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Contractor with blood(血との契約者)  作者: 小西敬
成り上がり貴族の章
51/161

【第51話】ファーストキス

いつもお読みいただきありがとうございます。

今回は旅の合間の話です。

 今度の北行はツクバを通らずに霞ケ浦の東側を通り抜け、海岸線を北上するルートを定めた。

 何となく、ツクバを通り抜けることに躊躇いを覚えたためだ。

 結局、魔法科学省で狼狽した吸血鬼のその理由が分からないことと、事件の連続性に気がかりを覚えたためだ。

 誰にも言っていないことだが、魔法科学省を空っぽにさせた吸血鬼も誰かの意思でそうしたのではないかと、根拠もなく考えている。

 トウトを出発し、3台の馬車は日本でならば東関東自動車道に当たる幹線街道をポクポクとただひたすらにノンビリと進んでいった。

 俺たちの旅にめったにない安穏とした初日は袖ケ浦の南端、コウトリまで進むことができた。

 少し寄り道をして、袖ケ浦のほとりでのキャンプとなる。

 スリブガルフと言うらしい袖ケ浦はキャンプ地からは夕焼けが湾に沈むような絶景ではないが、右に見える湾岸沿いの景色が藍色に沈むときに左側には赤い太陽を背に黒く見える街並みが幻想的で全員が陽が沈むまで手を止め、見入ってしまった。

