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【第16話】大戦車軍団?

本日好調につき、もう一丁の投稿です!


 個々のサンドスコーピオンの強さは俺たちにとって脅威にもならないが、数がまとまっており、一息でどうこう出来る気はしない。

 噛まれたり刺されたりすると、あとが厄介そうだしフィアに傷でも残ったら取り返しがつかない。

 「フィア、俺がひと当てして戻ってくる。ここにいる人たちを海岸線に道があるところまで戻らせてくれないか。なるべく早くで頼めるか?」

 「わかりました。ですが、ひと当てと言いながら無茶をしないでくださいますか?」

 「もちろんだ。ひと当てでちゃんと戻るよ。前衛一匹を潰すとどれだけの範囲が反応するか知りたいだけなんだ。心配は掛けないから。」

 大きくうなずいてフィアは旅の馬車や徒歩の者を下がらせてくれている。

 あんなに人見知りだったフィアが、と思うとその成長が嬉しくなってくるよ。

 さて、言ったとおりの仕事をしようじゃないか。

 足元に魔力を集め、土系の魔法の一つ「硬化」を選択する。

 一歩踏み出すごとに靴が潜り込んでいた砂が固く締まり、舗装路のようになる。

 足の回転を上げ、身体強化を併用しながら風魔法で背中を押す。ここ最近は4~5個ほどの魔法なら同時に使用できるようになってきたので攻撃を受けてもまだ障壁を起動する余裕はある。

 もう一度後ろを確認すると、馬車や荷車の空いたところに徒歩の旅人などを詰め込み、効率よく後方へ下がってくれている。

 広範囲魔法も早いうちに使用できるようになりそうだ。

 敵陣まで1キロほどまで近づくと、いよいよ遠距離攻撃が始まった。

ヒュンと風を切る音がし、俺の駆ける左側面に1.5メートル程の大ぶりな針が突き刺さった。意外に精度の高い攻撃だ。

 散発的に風切り音がして至近距離に槍の様な針が付き立っていく。

 始末が終わったらこの針を回収しようと思う。正確には針の後端に納められている毒腺だが。数が揃うと良い小遣い稼ぎになるからね。

 500メートルを切ると数が猛烈に増えてくる。中距離用の1メートルほどの針も多くみられ、若いサンドスコーピオンが中衛として参加し始めたのだと思われる。

 まだ命中コースに乗る針もないので障壁は展開していないが、ひと当て用にバスタードソードを鞘から抜く。

 あと10メートルにまで迫ると後衛からの射撃がやみ、前衛が鋏を持ち上げるのが見えた。

 風魔法と身体強化の魔法のレベルをさらに上げ、加速を掛ける。

 「うおりゃぁ!」

 左横に構えた剣を水平に右へ振り出し、眼前のサソリに切りかかる。

 サソリの右の鋏をかいくぐり、左ひじでこれを打ち上げる。サソリの右手が大きく浮き上がり、脇ががら空きになった。

 右手のバスタードソードをここへ叩きつける。

 「グガア!」

 甲羅を切り裂くには至らなかったが苦しそうなうめきを上げる。

 振りぬいた剣の遠心力を利用して右回りに体を回転させ、俺の足を頭に踵から入れてやる。

 鈍い衝撃音が響き、サソリが横倒しになった。周囲を観察すると、隣接するサソリたちはこちらに手を出そうとしているが、もう一つ離れた位置にいるサソリたちは周辺を警戒し見向きもしないらしい。

 広範囲のサソリたちが攻撃に乗ってくれば攪乱や乱戦が期待できたのだが、結構頭がいいのだろうか?他人に興味がないだけという事もあるが、それでは集団戦をうまくできるわけもないからパニックを起こさないような統率力が働いているのだろう。

