞いた全員が疑う事もせずに手早く広げた夕食の準備を急いで片づけ始める。

 「ソウタ、どのくらいの時間があるか?」

 主語が抜けているシゲさんの言葉でも十分伝わる緊張感。

 「判りませんが、距離を取った方がいいでしょう。あの山は遠からず噴火しますね。」

 「本当ですか?」

 チカゲさんたちは驚きを隠せないようだ。

 10分ほどで大方の片付けが済み、シロップとアニエスも俺の馬車に乗り込んで出発する。

 日が落ちる間際と言うタイミングで馬車を猛然とダッシュさせ、距離を稼ぐことに集中する。

 手前には黒姫山が見えていて、その背後に御巣鷹山が隠れるようにある訳だが、手前の山に異常は感じられないが背後の山に掛かる地震雲は最早時間が残されていないかのような気がしてならない。

 低い唸りのような物も聞こえ始めており、全員がただごとならない様子を感じ取っていた。

 「ソウタさん、レネゲイドさんを出してください。盾で防ぐ必要がありませんか?」

 「そ、そうだな。いい考えだ。」

 次元断層を切り開き、白銀に輝く巨人が召喚される。

 「レネゲイド、西側の山が噴火しそうだ。噴石が飛んでくるかもしれない。殿しんがりを頼む!」

 「了解。」

 レネゲイドさえ覆い隠してしまう大楯を左手に持ち、ゆっくりと最後尾を付いてくるレネゲイドと三両の馬車はノシリの湖を時計回りに回るように北側を大急ぎで東へと走っている。

 街道を北上しても周囲は比較的低い山地が続き、噴石を避ける盾とはならなそうだったので湖の東側にある斑尾山の陰に入ろうとしているのだ。

 周囲に人の住んでいる気配のあるところは住居まで行って山の噴火があるかもしれないと警告を促し、避難を勧めて回った。

 一刻あまり東へと走り続け、ようやくにも斑尾山を越え、その背後に隠れることができた。

 足元には不規則な振動が伝わってきており、全く落ち着けない状況になっている。

 それでも何が楽しいのかユイはフィアの腕の中で上機嫌でキャッキャと腕を振って喜んでいる。

 「この辺りまで来れば大丈夫なのか?」

 「まぁ、ユイがこんなに喜んでいますからね。危険からは逃れられたのでしょう。」

 やり取りを聞いていた周りのメンバーはそれで一安心できるだろうかと、夕食の準備を再開するために手分けしてテーブルや椅子を準備を始めたようだ。

 俺は念のためとデストロイウォールを天井を張るように展開し、守りを固めた。

 「フィア、噴火が始まったらユイとレネゲイドに入ってくれるか?」

 「え?なぜです?」

 「レネゲイドは無人では15分しか動かないだろ?フィアが入っていてくれればもっと動くことができるだろう。俺はここで全員が障壁の中にいられるように維持するから手分けだ。」