 「ソウタさん、日が暮れる時ってとても気持ちが穏やかになりますね。」

 「そうだな。俺はこれを見ると明日が楽しみになるよ。また見れるかなって。」

 「いいですねそれ。」

 「うぉっほん。ゲホン、ゲホン。」

 「うひ?」

 夕焼けが赤くなったところから俺たちは手をつなぎ、フィアが俺の肩に頭をのせたままだったらしい。

 「俺たちのいない時にやってくれねぇかな。」

 シゲさん・・・

 メイドちゃんズがウルウルしてるじゃないですか。すまん。

 なんだか俺たち二人が悪者になってしまい、今夜の夕食は俺が作ることとなってしまった。まぁ、作るのは全然かまわないんだが釈然とはしない。

 大鍋を使ってなみなみと注いだ食用油を高温に熱し、食材に衣をまとわせて揚げる。

 冬から春に向けての野菜や鶏肉なんかに衣をつけて次々と天婦羅を上げていく。

 秘密の天婦羅タネはまだ見せない。

 鶏肉と同時に下味の処理はしたが、その際にもみんなに見えないように作業した。

 ご飯も炊け、いよいよ俺しか食べたことのないネタを揚げ始めた。

 調理が終わり、ご飯を各自がよそったところに天婦羅の山を置く。

 スープも味噌汁にして今夜は完全和食だ。

 「いただきます。」で始まった夕食は和やかに進み、天ツユを使ったり塩で食べてみたりとみんなが楽しんでいた。

 「なんだこれ?」

 コウレイさんが口に運んだ天婦羅を食べつつも上の方に視線を向けている。

 味を確かめるように、なんだかを探り当てようとしているのだろう。

 一人でほくそ笑んで見ていると、「ああ、これはアリだな。」と納得し、次々と選択的に選んで食べ始めた。

 そう、ハマると旨いんだよな。納豆の天婦羅。

 シロップがコウレイさんの反応を見て同じものを口に入れた。

 黙って咀嚼し、飲み込んでまた同じネタを取る。今度はツユにつけ食べるようだ。

 もう一つとったネタを今度は振り塩で食べている。

 もう一度取ってそのまま食べ始めた。以降、シロップはそのまま食べるのが気に入ったようでモシャモシャと納豆ばかりを口に運ぶ。

 食べられない物でないことを知ったみんなも納豆を口に運んでいるが、面白いことに次から次へと納豆ばかりを口に運ぶ。

 「大変かわった食感なのに、香ばしさと醤油の味、肉のような味わいもある。ソウタ殿、これは何の天婦羅でしょうか。」

 「畑のお肉ですよ。ここは納豆の日本一の産地ですからね。」

 「納豆?あれは食べられない。本当にこれは納豆なのですか?」

 「ええ、間違いなく納豆の天婦羅ですよ。気に入ってもらえましたか?」

 「まったく問題ないですな。とても味わい深い。」

 キヨシゲさん大絶賛である。

 フィア、気に入ったものをどうして箸に刺すんだ。

 納豆団子、誰得だよ。冷めると美味しくないんだから、確保するのはやめなさい。

 食べられない人も多いという納豆だが、意外にも天婦羅にすると普通に食べてしまう人が多いのだ。

 俺も子供の頃にこの天婦羅で納豆が食べられるようになった。

 母親に感謝だ。


 寝るころになってフィアが甘えだす。

 毎晩のことだが、風呂も済ませ寝床に入ると途端に甘えん坊になる。

 「ソウタさん。納豆の天婦羅、とても美味しかったです。まだまだ色々なお料理があるのでしょうか。私も将来に備えてソウタさんに習いたいのですが、教えていただけますか?」

 「料理?俺が作れればいいんじゃないのか?」

 「でも、それじゃあ私、存在価値がなくなりそうです。今日も二人で作らなければいけなかったのにソウタさんが全部やってしまったじゃないですか。」

 「今日はね。まぁ、納豆の天婦羅をみんなに食べさせたかったからさ。フィアにも内緒で作って楽しんでもらうつもりだったからいいんだよ。」

 俺の隣で両手で頬杖をつきながら膨れっ面をしている。

 前向きな気持ちは当然ありがたいから、おでこにキスをしてやる。

 にへらっと笑いながらフィアもキスをしてくれた。

 「今度少しずつ教えてやるよ。一緒に作れるようになろうな。・・・子供ができたらママが作れないのはいただけないもんな。」

 「そ、そうですよ。今のうちなんです。」

 あさってを見ながら言う姿が可愛い。

 布団の中でもぞもぞと俺が移動し、フィアの背中に乗ってやった。

 「なんですか?重いですよぅ。」

 背後から抱きしめると身動きが取れずに芋虫のようにフィアがくねる。

 「や、あん、んんんん。ちょ、ちょっと、んんん。」

 動けないのをいいことに背後からオムネに手を伸ばし、首筋や耳をキスで楽しむ。

 やっぱり俺よりちょっと高い体温が気持ちいい。抱くと安心するのはどちらも一緒と言うが、俺の方が深くリラックスを覚える。

 スキを突いたフィアがそのまま俺の腕の中でぐるっと回り、いつものように向かい合わせになった。

 目を閉じたフィアにおでこから順にキスを降らせ、今夜も仲良く愛し合う事ができて良かった。


 翌朝、いつものようにシロップたちが起こしに来てくれる。

 もうすっかり慣れている二人は昨夜の惨状をものともせずにフィアに服を着せていく。

 最近はどういう訳だかどちらかが俺にも服を着せるのだ。

 王様気分とはいかず、どうにも気恥ずかしい。

 「俺はいいんじゃないか?」

 「だめですよ。それじゃ私たちがお館様とスキンシップ取れないじゃないですか。」

 「そうです。絶対ダメです。お館様に触れなくなっちゃいます!」

 「お?おう、そうか。すまん。」

 クスクスと笑いだす二人。

 最近この二人は自分の気持ちを隠さなくなって来たというか、公然と口に出してはばからないのだ。フィアも面白がってそそのかすものだから日増しにアタックが激しくなってくるよ。