 そのまま撤退を決め込み、走り出した位置まで全力で戻る。フィアも戻ってきており大剣をすでに抜き放っている。

 「おかえりなさいませ。どうでしたか?」

 「意外に厄介なことになりそうだ。統率が取れている。攪乱は下策と見た。」

ただし、個体はやはり脆く、大したことがないのはありがたい。

 「後衛にサンダーをプレゼントするので、もう一度500メートルまで近づきたい。フィアに針の迎撃を任せたいが行けるか?」

 「もちろんです。ソウタさんには一本たりとも近づけませんから。」

 「頼んだ!」

 すぐさま取って返し、広範囲に「硬化」を掛けつつ走り出す。

 走り出してすぐフィアは驚いた表情で一度こちらを見たが、俺の魔力量を思い出したのかすぐに前を向いてしまった。

 ニヤッと表情が崩れたが、それはフィアの信頼が心地よかったからで、サソリに対する挑発ではない。

 しかし、それが気に入らないとでもいうように先ほどに倍する針が打ち出されてくる。

 それも俺の方にだけ。

 なんだよ?嫉妬でもしているのか。

 俺への命中コースに3本の針が乗っている。しかしそれに構わず魔力を発動するための気合を入れる。

 それぞれの針は難なくフィアに次々と撃墜され、後方へと転がって行った。

 範囲拡大!20倍で横一線だ。

 「サンダー!」

 サソリたちの後衛のさらに後ろ側に雷雲が広がり始め、グングンと横方向に広がり始める。差し渡し1キロほどに叢雲が立ち込め、紫炎が雲の間から時折覗いている。

 雷鳴が轟き始めたころにようやくサソリたちも異常に気が付いたようだったが、後ろから広がった雲に気が付くのが遅すぎたようだ。

 一本の落雷を皮切りに数百と言ういなずまが天から降り注ぎ、容赦なく甲羅のいたるところを突き抜けて行った。

 何分もの間、大気を割るような轟音が鳴り続け、サソリの居た辺りは体液が蒸発したのかかすみがかかったようになって視界が悪い。

 静寂が戻ってくるまでに1キロまで後退し、霞が晴れるのを待つ。

 様子を見ると、後衛はおろか、中衛まで巻き込んだらしく薄い前衛が作る横一線の陣しか残っていなかった。

 「やりすぎた?」

 「いえ、その様なことはありません。前衛もまとめてやっていただいても良かったのですが?」

 「それじゃ、フィアのレベリングができないだろう?」

 「いつも優しいご主人様で嬉しいです。」

 薄い陣形と言っても横には100匹ほどのサソリが並んでいる。

 個別撃破するには一仕事の量だと思うのだが?

 結果としては端から振り下ろす大剣で3匹ずつが叩き割られ、10回も振ると戦線の1/3がなぶり殺しにされていた。

 相変わらず容赦ない。


 大した時間もかからずに駆逐され、あれだけの数のサンドスコーピオンを集めてやりたかったことが判らないままになってしまった。

 生き残りが居ないか中衛、後衛のサソリたちも確認して回ったが、トドメの必要な奴は居なかった。

 一息つけると気を抜こうとした瞬間、ヒュンという音と共に槍の様な針が飛んできた。

 「フィア注意!」

 片づけたばかりのサソリの後方からさらに大量のサソリが突入してくる。

 数の暴力と言わんばかりの大量の砂塵を巻き上げ、砂煙の入道雲を引き連れて迫ってくる。

 「退くぞ、数を把握するために撤退する。」

 フィアが付いてきているのを確かめ、上空を気にしながら後方に砂の壁を置き去りにする。ランダムに縦横2メートルの砂壁を発生させ、突入してくる戦車軍団の進路を妨げるように100枚ほど散布した。

 砂壁を迂回するために一気に進軍速度が落ちたようで、慌てずに下がることができた。

 「なんだよあれ?」

 すごい数だな。あれだけ大量発生していて全く気付くものが居なかったのか。

 前線が一挙に押し下げられ、最初のサソリたちが居たところから随分と後退してしまった。

 砂壁で足を止めなかったら、避難してもらった人たちも危なかったかもしれない。

 「ちょっと怖いくらいの数ですね。」

 隣に来たフィアも驚いているようだ。

 「さっき、雷がすごかったようだが大丈夫だったかね。」

 馬車が一台様子を見に来たようで、振り向くとやせ細った爺さんが不安顔で御者席から前方の様子を窺っている。

 「最初のグループはその雷で大半を仕留めたんだが、後続のグループが更に大群で押し寄せてきてな、今ようやく互いの足が止まったところだ。ここにいちゃ危ない。さっさと避難してくれないか。」

