【第43話】叙任の儀
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オウスガを出発したのは翌日で、俺たちとしては急ぐ理由もなかったのだが、オウスガの鎮守府からトウトまで二日の距離でモタモタとしている位ならトウトに赴き、親王様に面会してほしいと無言ではない圧力がかかったのだ。
無自覚に過ぎるこの一団には、叙任のために急ごうと言う気のあるやつが皆無であったために無言の圧力が効力を発揮しなかったのだ。
傍目からすると、貴族としての自覚が足りないんじゃないの?という事なのだろうが、フィアと俺にその自覚がないのでそんなことは一つ一つ言葉にしてもらわなければ判るわけがないじゃないか。
多分、たった今「叙任するのやめました」と言われても「あら?」ぐらいにしか思わないし、本気で惜しいとさえも思わないだろうと思うのだ。
そうした爵位と言う物に汲々とする人たちもいれば、拠り所とさえ思う人もいるのだろうが、この旅団に所属する俺たちとしては正直、「どうでもいい」付録ぐらいの価値しかない。
故に歩みが遅いとも思わなかったし、自由行動の日にフィアの着るものを真剣に探していたりもしたのだった。
追われるように、急かされるようにトウトへと辿りついたのはきっちり二日後で、オウスガの鎮守府から俺たちがトウトに向かった知らせが皇族と呼ばれる親王様とそれを支える巨大組織に周知されているために寄り道さえもままならなかった。
本当ならオウヒン(横浜)で北華や西華から伝わったという伝来の料理を堪能し、フィアにチャイナドレスを買いたかったのに、トウトに近づくにつれて護衛の兵士の数が増え、野宿さえもままならなくなってしまっていた。
オウスガから300人規模の。オウヒンでは500人を超える護衛騎士が俺たちの隊列に加わり、前後に長大な車列を作っている。
騎馬隊もかなりいるからか、前後の連絡用だと思うが頻繁に早馬が往復している。
一気に物々しくなってしまい、俺たちは馬車からも出られなくなってしまっていた。
辛うじて、自分たちの馬車を自分たちで操車できているのが奇跡と思える。
何せ公爵様が自分で馬車の手綱を握るなど、ヒマな時の戯れにしか許されないだろうがこの馬車の動力源はフィアか俺の言う事しか聞かない。
オウスガで乗り込んできた兵士に俺たちは馬車に押し込められ御者席を奪われたのだが、ウィングは結局テコでも動かなかった。
ウィングの旦那さん(仮)も同様で、兵士の言う事など馬耳東風であったため護衛の兵士たちの間で馬を変えるという案にまとまりかけたのだが、それはフィアの強烈な却下を喰らい俺が御者席に戻る形で落ち着いた。
ウィングの如何にも「ザマアミロ」という視線を受けて「グヌヌ」と唸りを上げる兵士が哀れでならなかったよ。ホドホドにね。
前後の車列はそのほとんどが兵員輸送車で、荷台に幌がかかっているだけのもの。
簡易に誂えられている長椅子に向かい合わせに兵士たちが腰を下ろし、周辺警戒を絶えず行っている。
俺もフィアも気配察知が使えるから、もう少し気を抜いたらどうかと勧めたのだが、余計なことに魔力を使うなと言いくるめられてしまった。
丸一日使い続けても魔力は全く減らないと言ってみたのだが、呆れられただけで取り合ってはもらえなかった。
まぁ、俺たちの仕事を奪うな!的なことなんだろう。
トウトは人口1000万人を抱える神国最大の都市であり、あらゆる機能の中枢でもある。
神国そのものは親王制を敷いており、象徴として最終意思決定機関として親王を頂いている。
王政と違う点としては、中央集権ではあるものの権力の移譲が比較的進んでおり、国そのものに関わる出来事以外はそのほとんどが地方の裁量に任されているのだ。
クノエの北部が領主の国盗り合戦で領土が増えたり減ったりしていても国としては構わないし、急に民主制に変わって民意で代表者が選ばれる共和国になっても構わない。
