【第41話】新春スペシャル!
読んでいただける皆様。
あけましておめでとうございます。
お蔭さまで8000PVを突破し、弾みが付いております。
ありがとうございます。
「はい、こちらは馬車で旅団を組んで旅を続けておりますフィアです。そして、あけましておめでとうございます。
この挨拶は私の大事な旦那様の生まれた国での新しい年が始まるときの挨拶だそうです。」
ここで私のことを少し。
名前は皆さん知ってますよね。フィア=ヤマノベです。
いまは17歳のサキュバスです。
14歳の時に両親は亡くなりましたが、15歳の時に運命的ともいえる出会いがあって今では頼りになる素敵な旦那さんが居るのでちっとも寂しくなんてありません。
サキュバスと言う種族は15歳になって成人すると、ちょっとエッチな食事でしか大人になれません。素敵な旦那様を見つけられなかったサキュバスは悲しい運命をたどり、人族の皆さんにご迷惑をお掛けするばかりか、20歳まで生きられることも少なく、同胞ともいえるそのほかのサキュバスに出会うこともほとんどないのです。
でも、でも、私のように素敵な出会いを果たしたサキュバスは主人と。あ、主人と言うのは飼い主とか契約主とは違うんですよ。”うちの主人”ってやつです。
その主人と血の契約を交わすとですね、大事なご主人と一緒の日だけ命が続くんですね。これって大事なことなんですよ。
エッチな食事は変わらないんですけど、さっぱり魔法の素質のなかった私なのにレベルが10になって主人の取得した魔法のすべてが使えるようになりました。地水火風にその他大量の魔法が使い放題です。しかも、レベル10ですから最大威力です。バインばいんと撃ち放題なんです。
私のお胸は全然バインばいんとしてないんですけどね。ソウタさんはそれでも毎日可愛がってくれるんです。
そして、私の大切な旦那さま。ソウタ=ヤマノベさん、24歳です。
魔法の才能にあふれ、使えない魔法がないんです。し・か・も、迷い人なんですよ。
秘密にはしてませんが、ある時に仕事で来たトサンでこっちの世界に迷い込んで帰れなくなったそうです。
それからは貴族様のお宅でお世話になり、色々なお役に立っていらっしゃいました。
しかし、私が考えなしに近づいたせいでとっても立派なお屋敷に居られたのに、さすらいの冒険者になってしまわれたのです。私はそんな事情も知らずにとても大きな迷惑をかけてしまったんです。
でも、そこは私の旦那さま。全然気にしてなくて、とても楽しそうに冒険を堪能しておられました。
おかげで、自己嫌悪に陥ることもなく毎日が幸せでいっぱいです。
ソウタさんは数々の魔法を無尽蔵に行使され、襲い来る魔物や刺客を苦も無く退けられますし、お料理も上手なんです。
加えて外国がこの国を狙い、あわよくば属国にと企んだ宣戦布告もない戦いに持ち前の知識を生かし、相手を退けられました。
お蔭でその功績が認められ、貴族に取り上げられてしまいました。
それも公爵位。つまりは貴族の中でも最高の貴族です。
自然、私は公爵夫人となりました。全然実感なんてないんですけどね。
そして一緒に旅を続ける皆さん。
私たちがアマクサをたち、旅の続きをしようと言うときに荒れたクノエの地を潤すためにとご一緒していただけた11人のアマクサ領軍の方々。
それぞれが個性的でとっても楽しい旅になっているんです。
ソウタさんと私が貴族になる前から一緒に居たので皆さんは私たちに敬意を払ってはくれるのですが、呼び方は様々です。
呼び捨てあり、様あり、殿ありで皆さんが好き勝手に呼んでくれるのです。今まで通りと言う申し合わせもしたので気も楽ですし、ありがたいですね。
最後に紹介したいのはASX-09Aレネゲイドさんです。
比翼の鎧とか、聖銀の巨人とか言われていて、大きな体格と強力な武器を持ち、どんな敵をもねじ伏せてくれます。
いつもはソウタさんの次元断層の中で暮らしていて、それが快適らしく呼び出されない限りは引きこもっていらっしゃいます。
人の食事が気になるという趣味を持ってまして、自分では食べることなどないのですが私たちの食事をよく観察しているようです。
