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Contractor with blood(血との契約者)  作者: 小西敬
成り上がり貴族の章
63/161

【第63話】出発前夜

いつもお読みくださってありがとうございます。

週末は集中して書けるので、いいですね。今朝は雪が積もっていてビックリしましたが、日中の晴れ間にとけてくれてよかった。

 城へと登城するようにユンカーさんから使いが来たのはお妃様が懐妊されたことが判ってから四日後のことだった。

 我が家で催されたささやかなパーティーの席で陛下にはとんだサプライズとなったが、民間療法で僅か三か月。よほど城での暮らしが辛かったのだろうか、我が家が気楽だったのか待望のご懐妊となり、俺たちとしても肩の荷が下りたと言える。

 今までに見たこともない様な上機嫌でユンカーさんが迎えに出てきてくれ、俺とフィア、フィアに抱かれたユイを急かすように連れていく。

 「さあさあ、良くいらっしゃいましたな。陛下がお待ちかねですよ。」

 「ゆ、ユンカーさん?そんなに急かさないでくれませんか。フィアが転んでしまいますよ。」

 城の廊下を速足で歩くわけだが、すれ違うメイドさんや執事さんから俺たちは最敬礼を受け、誰だったか名前を忘れた幾人かの貴族様方にも握手を求められたり、肩をバンバンと叩かれたりと、手厚い歓迎を受けた。

 城の中の雰囲気が華やかになっており、今までに感じたような重く落ち着いた感じが薄れ、一時の晴れがましい出来事を祝うような楽し気な人たちの表情が心地よい。

 そう言えばここ最近は悪くない話題が多かったこともあって城の中でも俺の立場はとっても扱いが良くなっていた。

 ナッサウ家の謀反については貴族街全ての貴族が衝撃を受けたモノだったが、その後の対応が功を奏し、力のある者が取って代わったことで各領地は経済が回り出し、搾取に溺れた領民たちのモチベーションもようやくに上向いてきていると聞いた。

 カラフトの領地奪還に向かった陸軍のビューロー公爵は破竹の快進撃を見せ、味方の損耗ゼロと言う快挙でローレシアの北方戦力を一時的に壊滅したという報告が入ってきた。

 陛下の意向もあり、ローレシアとは以前の国境を互いに侵さないという極秘裏の取り交わしが成され、表面的には落ち着きを取り戻しているという事だった。しかし、現在のローレシアの兵器では主力戦車「旭北」および後方支援のMLRSに対する有効な手段がなく、更には陸軍の「昂暉」100機からなる航空戦力に対してもなす術がないわけであるから、実質は神国による温情に甘えている状態である。

 前線を警戒するローレシアの兵力に装甲車両がなく、定時偵察や神国との連絡には自転車が使われているという事である。役に立たない戦車を補充しても意味がないと言った開き直りのような物だ。当分は軍らしい仕事もないだろう。

 クノエ連邦からシシオ夫妻が俺の屋敷を尋ねてくれた。

 これは俺がゴーランドに依頼し、招聘したものだが、エイゾの陸軍基地向けに石油の精製施設をエイゾのユウフツに作ってもらうためだ。

 元々ここでは少しばかりの原油が入手でき、天然ガス共々近隣住民にのみ燃料として提供されていた。

 陛下の許可を得、大々的に開発することで採掘量を増やし、品質の高い燃料として陸軍と周辺への販売分として活用しようとしているのだ。

 いずれ戦車の燃料などの心配もなくなるだろうし、灯油が安価に手に入れば燃えにくい原油で暖を取るよりもはるかに効率のいいストーブでみんなが寒さに震えなくて済むようになるだろう。

 サツキさんと面会した際に、フィアの抱くユイに目を細めて喜んでくれていた。

 可愛い可愛いと連発してユイのほっぺをつついたり抱かせてもらったりしてフィアと一緒に過ごしてくれたのだ。

 クノエ連邦には多額の協力金が神国から支払われることになり、ゴーランドの連邦共和国運営費用にも貢献できるだろう。

 そして今回のお妃様の懐妊だ。

 神国全体が力をつけ、外敵への備えや経済の活性化も顕著にみられるようになって親王陛下に対する国民の見方も良い方に改まってきたと思う。そこへ今回の朗報が飛び込み、国全体の今後の安定が約束されたような、そんな話題に華やいでしまうのも仕方ないと言うモノだ。