 俺としては勘弁してほしいのだが、ハーレム願望はないんだよな。

 フィアと契約したからには、フィアとは毎晩一緒に過ごす必要がある。

 それは自分で負った責任でもあるが、それ以前に俺自身がそうしたいと思っている。

 だからこそ誠実でありたいし、いつも一緒に居たいのだ。

 いつかフィアにもそう言ったはずだが、フィアはどうしたことか二人を炊きつけるのだ。

 前にフィアも妾も側室も嫌だと自分でも言っていたし、俺もそんな気はさらさらない。

 う~ん、解せない。

 着替えの終わったフィアは悪戯っぽい目で俺を見ている。

 「フィア、お前この状況をどう思う?」

 「楽しいですよ。」

 「前にフィアは妾も側室もいやだと言ったよな。寂しい思いをするって言わなかったか?」

 「言いました。今も変わってないですよ。」

 「じゃあ?」

 「誰かも知らない人は嫌です。それに私、毎日ソウタさんに可愛がってもらわないと生きていくことだってできないのですからイヤです。」

 「うん。言ってることとやってることがチガくないか?」

 「そうですか?シロップちゃんとアニエスちゃんだったら一緒に可愛がってもらえるじゃないですか!」

 「はぁ?」

 この子は何を言っているんですか?

 わたしはそんな特殊な性癖はありませんが?

 そして三人でワクテカした視線を寄こさないでください。

 「それは早急に回答できないな。俺がそんなことをできるとは思えない。」

 すみません。三人でがっかりしないでください。

 「シロップちゃん、アニエスちゃん、もっと頑張ろう!」

 「「はい!」」

 おい。


 レネゲイドが次元断層の自室に帰り、朝食の準備が始まる。

 キャイキャイと騒ぎながら三人がサラダを作っているらしい。

 「おやかたさまぁ。最近何だかあの三人いい雰囲気じゃない?メイドちゃんズも娶っちゃうの?」

 最近のチカゲさんは俺のことを「おやかたさまぁ」とひらがなで呼ぶ。

 「いや、そんな予定はないが。」

 「なんだ、そうなら一緒に貰ってもらおうかと思ったのに、残念。」

 「あなた、いったい何を言ってるんですか?」

 「え?いや、ついでにそうしてくれると助かるかなぁって思ったんだけどね。」

 「申し訳ないが、ハーレム願望無いんで、皆さんで努力をお願いします。」

 「ちえっ。つまんないの。」

 つまるも詰まらないもないし。

 ちょっと我が家がいい雰囲気になったと思ったら、なんだって言うんだよ。

 俺が悪いのか?

 チカゲさんと言い、シロップやアニエスと言い、ハタチにもなってないのばかりだな。

 で、サチさん、シノさん、アオイさんみたいないい感じのお年ごろには見向きもされてない。嫌われているわけじゃなくて恋愛対象ではないというだけのようだ。

 冷静に世の中を見たり、色々な経験をした人にとっては俺は大勢の中の一人と言う括りになるが、若い子には身近に居る俺が気安いし手っ取り早く惚れちゃいました的な感じなんじゃないだろうか?

 いずれ世間に目を向けて、本当に気に入った人を見つけてほしいものである。

 しばらくはのらりくらりとしてやり過ごすのもいいかもしれないな。

 いくつになっても変わらないようなら、そん時に考えることにすればいいだろう。

 先送りだ、こんなもの。


 先へと馬車を進め、オオワライと言う海水浴場を右手に眺めながら真北を目指す。

 今の季節に海に入る酔狂はいないが、今日は天気も良く、穏やかな波が気持ちよく寄せては返している。

 白い学ランを着た腐った財閥の御曹司が高笑いしているシーンが何故だか頭に浮かぶ。

 もう一度あの映画見たかったなぁ。

 この世界がフィアの夢で、亀の上に乗ってる世界だったりしたら俺はハリアーに乗ったりしないと思うよ。

 一人で脳内会議を開催しながら手綱を取っていると、気配察知に数人のただならぬ魔力量を持った人が並行して移動している反応を察知した。

 大した健脚の持ち主ばかりのようで、数えると5人が並走しているようだ。

 「フィア、左側に注意。確認したら後ろにも伝えて。」

 「確認しました。後ろに伝えます。5人ですね。」

 「ああ、注意しよう。」

 感応波通信によってレネゲイドにも注意喚起する。

 ”レネゲイド、敵襲だ。場合によっては援助を頼む。”

 ”海岸線での行動を拒否します。”

 は?こいつまで我儘になりやがって。

 ”おい!”