唐揚げ争奪戦争などはレネゲイドさんの最も興味のあるイベントの一つで、ソウタさんの作る唐揚げをみんなが奪い合うように食べるその様子が面白いそうです。
きっと、ソウタさんの唐揚げのおいしさが伝わっているのかもしれません。 だって、美味しいんですから。
先だって訪れたサヌキは本当にうどんの美味しいところで、衛兵さんに紹介してもらったお店もとても美味しいうどんを作ってくれましたし、天婦羅や惣菜を先に買ったうどんに自分の好きなように乗せたりして食べるお店もあって、みんな欲張りすぎてお腹が千切れるほどに食べてました。
どのお店も工夫があって、コシのあるうどんと少しのツユに、美味しい添え物があって夢中になって食べたものです。
数日をうどんと共に過ごし今年の終わるころ、スの国で新しい年を迎えることになりました。
なんだか、普段とは違ったテンションでソウタさんが私たちの馬車の掃除を始め、いつもは私が綺麗にしているつもりなのですが「大掃除」と言って、ベットや衣装ダンスなどまでどかして裏の裏まで綺麗にしていました。
こんな大掛かりな掃除は確かにいつもはできませんが、ソウタさんは年末に必要な行事だと話されました。
次に行われたイベントは「年賀状」です。
普段お世話になっている人や遠くに居る人に挨拶をするための行事という事で、旅団のみんなもソウタさんから貰った官製はがきというものに短い挨拶を書きました。
私はクレハさんに。ソウタさんはアマクサの領主様や錬金術師のシシオさんに書いておられました。
セキセンの商業ギルドの配送業者の方が新しい年に間に合うように届け出くださるそうです。
今年最後の夕食はサヌキに居るのに蕎麦でした。
年越しそばと言う特別な時期に食べる蕎麦は、来年の幸福を願い、末永い長寿を願って長い蕎麦を食べるのだそうですが、サヌキのうどんも立派に長いのに。と、思ってしまいました。
でも、漁場の豊かな海の恵み、大きなエビのてんぷらや海水の塩分で育てた太く長いネギなどを蕎麦の上に乗せて、フーフー冷ましながら食べる蕎麦はフセイの辛いお蕎麦よりうんと美味しかったです。
ソウタさんとコウレイさん、タケヨシさんにイクオ君とハルシゲさんが「わんこ蕎麦」という大食いコンテストを開いていました。
一口ずつに分けた蕎麦をどれだけ早く、何杯食べられるかを競う競技でみんなから声援を受けながらすごい勢いで飲み込むように蕎麦を食べて競い合いました。
ソウタさんが68杯。コウレイさんは85杯。タケヨシさんが86杯で倒れてしまい、予想もしていなかったイクオ君が102杯も食べ、優勝となりました。
あの小さな体のどこにたくさんの蕎麦が入ったのでしょうか。
ハルシゲさんは40杯と勝負にもなっていません。
優勝の商品として、「唐揚げ1000個券」を授与され、とても喜んでいたのが印象的です。
ソウタさんが唐揚げを作るたびに毎回100個を優先して競争無しに手に入れられる権利で、出場していなかったサチさんやキヨシゲさんが異議申し立てをする一幕もあり、ソウタさんの唐揚げの人気が伺えます。
夜も更け、日が変わろうかという頃に最後のイベントが行われました。
「除夜の鐘つき」です。
直径で3m、高さが5mにもなる青銅製の吊り鐘をレネゲイドさんが指先に引っ掛けて吊るし、太い幹を3mほどに整えた丸太で衝くのです。
ご~~~~~~んという、落ち着いた音が響きました。
ソウタさんの世界では、この鐘を108回衝くことで災いを退け、良い年を迎えることができるのだと信じられていたそうです。
しかし、ハルシゲさんが軽々と大きな丸太を担ぎ上げ、鐘を乱打したことで厳かな雰囲気はどこかに吹き飛び、嵐の時の雷のようにドンドンと太鼓のように鐘が鳴り響き、数分で108回を叩ききってしまったのです。
ソウタさんは笑い転げていらっしゃったし、シゲさんの「こだわらずに行け!」の合図でみんなが無双するモノですから、2000回以上鐘が鳴り響いたと思うのです。
災いどころか幸せも逃げてなければいいのですが。
近所迷惑ですよ。
明日一番のイベントは初日の出を見ることです。
「旭日礼拝」だそうで、その年一番最初の朝日にお願い事をして一年を過ごすといいことがあるんだとか。
鐘衝き騒ぎも終わりとなり、宿の部屋に引っ込みました。