 俺たちだってフィアに子供が生まれ、シロップやアニエスとも今まで以上に仲良くしている。

 好事魔多しという事は昔からよく言われており、全体が浮ついているからこそそうした隙を突く者がいるという。俺一人での移動限界、レネゲイドが並列電池の一つを抜いてなお活動できる行動範囲に於いて、一日おきに各地の領主を訪問して回った。

 監査でもなくただ、訪問し挨拶を述べ合い、天気の話や農産物の話を聞きながら不平や不満を吸い上げていく。それを持ち帰り陛下や貴族たちと話し合い、対応を協議する。

 我が家でも同じ件についてメイドたちや調理師に相談し、貴族だけの考えた一方的な対応策にならないように努めた。

 短い時間でフィードバックされる領地貴族の悩みは、訴えた貴族にも驚かれた。

 今までは数年単位で上に回っていき、数年単位で下まで降りてきた挙句にがっかりと肩を落とすことが多かった国からの対応が、早い場合には三日と開けずに陛下からの親書が届き、細やかな指示と共にフォローされていることが100点の解答ではなかったとしても信用につながっているようだ。

 こうした活動によって不穏分子の陰がないかなども探ることができ、最近の領地周辺での情報なども聞かせてもらえることでかなりの問題を摘み取ることができていた。


 はやく、早くと急かされながら連れて行かれたのは公の場ではなかった。

 暖かな色合いの壁やお妃様が吟味された調度なのだろうとわかる椅子やテーブルに小物の類。

 完全な陛下たちの私室であろう。

 招かれた俺たちは日当たりのよい窓際のソファーに掛けて陛下たちを待った。

 ほどなく隣の部屋からお妃様を支えるようにして陛下がお二人でやって来られる。

 俺たちが立って臣下の礼を取ろうというときに陛下は手を出され、「そのままでよい。」と礼さえも省かれてしまった。

 「ヤマノベ公爵、いや、この部屋ではソウタ殿と呼ばせてもらおう。ここに居る時は私のこともテオバルトと呼んでもらえないだろうか。それと奥方様のこともフィア殿とお呼びしても構わないかな?」

 「はっ、私どものことはいかように呼んでいただいても構いません。しかし、陛下のことをお名前でお呼びするのはさすがに。」

 「すまん。それでも私のこともアマーリエのことも名前で呼んでほしいのだ。ここは貴族が集まる場所ではなく、私とアマーリエが私たちの友を呼んで寛ぐ場所なのだよ。」

 「そうですか。もったいなきお言葉。それではテオバルト殿、本日はどのようなご用件で?」

 「要件?ああ、要件だな。お茶をどうかなと思ってね。この通り、アマーリエはまだ安定期に入ってはおらぬので出歩いてはいかんのだ。ご存知の通り、アマーリエはフィア殿のことが大好きでな。二・三日前からフィア殿とお茶をしたいと五月蠅くて適わんのだ。

 私もソウタ殿に話があってな、こうして私的な話ができる場所に来てもらったという事なんだ。」

 「ソウタさん、フィアさん。私は陛下の元に嫁いで9年、テオのお役に立つためにと努めてきたつもりではありましたが、子を成すことができず残念なきさきと陰で言われ続けてきました。フィアさんにお子ができ、産まれたユイさんを見るにつけ私は何と妻として、女として残念なのだろうかと死にたくなったものです。

 でも、そんな私の心の中を見透かしたようにソウタさんとフィアさんが手を差し伸べてくれたのです。こんな私にはお二方が眩しくもありましたが、それこそ幸せしかない様なフィアさんにすがるような気持だったのです。ソウタさんのお屋敷で過ごす日々のなんと楽しかったことか。気安いメイドさんたちやソウタさん手ずからの美味しいお料理。

 笑いの絶えないお屋敷の中でひと時、自分の立場さえも忘れて寛ぐことができました。

 そんな中でテオは昔のように情熱的に私を見てくれましたし、あの頃のように恋する乙女の気持ちを取り戻したのです。そんな私たちを妃だから、陛下だからなどというしがらみもこだわりもない目で見てくれるお屋敷でどれほど助けられたことでしょう。

