【第112話】血との契約者
いつも読んでいただいて、ありがとうございます。
今話から新展開でもないですが、ヤマノベ家がすこしずつ変わり始めます。これは終盤へ向けての仕込みになるんでしょうね。
如月の産んだ弥生と卯月が生後で三月を過ぎ、睦月と弥生と卯月に囲まれた如月はとても忙しそうにしている。
ただ、見てる限りはとても幸せそうにしており、子供たちに囲まれた幼い容姿の如月の奮闘ぶりは俺の癒しとなっているのは間違いない。
もちろん、育児には積極的に参加しているし、陛下の元へ行ったりしていない限りはユイと睦月とカーリオとクレイオに集られ、シルファに手伝ってもらいながらも妻たちの負担を減らそうと腐心している。
弥生と卯月のおしめ替えも俺の立派な仕事であるし、おしめの洗濯も俺の重要な任務となっている。
アニエスとシロップのお腹も5か月が過ぎてもう、随分と目立つようになっているのだが、重そうにしているけれども二回目とあって慣れたもののようだ。
フィアも妊娠が判ってから3か月過ぎており、幼い顔立ちと大きなお腹のミスマッチが誰よりも半端ない。
しかし、ユイの妹を身籠ったことがよほど嬉しいらしく、いつもお腹に語り掛けるようにしているのが何とも微笑ましいのだ。
「シズ、ママは幸せです。パパにいっぱい愛されて毎日可愛がってもらえてね、シロップママとアニエスママと如月ママと一緒にいっぱい気持ちよくしてもらってるんですよ。
ユイお姉ちゃんにおっぱいを取られてパパはちょっと悔しそうだったけど、今度はシズにおっぱいを取られるわね。
早く生まれてこないとパパにおっぱいが返せませんよ。」
何を聞かせてるんだよ、この子は?
ここしばらく如月は精力的にヤマノベ公社各社を巡り、販売状況の確認や新規製品開発の会議、新規販路の開拓にと本当に頑張っていた。
俺がやるから子供たちの世話を頼むと言っているのだが、ことごとくを断り、自らが体を動かして飛び回っている。
それがストレスにならないかと心配もしているのだが、自発的な行動に意味があってやっていることらしく、深い考えがあるらしくて任せろと言ってきかないし、夜の営みに変化もないようだからと今のところは好きにさせている。
シロップとアニエスは城からの50人からの護衛兵を引き連れて毎日のようにセントラルキャッスルまでお妃様にお会いしに行っている。
それが十分な運動になっており、お妃様との歓談を楽しみにしているという。
帰り道はお妃様も一緒にやって来られ、お妃様の運動にもなっているようだ。帰り道は陛下も良くご一緒についてこられ、我が家の託児所建設の様子をお二人で楽しみに見学しておられた。
そしてお二人で我が家の新しくなったゲスト用の浴室を楽しみ、夕食を一緒されてからお戻りになられる。
我が家は元々、全てのメイドたちも一緒に夕食を取るのだが、その輪の中に陛下やお妃様が混じられ、席を取られたメイドたちが俺たちのテーブルにやって来て一緒に食事を摂っている。
だからと言ってそのメイドたちが緊張しているかというと、そんな訳もなくユイに唐揚げを分けたり、俺の皿からデザートを取っていったりと本当の家族のようだ。
妻たちともとても仲良くしているし、順に日替わりでメイドが入れ替わるのは陛下の企みではないかと思ってしまうほどだ。
時々は一人かふたりのメイドを城から連れてきており、ウチのメイドと会話させていることから色々と学ばせているのだろう。
その時に選ばれて城から来ている護衛兵たちも食堂に入るように広めに作られた食堂が幸いだったね。
うちのメイドたちに囲まれて鼻の下を伸ばしながら、めったに食べられないというウチの食事を満喫しているようだ。この護衛に選ばれるのが最近の城でのイベントになっていると陛下からお聞きしたが、メイドに囲まれたいのか食事にありつきたいのか、どっちもなのか判らないと陛下が面白がっていらっしゃった。
そして、ウチのメイドと仲良くする者が現れたら城をクビにすると通達されており、その話を聞いた時には竦み上がっていたと言うが、クビになったら我が家に妻となったメイドのために転職となるのだと聞かされてからは、ものすごくテンションが高くなっていると陛下が「面白くない」というお顔でブツブツと口説いておられた。
「お館様、俺たちのところから見ていますとメイドたちがお館様の食事をよくつまみ食いしていますが、充分に召し上がっていらっしゃるのですか?」
そう心配してくれるのは厨房を預かる調理師の二人だ。
