表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/161

【第24話】比翼の鎧

2016年4月22日 一部改稿

 ウィングは前を走る騎馬隊の後ろを軽快についていってくれる。

 強行偵察部隊という事は、敵地などに深く侵入して敵状の把握などを行うための任務などが主なところだと思うが、あの監視するような目線は今にして思えば連携と言い、なるほどと頷けるものがある。

 アマクサの辺りはまだ巨人たちとの最前線であり、防衛戦の甲斐もあってか壊滅的な状態にはなっていない。

 しかし、一般の住民は既に逃げおおせたのか通り過ぎる村や町の家屋に人の気配はないようだ。

 「この辺りの人達はどこかへ逃れているのですか?」

 ウィングの横を随伴してくれているさっきの女性騎士に尋ねると、「はい。」と答えてくれる。

 「アマクサは島ではありますが、ジョウアマクサからお二方が辿られたように長大な吊り橋を渡ってくる道と、このシモジマの南端からナガシマと言う島を経由してクノエの本島に戻るルートがあります。

 この辺りの住人は南端のルートを抜けて本島のセンダイへ避難しております。

 センダイはクノエでも有数の河川を持ち、穀倉地帯でもありますので避難するには適しているのです。

 ですから今このシモジマには軍属しかいませんよ。」

 教えてもらったセンダイは元居た日本では川内と書き、トサンの「ジンツウ(神通)」とイバラキの「ナカ(那珂)」と共に太平洋戦争中の川内型軽巡洋艦三姉妹の長女(一番艦)の命名元になっていると理解している。

 これも大戦中の艦船を集めて育成するWEBゲームで学んだ。

 神通のお姉さんという事で実は理解を深めている。神通の妹の那珂ちゃんを愛でるためにもイバラキへはいつか行こうと思っている。

 そんな回想をしているうちに馬車は軍の防衛砦へとたどり着いたようだ。

 石でできた立派な防護壁を持ち、そんじょの兵力では打ち破られそうもないのだが、相手があの巨人であるという事を考慮すれば決して堅牢とは言えないかもしれない。

 ただ、この城壁は三重構造を持ち、その防護壁のすべてが石造りであることを考えると幾年月を経てこの全容を整えたのだろうと畏敬の念を抱いてしまう。

 多くの人が過去から巨人に抗い、要を整えるために努力したに違いない。

 トサンはというと天然の要塞ともいえる平野を取り囲む急峻な山岳地帯に守られているおかげで防衛行動が容易なためにこのような拠点防衛思想がない。

また、山岳地帯の厚みからこれまでに他国からの侵略など数えるほどしかなく、アマクサのように常に外圧に晒されることがないため、いたってノホホンとしたものかもしれない。

 そして、三重の砦門を抜けて現れた要塞は異様としか言いようがないものだった。

 「陸に打ちあがった戦艦大和だな。」

 「それは何の例えでしょうか。」

 フィアが俺の独り言に疑問を返す。

 首をかしげる姿につい、微笑みを返してしまった。

 「ソウタさん、また私をバカにしていませんか?」

 「ああ、すまない。そんなんじゃないんだ。

 いいかい、今言った戦艦大和というのは海に浮かぶ戦舟いくさぶねでね、俺の居た世界の昔の戦争で造られた、世界最大級の大砲をいくつも積み、敵の攻撃に対する防御性能も高かった。そんな船の名前なんだ。

 フィアがそれを知るハズがないことを軽んじたのではなくて、こっちを見て話しかける姿がとても可愛かったんだ。大好きだよ。」

 「な、に、にゃにを言ってるんですか!」

 また真っ赤になってしまったフィアの頭を撫でながら馬から降りた騎士団に連れられてバカげた大きさの要塞へと赴く。

 堅牢な金属で仕立てられた城門の脇にある通用口から中へと入る。

 城門はその高さが20メートル。幅が10メートル強はあるだろう。

 これを開いて出入りするのが俺たちでは、不経済もいいところだろう。

 それにしてもこの大きな城門は何が出入りするというのだろう。兵や戦車の類でもこの高さは必要ない。

 多分だが比翼の鎧はここから出撃するのだろうと心の中で考えていた。


 そしてそれは居た。

 「聖銀の巨人」または「比翼の鎧」と言うそれは全高が18メートルはある確かに聖銀の巨人だった。

 比翼のというのはある意味比喩的な表現であり、その昔に稼働させたというサキュバスと人のカップリングを表現したものだと俺は考えていた。

 しかし、聖銀の巨人というのはいま目の前にたたずんでいるこの巨大な 「ロボット」を形容したものだと判る。

 そう、明らかにロボット。

 なぜこのようなファンタジー世界に似つかわしくもない文明の、技術の完成形があるのか?