 私、いま心から幸せです。お二人にはどれほど感謝したらいいのかも判りませんが、テオと二人、どんなお礼をしたらいいかとずっと悩んでいるのです。」

 「ソウタ殿、フィア殿。私たちはどうしたらお二人のご恩に報いることができるだろうか。」

 俺たちは互いの顔を見つめ合ってしまった。

 しかし、フィアの目には確かな要求があるようでその考えは俺にも伝わっていた。

 「テオバルト殿、一つ伺っても宜しいか。」

 「なんだろうか?」

 「お二方はお子は一人でお終いですか?」

 アマーリエさんはボッと音がするほどに顔を赤らめ、テオバルト殿はキョトンとした顔をしていた。

 「王子が生まれることがあれば、ユイを娶ってくれるお約束を頂けませんか。」

 「な!?ソウタ殿は何を言っておられるのか?」

 「テオバルト様、アマーリエ様。私の子はサキュバスです。ご存知の通り15歳には私どもの手を離れなければなりません。もちろんそれまでソウタさんともども元気でいるつもりでは居りますが、私の両親は私が14の時に亡くなりました。

 実際、どれだけ寂しい思いをしたかは語りつくせませんが、ソウタさんと出会い、今日まで幸せに居られたのは本当に偶然です。自分の子供がそうした経験をするかもしれないと思うだけで心安らかではいられません。

 ソウタさんもユイを預ける相手に対し、お二人のお子ならばきっと言うことはないと思います。

 私たちの願いはいつでも家族の安寧なのです。今回持ち出されました礼に付いてはユイをお願いするという事ではいけませんでしょうか。」

 「テオバルト殿、私たちにはそれによる便宜や地位、優遇などを求めるつもりもありません。叙任いただく前にもそのあとにもお話ししました通り、これ以上は望みませんし、頂くものもございません。

 私たちは家族さえ幸せであれば、それを糧に生きていくことができますので、お考えいただけませんでしょうか。」

 陛下とお妃様はただ驚いた表情をされるばかりで、しばらくの時間が過ぎた。

 「アマーリエ、お前のお腹に居る子は男子でなければならぬようだの。私たちの唯一無二の友の願いは聞き届けねばならぬと思うよ。」

 「ふふ、テオの言う通りですね。このお腹の子が女の子だったら、すぐに次の子を頂きたく思います。次にこそユイさんを幸せにする王子を授かって見せますから。」

 四人でクスクスと笑い合った。

 陛下とこのような関係になれるとは思ってもいなかったが、公私ともに良い関係を築くことができ、ユイのこともまだ確定ではないが心配しなくて済みそうだ。

 ただし、フィアの出産頻度にアマーリエさんの男子出産数が追い付いてもらわなければならないのだがな。

 ユイは判っていないはずなのだが、テオバルトの髪も引っ張って見せた。

 相好を崩すテオバルトと、それを見て笑ってくれたアマーリエさんもユイをたいそう気に入ってくれたようだ。

 ところで誰かお茶を持ってきてくれないのかな。


 それから昼食を挟み、夕方になるまで楽しく過ごすことができた。

 ようやくにもお茶を持って現れたユンカーさんが四人からブーイングを受けておかしな汗を流したのだが、それさえも楽しいというアマーリエさんとフィアがユンカーさんを助けてくれた。

 ユンカーさんは久しぶりに楽し気に過ごす陛下とお妃様に大変に満足され、俺たちが帰るときには玄関先で男泣きに泣いてしまわれ、かなり困ったことになった。

 近くに居た貴族やメイドさんたちにかなり生暖かい視線を浴びせられ、みんなの変顔を見たユイが大喜びしてしまった。ユイの楽しそうな表情にメイドらは顔をほころばせていたが、ユンカーさんはそれでさらに嬉し涙を流し、俺たちはため息しか出なかった。

 「ユンカーさんは肩の荷が下りたのでしょうね。」

 感想を述べるフィアだが、全くその通りなのだろうな。陛下にアマーリエさんを紹介してから待ちに待った吉報だろうし、ようやく針のむしろから逃れられたのだろうと思う。

 全てが優しく過ぎ去ろうとしていた。


 それから一週間ほども経ったろうか、ユンカーさんが我が家を尋ねてきた。

 「先だっては公爵にはみっともないところをお見せしてしまい、陳謝するものであります。」

 言いながらも嬉しそうな表情を隠せていないユンカーさんをだれが責められようか。

 「いえ、その様なことはお気になさらずに。私どもにとってもユンカーさんに劣らずに嬉しかったものです。そのお気持ちを共有できたことは感慨深いモノがありますね。」

 「そ、そう仰っていただければ幸いです。」

 「それで本日はどのようなご用件で?」

 客間で話を聞いていたのだが、隣にはユイを抱いたフィアが腰かけ、俺の後ろにアニエス。フィアの後ろにはシロップが控えて、シロップはユイと遊んでいる。

 俺のお気に入りの紅茶を飲みながら、ユンカーさんの話を促すと、ユンカーさんは開発計画書なるものを俺に見せる。

 計画書によるとトサンの南側相当の領域を割譲し、俺の領地とするというものだった。

 ただし、俺が領主として当該地域を治めるものではなく、代官を置き将来に向けて開発を行うものとしてある。

 ただし、領地を開発するにあたっての整地・開拓はレネゲイドなどを用いて行う必要があり、ギーフへの街道整備も含まれている。トサンの山間部、全域を俺の領地とするような指令書になっている。