この国に暮らす全ての種族に納税義務があり、僅かばかりの税を治めさえすれば地方領地がどんな様子になっていようと干渉しないのだ。平均的な税額は年収の約2%で、どこかの国のようにありとあらゆるものに税を掛け、税を含めた金額にさえも税を掛けて二重取りしてやろうとか、段階的に課税率を引き上げて儲かっている幻覚を見ている総理大臣がいるとかいうことはない。
ただし、自立救済の原則があるために政府から干渉されることはないが、困りごとがあっても助けてくれるわけでもないのだ。自然災害などがある場合には陸軍や空軍が物理的には助けてくれるが、復興支援がある訳でもない。
領主が乱心して虐殺が始まるとか言ったことはさすがに許されず、税収を脅かすような領主は一族まとめて国の制裁によって首をさらすことになる。今までにはそんな領主もいたという事だ。
ノブレス=オブリュージュ(高貴さには義務と責任が伴う)と言うフランス語があるが、貴族階級が領主となり、インフラや社会保障の制度を整備したり領民の生活水準向上に努めるなどの責任を負っていた。
貴族に裁量と責任が移譲される代わりに領民を富ませ、納税を取り纏め国へと治める。
発展させることができれば爵位が上がり、そうでなければ没落する。
こうした小さな国の集合体が神国と言う外枠を形成し、外枠を守るのが貴族であり、そのための権力の行使を許されている。
そんなことを休憩のたびに聞かされ、ウンザリしながらトウトへと移動した。
フィアが眠りながら聞いていたのは言うまでもない。
さすがにこの国の中枢と言うだけあって、どこも立派だった。
周辺部は農地として開拓され、整備されてい来たのだろうが田畑が広大に広がっており、地平線の彼方までが畑だ。稲や麦などの主食を作る穀倉地帯もあれば野菜などを様々作る地域もある。
牛や豚、鶏などを育む畜産を専門に行う地域もあるとか。
こうした集中的な配置は効率を重視した結果なんだとか。
伝染病や植物の病害虫が発生した場合に大ダメージがありそうだが、移動の間中そうした説明を垂れる文官さんに聞いてみたところ、当然昔はそれでえらい目に合う事もあったという。
それも免疫学などが盛んに修められるようになると、今ではほとんどそうした被害は出なくなったという。
1000万の人口を支えるために努力は絶え間なく続けられているという事だろう。
農村エリアを抜け、普通の家屋が立ち並ぶエリアに入ると商店や工房、飲食店や飲み屋なども見えるようになり、大通りに店が集まり、周辺に民家が集まる様子が判る。
多くの人が道にあふれ、活気が感じられる。
地方へとつながる街道沿いに衛兵がおり、国境を越えた実感はあったが、まだ国境の防護壁を通っていない。
どうなっているのかと思っていると、住宅街を超えるころに重厚な石造りの砦門が現れた。ここから先が貴族街になるそうで、その中心に親王の住まいがあるのだという。
そこにはまた別の防壁があるという事だが、貴族街を守る防壁もただモノではないと思わせる。高さは10mほどもあり、防壁の上には弩弓や大砲を設置でき、兵も展開できるほどの回廊があるという事で高さと同じくらいの厚みがあるようだ。
俺たちがたどり着いたのは南門と言われる貴族街を取り囲む防壁の四つある砦門の一つだった。
てっきりその門から入ると思っていたのだが、先頭の兵たちは門に当たると右に折れ、外周を進み始めた。
「どうしたんだろう?」
疑問を口にするとフィアも首をかしげている。可愛いな。
反時計回りに随分と進むと東門が見えてきた。
こちらの砦門は南門と比べて相当に厳重な気配だ。
南門には門の外の詰め所に数人の衛兵がいて、砦の上に見張りの兵が巡回するように歩き回っている姿が見えたが、東門は詰所のデカさから桁違いだった。
詰所には100人ほどの騎士が詰めており、数十騎の騎馬兵も隊列を組んで巡回している。