ゴーレムを思わせる巨体は何を語るわけでもないが、俺の目には騎士のように見え、西洋風でもない、また東洋の鎧兜でもない独特のデザインに見えたのだった。

 ベタな話、モビルスーツ(機動戦士ガンダム)でもなくレイバー(パトレイバー)でもないがスマートさを残しつつ重厚な鎧装備を誇るこの巨人は明らかに空想世界のロボットであった。

 別の意味で感動を覚えるこのロボットが1000年の昔に既に存在し、いま跳梁跋扈ちょうりょうばっこしている巨人たちを蹂躙し、駆逐したのだというのだから動かすことができれば同じことを成せるはずだ。

 フィアと共に茫然と見上げる俺たちは言葉を発するのも忘れ、いかつくも無表情なそいつの顔を眺めていた。

 ふと、聖銀の巨人の両の眼が青く光ったような気がしたが、瞬きのあとにもう一度見つめると暗くそれが錯覚だったかのように意志を隠している。

 「!?」

 「どうしたフィア?」

 「いえ、あの鎧の目が・・・青く。」

 「それは多分正しい。俺にもそう見えたよ。」

 少し興奮してきた。

 フィアにもそう見えたという事は、あのロボットは何らかの意思表示をしたはずだ。

 「どうされましたか?」

 女性騎士が不思議そうな表情で俺たちに問いかける。

 「俺たち二人にはいま、聖銀の巨人の目が光ったように見えたのですが、錯覚だったのかと話していたところです。」

 「それは真のことか?」

 低く、太い声が横合いから聞こえてきた。

 騎馬隊はさっと向き直り、膝をついて忠誠の姿勢を取った。

 突然に表れたその男は、身長が2メートルほどもある偉丈夫で、ひたすら精悍な顔立ちと重厚な胸板。ミノタウロスを捻り潰しそうな剛腕を持ち、鍛え上げられた筋肉が充溢じゅういつする体躯を姿勢よく軽装の鎧に包んでいる。

 腰に佩刀するのはフィアの剣にも勝るグレートソードだ。

 長さは2メートルを超え、両刃の大剣は厚い刀身でも刃幅とその長さから繊細な印象を受ける。

 「あなたは?」

 姿勢を正し、向き合って問いかけると口元に薄い笑いを浮かべて話し出す。

 「初めてお目にかかるな。俺はアマクサの領主のゴーランドという。わざわざ呼び出してすまなかった。」

 アマクサの領主と名乗ったゴーランドは領軍の最高司令官を兼務していると言い、騎馬隊を解散させ、俺たちについてくるように促した。

 「サチ、ご苦労だったな。装備を解いて休むがいいぞ。その方らは俺に付き合ってくれ。」

 「はっ、一息入れさせていただきます。」

 そう言い置いてからそのほかのメンツに対して解散を言い渡し、それぞれが引き上げていく。

 俺たちはゴーランドのあとについてそこからホールの脇を抜け、階段を上がり3階まで上がる。

 そこからバカ長い廊下を進むとようやく突き当りに大扉が見えてきた。

 ゴーランドがそこを開けた時にフィアが口を開く。

 「ほえ?」

 そう、開かれた扉のその向こうには階段が隠されていた。

 「いや、すまない。冗談ではないのだが、長い年月をかけて大きくなったこの砦は、増築を繰り返すたびに複雑な構造になっておってな、初期のころにはここに領軍の長たるものが座する部屋があったと聞いている。

 しかし、今となってはもう一つ上に移っておるのでこのような詮無いことになっているのだよ。」

 そう暴露されて文句を言う筋合いもないのだが、まぁ、面白かったので良しとすることになった。

 その階段を上がった先にまた扉があったのだが、今度階段があったならきっと、ゴーランドに拳をくれてやった自信がある。

 幸いにもその扉の向こうにはホールのように開かれた空間があり、南側に当たる場所にゴーランドの執務に必要な机や応接セットがあつらえられている。

 豪奢な調度に似つかわしくない幌のような生地がその向こう側の壁面を覆っており、陽の光がすけて見えることから、いずれゴーランドに天誅をくらわす日が来るのかもしれなかった。