 「そうでしたね。戦闘ではありませんから私の魔力だけでも大分長時間行けるでしょう。」

 「そういうことだ。」

 「フィアちゃん、飛んでくるものがあったらデカい奴だけ頼むぜ。ちいせえのはソウタの障壁で十分だからな。」

 「はい、お任せください。」

 「だ、だだぁ。だあぁ!」

 ユイも任せろってか?みんなが笑顔になるタイミングだったな。

 エンジニア8人が夕食の手筈を整えたころに護衛班が偵察から戻り、様子を伝えてくれた。

 「噴火はまだのようです。しかし、周辺住民の退避も済んでおりますので余程のことがない限り人的な被害は考慮しなくても済みそうですね。」

 サチさんから避難に付いても補足があり、やれやれと食事が始まった。

 トサンへのルートからは随分と東にずれはしたが、火を噴く山を眺めながらの食事と言うのも被害さえなければオツなものである。

 観光気分でもいられはしないが、自然のエネルギーを間近で見られる機会でもある。

 体感できる微振動も、もはや微ではない。時折突き上げるような振動も加わりながら、ハッキリと地面が揺れているのだ。

 その時、戦艦の主砲が轟いたように至近距離で爆発音が鳴り響き、とうとう御巣鷹山が噴火し始めた。全員で食事の席にも関わらず席を立ち、その様子を眺めようと歩き回る。

 ハルシゲさんとキヨシゲさんがお茶椀を持ったままなのが残念だ。

 「お行儀が悪いです。」

 チズルさんに叱られている。

 風向きは北から南に吹いているようで、こちらに噴煙は来ていないが噴石はそこそこに飛んできているようだ。

 ただ、それほど大規模な噴火ではないのか夜空を赤く染める程度も大きくはないようだ。

 火口を遠くから見るだけだが、溶けだした溶岩が流れている様子も見られないし、噴火の規模が大きくなっていなければ俺たちの旅にも影響はなさそうだと思える。

 みんなしてその様子を眺めていると、火口から炎が長く尾を伸ばした。

 「おお!?大自然の雄姿と言った処か?」

 コウレイさんとタケヨシさんがその炎に感動していた。

 ゴギャオ―――――

 タケヨシさん、火山は吠えたりしませんよ。

 噴火の跡から一頭の翼竜が飛び立ったのがはっきりと見えた。

 火口上空を旋回するように飛ぶ竜は周囲を睥睨するように長い首を振り、ブレスを吐く。

 長大に伸びる炎は正しき正統のドラゴンであることを象徴しているようだが、遭遇した方としてはたまったものではない。

 首の長さだけでも5mはあるだろう。胴部分と逞しい尾の先までで15mは十分にありそうだ。

 片翼が10mほどの立派なエンシェントドラゴンである。あのクラスなら知能も十分発達しているであろうし、陸軍に居た地竜タイプと双璧を成す伝説とでもいうべき生き物である。

 それ故に気に入らないことは全てそのブレスで燃やし尽くし、鋭い爪と牙で引き裂いてきただろう。

 だからという訳ではないが、ドラゴンと目が合った時には「逃げたい」と正直思った。

 「おい、こっち見てないか?」

 狼狽うろたえるタケヨシさんの視力は大したものだ。あいつは間違いなく俺とガンの飛ばし合いになってますから。

 グボウォア―――――!