明日も早いのでそろそろ就寝です。
就寝と言えば私の時間です。今日一日のことを話しながらムードを作っていかなければ優しいキスを頂けません。
ソウタさんは私の目を見ながらキスをするのが好きみたいで、私はすぐ目を閉じちゃうのですがソウタさんはずっと目を開けているようです。
は、恥ずかしいです。
あと、私の胸を触るのに執念を感じます。ずっと揉まれ続けると体温も上がります。
優しく全体を包むように。痛くされたことはありませんが、ずっと続くのでそれだけでも気持ちが良くなり、イっちゃう事もあるくらいです。
抱き起され、片手で胸を弄りはじめると興奮が最高潮に高まります。
空いた方の手が私の下半身に伸びて来て、膝の裏やももをさすってくるんです。これだけでお腹の奥の方がキューンってなります。
そのあとに下着に手がかかってくると・・・もうムリです。
恥ずかしすぎます。
と、とにかく毎晩こんな風に可愛がってくれるんです。
辺りが明るくなるころにソウタさんに起こされました。
寝ぼけていると私の鼻をつまんでくるので、頑張って体を起こします。
毎朝、夜着が全部脱げちゃっているので、下着を探すところから始まりますが、ソウタさんの上から降りるのが先だって言われちゃいました。
私が自分で登ってるみたいじゃないですか。
急いで着替えを済ませ他の部屋を覗きに行くと、女性陣の部屋では皆さんが鏡に向かって櫛で髪を梳いたり紅を引いたりしてある意味戦場です。
男性陣の部屋をのぞくのは気が引けるのですが、陽が登ってしまうとお願い事もできないので勇気を出して入り口でノックしました。
・・・
何の音沙汰もありません。
恐る恐る扉を引いて中をのぞいてみましたが、誰もいません。
どうやら皆さん目覚めが良いようで、既に外のようです。
宿を出たところで一度全員が集合し、徒歩で薄暗い中を歩いて防護壁の外まで行進しました。
見通しが良いところまできてみんなで朝日が昇るのを待ちます。
なんだかみんな口を閉ざしてしまい、厳かな雰囲気に包まれます。そしていよいよご来光の瞬間です。
地平線の向こうが紫色から藍色になり、蒼から空色になった瞬間、金色の光が洪水のように押し寄せてきました。
思わず目を閉じるとそれが一瞬の出来事だったとわかります。
目を開けた時には白い、まだ優しい太陽が顔を見せたところでした。
「さあ、フィアも今年一年のことをお願いしてごらん。」
背中を押され、もう一度目を閉じてお願い事を考えます。
(今年もソウタさんに毎日可愛がってもらえますように。)
「お願いしました。ソウタさんは?」
ソウタさんを仰ぎ見ると、両手を合わせて祈るように、真剣な表情で朝日に向かっておられます。
なんだかエッチなお願いをしてしまって恥ずかしくなりました。
「できた。フィアに似合う制服が手に入りますように!ってお願いした。」
「もう!ソウタさんもエッチなお願いしてたんですね!!」
「も?、フィアもってことかぁ。嬉しいなぁ。」
「うへ!?ち、違います。しりません!」
つい、口が滑って恥ずかしいじゃないですか。
次はどんなイベントがあるのかと聞いてみましたが、「お年玉」がもらえるそうです。
宿に戻り、朝食の席に全員が就いたところでソウタさんが喋りはじめます。
「みなさん、あけましておめでとうございます。昨年中は大変なことと良いことがたくさんあり、皆さんと出会うことができたことが一番良かったことかもしれません。
巨人を討つことができて、恐怖は拭い去ることができたと思いますし、アイアメリカの先制攻撃も上手くいなすことができました。
皆さんのおかげで楽しい旅を始めることができましたし、結果的に俺の中ではいい年だったと思います。今年も健康に注意しながら楽しい旅を続けられることを願ってます。
図らずも貴族なんて分不相応な立場になりましたので、ここで皆さんにお年玉を振る舞いまして、新しい一年に期待したいと思います。
お年玉は皆さんの給金とは別ですので、ぜひお小遣いとして楽しいことに使ってやってください。
今年も皆さん、よろしくお願いいたします。」
パチパチと拍手が起こり、配られたお年玉袋をみんな嬉しそうに受け取っています。