 なぜこのような性急な開発が必要なのか判らないが、随分と広い領地としたものである。

 人の居住可能なエリアは極僅かではあるが、それも開発でいくらでも増やせるだろう。

 領地北側はトサン平野部との境界に当たるところから、南端はギーフの南アルプスほぼ全域と言った範囲だろうか。

 富山県と岐阜県、長野県の山間部全てが俺の領地となったようなものだろうか。

 しかし、この辺を領地化して何をしようと言うのだろうかね。

 「高速鉄道網ですか?」

 「はい。陛下は神国を東西と南北に貫くような鉄道網を計画しておいでです。ちょうど魚の骨のような形になるようで、エイゾからクノエ南端までの背骨に当たる鉄道網に合わせて南北ももれなく網羅する物流の根幹を成そうとしておられます。

 この発想にはセキセンの商業ギルドが深くかかわっており、クノエで開発された蒸気機関とセキセンの商業ネットワークを利用して経済の深いかかわりを神国全体になそうとしておいでなのです。

 それも聞きましたところ、クノエの蒸気機関もセキセンの物流ネットワークもヤマノベ公爵がもたらしたものと聞き及んでおりまして、陛下もそれであればと乗り気でございます。」

 「それと俺が領地を開発することの関係が見えないのですが。」

 「神国最大の山岳地帯は鉄道網を整備するにあたりまして最大の難関となりましょう。その峰々を一発で撃ち抜くとすれば、その工期はどれほど短縮されるでありましょうか。」

 なるほど、アルプスをぶち抜いてトンネルを用意するにはバスターランチャーが最適なのだろう。

 長野または新潟までの鉄道が北陸を通り、東北地方へ抜けるにも福井から関西方面に抜けるにも広大な山脈地帯は邪魔でしかないだろう。

 俺がいなくてもいいから俺の領地とし、俺が自身でトンネルを掘れば工費、工期共にただみたいなものになるだろうな。

 「陛下のお考えについては概ね了解いたしました。しかし私がレネゲイドでやる仕事となればかなり大雑把なものではないでしょうか。トンネルの仕上げ工事はそれなりの人数と工期が必要と思われますが。」

 「それはもちろんそうでしょうとも。しかしながら掘削工事に掛かる日数がなくなれば、そのあとの工程は他所とほぼ変わらないことになると思いますよ。何もかもがヤマノベ公爵のお手柄ですな。」

 おてがらって、なんかいいように騙されてる感が漂ってますが。あれか、陛下の人を陥れる技の数々はユンカーさんの真似なのかもしれんな。

 「それで手順としてはどうなりますか?」

 「ここに陛下よりトサンの領主当ての親書がございます。中には今ほど説明しました内容がしたためられておりますのでこれをお持ちになって、領主にお渡しください。

 その後については開発計画書の通りに穴さえ穿っていただけば完了でございます。

 仕上げについては今度発足いたします鉄道事業総括の者たちが手配いたしますので、ご安心ください。

 あと、国家事業でございますので、領地を線路が通ることによる便宜を図っていただくことになりますが、路線敷地に掛かる固定資産は国に帰属しますので領地の税収とはなりません。

 なんだ、完全にボランティアじゃないかよ。

 「なんだか割のいい日雇い労働者のように思えてきましたよ。」

 「そう仰らないでください。全ての礎となったヤマノベ公爵様のお名前は後世にまで残りましょうぞ。」

 「そこはあまり興味がありません。それでもお役に立つのであればいいでしょう。フィアやユイを連れていきますのでゆっくりした旅になりますがご希望通りにトンネルは通しておきます。」