 ”何だてめぇは?”とでも言ったのかもしれないが、まっすぐにこちらに飛んでくるその迫力はやくざ映画のやくざが鼻たれ小僧に見えるほどの弩迫力だ。

 「みんな馬車へ!フィア、ユイはシロップとアニエスに。レネゲイドで出るぞ。」

 「はい!アニエスちゃん、ユイをお願いします。」

 「お任せください。」

 「ソウタさん、気を付けてくださいね。」

 二人の言葉に片手を上げながらレネゲイドに向かって駆けだす俺たち。

 「レネゲイド、出るぞ!」

 「搭乗を急いでください。」

 レネゲイドが降着状態で俺たちを迎えてくれる。

 コクピットが閉じられる前からレネゲイドは全力でインパルスモーターを唸らせた。

 正面にドラゴンを捉え、左手はシールドのまま右手にバニシングライフルを装備する。バスターランチャーを使うには敵がすばしこいだろうから向いてはいないだろう。

 怒号が響き渡り、ドラゴンからブレスが吐き出された。

 「ち!様子見もなしかよ。」

 舌打ちしながらバニシングライフルを三連射した。

 図体の割には機敏な動きで最初のレーザーを避けた。しかし、二撃目と三撃目は肩口を貫き、悲痛な叫び声が上がる。

 俺たちの持つ武器が自分に対して脅威となることを理解したドラゴンはいったん距離を取るように旋回し、離れて行った。

 俺たちはそれを追うことはせず、こちらから危害を加える気がないことをアピールしてみる。

 ドラゴンもまた突っ込んでくるような様子はなく、ホバリング状態でこちらの様子を窺っているようだ。

 しかし、その身に纏う雰囲気は闘志に溢れ、話し合いができるような様子ではなさそうだ。

 両翼が大きく膨らみ、その身に力を蓄えこんでいることが判る。

 瞬間、その身を膨らませたかのような錯覚を覚える速度で飛び掛かってくる。

 レネゲイドをダイブさせ、上空をやり過ごすとドラゴンは器用に宙返りのように身を翻し、追いすがってくる。

 落下の勢いを載せてさらに加速するドラゴンだが、こちらは加速上昇の最中だ。

 すれ違いざまに一太刀浴びせたかったが、手に持っているのはライフルだ。この速度で接近戦となればソニックソードの方がいいのか。

 「レネゲイド、オプションチェンジ。バニシングライフルを背面に収納。ソニックソードを装備。

 ドラゴンが下降点から旋回上昇するときに切り結ぶ。」

 「了解。」

 「フィア、体調は大丈夫か?」

 「はい、全く問題ありません。心配性ですね。」

 「当たり前のことを聞くな!」

 ユイを出産してから初めての戦闘だ。Gが掛かるのも久しぶりなんだから心配するにきまってる。

 「はいはい、ありがとうございます。」

 最後に「もうっ!」と聞こえたが、それは無視だ。

 降下途中のドラゴンを追うようにレネゲイドは旋回しながらバニシングライフルを背面のハードポイントに戻し、左腰からソニックソードを引き抜いた。

 今度はこちらがダイブしながらドラゴンを追う。

 地表が迫り、ドラゴンは水平飛行に移るころ、首をこちらに向けてくる。

 間髪入れずにブレスが振り向きざまに放たれ、目の前に火炎の海が広がる。レネゲイドは当たり前のようにシールドをかざし、炎の海をかき分けるように突入した。

 俺たちの目視では捉えられていないのだが、レネゲイドのレーダーにはドラゴンが待ち構えているのが見えていたのだろう、ソニックソードを炎の中で一閃した。

 グギャァ!