 ”ハーモニックドライブのグリスに塩分が混入しますので、C整備が必要になります。”

 A整備は機乗前点検や降機時点検と言った簡易の点検で、乗る前と後に重要な部分に異常がないか目視点検する程度の物だ。

 B整備は一歩進んで外装を外して内部まで点検する作業を言う。中に入った埃や汚れを拭き取ったり、可動部に注油したりぐらいまでの整備のことだ。

 で、C整備は通常ではいじることのない重要な機能部品までを分解して内部構造まで整備する大規模整備となる。レネゲイドの場合、C整備にはたっぷり三週間ほどの時間を要するので余程でない限り行わない。

 シゲさんたちが三週間かけてやって、最短と言った大規模整備だ。そのために今、屋敷に整備工場を建てているところだからね。

 一般的に「水と油」っていうと混ざらないもののように言われるが、実際には油脂類と言うのは吸湿性があり、油は常に水分を取り込もうとしているのだ。ましてや塩分の含まれる海風をグリスに含ませると、機能部品が錆びてしまう。

 レネゲイドはその可能性を指摘しているのだ。

 とはいうものの、身の危険と秤に掛けて欲しかったのだが、天秤は俺たちを助ける方には傾かなかったらしい。

 ”マスターの力量で必要十分です。5人の敵性勢力は身体能力にはそこそこ優れているようですが、魔法力は常人並みです。私がわざわざ潮風に当たるような必要性を計算できません。”

 ああ、そうですか。

 でも敵さんに魔法使いがいないようなら何とかなるな。

 後ろの馬車からも護衛班が動き出し、タケヨシさんがショートソードとマインゴーシュを鞘から抜き、一番後ろの資材車に飛び移ったのが見える。

 今日の資材車の御者は偉丈夫のハルシゲさんだが、戦闘という点では小柄でもタケヨシさんに守ってもらわねばならない。フォローはしっかりとしているようだ。

 相手の素性は分からないがまた”解放の光”なんだろうか?いつか力ずくで殲滅しないと気が休まらないな。

 進行方向左側に長さで30m、高さで5mのデストロイウォールを展開する。

 何かが飛んできてからじゃ遅いし、展開したところで俺の魔力量からすると回復量の方が消費量を上回っているし、一度に攻撃してもどれほどでもない。

 こういう時に自分のチート臭さを改めて実感してしまうな。

 カウンターアタックをフルオートに設定して時速15kmほどで馬車を流している。

 互いの緊張感は伝わっているので、向こうも俺たちが気づいていることを知っているはずだ。

 変わらずに並走していることから、何かのチャンスを計っているのだろう。

 その内に一人が並走する塊から遅れるようになり、体力的なものかと一瞬考えたが、後ろに回り込むつもりなのだろう。

 わざわざ敵に塩を送るつもりもないので、純粋魔法のエネルギーブレットを放り込んでやる。

 純粋魔法はアローとブレットとラインとボムがある。アローは光り輝く矢が敵に向かって飛ぶが、設定した目標を捉えて追尾する。

 ブレットは5cmほどの直径の球状の光がアローのように追尾して命中する。

 アローは貫通性の高い攻撃で、ブレットは吸い込まれるように体内に侵入し、内部から爆発する。

 ラインはラインと言うよりビームだ。直進性の高い光の糸が直進し途上の物体を次々と貫通していく。ボムは字のごとく辺り一面を爆発によって破壊するが、撃ち放しで追尾はしない。効果範囲は10mほどでそれなりにデカい。

 俺から撃ちだされたブレットは気が付いた敵が取って返そうが追尾を開始する。

 俺たちから逃れるように距離を置いた敵だったが、逃げ切れずその身にブレットを受けた。「ぼちゅん!」という肉々しい破裂音と共に気配察知のレーダー上から輝点が消える。

 残りの四人はまだ固まって並走しているが、何をするという気配もない。

 ここまでやったのだから、全部ブレットでヤッてしまおうか?