 「お気をつけていってらしてください。」

 ユンカーさんも席を立ち、玄関まで送ったのだがちょうどフィアがユイと出かけるところらしかった。

 「フィアはどこへ?」

 「はい。お城です。お妃様とお茶を飲む約束をしておりますので、行ってきます。」

 「おお!それでしたらこの馬車にお乗りください。今から戻りますので歩かずに済みます。」

 「そうでしたか、ありがとうございます。ソウタさん、夕方には迎えに来ていただけますか?」

 「おう、日が落ちる前にはいくよ。」

 ユンカーさんの馬車に相乗りし、フィアとユイはお城へお茶をしに行ってしまった。

 お城にお茶とか、すげーな。

 「アンニさんはいるかい?」

 トサンへの仕事についてみんなに話しておかなければならないし、シロップとアニエスにも旅の準備をさせないといけない。

 馬屋に行って馬番の人達にも話を通しておこう。

 裏庭に回り、馬番頭を尋ねると、我が家の5人の馬番たちが番小屋と言われる作業所兼事務所に集まって何やら段取りの確認をしているようだ。

 「皆さん、何の相談ですか?」

 「へい?、あ?お館様いいところに。実はお館様の馬に子供ができたらしいんでさぁ。それで近日に出かけることが有ったら予備の馬を出そうかと言う話だったんですがね。」

 「へぇ、ウィングが妊娠したのか?容態は大丈夫そうかい?」

 「それは問題ありません。ここに居る連中はその辺に付いてもベテランぞろいですからね。」

 実に頼もしいことである。

 「しかし、困ったな。近日中にみんなでトサンまで仕事に行くことになったんだよ。予備の馬を見せてくれるか。」

 これについてはタイミングの問題だろうし、元気な子を産んでもらわないといけない。

 ウィングとあの旦那の子であればまた、賢い馬になりそうだ。

 今回の旅で俺たちのパーティーに初めて参加する馬を見てみた。

 二頭とも白い毛色の馬でなかなかにカッコいい。うち一頭が少し小柄なのは牝馬だからだそうだ。またウィングと旦那みたいな取り合わせだな。

 白い馬たちを見ているとウィングが側にやって来て長い鼻を擦りつけてくる。

 「ウィング!子供ができたって?元気なのを産んでくれよ!楽しみにしてるからな。」

 ずっと俺の目を見ていたウィングは俺の言葉を聞き、喜んだらしい。

 「ぶひん!」

 更に長い鼻をごしごしと擦り付ける者だから、こっちが転びそうになる。

 横に旦那がやって来て毛づくろいをしてやっている。

 「旦那!俺たちは旅に出てくるが、その間ウィングのことをしっかり見てやっててくれよ。」

 「ひひひひん。」

 縦に首を揺らし、俺の言葉を肯定する。

 こいつらホントに頭いいな。旦那の首を撫でてウィングを任せる。

 次はアンニさんだ。

 旅の目的と仕事の内容なんかを相談して留守の間を任せなければならない。

 「シロップ!アニエス!どこにいる?」

 「は~い!」シロップの返事が意外に近い場所からあった。

 「どうしましたか?アニエスちゃんは部屋で掃除してますよ。」

 「そうか、シロップは何してた?」

 「私ですか?馬車の中のシーツなんかの選択をしてたんですよ。」

 そりゃ、都合がいい。一つ頭を撫で、アニエスを呼びにやった。撫でられた頭を両手で押さえながら走る姿が可愛い。

 大体のメンバーが食堂に揃ったようで、フィアとユイには後からという事になりそうだ。

 「揃ったようなので今回のクエストに付いて説明します。

 トサンとギーフの一部領土を割譲され、俺の領地となりました。ただし全てが山岳地帯で人の住めるような場所はほとんどありません。

 ここを開拓し、鉄道を通すことになったんです。

 今回は開拓と言うより穴掘りに行ってきます。トンネルを通したら戻りますのでそれまで留守をお願いします。」

 全員の合唱があった。「いってらっしゃいませ!」

 シロップとアニエスの頬を柔らかくつねる。

 「い、いたひれふ!なふでほほすうんでふか!」

 「はなふてうださい!」

 じたばたと暴れる二人に言ってやる。

 「行ってらっしゃいってどういうことだよ?」

 「いや、つ、ついです。それより痛いですよ。」

 「伸びちゃったらどうするんですか!」

 「それでもかわいいだろ?」

 アニエスが赤面して俯いてしまった。

 「さあ、自分たちの準備をしてくれるか。」

 「「はい!」」

 「アンニさん、俺はフィアとユイを迎えに行ってくる。」

 「畏まりました。お二人の準備はシロップ、アニエスと進めておきますので。」