 「相分かったよ。後ろの連中にそう伝えとくから怪我などせんでくれよ。炊き出しを準備しておくから様子を見て取りに来てくれ。」

 「悪いな。よろしく頼むよ。」

 粋な計らいに笑顔を返し、爺さんを見送る。

 爺さんが近づいてきたときには咄嗟に魔力量を確認してしまったが、人並み以下の量で安堵した。また、解放の光の連中がと構えてしまったが、気のせいでよかった。

 魔力量は確認していたが、スキルに「蟲使い」と「調教テイム」があったことを俺は見逃していた。

サソリ軍団はその後、半時ほどかけて陣形を整え邪魔な砂壁を壊していたようだ。

 知性があるみたいな行動を取るサソリに違和感はあったものの、戦闘態勢を整えつつあるサソリを見るとそれどころではなくなった。

 「フィア、そろそろ来るぞ。回り込まれないようにと対空監視だけは怠るな。前からくる分は俺に任せろ。」

 「はい。回り込まれないように監視しますが、突出したサソリについては任せてもらってもいいでしょうか。」

 「もちろん任せた。」

 簡単に役割を確認し、戦闘に備えた。

 「ガァ!」

 叫びが聞こえ、地響きが起こる。

 重戦車軍団の様な迫力だ。

 俺は再び魔力を集中させ、迎撃を開始する。

 大気中の水分から氷柱を作り出し、地面と垂直に立ててゆく。その数が256本に達してから一度に打ち上げた。

 「氷柱撃アイシクルスパイク!」

 高速で飛翔した氷柱は放物線を描き落下し始める。

 先頭を走るサソリたちに氷柱が降り注ぎ、その身体を貫通し、地面に縫いとめる。

 こいつらが障害物になることを期待して取った攻撃だったが、後続は死骸をものともせずに乗り越えてくる。

 「げ?さすが多脚砲台だな。走破性能が高すぎるぜ。」

 誰にとも聞こえない文句を言い、次の魔法を繰り出す。

 ずんぐりとした直径50センチ、全長3メートルの円筒状の石柱のような物を今度は64本地面に立てる。

 先ほどと同じように打ち上げた。

 「子爆弾クラスターボム!」

 細い氷柱と違い初速は随分と遅かったが、次第に加速し氷柱よりも高い位置まで届いたようだ。

 そこから頭を下にして自由落下していたが、高度が100メートルを切ったあたりで石柱に変化が現れる。

 太く大きな石柱が皮を剥いたように二つに割れ、中から爆裂魔石のような小さな子爆弾がばら撒かれる。

 一本から64個、64本で4096個もの爆裂魔石が散布された。

 近代戦争では、攻撃機から投下されたクラスター爆弾は面制圧用の小型弾などを散布し、戦後に至っても不発弾による被害者を量産したことから製造も所持も使用も禁止されているそうだが、この仕組みに製造国や所持する国が参加していないことから、有名無実化していると言える。