 「まあ、掛けてくれるか。」

 応接セットに勧められ、フィアと二人腰を下ろした。

 同時に颯爽とではあるが、ごく軽装な鎧に身を包んだ女性がティーセットの乗ったワゴンを押して部屋に進み入り、三人分の紅茶を淹れて振る舞ってくれた。

 「ナノハ、面倒を掛けた。下がってくれて構わないから。」

 「ハッ!」

 ナノハと呼ばれた女性はワゴンをそのままにホールから出ていってしまった。

 自分も一人掛けのソファーに腰を下ろし、紅茶を手に取ってからこちらを見やり、俺たちに紅茶を勧める。

 「少しばかり長い話になるのでな。まずは茶を飲んでくれるとありがたい。先にお二人の名前など伺っても良いだろうか。」

 そう言えばゴーランドの名前と仕事の内容は聞いたが、俺たちはまだ名乗ってさえもいなかったことを思い出す。

 「申し遅れまして、失礼をいたしました。私はトサンより参りましたソウタヤマノベと申しまして、こっちは昨日ようやくにも契約を結びました私をパートナーとして認めてくれたサキュバスのフィアと言います。

 サンコウで海神様の巫女と言う方からの導きにより、このアマクサまで参りましたのは、聖銀の巨人をお貸しいただくことができ、万が一にもこれを動かすことが叶いますれば巷に溢れております巨人を殲滅することができるのではという浅慮でございます。」

 そこまで言うと、ゴーランドは深く息を吐き、俺の目をさすように見つめながら言う。

 「そなたのサキュバスはソウタ殿に仕えるものではないのか?」

 多分ゴーランドは一般論としてのサキュバスとの関係を聞いているものだろうと思われるが、俺たちにとってはまるで違う。

 「世間ではどのような理解かは測りかねますが、フィアと私の関係はそのような主従関係にはありません。

 契約は確かにしましたのですが、それはサキュバスを使役するために結んだ契約ではなく、フィアが私を必要と認めてくれ、私がフィアを求めたがために結ぶことができた婚姻に近いものと考えております。」

 ここまで聞いて、ゴーランドは「そうであったか。そなた達は人に聞く関係とは違うのだな。」などと独り言ち、フィアに深く頭を下げた。

 「フィア殿、人というのはとかく全知全能であるかのように振る舞い、天からの祝福を己が才覚であるかのように間違った認識をしがちなのだ。

 誰が誰よりも優れておるだの、誰を利するとか益を供するとか真に下らぬことにうつつを抜かすものなのだ。しかし、少なくともこの城におる者たちはサキュバスがどうの、人がどうのと申すような輩はおらぬのでどうか今までの世間で見聞きされた立場というのはお忘れいただきたい。

 ましてや、フィア殿の伴侶となられたソウタ殿は真に稀有な存在じゃの。

 いかにフィア殿を求めて止まぬのかお二人を拝見しておれば一片の疑いを挟む余地もないのが判る。

 お二方は真に良い伴侶を求められたものだと思うのだが、フィア殿はどのようにお考えでしょうな。」

 俺たちを眩しいものでも見るかのように見つめながらゴーランドは感想を漏らす。

 フィアは自分がこれまでに体験してきた経験も踏まえて、使役される者と公言していたのだが、ゴーランドからも人と同じように扱われていることを、騎馬隊にも同じように扱われてもらえたことを思い出しながら自分の考えを述べた。

 「ソウタさんは私が“ご主人様”と呼ぶと私を許さないのです。両親や祖父母に教えられた処世術をこの方はまるで無駄にしてくださいました。

 私の尊厳を常に考慮していただき、身を挺して守っていただいたことも幾度となくございます。人に使役され人と同じだけ生きるのを許される種族だとずっと聞かされ、その様に理解していたのですが、契約の際には自分を選んでくれるようにソウタさんが私にお申し出くださったのです。

