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【第14話】フィアのターン!

時間が開いてしまいました。

相変わらずストックがないですから書いたそばから投下しています。

今話は戦闘シーンでグロい表現があります。苦手な方は読み飛ばしてください。

 いかにもな僧侶たちを退け、茶屋の親爺を排除したが、この茶屋は元からここにあったのだろう。

 すると、この茶屋の本来の主人は?という事なのだが、店に人気がない。

 最悪の結果を覚悟していたのだが、二人で店の中を探索すると、本当に人が居なかった。

 店先から店に上がると、そのまま奥につながり、居住スペースがあるのかと思いきや商品の在庫スペースと簡単な煮炊きをする厨房しかなかった。

 この店は閉店になると主人は自宅に帰り、無人になるのだろう。

 そうした店にも刺客と思しき輩が入り込むとなると、かなり権力を持った組織が借り上げていたのだろう。


 しかし、これで俺たちが探していた二人であることは、周囲にいたであろう仲間たちにしっかりと把握されてしまったかもしれない。

 魔力量の高そうな連中にはしばらく注意した方が良さそうだな。

 先ほどの件から、この辺りの僧侶が全部怪しく見えてくるじゃないか。

 しかも、魔法と言うよりは呪法と言う方が近そうだった。

 印を結び、真言を唱え、奇跡を発動する。退魔師や呪術師といったオカルトめいた雰囲気が漂ってきたんだが、そんなジャンルのファンタジー世界じゃなかったよな?