砦の上にも常時弩弓などが配置されており、兵は巡回していない。
等間隔に見渡す限り兵が空を睨んでいるような感じだ。
この砦門から中に入るらしく、前の方では護衛の兵と詰所の衛兵とで打ち合わせのような感じになっている。
時間調整のような感じになり、文官さんがやって来たので先ほどからの疑問を尋ねてみた。
「東門から南門までの移動の間に見逃されたようですが、防壁が途中でほんの僅か、途切れているのですよ。北門から西門、南門までの出入り口はトウトの領地貴族が住まうエリアになっており、国に仕える貴族は東門からのみの出入りとなります。
ただの円になっているように見えますが、中も防壁で分けられており、そうですな。
時計に例えますと中心から2時の位置までと中心から5時の位置までを結ぶように貴族街さえも分ける防壁があります。この、2時から5時までの間に神国を担う貴族が住まいしており、それ以外のエリアにはトウトの領地貴族が住まう形です。
時計の中心に向かうほどに防壁は高くなり、ひときわ高い防壁が中心で円を描き、国貴族の方へ開いております。
もちろん中心には親王様とそのご家族が住まわれており、強固な魔法障壁と物理的な砦によってお守りしているという訳ですね。」
「トケイってなんですか?」
何気なく聞いていて、俺は分かっていたがフィアには時計が通じていなかったらしい。
この世界で時刻が必要になる人なんて滅多にいないしな。
「ああ、それは時間を知るための道具でな、一日を等分に分けて管理できるようにしたものかな。それを見ると正確な時間を知ることができるし、忙しく予定を立てたりする人には重要なものなんだよ。」
「ソウタ様は良くご存知でいらっしゃる。国貴族は色々な場面で時間で区切って仕事をこなしますので、どうしても必要なのだそうです。」
「そんな正確な時計がこちらにあるとは知りませんでしたよ。」
カ○オやセ○コーとかタグ・ホ○ヤー、ロ○ックスみたいにブランドがあったりとかするんだろうか。
説明を聞いているうちに東門が開放されたようで、全体がまた動き出した。
貴族街に入ると街の喧騒が聞こえなくなり、静謐とした雰囲気に満ちているようだ。
通りを歩いている人も執事やメイドなどの装いで、にぎやかにしている人はいないようだ。
大通りも途中で何度か直角に折れており、大軍が攻めるには難儀する造りとなっている。
全体的に坂道になっており、上へとゆっくりと登って行くような街の造りだ。
フィアは右に左にと視線を巡らせ、忙しく周りを見ている。
どの建物も大きく、馬車が出入りできる車宿りを備えているようで、上に行くにしたがって造りも華美になり、位の高さを現しているようだった。
縁のない世界を見ることができて貴重な体験だが、こんなところに住まう気はしない。
さっきまで冒険者だった俺は、向こうの世界でも一般的なサラリーマンだったんだし、公爵になったからと言ってどこかに閉じこもる気もないからな。
どれだけ上ったか知れないが、ようやく上り坂も終わりを告げようとしていた。
ただし、目の前に広がるのは広大な森。
様々な樹木が手入れされ、整然とした趣と見て楽しむための工夫が凝らされた人口の森だ。
その中を進めるのは限られた人たちという事なのだろうか、兵や文官たちは左右に分かれ、俺たちの馬車を行かせるように促してきた。
歩み寄った文官は馬車の横に傅き、同乗の許可を求めてきた。
「ソウタ様、ここからはソウタ様とフィア様、旅を共にされた皆さまのみが入ることを許されております。私が案内役を務めさせていただきますので、馬車への同乗をお願いしてもよろしいでしょうか。」
「ええ、どうぞよろしくお願いします。」
文官さんの手を引いて御者席へと引き上げる。随分と柔らかい手だなぁという意味のない感想を抱いてしまう。
兵や武官ではないのだからそんなもんだろうと簡単に割り切り、40代だろうか落ち着いた雰囲気の文官さんを隣に乗せて親王様のお住まいになっている場所へと向かう。