 一緒にヴァルハラに行ってくれるかと申されました。

 私にとってソウタさんは私の主人なのです。ご主人ではなく、夫として振る舞ってくださる唯一無二の相棒なのです。

 これでご領主様の問いかけへの答えになっておりますでしょうか。」

 フィアは自分の考えを臆することなく言葉にし、俺が申し出たことを正しく認識してくれていると満足する回答をしてくれたのだった。

 「ふははははは。そうでしょうとも。フィア殿の旦那様は真に良いおとこだと私も思う事ができます。久しぶりに良いご夫婦と会えることができましたな。

 私個人、ゴーランドとしては初めてこのような良縁に導かれたことを身に余る幸運と思っておりますぞ。そうでなければ比翼の鎧は動かんのです。

 神々に連なる者しか知り得ないと考えられているのですが、実はそうではありません。

 我々アマクサの一族は開闢かいびゃくのころには神々を産み落とし、その者たちに乳を与え、慈しみ、神たらしめるに必要な様々な恩恵を与えて今の地位を築かせたと言われる種族なのです。

 ですから1000年昔の寝物語についてもその真相は正しく記録され、次の時代へと伝えられているのです。

 良いですかソウタ殿、入り口に屹立しておりました聖銀の巨人、いやさ比翼の鎧は正確な呼称を英語で“レネゲイド”というのです。

 ご存知かと思いますが、日本語にしますと“反逆者”や“異端児”という事になります。」

 「!」

 英語?日本語?確かにそう言った。こいつは何者で何を知っている?

 「そう警戒召されるな。私どもは先にも述べました通り、開闢のころより存在しております種族ゆえにこれまでにも多くの“迷い人”たちと接してきておるのです。

 そうであればこそ、ソウタ殿の世界にある幾多の知識も得ておりますし、それらを正しく理解しております。

 あのレネゲイドは外装騎兵とこの世界では呼ばれておりますが、製作されたのはソウタ殿のいらっしゃった世界ですし、その先史文明時代には“アーマメントシェル ASX-9A レネゲイド”と呼称されていたという事だ。」

 俺は吐き気を覚えた。

 この世界はあまりにも俺の居た世界と近い。長い間に何度も地球の技術が流入し、それに伴って一部の地域ではあるのだろうが、世界観を無視して科学文明が息づいているのだ。

 ASX-9Aって、アルファベットをそのまま発音している。

 多分「試作型武装外殻9式攻撃型」という意味だと容易に想像が付いてしまうのだ。

 この世界は誰が創造し、どういう時間を経てきたのかと疑問が大きくなってしまうのを止められない。

 帰結する結論として、俺は何のためにここに居る?

 そう思えて仕方がない。

 しかし、フィアは確かに生きていて、俺ともう離れることさえも叶わない。

 作為的なものを感じ、それを拭うことができないのだが、フィアやトサンで縁を結んだ人たち、サンコウでお世話になった巫女のクレハさんは確かにこの世界に生きているのだが、地球と繋がりすぎるこの世界がどういう存在意義をもってここにあるのかを考えると、思考が追い付かずに吐き気となるのだ。

 思わず屈みこんでしまう。

 「ソウタさん!どうしたのですか?」

 俺に寄り添うように椅子から飛び降りてきたフィアが脇を支えてくれる。

 それさえも場合によれば幻想のように感じてしまう俺が異常なのか?

 くらくらと世界が回るような気がする。

 「タカユキヤマノベをお主は知っているか?」

 ゴーランドがいよいよもってトドメを刺しに来る。

 山野辺隆之だと?どうしてこいつは俺の親爺の名前を知っている?

 「それは俺の実の父親だ。ご領主様はその名をどこで聞いた?」

 「ひっ?」

 俺の気配が変わったことに敏感に反応したフィアが小さな悲鳴を上げる。

 それでも俺を支える手を離そうとしないのは怯えた表情をするフィアの意地かも知れなかった。

 「先ほどもお伝えしたとおり、そのように警戒するでない。このアーマメントシェルはタカユキヤマノベ氏による作なのだ。1000年もの過去にこの世界へ渡ってこられたかのお方は長き年月をレネゲイドの製作に充てられ、完成を待たずしてこの世を去られたのだ。