 振りかぶられたドラゴンの右腕とレネゲイドの剣が交錯する。

 固い鱗で覆われていたはずのドラゴンの右腕は肘から先が切り飛ばされ、宙を舞った。

 どす黒い血液が飛沫となって切断された傷口から飛ぶ。

 最強であることの矜持がそうさせるのか、闘志を失わないその赤く燃える双眸から油断はまだできない。

 そのあぎとが開かれ、レネゲイドの首元を狙って噛みついてきた。

 レネゲイドは剣を振りぬいた勢いのまま避けようともせずに体を一回転させ、ドラゴンの顔面にシールドバッシュを見舞う。

 グシャっという何かがつぶれるような音が聞こえ、ドラゴンが失速した。

 突き出したシールドの反動でそのままドラゴンから離脱し、上昇を始める。

 脳震盪でも起こしたのかドラゴンはそのままの姿勢で落下していく。それでも高度は十分に落ちているからあの固い鱗で覆われた体にそれほどのダメージはないだろう。

 「ソウタさん!キャンプの方に落ちますよ!!」

 「うぇ、マジか!レネゲイド、ダッシュだ。」

 「了解。」

 真っ逆さまに加速してレネゲイドがギリギリで追いついた。尻尾を掴んで盛大に逆制動を掛ける。

 キャンプの真上ではないが近くにこんなものが落ちたら危ないなんてもんじゃない。

 十分に落下のエネルギーを殺したところでドラゴンを投げ捨てた。

 キャンプの側にレネゲイドを着陸させ、全員の無事を確かめる。

 「心臓が止まるかと思いました。」

 チカゲさんやアオイさんがドラゴンの大きさにビビってしまっている。

 まだ気を失っているのか動き出す気配もないが、如月を腰に佩刀し戦えるようにだけはした。

 フィアはシロップの抱いていたユイを貰い、俺の側まで二人と一緒にやって来る。

 「このドラゴンはもう死んでいるのでしょうか?」

 いかにもコワゴワと言った様子でフィアの後ろからシロップがのぞき込んでみている。

 アニエスも俺の腕に掴まりながら覗き込むようにして怖いもの見たさでドラゴンを観察している。

 「ドラゴンの鱗と言うのはきらきらと光っていて綺麗なものですね。」

 「ねー、ねっ、ねー」

 フィアとユイ。この二人の呑気な雰囲気に緊張が抜けて行ってしまう。

 〔ねぇ、もしかして今度はこれをやったの?あなたって本当にどこまでも行っちゃうのね。私もこれを相手にできれば成長が早いのになぁ。〕

 さすがの如月もエンシェントドラゴンには驚きを隠せないようだ。

 グルグルグル

 低い唸り声が聞こえ始めた。失った意識が戻りつつあるようだ。一応切り飛ばした右手は何かの役に立つかと次元断層に取ってある。

 こっちに尻を向けて意識を失っているドラゴンの長い尾がバタンと地面を討つ。

 自らの意思でもなく地に這う事がお気に召さなかったのか、起き上がった首は獲物を探している。

 グゴウウォウォ、グギャ―――――

 怒りの咆哮と共にその身を起こし、無くなった右手をものともせずに俺たちを睨みつけている。怒りは収まっていそうにない。

 如月に手を掛けるとキンと言う甲高い音と共に俺の手の中に柄を滑り込ませてくる。

 鞘走さやばしらせ、如月を構えると刀身に紫の光がにじみ出してくる。ブンと唸りを上げながら剣を捌いて感触を確かめておく。

 いきなり空へ舞い上がるようでもなく、ドラゴンが高い首をもたげ俺たちを睥睨する。

 もう一戦するならとみんなをキャンプまで下がらせ、デストロイウォールで防護した。

 一度空を睨んだドラゴンがブレスを吐く。

 1000度を超える高熱の炎が対峙する俺ではなくキャンプを狙った。火炎放射器のように炎が走り、馬車やみんなが炎に包まれる。

 障壁があるおかげか、驚いてはいるものの大丈夫のようだ。フィアは障壁の間近でユイと襲い来る炎を見ながら喜んでいるようにも見える。

 本当に緊張の続かない奴らだ。

 それが無駄だと知ったからなのか改めて俺を睨みつけてきた。

 グオウ!グギャ―――!!

 その長い尾を振り回し、俺を払うように弾き飛ばそうとしている。

 如月に流し込んでいる魔力量を更に上げる。

 〔ちょ、ちょっと大丈夫なの?〕

 流し込まれる魔力量に驚きを隠せない如月だったが、出し惜しみしてこっちが痛い目に遭う訳にはいかない。瞬間的に兵たちに使った時の数百倍の魔力を籠める。

 〔き、気持ちいい!やれるわよ!〕

 唸るように空気を薙ぎ払いながら襲うその固い鱗に覆われた尾に渾身の剣を見舞う。

 ギャイン!という超高硬度のぶつかり合いが起こり、俺の目論見通りに5m以上ある尾を切断してやった!

 ギャー――――?

 紫に光る刀身が固い鱗に刃を沈め、勢いのままに尾が通り過ぎる。

 それをただ耐えると、切り離された尾はクルクルと回転しながらかなり遠くまで飛んでいった。

 信じられないと言った表情で俺を見るドラゴン。700mmほどの刀身が尾の直径より長い3mにまで伸びあがっていた。

 〔最高よ!まだまだいけるわ。私、今最高に気持ちがいいわ。〕

 さすがに魔法で切っているだけあって、金属疲労など考慮する必要もないのだろう。

 自分の性能が限界まで解放されて如月は恍惚とした口調になってる。

 尻尾を失ったにも拘らずドラゴンは空へ飛び上がろうとしている。俺はそれをさせないためにもドラゴンに向かって駆けだしていた。

 両足が地を蹴りつける感触を確かめながら全力でドラゴンに迫る。

 如月を右手に流すように構え、全力で疾走する。

 身を低く構え、前傾姿勢からさらに加速する。こちらに背を向け正に飛び上がろうとしているドラゴンの切れた尾の付け根を踏みつけ、背中を駆け上がり、体の捻りを乗せた如月を振り抜いてやる。

 アゴア――――!?

 右翼がドラゴンの体から離れた。

 右翼を下から上に切り上げ、半回転して左翼を上から下へ切り下げると、耐えかねた痛みからか体を震わせた。

 ウガ――――――!