私の貰った袋の中を見ると、結構な額が入っていました。
みんなびっくりした様子でソウタさんを見ています。
「俺みたいなのまでもらっていいのかよ?」
シゲさんもお年玉を貰い、嬉しそうです。
「はい、これは昨年の感謝の気持ちと今年への期待を込めたモノですから受け取っていただけるとありがたいです。」
サチさんがソウタさんに手を上げて発言の許可を求めている。
「あの、宿の方が驚いていらっしゃるのですが。」
みんなで食堂の給仕をしてくれていた宿のおばさんに目を向けると、頭に被っていた手拭いを両手でもって目を見開いてこっちを、いえ、ソウタさんを見ています。
「どうされましたか?」
イクオ君がおばさんに話しかけると、おずおずと近づいてきたおばさんは一言尋ねた。
「貴族様で?」
「はい、こちらはヤマノベ公爵様でいらっしゃいます。」
「ひえ?えええええ!?」
イクオ君の言葉を聞き、尻餅をつかんばかりによろめいたおばさんは、脱兎のごとく振り返り、駆け出していかれました。
「ソウタよ、迂闊なことはいうもんじゃねぇな。」
「ええと?」
「わかんねぇかよ、この宿なんて貴族が泊まるような宿じゃねえんだよ。それなのにお忍びみてぇに最高位の貴族が泊まってたなんて聞きゃあよ、ああなるんじゃねぇのか。」
ガタン、バタン、ドタドタとなにやら騒がしい音と、叫び声のような問答が奥の方から聞こえ、静かになった。
どうなったのでしょう。
すると、70歳ほどの男性の方と同じくらいに見える女性の方がいらっしゃいまして、私たちのテーブルの側まで近づいたと思うと同時に床にうずくまってしまったのです。
「知らぬこととはいえ、このような宿にお泊り頂き、粗末な食事を出してしまいましたことを深くお詫び申し上げます。
何卒ご容赦いただけませんでしょうか?」
「ほらな?」
シゲさんの発言を受けて、床でぶるぶると震えている二人の側にスッとソウタさんが移動したのを全員が目で追います。
「ご主人、その様な態度は不要です。まずはお立ちください。」
ソウタさんはお爺さんの手を取り、立ち上がらせた。
お婆さんがそれに続き、立ち上がるとソウタさん自身が椅子を二つ他のテーブルから引き寄せて座らせた。
見ているだけでかっこいいです。
「ご主人、私はソウタ=ヤマノベと申します。先だって叙任の知らせを聞き、公爵になることを知りました。
しかし、今日までこの仲間と共にただの冒険者として暮らしていましたので、ご主人の知るような貴族とは違うのです。これまでの旅でこんな立派な宿になど泊まったこともありませんし、昨夜頂いた美味しい食事もめったにご馳走になることがありません。
この宿は私たちにとって、とても快適で贅沢な宿だと思います。
どうか、これまで通りにしていただけませんか。
過分なお気遣いは不要です。もう一晩お世話になるのですが、この宿は本当にいい宿だと思います。」
お二人はぽかんとして聞いておられましたが、気を取り戻されまた床にうずくまろうとします。
「ご主人よ、こいつは本当にただの冒険者だ。確かに公爵なんて位を頂いちまったがよ、それを知ったのも昨日のことよ。俺たちと一緒に旅をしているどこにでもいるような冒険者なんだ。
本人もそう言ってるんだしいいじゃねぇか。」
「ほ、本当によろしいので?」
腰かけたご主人の前にソウタさんがひざを折って屈む。
「はい、本当にそれで構いません。十分なもてなしを受けています。これ以上は返って恐縮してしまいますよ。宿泊費も心配になるのでお気遣いは不要です。これまで通りでお願いできませんか。」
ソウタさんの言葉を聞いてようやく安堵の表情を浮かべてくれたようです。
「そ、それでは公爵様に失礼のないように今まで通りにさせていただいても?」
「失礼なんてありません。泊めていただいて本当に感謝しています。今晩もまた昨夜のような食事を期待してもいいですか?」
「へい、それはもう、腕によりをかけて旨いものを作って見せます。」
「聞いたかオメエら、今夜も旨いらしいぞ!」
「やったね!今から楽しみだよ。」
アオイさんの発言で場が和んだ。
お二人はそれで安心したようで、奥へと帰って行った。
「ソウタさん、かっこよかったです!」