 そう考えたところで敵が散開した。

 デストロイウォールを俺は柔軟に変化させ、左側だけではなく、上面と前後にも立体的に展開した。

 これによって散開した敵の投擲によるクナイの全てが阻まれる。

 先の一人については敵じゃなかったらどうしようという懸念がないでもなかったのだが、こうして残る四人がクナイを投げたことで憂いを断つことができた。

 更に気が付いたことがある。

 この四人の向こう側500mほどの距離にさらに5人が並走を続けているようだ。

 こういうダラダラとした不快感を伴うやり方は実に解放の光の手口に似ている。用意周到なようで勢いのない姑息な手を用いるのだ。

 イラッと来た。

 アローを同時に9発念じて発射する。そのうち四本は近距離のそれぞれにめがけて急激な軌道修正を行い、追尾を開始する。

 残りの5本は一旦真上に上昇し、50m程の高度に達してから水平飛行に移り、接敵してから急降下を開始した。

 そのころには近距離の四本が全部、敵の頭蓋骨を貫通しており、意識はその向こうへと移る。

 狙い違わず、向こうの5人も脳みそをぶちまけたようだ。

 障壁を解除し、さらに広範囲を索敵する。が、近い位置には群れたような様子を見せる者はいない。

 群れるばかりではないだろうが、一応のためにレーダー索敵はしばらく続けておこう。

 現在輝点として表れている人たち全てにマークを打つ。これでつけてくるような者がいれば判るだろう。

 北への移動を再開し、さすがにまっすぐに移動できたからかナカまでたどり着けた。

 一度は来たかった那珂!ミズトで泊まろうかとも思ったのだが、その隣がナカなんだしと、俺の我儘でもう一声進ませてもらった。

 「那珂ちゃんセンター!いっきま~す!」

 頭の中で神通の妹分が絶叫していた。

 これでお姉さんの川内、真ん中の神通、下の妹の那珂。

 川内型軽巡洋艦三姉妹コンプリートだ!ああ、ここに来れてよかった。

 ここまでのところマーカーを打った人たちが付いてくる様子はない。もうしばらくはマーカーを外さないでおいた方がいいだろうが、ひと段落着いてからは解放の光全員にマーカーを打ってやろうと思う。

 まとめて始末するためだ。

 街はずれでキャンプを張るために馬車を進め、那珂市から西に移動して那珂川の河川敷に場所を定めた。

 夕飯も入浴も済み、俺は馬車の中でフィアと一緒に布団にもぐる。

 まだこの季節は夜が飛び切り寒いからね。ちょっと体温の高いフィアとくっつくのは色々な意味で快適すぎる。

 フィアの体を貪りながら暖かさを堪能し、フィアが先にイっても構わずに続けていると再び復活してくる。優しく労わるように愛情を注ぐとものすごい気持ちよさそうな表情をしてくれる。

 これが愛おしくてたまらないのだ。

 俺が満足した頃にはフィアは少しぐったりしているが、俺の上に乗り俯せでリラックスしている。

 俺の胸に耳を寄せるように横を向いたまま、体を弛緩させゆるゆるとしているフィアはそのままの態勢で呟くように話しかけてきた。

 「ソウタさんはどうして二人を受け入れようとしないのですか?私だけ毎晩こんなに可愛がってもらって、それはそれで嬉しいですけど。」

 「フィアこそなんでそんなに二人を推してくるんだよ。」

 動かないまま少し考えていたようだが、まとまったのか口を開く。

 「シロップちゃんとアニエスちゃんと三人でいる今がすごく大事な時間になってます。ソウタさんは知っていますが、私はこの歳まで同じ年代の友達もいませんでしたし、兄弟、姉妹と言うものも居ませんでしたから楽しいんです。

 これもソウタさんに受け入れてもらわなければ味わうことのできなかった幸せです。

 ソウタさんに認めてもらえる幸せっていうのはいろんな広がりをもたらしてくれます。レネゲイドさんと一緒に戦えたり、クノエの地で巨人と戦う力を得たり。

 旅をする仲間ができたのも奇跡ですよね。

 なのに、ソウタさんは貴族にまでなってしまわれました。私が公爵夫人なんておかしいなんてものではないです。

 みんなも良く言ってますが、ソウタさんと居るとこれまでに経験したこともない、夢にも見ないようなことで毎日が本当に楽しいって。もちろん私もです。

 シロップちゃんもアニエスちゃんも毎日が驚きの連続だって。

 ずっと、ずうっと一緒に居られたら。って言ってくれています。」

 「だからって。」

 「いえ、違うんです。二人ともソウタさんが貴族だから妾にしてほしいんじゃないんですよ。前にソウタさんに身を捧げて許しを乞うたときにソウタさんがお叱りになったそうですね?人として女性として大事にしてもらえたことを一生忘れないとアニエスちゃんは言ってました。