 首を捻りながら俺を視界にとらえようとする。灼眼しゃくがんの炎は消えてはいないが、俺に対する畏怖もあるのだろうか、さっきとは目の色が違う。

 もう一度籠めた魔力は尾を切り飛ばしたモノより遥かに多い。

 〔ほ、本当にこれだけの魔力が籠められるの!?ああ、私の中にあなたが入ってくるわ。〕

 刀身の光が更に輝きを増し、紫の炎は3mを優に超えてさらに伸びた。

 「うおおおりゃーーー、いい加減にしとけよ太ったトカゲがーーーー!」

 エンシェントドラゴンにあまりにも不遜な物言いではあったが、尽きない生命力にもう、遠慮してなんかいられない。

 気合一閃で首を根元から二度と元に戻らないように切り離してやった。

 話の通じる相手かとも思っていたのに闘志のみがその身を満たしていたのだろうか、戦うしかないかのようなドラゴンだった。

 筋収縮でドラゴンの首が丸まり、翼も首も失った胴は俺を載せたまま地に伏せるように倒れた。

 大きく息を吐き、体から昂った気を抜いていく。

 噴火もドラゴンのために起こったものだったのか、すでに噴石などは収まり、吐き出される煙や炎も終息に向かっているようだ。

 降ってくるものもドラゴンも大人しくなり、デストロイウォールを解除してみんなの元へと戻るためにドラゴンから降りる。

 〔あなた!ねぇ、ドラゴンを討ってしまったわよ。〕

 おう、結果的にそうなったな。如月のお蔭でエンシェントドラゴンと渡り合えたぞ。やっぱり如月は最高だな。

 〔いや、いや!もっと褒めて!子宮がキュンキュンしちゃうわ。やっぱりあなたの子が欲しいわよ!〕

 なんか、コイツが言うと俺が色魔のような気がしてしまって納得しにくい。

 「ソウタさん!お怪我はありませんか?」

 「ソウタさん、とうとうドラゴンまで討伐、おめでとうございます。」

 「ソウタさん、お疲れ様です。ユイを抱っこします?」

 だ、抱っこ?疲れて帰って来てだっこ。意味が分からないんですが。

 抱かせてくれるならやっておくけどね。

 フィアからユイを貰い、だあだあ言ってる娘を抱っこする。フィアよりさらに高い体温に戦いで火照ったからだがマッチしない。

 夏に湯たんぽを貰ったような感じだろうか。

それでも俺の腕の中で大喜びのユイにはやはり癒されるな。

 「ソウタが一人でドラゴンまで倒しちまったぜ。」

 「すごかったですねぇ、僕たちのお館様がこの世界で最強の生物だったとは。」

 いや、最強って。人扱いでもなかったし。

 それからドラゴン肉の焼き肉パーティーが始まり、食べたことのない歯ごたえと滋味あふれるジューシーなお肉に全員が舌鼓を打った。

 フィア、どうしてお前の肉だけギャート○ズのマンモス仕様なんだ?どこの肉がそんな形になるんだよ。

 まだまだ山ほどあるドラゴン肉はすべて次元断層に保管され、これからもとっておきの焼き肉パーティーの主役になるだろう。

 そして鱗や牙、骨も貴重な我が家の財産になるだろう。

 でもなんであんな遠くから俺を見たんだろう。俺たちからはドラゴンはあんなにデカいんだから飛んでいるのも判ったが、山陰に隠れている俺たちを見ることなんてできたのだろうか。

 とはいえ、明らかに睨まれた。

 周りを見回してからこちらを見つけたようだったからな。


 酒も十分に回り、楽しそうな会話が弾んでからお開きとなるまでゆっくりとした時間が流れた。戦いの相手は人ではなかったし、俺たちにケガ人もいなかった。

 これでドラゴンがヒカリモノなんかを巣に溜め込んでいたりすると一段と懐が潤ったのだが、火口から出てきたドラゴンじゃ期待できそうもない。

 明日の朝にはレネゲイドで調査してみることにはしているが、それは念のためで期待しているわけではない。

 「今日はお役に立てませんでした。でも、ソウタさん強かったです。」

 「フィア、今日は久しぶりに一人で暴れさせてもらったよ。ユイも全然怖がってなかったんじゃないか。」

 「それはアレですね。フィアちゃんに抱かれてて、守ってくれるのがソウタさんですから怖いことなんて無かったんですよ。アニエスちゃんも応援してくれてましたし。」

 「シロップちゃんだって、大声で応援してましたよ。」

 「ああ、みんなが見ててくれたから恥ずかしいこともできなかったし、気合が入ったよ。」

 「お疲れですか?」

 「ああ、疲れたよ。今晩三人を可愛がったらちょうどよく眠れそうだ。」

 パッと花が咲いたようにみんなが笑顔になる。

 さあ、もうひと踏ん張りだ。

 俺の守った俺の可愛い嫁たちをいっぱい可愛がらないとね。

 このために生きてるって言えるように。

 「おりゃー!どいつからだー?順番に脱げ!!!」

 「「「きゃー!私!」」」

事務局からまだお叱りは受けておりませんので、66話はノクターンしなくて済みそうです。

このまま見つかりませんように。

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