「ソウタ様は叙任の後はどうされるのですか?」
「俺は、いや、私は多分今までと変わらずに旅をすると思います。フィアと住むための家がトサンにありますし、この国にはまだ見ていないところや美味しいものなども多くあろうかと思いますので、領地を持ったり領民を大事にしたりと言うのはできないのではないかと思いますよ。」
「ほう、もう領地をお持ちでしたか。」
「いえいえ、家族が暮らすのに必要な最低限の家と、田畑があるだけでそこに他に住んでいる人なんていないような山間地ですよ。」
「そこにはいつ頃にお戻りに?」
「さて?いつに戻れるとは考えておりませんでした。漠然と旅が終わればとしか考えておりませんでしたし、戻るのは旅を一緒にしたメンバーと嫁や婿さんが付けばその方たちでしょうから公爵だなんて言ったら笑われますねきっと。」
「領民のいないところからのスタートという訳ですね。面白そうではありませんか。」
「面白いですか?ああ、100年くらいしたらもっと増えているかもしれませんよ。妻がサキュバスなんで婿取り一族になるかもしれませんね。」
「貴族ですからね。婿取りなんてよく聞く話ではありませんか。良いと思いますよ。」
この文官さんとは話が弾むな。
どれだけ行ってもどこにも辿りつかないんだがどういうことだろう。
広いのか?回っているのか?いやいや、特に曲がったという気はしない。純粋に距離があるのだろう。
そんな不安に駆られる頃に前方が開けた。
開けた先にあったのは正しく城。ザ・キャッスルでした。
日本の城ではなく、ドイツの城でした。
いくつもの尖塔が立ち並び、優雅で歴史を纏った石で作られたそれは幅も奥行きも計り知れず、高さも首が痛くなるほどに高い。
何より驚いたのは背後に見える魔術障壁だ。空の色さえも変わって見えるほどに障壁が厚い。虹色に揺蕩うように色が移り変わっているようだ。
レネゲイドのバスターランチャーであれば貫通するだろうが、およそ思いつくような攻撃魔法であれを抜くのは難しいだろう。しかし、どれだけの魔力を消費してあの障壁を維持しているのだろうか。
「あの障壁すごいですね。」
馬車の横窓から顔を出しつつ前方を仰いだフィアの感想だ。
「お二方の聖銀の巨人であの障壁は抜けますか?」
「どうでしょう?抜けますよね。」
「ああ、そうだなぁ、あの魔力量なら抜けるな。」
「ほう、抜けますか。魔族の使用する最高出力の攻撃魔法の倍以上の強度がありますが。」
「レネゲイドのバスターランチャーは多分その1000倍以上の出力があります。人の制御できる魔法量ではどうなるものではないでしょう。」
「ほほう、それだけの力を持ちながら冒険者のような暮らしを求めるのですか。」
「そうですね、過分な力を持っているのかもしれませんが、所詮預かりものの力です。また、人の上に立つような性格でもありませんからね。フィアと家族を守ることさえできれば十分です。
レネゲイドは私たちの暮らしを脅かすような出来事があればそれを完全に排除するために遠慮なく使うでしょう。」
「はははは、ずいぶんと欲のない方なんですね。そして目標がはっきりしておられる。本当ならばそう言う心持の方に大領主となっていただきたいところですね。」
「勘弁していただけますか。」
城の前庭に入り、車宿りが見えてきた。
「うわぁ。」
フィアの呆れにも似た感嘆の声が聞こえてきた。そう、目前に迫る車宿りには500人を超えるメイドさんが整然と並んでいるのだ。
叙任を受けるという事はそれほどまでに大変なことなのか?背中に変な汗が流れてくる。
帰りたい気持ちを抑えて馬車を正面に乗り入れる。
俺たちの後に二台の馬車が続き、車宿りに三台の馬車が並んだがメイドさんの数にはかなわない。
「おかえりなさいませ!」
揃った500人のおかえりなさいに迎えられ、俺たちはたじろぐ。
おかえりなさい?