 俺の魔法の場合は確実に全弾爆発するので不発弾問題などは起こらない。

 数瞬ののちに広範囲にばら撒かれた子爆弾が着弾し、目の前に炎の大瀑布が地上から天に向かって発生した。

 咄嗟にフィアを手繰り寄せ、目の前に障壁を張る。

 紅蓮の炎が暴れまわり、酸素が燃やし尽くされる。1600度を超える白い炎が現れ、砂がガラス化しているらしい。

 パノラマでホワイトハレーションが起こり、視界が利かない。

 砂塵さえガラス結晶になっているようで、障壁に当たる際に固い音をさせていた。

 何分もかけて超高温の瀑布が辺り一帯を焼き尽くし、ようやく視界が戻ろうとしていた。

 俺が、大きく息をつくと腕の中でフィアが小さく震えていた。

 「どうした?」

 なおも視線を前方に貼り付け、小刻みに震えているフィアを訝しんで前に回ろうかと思ったのだが、フィアは俺の手を放そうとしない。抱えていろと言わんばかりだった。

 「ソウタさんはそのうちに神をも殺してしまうのではないでしょうか。」

 砂漠だった景色は真黒なガラスの海へと変わっており、周辺も直径2キロの黒いガラスの砂浜になっていた。

 うん。ちょっとやりすぎた。


 「……」

 再度のサソリの襲撃がないか確かめ、避難していた人たちに討伐できたことを告げたのだが、全員で炊き出しを頂いているときは武勇伝のように俺の話を聞きたがっていたくせに、現場まで戻ると誰も口をきこうとしなかった。

 一様に黙り込み、目前の黒い輝きを湛えた黒い砂浜を持つ黒い海と俺たち二人とを代わる代わるに見つめ、遠巻きにするだけだった。

 なんだよ、俺が悪いのか?少なくともフィアまでそんな目で見るんじゃない。


 刺すような視線に気が付いたのは畏怖にまみれたみんなの視線と明らかに種類が違ったからだった。

 途中で戦況を見に来た爺さんだ。だが、今度は見逃さなかった。

 「蟲使い」と「テイム」のスキルを。

 「爺さん、この砂漠にはどのくらいのサンドスコーピオンが居るんだ?」

 突然話を振られ、爺さんは目を見開いた。

 「何故わしにそんなことを聞くんじゃよ。」

 「あのサソリたちは統率が取れていたんだ。普段群れないような奴らが俄かに軍隊みたいに行動するのって変じゃないかと思ってな。蟲使いやテイマーならそうしたこともできるんじゃないかと思ったんだよ。解放の光とやらならばそのぐらいできる奴がいるんじゃないのか?爺さんみたいにな。」

 見るうちに落ち着きをなくし、周囲からの視線を気にするように狼狽え始めた。

 「ば、バカなことを言わんでくれ。こんな爺に何ができるっていうんだ。」

 いつの間にか側からいなくなったフィアは爺さんの向こう側にいる。

 「イナゴだのバッタだの言われている解放の光の奴らならセイトだけじゃなく、どこに行っても碌なことをしないだろうなぁと思ったんだよ。」

 「なんだと!わし等は?…」

 「うん?わし等はなに?」

 背後から聞こえたフィアの問いに勢いよく爺さんが振り向く。

 「うわぁ?なんじゃ!」

 爺さんの薄い胸を貫き、背中から大剣が突き出る。

 周りにいた人たちから悲鳴が上がるが、フィアはそれらを無視して一突きにした爺さんから剣を抜き取り、俺の背後に一瞬で移動してくる。

 「みんなすまない。驚かせてしまったが、この爺さんはセイトにある解放の光と言う他人を食い物にするテロリスト集団の構成員だったんだ。テイマーだったからサンドスコーピオンを自分で操り、俺たちを襲わせたんだろう。会話を聞いていてわかったと思うが、当然みんなに危害を加えるつもりもないし安心してほしい。」

 不安げではあるものの、やり取りを聞いていた行商人などはもはや自分には関係ないと立ち去る者も出始めた。

 「この先にサソリは出るんじゃろうか?」

 聞いてきたのは大きなかごを背負ったおばあさんだった。

 「操られているサソリはもういないだろう。しかし、十分注意していってくれよ?」

 「そうかい、それを聞いて安心したよ。じゃぁね。」

 馬車で送ろうかと聞いたのだが、この岩場の向こうが自宅だからと丁寧に断られた。

 それぞれに目指す先があるのだろう、旅を再開した人たちが目の前の惨状を見ながら解散していった。

 「俺たちもそろそろ出発しようか?」

 「そうですね。お腹が空いてきました。」

 あなた、炊き出し目いっぱい食べてませんでした?


クラスター爆弾についてWikiで見ているとやはりこんなものは使っちゃいけないと思わずにはいられません。

その割にはソウタが大規模殲滅魔法に入れ込んでいるように思います。

そのうち本当に神を殺す勢いでしょうか?

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