 メイドが戦士や職人と同じお仕事なんだって気づかせられて、認められて嬉しくて涙が止まらなかったってシロップちゃんが熱弁してました。

 私の知らないところでもソウタさんはみんなに色々な”良かった”を振り撒いてるんですね。彼女たちがソウタさんを大好きになっても当然じゃないですか?私はそう思います。」

 「じゃぁ、チカゲさんはなんでだ?」

 「チカゲさんですか?私は何にも聞いてませんよ。」

 「そうか、じゃぁいいか。」

 別にシロップやアニエスを貰ってしまう事が嫌なわけではない。自分の中で自分の愛情はフィアにさえ受け取ってもらえたら満足だし、それ以上を求めてもいなんだがな。

 「俺はフィアだけをただ一人と決めてこれまでやってきたし、出会ってから3年ほどかな?一つの不満もなかったし、これからもずっとフィアだけを愛していければそれで良かったんだが。フィアはそれじゃ不満かな?」

 「いいえ、不満なんてありませんよ。これまでの3年間、一緒に居られたのがソウタさんでホントに良かったって思ってます。私はソウタさんと一緒に死ねるのですからそれまでの間もきっと幸せでしょう。

 その幸せにシロップちゃんとアニエスちゃんも一緒に居てくれたらもっと楽しいのになと、思うようになりました。それって贅沢なことなのでしょうか。」

 「ふうん、俺はこれから3倍頑張ればいいのかな?」

 「はい。お願いします。」

 フィアは満面の笑みで俺にキスの雨を降らす。

 やれやれだ。俺はこれから三人を心に留め置かなきゃいけないらしい。

 本当にハーレム願望ないのにな。

 「今夜はサービスしますよ。」

 そう囁いたフィアが俺に飛び掛かってくる。俺もフィアを抱きしめてさんざんに可愛がった。


 二人で大騒ぎをした翌朝、いつものように二人が起こしに来てくれた。

 「失礼します。」部屋に入ってきた二人はいつものようにベットで二重になっている俺たちを羨まし気に眺めながら、俺がフィアを引っ張り出すのを待つ。

 俺もいつものようにフィアを布団から引きずり出し、二人の手を借りて着替えをさせ、フィアが目を覚ますと今度は俺に服を着せ始めた。

 アニエスが俺が袖を通した白いシャツの前ボタンを留め始めた。

 ボタンを留め終わり、満足げに俺の顔を見た時に唇を奪う。

 「ん!んん!?」

 唇を離すと驚きの表情と恥ずかしいのとで真っ赤になって目を見開いている。

 フィアにジャケットを着せ、何を騒いでいるのかと振り返るシロップを抱え上げ、持ち上げたまま唇を頂いた。

 「ひゃうん、んん?」

 ビックリした顔のまま俺と見つめ合って固まっている。

 固まったままのシロップをちゃんと立てるか確認しながら降ろす。両手で自分の唇を確かめ、まだ固まっているようだ。

 最後にフィアを抱きしめて安心の口づけを交わした。

 「二人とも、いつまでも固まってないで朝食の準備に行きましょう。」

 颯爽とさわやかに宣言し、若干放心状態の二人の手を引き、連れだしていった。

 それを見ていると、本当に姉妹のようだ。

 見えなくなった三人からキャーキャーと騒々しい大騒ぎが聞こえてきた。まぁ、これで良かった事にしておこうか。

ソウタが新たに娶ることになった二人のメイド。念願叶った二人はこれから幸せになると思いますが、ソウタがいつの間にか魔法の使い方や応用に才能を見せ始めています。

こいつTUEEEE?

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