「そうか?でも今度からもう少し気を付けるよ。」
「そうだな、でなきゃ、高い宿ばかりになっちまわぁな。」
「もう、お腹ペコペコですよ。ご飯を頂きましょう。」
お正月のイベントが済んで、朝食を頂きました。
お年玉をもらったことで、その日は全員が自由行動となりました。みんなお年玉を財布に入れ替えてお年玉袋をしまい込んでいます。珍しいので取っておくそうです。
私はもちろんソウタさんと二人でお出かけです。
サチさんは護衛が必要だと言ってくれましたが、最大級の魔法使いが二人で出かけるのですから、悪い人なんて骨も残らないと言われ、自分たちの用事をしてもらうようにしました。
せっかくの自由行動の日なのにお仕事で縛っちゃいけませんよね。
朝市を見に行きます。
手をつないで歩くのはいつものことなので、どちらからともなく自然に手をつないでいます。すれ違う人からは時々暖かい目で見られるのですが、ソウタさんは意にも介さず離そうとしないのですっかり慣れてしまいました。
最初のころは恥ずかしかったのですが、ソウタさんは全然恥ずかしくないそうで「なんで?」と聞かれて恥ずかしいと思うこともなくなりました。
生のイーヨ産のミカンを絞ったジュースが売られている屋台でジュースを二つ購入し、屋台の前に置かれた椅子に掛けて飲んでいると、隣で「すっぱ!」と顔をしかめながらソウタさんが苦労して飲んでます。
そうなんですよ、ソウタさんは果物の酸味が苦手なようで旅の途中で買い食いするときなどもいつも誰かが食べてから感想を聞いてからじゃないと食べないんですよ。
意外な弱点を発見しましたね。
昼頃まで市を見て回るとスの国が結構豊かであることが判ります。
自国で採れる農産物や海産物に加えて交易によるクノエからの品も多いのだそうです。
ソウタさんが市を回ると結構なことが判ると言ってましたから、売っている人と話したりするのも結構重要なんですね。
ソウタさんはそうしたことにも積極的で、いろんなお店に首を突っ込みます。
お店の人と話し、よさそうなものは買い、時には何やら難しい話をするときもあります。
そんな時はお店の人も一生懸命考えたりしているので、ソウタさんがアイディアなんかを相談しているんだと思います。
市を過ぎ、商店街へ入ると日用品や衣料品店が軒を並べ、古くからある土産物屋なども見えたのです。
ソウタさんが飛び込んだのは衣料品を売るお店で、私の手を引きながら女性用の下着売り場へ直行でした。
私はいつものことなので驚きもしませんが、お店の方は男連れでやって来た私を見て軽く驚いたようです。
それなりの品ぞろえがあるようで私も選ぶのが楽しみですが、その横で一緒になって選んでいるソウタさんもすごく楽しそうです。
お店の方が「旦那様で?」と聞いてきたので、「そうです。」と答えるとニコニコと微笑みながら離れていった。
それから丸一時間、あれもこれもと選びに選び、二人で厳選した新しい下着を3着買いました。買いましたといっても大満足なソウタさんが支払いもしてくれたんですが。
他には社交用のドレスも見てみたのですが、ソウタさんの気に入ったものはなかったようで、このお店を出ることになりました。
次々と衣料品のお店に突入し、ドレスを見せてもらい下着を買い漁る。
ちょっと滑稽ですが、ソウタさんは私のことになると何故こうも一生懸命なのか不思議でなりません。
でも、関心がないのとどちらがいいかと言われればやはり興味を持ってもらえる方が嬉しいに決まっています。最初にブラジャーを買った翌日から私の着るものや使う物は必ず一緒に買いに行くようになりましたし、とても一生懸命に選ぼうとするんです。
基本的には私の意見が一番なのですが、その品の造りや材質などが気になるんだと言います。
私の気に入ったものが良い品であれば満足するという感じなんですね。
ご自分の物はめったに買われないのに、私のものを買うのは全く躊躇しないので時々心苦しい時もあります。
でも、そう言うと「なんで?」と聞かれるのでなんでかな?と自分でもわからなくなります。
何件目かのお店を出て、お茶屋に入ります。
甘いお団子とお茶を出していただき、店先に腰掛けていただきます。