 「フィア、もう多分だけど別行動する意味はないかもしれない。一緒に馬車にいてくれていいからな。」

 「わかりました。ソウタさんがそうおっしゃるなら馬車に乗せてもらいます。」


 フィアが馬車に乗り込み、いつもの旅スタイルとなった。

 しかし、いつもと違うのはこの先に出合うセイトのすべての人が敵かも知れないという事だ。

 まず出合ったのが茶屋から僅かも進まないうちの茶畑にいるおばちゃんだ。

 新茶を摘み取る作業に従事する四人ばかりのおばちゃんの魔力量が高い。

 「フィア、ないとは思うんだが畑にいるおばちゃんに注意な。」

 「はい?意味が分かりませんが。」

 「うん。俺もそう思うよ。でもな、魔力量が視界に入る四人の場合、結構なものなんだよ。」

 バカな会話をしているうちに右手に茶畑が広がり始めた。

 やはり。

 おばちゃんたちが集まってくる。

 「お前さん方、こんなところでなんなんだが、死んでもらってもいいかい?」

 やっぱりね。


 おばちゃんの二人から投擲用の短剣が飛ぶ。

 フィアも俺も、ある程度は覚悟もあったのでビックリな申し出にも冷静に対処できた。

 大剣が残像を残し短剣を薙ぎ払うように払いのける。残りのおばちゃんたちは俺たちの背後に回ろうというのか、あるまじき素早さで左右に分かれるようだ。

 そのまま囲まれても面倒なだけなので、右側の布陣を破る。

 「そい!」

 バスタードソードを抜き、おばちゃんに切りかかる。

 「うっ?」

 早さに自信があったのだろうか、右肩に入った刃が信じられないらしい。

 絵面的にはあり得ないし、文字面としても明らかにおかしいのだろうが、ほんの30秒程度を現すと、こうとしか言えないのだ。

 四人のおばちゃんが襲い掛かる。中二人は短剣を投擲し、フィアがこれを払う。

 左右のおばちゃんが背後を取ろうと分かれたが、右のおばちゃんに俺が切りつける。

 信じられない表情のままおばちゃんが倒れる。

 俺たちが悪漢ではないので念を押しておきたい。

 左に走ったおばちゃんは申し訳ないが、俺がやったよりひどい有様だった。

 左肩から右側の腰までの上半身と、それ以外が下半身側に残されたまま二分割になっていた。俺のバスタードソードでは重さも足りないからこんなことにはならない。

 正面に残された二人が更に短剣を追加する。

 しかし、振りぬかれたフィアの大剣は宙を一回りし、右側のおばちゃんの首を撥ね、背の低い左側のおばちゃんの頭蓋骨を右側頭部から左側頭部へと通り抜けた。

 後は推して知るべし。

 茶畑に俺たちに害意を抱くような生きているものはいなくなってしまった。


 下り坂を緩やかに下り、警戒を解いたわけではないがウィングの軽やかな闊歩を聞いているとこれぞ田舎道という趣に気も緩むというものだ。

 茶畑を過ぎ、林間道を縫うように進む。

 栗、くぬぎ、ブナ、ならなど落葉樹、広葉樹が生い茂る森と、竹林と言うべき趣を携えた一角。

 人の手によって整えられた杉木立なども見えることから植林と自然の共存がうまくできているのだろうか。

 そして、樹木を縫うように気配が近づき、ショートソードを突き出してくる。

 「は?」

 剣跡は見えたのではじき返す。

 飛脚が。

 飛脚が俺たちに襲い掛かる。

 肩に文入れを担ぎ、軽やかに走る姿は街道でよく見かけたが、同じ装束でショートソードを突き出しながらやってくるではないか。

 「はい!」

 フィアが軽い気合と共に大剣を御者台から振り下ろす。

 「うがっ!?」

 飛脚のオッサンから苦悶の声が聞こえると同時にショートソードもろともオッサンが縦に割れる。

 今までに見たこともないような血飛沫を上げながら二つ割になった肉塊が後方に置き去りにされた。

 「フィア、こう言っては何だが、俺は今日の夕食が喉を通らないかもしれないぞ?」

 「いえ、私も最善と思っているわけではないのですが、こうも次々と刺客が迫るとなると、そうそう手段を選んでもいられません。」

 「いや、責めてるんじゃないからな?、あくまで率直な意見と言うか、ビジュアル的な観点から辛いなぁという単なる感想なんだ。」

 ウィングも大概で、おばちゃんズと飛脚のオッサンの間に襲ってきた腰の折れ曲がった仕込み杖を持った爺さんを踏み潰した。

 仕込み杖の爺さんは俺たちの馬車の前にわざわざ道を遮るように立ちはだかり、明らかにウィングを狙って仕込み杖から刀身を抜いた。

 フィアが大剣を構え、御者台から飛び出そうとした時、その敵意を感じ取ったはずのウィングが更に加速した。

 弾丸のように爺さんめがけて加速する馬車から、飛び出すよりもシートに押し付けられたフィアの叫びが聞こえる。

 「ウィング、避けて!」

 無理矢理にも体を起こし、爺さんに備えようともがくフィアだが、加速を続ける馬車の御者台から俺たちはなす術もなく見守るしかなかった。

 しかし、ウィングは絶妙の軌跡を描き、前足で爺さんを頭から踏み抜いたのだ。

 頭蓋骨がひしゃげ、身長が半分になったのではないか?

 すでに死体でしかない爺さんはウィングの目論見通りに馬車の左側の車輪にも轢かれていた。

 縦に踏み抜かれ、倒れたところを車輪が二度通る。

 過去に経験のないスプラッターが瞬時に繰り広げられた。

 口内に酸が上ったように思ったのだが、続けざまに表れた飛脚のオッサンに気を取られ、それどころでなくなったのは俺自身、幸いなことであった。


 納得のいかないことも多々あったのだが、今はそれどころではない。

 どれだけ疾走を続けたろうか何のゲームかと思うほどに現れた敵は、どうやら一時休憩のようでウィングも疾走の速度を落とし始めた。

 どうなることかと思ったが、セイトの国境が見えるところまで来ることができた。

 少し興奮状態にあるウィングだが、国境が見えたことでチェッカーフラッグが振り下ろされたF1マシンのように勝ち誇った表情でクールダウンのウィニングランとなったらしい。

 「おい、どうしたってんだ?」

 国境の衛兵が息せき切って駆け付けた俺たちを問いただす。

 「いや、すぐそこまで賊のような連中に追われてな、剣で対処できる分は退けてきたんだが、どうやら一息つけるようだ。」

 「賊だと?この辺りでは聞いたことがない。どんな風体だったか覚えているか?」

 まぁ、説明しろと言われてもな。

 茶屋の親爺やら茶畑のおばちゃんやら、爺さん、飛脚とどれをとってもこちらが倒した連中を正直に伝えようものならこちらが明らかに蛮族らしい。

 伝え方を慎重に選び、フィアには目くばせで口を開かないように念を押す。

 「申し訳ない、男女の別も年齢も良く判らなかったんだ。剣や魔法を使いながら前方と言わず、後方と言わずに襲い掛かられたぞ。」

 ありもしない盗賊連中をでっちあげる。

 どのみち、こうした事態も考慮したうえで、それぞれの職業を演じながら俺たちを狙っていたのであろうから裏を取ることもできないのだろう。

 そう思えば、国境を無事に越えることが出来さえすれば些末なことだ。




 それにしてもだが、フィアと言い、ウィングと言い、グロに対し耐性が高すぎやしないだろうか。

 相手にもこちらに対する明確な殺意があったのだから、結果がどうなろうとも構いはしないのだが、誰であろうとも一撃のもとに切り捨ててしまえる心臓に元々この世界で生きる人と、平和日本から紛れ込んだ俺との根本的な差を改めて考えさせられる。