メイド喫茶かここは?
神国最大級のメイド喫茶。
バカなことを考えていると全身から「執事です」という威厳を漂わせた執事さんが馬車に近づき、俺ではなく文官さんの方へと立った。
「親王陛下、お気が済みましたでしょうか。」
「ああ、大変楽しかったよ。」
「はぁ?」
なんて言った?この執事さんはなんて言いましたか?
「親王陛下・・・で、いらっしゃいますか?」
なんで?ねぇ、なんで俺の横に親王様がいたの?
ゆっくり振り返るとフィアがキョトンとしていた。
その表情に失いかけた思考を取り戻し、慌てて馬車から飛び降りた。
臣下の礼を取り、一言文句を言わせてくれ。
「親王様、お戯れが過ぎます。私どもが失礼をいたしましたらどうなさるおつもりですか。」
「いやいや、それを見極めるためにこうしてるんじゃないですか。私としてはあなた方のお考えを伺えて大変有意義でしたよ。
すぐに案内させますので、ご心配なさらずに。後ほどお会いいたしましょう。」
馬車から「よいしょ」と飛び降りた親王様は執事に付き添われ、大量のメイドさんたちを引き連れて入城されていった。
「親王陛下、入城!」衛兵から大きな声がかかり、ホールに居た貴族たちが臣下の礼を取る様子が開け放たれた玄関の奥に見えた。
なんで?
そこからの準備が大変だった。
それこそ着の身着のままでここまで来たわけだから、せめて何かに着替えなきゃいけない。
女性陣もメイドさんに連れていかれ、ここでドレスを貸してもらえるらしい。
おれたちもここでスーツに着替えるそうで、先ほどのザ・執事ではないが別の執事さんに案内されて控室のような場所へと入った。
それにしたって男の着替えなんてたかが知れているだろう。
着ているものを脱いで、カッターシャツとズボンを履いたらベルトを締めてネクタイを締める。そして上着を着たら完了だ。
選ぶにしても大した差がある訳でもないので大雑把だ。
その程度に考えていたら、燕尾服だったのには多少の驚きはあったものの、想定の範囲内である。
男性陣が全員着替えたころに報告ではようやく女性陣のドレスが決まったそうである。
叙任式はまだまだ先のようだ。
親王陛下の準備が整い、呼ばれるまでに終わるんだろうか?
すでに準備の終わっている俺たちはそこからはひたすらに拷問のような待ち時間を過ごした。
茶を飲んだり、手洗いに行ったり、本物の文官さんに段取りを教わったりしてひたすらに待った。
だいぶん煮詰まったころに執事が控室へと入ってきた。
「お嬢様方のご準備が整いましたので、叙任の会場へ移動していただきます。」
控室がホッとした雰囲気に包まれ、これから緊張しなければならないことさえ忘れていた。
ずっと厚みのある絨毯が敷き詰められた廊下を歩き続け、両開きの重厚な扉にたどり着いた。スーツ姿の男性がそれぞれの扉を開き、中へと招き入れてくれる。
華があった。
いつもの見慣れた衣装ではなく、それぞれに似合ったドレスを纏い髪型も、化粧も決まった花たちが咲き誇っていた。
そんな中にあって、フィアはひときわ輝いていた。(ひいき目は当然ある。)
ウェディングドレスのような純白の。バッスルで膨らんだ裾の長いドレス。
背中が大きく開いていて、細い肩もあらわになっているが緩く編まれた銀髪に華やかな花飾りのあしらってあるティアラが載り、ゆるく流れているために肩甲骨の下から展張する翼は見えなくなっているようだ。
したことのない化粧もあって、見惚れていると言葉なんか出てこない。
「ソウタさん、貸していただいたドレスは大丈夫でしょうか?ソウタさん?」
近づいてきたフィアに鼓動が跳ね上がる。
「あ、ああ、とてもよく似合ってるよ。」
それだけ言うのが精いっぱいで、フィアから目が離せなくなってしまっている。