 「ありがとうございます。」

 馬車には乗らずにテレポートした。

 「ひぃいいい?」

 城の玄関先に現れると、何人かのメイドさんがひっくり返っていた。

 「ああ、すまない。大丈夫ですか?」

 一人一人の手を引いて助け起こすと何度も頭を下げ、逆にメイドさんたちが恐縮してひどいことになった。自分ちのつもりでやってしまったらしい。

 そのうちの一人にお願いしてフィアたちのところへ連れて行ってもらった。

 開けられた扉に入るとユイがお妃様の髪を引っ張って大喜びしており、陛下の膝の上で立ち上がって無双している。

 「おいおい!フィア、それはまずいだろう。」

 「おお!ソウタ殿、良いのだよ。私たちにもいい練習になる。きっといい父親になって見せるために、ユイ殿をお借りしていたんだよ。」

 今日のお二人はユイを出汁にして子育ての予行演習をしていると言い、とてもご機嫌だ。

 お妃様のその後も順調なようで楽しそうな二人は見ていても気持ちがいい。

 「そ、そうだフィア、トサンまで行く用事があったろう?帰って出発の準備をしないと!」

 「え?すぐに出発ですか。じゃぁアマーリエ様、テオバルト様、本日はこれにて失礼いたします。明日から故郷へ一度戻り、用事を済ませたらまたこちらにお邪魔しにまいりますので、アマーリエ様とお茶を飲む許可を頂ければと思います。」

 「はい。お気をつけて行ってらしてください。私どものところへお茶を飲みに来ていただく権利は期限なしでお約束します。15年もしたら親戚になるのですから遠慮しないでくださいね。」


 「今日は楽しかったか?」

 「はい、お二人には時々ユイを貸してくれるようにとねだられてしまいました。」

 「それはいいけど、明日からの旅にユイは連れて行って大丈夫かな?まだ寒いし生まれて半年も経ってないよ?」

 「平気ですよ。もうおっぱいも十分飲んでいますから変に風を引いたりすることもありませんし、ウィングにもなれていますから馬車も平気です。」

 「おっと、そのウィングなんだけどオメデタだよ。今回の旅は旦那さんと共にお休みだ。」

 「ホントですか!?すごい!あとはシロップちゃんとアニエスちゃんですね。」

 馬と一緒とかいったら怒られるぞ。


 広いベットとはしばらくお別れとばかりに4人で俺の部屋で寝た。

 「はっ、ああ、ううん。」

 シロップもすっかり俺の体に慣れ、フィアのように楽しんでいる。アニエスと違って切なそうな声を出すのがヤバいのだが、しがみついて快感を受け取ることが何より気持ちいいというんだから、多分そういうスタイルなのだろう。

 フィアに片手を持ってもらい、アニエスに髪を撫でてもらいながら俺を感じている。

 「あ!あああ!」一番気持ちのいいタイミングで俺と一緒にフィニッシュとなった。

 「ソウタさん、これで子供出来たかな?」

 「どうだろうね。出来てるといいよな。」

 「はい。今日もありがとうございます。」

 「シロップちゃんはかわいいね、って、ソウタさんどうしていつも背中に乗るんですか?」

 「そりゃ、アニエスの背中が乗ってくれって言ってるからじゃないか?」

 「そ、そんなこといってませんんん?ああん、ちょっとんんんん。またこんな格好で。」

 「アニエスも可愛いよな。」

 「だ、だめ、あ、ん、んー!」

 うなじに噛みついて甘噛みしながらオムネを頂く。

 アニエスは背中にも性感帯があるようで首筋から背中を蹂躙するのが面白い。

 一つになるまで背中から散々楽しんで、アニエスをクルッと回してキスをする。俺の目を見ながらウットリとしているのが最高に可愛いと思うのだ。

 アニエスが疲れて眠るとフィアが俺にキスをしてきた。

 「今日からは私も忘れないでくださいね。」

 「おう!やっとお許しが出たか。これからまた、毎晩頼むぞ。」

 「はい、もちろんです。」

 正面からしっかりと抱き合って嫌と言うほどキスの雨を降らしてやる。俺の元へと帰ってきたオムネはサイズアップしており、母親の胸になっているのだが、それはまた嬉しい期間限定のサービスと言うモノだ。

 十分に味わって堪能すると、ユイがフィアの顔に俺の真似をしてキスしている。

 おかしなことをすると真似しそうで怖いよ。

お妃様のご懐妊を片付けてトサンへの里帰りです。

トサンでは書くこともきっと多そうで、若干お腹いっぱいです。


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