 国境を越え、ヘイコの国に入ったのだが、まだ刺客の襲撃の可能性は否定できない。

 気を緩めるには早いと自分に言い聞かせながら馬車を進める。

 「今日は完全にフィアのターンだったな。」

 「どういうことでしょう?」

 大剣の重さも利用し、縦に斜めに、トドメは真横に人体割を披露して大活躍だったじゃないか。

 しかも、フィアの大剣は人の血を吸うごとに鍛冶屋を出た時の輝くような銀から青とも黒ともつかない鈍い色を纏い始めている。

 見覚えがあるとすれば、バイクの排気管が良い色に焼けたようなものだ。


 ヘイコも海岸線を通るとすぐに通り抜けてしまうのだが、その隣の国までには陽も落ちるようだ。

 隣のチョウシュに入る手前でカタカナ表記の多い国名の中では珍しく、新温泉という町にたどり着いた。

 町の名前に温泉と着くくらいだから、いい湯があるのだろう。

 期待してしまう。

 海岸沿いにある宿に入ると女将に宿の説明をされる。

 「うちは全部の部屋が海に面しておりまして、眺望が自慢です。お夕食は海の幸をご堪能していただけますが、そのあとには露天風呂もお楽しみいただけますの。各部屋ごとに露天風呂がありますから、お部屋から海に下りていただき、お湯を楽しんでみてください。」

 部屋まで案内される間、そんな自慢を聞きながらだったのだが、部屋ごとに個室仕立ての露天風呂があるなんて嬉しい計らいだ。

 人見知りなフィアでも遠慮なく堪能できるだろう。

 平屋づくりで海に沿うように長く建てられた宿の狙いが良く理解できる。

 部屋に通されて荷物を降ろし、息を抜こうとしたのだが女将がお茶の用意をし、そのまま居座ってしまった。

 「どうされましたか?」

 そう尋ねてみると予想外の答えが返ってきた。

 「明日の朝にトサンからお客様がいらっしゃいます。ご出立は急がれませんようにと先触れと申される方がお二人に伝えるようにとのことでした。」

 女将に感謝を伝え、明日の朝食は少し遅めにしてくれるように頼み、少しばかりの心づけを渡しておいた。

 その後、部屋に食事が運ばれてきたのだが、様々な海の幸が贅沢に振る舞われ、フィアにも大満足してもらえたようだ。

 布団を敷くと言う仲居さんたちが部屋を訪れ、夕食の片づけをしながら俺たちを風呂へと追い出した。

 部屋着にも着替えていなかったが、手拭いを持たされ風呂へ行くしかなかったのでフィアと暗い足元に注意しながら海岸へ下りるように歩いた。

 部屋の前にあるものと思っていたのだが、僅かの距離ではあるが庭を眺めながら歩くようにできており、衝立で囲われた四阿あずまやの様な場所にたどり着くとそこが露天風呂になっていた。

 薄暗いながらも明かりが灯っており、前方に真っ暗な海を臨み、たいした造りになっていた。

 とても贅沢な空間を独占しているような気分にさせてくれる。

 かけ湯をしているとフィアが背中を流してくれる。

 「ありがとう。」

 「いえ、ソウタさんにはここからは私だけを見てもらいますから、とっても楽しみです。」

 大胆な発言にちょっとびっくりだ。

 ぼんやりとした灯りの下で甲斐甲斐しく世話を焼いてくれ、俺もフィアの背中を流してやる。

 岩で囲まれた浴槽に入ると少し熱めに調整された湯が体を弛緩させ、疲れがしみだしていくようだ。

 隣に並んだフィアは、ゆっくりと俺の上に覆いかぶさるように体を横たえ、伸びていく。

 甘えるような表情で俺の顔を覗き込みながら、濡れた前髪を自分で梳いて言った。

 「ここからは私のターンですね。」

 いや、今日は一日中フィアのターンだったから。


今回は4800文字と少なめです。

次話からもしばらくは西への旅が続きますが、目的地での出来事が書いていて楽しいです。

その辺から先に書いてますから繋ぎになる今の道中部分が面倒な感じですわ。

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