「あらあら、公爵様は自分の奥様に夢中のようね。」
余計なことを言うのはアオイさんだ。
フィアの頬がちょっと朱に染まる。
「きれいだ。」
つい、呟いてしまった俺の声が聞こえてしまったらしく、フィアが真っ赤になってしまった。
「あついですね。」
イクオ君の呟きでみんなに笑いが生まれ、緊張がほぐれた。
しかし、フィアはリンゴみたいに真っ赤になってしまった。
「申し訳ございませんが、お二方はあちらにお進みください。」
再び登場したザ・執事の人に親王陛下が立たれる玉座の前に案内された。
俺もフィアも臣下の礼を取り、登場を待つ。
フィアは俺の左わきに控え、表情を整えている。
間をおかずに「陛下御入場!」と大きな声が響き渡る。
この部屋に居るのは俺たちの他には扉の側に数人の執事さんたち。
今入城された親王陛下と後に続いて入ってきた家臣団。
あの人たちが国貴族と言われる人達だろうか。
玉座に腰を下ろした気配が伝わる。
「ソウタ=ヤマノベ殿、ご起立ください。」
「はっ。」
俺が立ち上がると続いてフィアも立ち上がる。
家臣団にざわめきが起こるが、フィアが美しいからに違いない。
続いて親王様が立ち上がり、一歩前へ出てこられた。
「ソウタ=ヤマノベ、そなたはクノエの窮地にあってその伴侶と共に聖銀の巨人を従え、その討伐を成し、外国からの圧力に対し盾と矛を与えてくれた。この盾と矛はこの国をよく守り、未来に渡ってその力を示してくれるだろう。
これらに無償の精神であたり、大きな貢献を果たした。これに報いるにはどれだけの感謝でも足りないだろう。
よって、そなたを貴族に序し、この国の助けとなり、規範となり、力となってくれることを期待し、権力とそれに見合った褒賞を取らすこととする。
受けてくれるな。」
「謹んでお受けいたします。我が力はこの国のために。」
教えられたとおりに答えたが、本当に俺が貴族でいいのだろうか。
「良く申してくれた。そなた、旅の途中と申しておったが自由にして良い。領地が必要とあらば申すがよい。それまでは好きなだけ旅を続けるのが良かろう。」
「本当によろしいのですか。私としましては昨日まで冒険者でしかありませんでした。諸先輩方のようにお役に立てるとは思えないのですが。」
「よいのだ。先に馬車で聞いた通りの男であるなら一つ所に留まるよりは、自由にさせておいた方がこの国にきっと役に立ってくれると思うぞ。」
「ありがたく拝命いたします。」
再び臣下の礼を取ることで叙任の儀は終了となる。
親王様は去り際に一言だけフィアに声を掛けた。
「奥方、その方の伴侶は真に面白い。時々は二人でここを訪ねてはくれぬかの。」
「そ、そのようなお誘いを頂くなどもったいなく思います。」
「その方ら、領地貴族ではないのだからこの近くに住む場所も用意させておる。遠慮せずに訪ねてくるのだぞ。」
「ひぇ?」
言うだけ言ったとばかりに親王様は引き上げていかれた。
最後になんて行ったんだあのひとは?
俺は国貴族だったのか?もうここに住まいがあって旅は好きなだけ続けていいとか。
なんか良く判らんことになってるな。
「詳しいことは後ほど申し上げます。この後に晩餐会がございますのでまずはそちらで国貴族の皆さまとご歓談ください。晩餐会の後にヤマノベ公爵様のお屋敷へご案内いたします。」
「私の屋敷・・・」
「はい、良い物件ですのでお喜びいただけるかと存じます。」
なんか、いろいろ判らなくなってきた。
振り向くとフィアが首をかしげてキョトンとしていた。
あ、可愛い。
白紙から書き始めて、何とかUPしました。
今話をもって9000PV突破です。
投稿済みの分の誤字脱字と文章の訂正を行っております。見つけた方はご報告くだされば幸いです。