 であるから、このレネゲイドは未完成であり、過去に巨人を殲滅するためにただの一度だけその力の片鱗を見せたことがあるのみなのだ。

 ソウタ殿、1000年の時を隔ててこちらに参られたその意味を今一度問うてみるのも良いのではないだろうかと思うのだ。

 レネゲイドはソウタ殿にお任せする。

 レネゲイドが動くのであれば、それはソウタ殿がお父上から託された形見なのだろうと思う。」

 ゴーランドはレネゲイドを俺に譲るといっているのだ。

 この世界に迷い込む“迷い人”はこの世界のどこにたどり着くかもわからないのだろう。

 そして親爺はレネゲイドと共に1000年もの昔にたどり着き、おれはその1000年後に迷い込んだという事になる。

 「ご領主、レネゲイドに触れる許可を頂けますか?」

 「いや、あれはソウタ殿の物だ。ここにあるのは単にソウタ殿にお引渡しするまで誰の手にも渡らぬようにしてあっただけなのだろう。

 完成を目指すというのであれば人をつけるゆえにこの城に逗留され、手を尽くされるのも良かろう。

 ただし、一つだけ我らの願いを聞き届けてはくれまいか。」

 「それはどのような?」

 「やつらの、巨人の巣を潰してもらえないだろうか。場所はサチにでも案内させるのでレネゲイドがソウタ殿の意思に従うようであれば、遺恨を断つためにも我らの手にレネゲイドが無くても憂いを覚えずに済むように力を貸してほしいのだ。いかがだろうか。」

 「それは私も望むところです。」

 「それを聞いてつかえがとれる思いだよ。心から礼を言わせてもらおう、ありがとう。」

 「レネゲイドが動いてからですよご領主殿。」

 「ああ、そうだな。本当にそうであった。ふははははは、せっかちでいかんな。」

 ゴーランドの執務室を辞した俺たちはレネゲイドのところへ向かうつもりであったのだが、部屋から出ると目の前に居た先ほどのお茶を淹れてくれたナノハさんに部屋へ案内すると言われ荷物を置くことになった。

 一階に降り、レネゲイドを見上げながらその脇を抜けるとすぐにゲスト用の部屋がいくつか連なる廊下に出た。

 一番手前の部屋に案内された俺たちはその部屋を今後は自由にしていいと言われ、夕食の時間に迎えに来ると言い置いてナノハさんが帰って行った。

 「ソウタさん?先ほどは失礼しました。」

 フィアが俯いて謝罪する。

 「うん?どのことを言っているんだよ。」

 「私、先ほど一瞬ではありますが、ソウタさんを怖いと思ってしまったのです。これまでに一度も見なかった表情をされたので、驚いてしまいました。申し訳ございません。」

 ふたたび頭を下げようとしたフィアを抱き寄せ、少し強かったかもしれないが抱きしめた。

 「すまない、しばらくこうさせてくれるかな。自分の中で考えがまとまらないんだ。眩暈がする。吐き気もしたんだ。ここにきて親爺の名前を聞くなんて考えてもいなかったし、比翼の鎧だと思っていたモノが実は俺の世界で作られたものだったなんてどうしたら理解できるっていうんだよ。」

 「ソウタさん。ずっと側にいます。私は私が望んでソウタさんと結ばれました。ソウタさんが望んでくださる限り側に居させていただきたいと思っています。ですから心細くなることなんてありませんよ。どうか私を一人にしないでください。」

 俺の背中に華奢なフィアの腕が回され、優しく抱きしめてくれた。

 どれだけそうしていたのか判らないが、フィアの体温を感じてフィアの髪の匂いを嗅いで、フィアに抱きしめられる圧力を感じていると次第に心が落ち着いてくる。

 「ソウタさんでも不安を覚えることがあるのですね。なんだかホッとしました。いつか神をも滅ぼすのではというお力をお持ちなのに私なんかで落ち着かれるなんて。」

 そう言ってフィアが優しく微笑んでくれた。自分を卑下していっているのではないとわかる。

 「フィアは俺のことをそんな風に思っていたのか。良く判ったよ。お仕置きが必要だな!こうだ!!」

 「あひゃ?ん、んん」

 抱き上げてキスをした。

 整った唇をこじ開け、舌でフィアの口の中を愛撫する。

 惚けたような表情になっているフィアは自分で立っていられなくなり、俺に体を預けてくる。

 そのまま抱き上げ、広く大きなベットへと運び、キスを続けたままで押し倒した。

 「んんん、あう、んん!」

 成すがままになっているフィアを剥いて、癒しを得ることにして心の平穏を取り戻すことに夢中になった。


 契約してたら妊娠するんだっけ?


いつも読んでくださいましてありがとうございます。

やはり、回を追うごとにソウタがダメになってるような気がします。

フィアが歳に似合わず大人びてきていますし、甘やかしてくれるお姉さんになってくれそうですね。

ソウタ、いいなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