「さっきの”なんで?”の答えなんだけどさ。」
唐突にソウタさんが口を開きます。
「自分が欲しい物っていうのはあんまりないんだよ。あっちの世界に居た時も本当に必要なものしか買わなかったし、使わなかったからモノに対してあまり執着がないのかもしれないね。
こっちに来てからフィアと出会い、毎日が本当に充実してる。自分でもびっくりするほどだよ。
自分が大事にしたいと思える人ができると自分でも驚くほどに自分自身が変わるんだ。
それはフィアにも同じようなことがあるかもしれないが、俺の場合はフィアが幸せであること。
その手伝いができること。そして二人でそれを分かち合えること。
サキュバスと人の繋がりじゃなく、フィアと俺の繋がりが今後数十年、心も体も本当につながっていたいと思える。
フィアが気持ちよく過ごすために着る服も、使う物も、食べるものも何だって”良いモノ”であってほしいんだ。高価なものとは違う、良いものを身近に置くことで自信をもってほしいんだ。
それじゃ答えにならないかな?」
「すごく嬉しい気持ちしかないです。大事にしてもらっているっていう実感はあるんです。でも、トサンのおうちでソウタさんが身分のある暮らしをしていたのに私か居たから命を狙われるようになり、安心して眠れる夜も少なくなりました。
今では一緒に旅してくださる方も大勢いますし、レネゲイドさんがいるお蔭で不安な夜なんてありません。
自分のことしか考えていなかった時期があって、そのなかでソウタさんを巻き添えにしてしまったのではと思うことがあるのです。それはいつまでも変わることなく自分の中にあって、胸を張って隣に並ぶっていうのがなかなかできないんです。」
お茶を飲みながら聞いていたソウタさんは、柔らかく微笑んで私の頭を撫でてくれる。
「俺が思うのはね、人の出会いってお互いの都合がちょうど合った時に起こるんじゃないかという事なんだ。
フィアはいつもそのことに後悔を覚えてると言うけど、俺も目標もなく暮らす毎日にいつも考えさせられていた。
帰れるのだろうか?アーデルハイドと結ばれて幸せを感じるのだろうか?この世界で何ができるのだろうか?とかね。
二人の出会いは多分、お互いに必要があったから会えたんじゃないかと思ってる。
おかげであの家から抜け出した俺たちはそのあとで不幸だったかな?」
ふるふると私は首を横に振る。
幸せを感じなかったことなんて全然なかった。
「ありがとう。俺もそうだよ。大変なことはあったけど不幸はなかった。
毎日が楽しかったし、嬉しかった。フィアと出会ってから目標もできた。それは生きるためにとても重要なことだよね。」
「目標ですか。」
「うん。フィアと家庭を作ること。」
「え?」
「別に不思議なことじゃないだろう?二人で旅をしてお互いをよく知った。
契約を交わせて信頼も得た。トサンに着いたらひとまず旅は終わりだろう。そしたらやっぱり家族を増やしたいよ。
サキュバスと人との契約と言うのは人同士の結婚よりもはるかに意味深いよ。
元の世界でも簡単に結婚して自分たちの都合で簡単に離婚する人たちがたくさんいたよ。
血を交わしてまで結びつきを作って行くサキュバスと人の契約の方が余程素晴らしいと思うんだ。
完全なる結婚だと思うよ。
一緒に居たいと思う人と死ぬまで一緒に居られることにはなったけど、そうなれば子供も欲しくなる。できた子供には良い旦那を見つけてやりたい。
どうせなら俺たちのようになってもらいたいだろ?良い奴が見つかったらそこからはまたフィアと俺と二人の時間だ。
死ぬまで楽しくしていたいと思うよ。
どうかな?」
あれ?私なんで泣いてるんだろう。
泣くと鼻の頭が赤くなるから嫌なのに、なんで泣いてしまったんだろう。
ソウタさんは静かに私の頭を撫でる。
「今年もよろしくな。」
私はグズグズと泣きながら、撫でられながら頷くしかなかった。
何度も頷いているとソウタさんが団子を渡してくれる。
「しょっぱいです。」
本年も読んでいただきまして、誠にありがとうございます。
結局のところ甘々でスタートしておりますが、事件があっても大変でもきっとこんな調子の二人なんでしょう。
今年も良ければお付き合いください。