もうすっかり呑み友になっているこの二人はまだ独身だが、寂しい身寄りではない。馬番の5人の奥さんたちが我が家でメイドとして働いてくれているように、この二人の婚約者も我が家のメイドさんだ。
料理長の方は今年40歳になるムスタンというとても身なりの良いおじさんだ。
奥さんになるメイドさんは32歳のマチルダさんと一緒にいるユリオラという綺麗な人だ。
もう一人の若い調理師は22歳になったばかりのハリアーと言う物腰の落ち着いた青年であり、酒の趣味が俺と一緒で仲良くしている。
ハリアーのお嫁さんになるのはフィアやアニエスと同い年の19歳のクロトワと言う名の可愛いメイドさんだ。
クロトワさんはついこの間に妊娠していることが判ったとかで、ハリアーが俺の所まで土下座しに来たのが印象的だった。
「お館様!大変申し訳ございません。お館様のメイドを妊娠させてしまい、ご迷惑をお掛けします。」
食堂に現れた俺を見るなりに飛んできたハリアーが、俺の前に突っ伏すようにしてこっちがビックリしたほどだ。
つまりは仲良くしていたのは俺の財産であるメイドで、そのメイドを傷モノにして赤子まで作ってしまった。そういう解釈になるらしい。
罪悪感に塗れたとしかいいようも無い、蒼白になったクロトワさんが同じように横に膝をついて俯いている。
俺にとっては目の前の二人ともが大事な財産なのだがな。
「クロトワ、君は妊娠何か月なの?」
ビクッと肩を震わせた彼女は震えながら答える。
「も、申し訳ありません。お館様の許しもなくこんなことになってしまいました。いま、3か月になるところです。」
「ハリアー、なぜお付き合いしていることを黙っていた?」
「はっ、お館様のメイドに手を付けたとなれば不敬罪になるかと。首を討たれるかもしれません重大ごとで、どう申し上げたらいい物かと考えあぐねておりました。」
「バカじゃないのか!」
つい声を荒げたが、実は怒ってなんかいない。
「クロトワは俺の大事な家族だ。だが、ハリアー。お前も俺の大事な家族なんだがな。それをお前は知らなかったのか?」
床に擦り付けるようにして突っ伏していたハリアーが顔を上げる。
「クロトワはまだ安定期に入っていない。辛い仕事があったりしたらどうする?事故があったら母子ともに危険なんだぞ!もっと考えて行動しろ。
ハリアー、妻をすぐ立たせて椅子に掛けさせなさい。そしてお前はもう一度正座だ。」
飛び上がるようにして立ち上がったハリアーはクロトワを介添えしながら立たせ、すぐそばの椅子に掛けさせた。
そして言われたとおりにまた正座するのを見て、笑い出すのを堪えるのが大変だ。
チラッと料理長のムスタンを見ると、もう笑い出しそうになっており、俺が睨みつけるとようやく我慢できたようだ。
咳ばらいを一つして、ハリアーに問う。
「お前の生涯愛すると誓う女性はクロトワだけか?」
キョトンとした顔をするハリアーにもう一度問う。
「お前が自分の生涯を掛けて守る女性はクロトワなのかと聞いている。」
「も、もちろんです。彼女をただ一人、生涯を掛けて守って見せます。」
ハリアーが宣言したことで俺の怒りを演出した時間は終わりだ。
「じゃ、式はいつにする?俺も忙しいからな、明日とかはナシだぞ。」
クロトワがビックリした顔で俺を見る。
「アンニさん。」
「はい、どうしましたでしょう?」
「俺のスケジュールと陛下のスケジュール。それとあなたの旦那様のスケジュールを合わせてください。陛下はどうせお食事を楽しみにいらっしゃるでしょう。お誘いすればこの二人の結婚式にお城の楽団を呼べますからね。」
ユンカーさんを「あなたの旦那様」というのは俺の意地悪だ。
アンニさんの頬が染まり、恥ずかしそうにしているが、それでもそれを咎めるように睨んでくる。
アンニさんが小さな声で「もうっ」と小言を言っているのは聞こえているがそれが可愛いのだからやめるわけにはいかないな。
「ハリアー。お前は色々な事を考え違いしている。俺は俺の”家族”が悲しい思いをすることは許さない。誰が相手でもそれは絶対に許さない。レネゲイドで相手を灰にしても、それでも許さないつもりだ。
だがな、これから生まれてくる命が喜びの中に迎えられるのであればお前とクロトワは俺が命に代えて守ってやるさ。
だから、クロトワが妊娠していることを早く聞かせなかった事と、二人が身を固めることを俺が知らなかったことを怒っているんだ。」
クロトワは既に涙を流していた。
ハリアーは自分が怠った報告だけを悔いていた。
「それとハリアー、妻たちも子供たちも他のメイドのみんなもお前のせいで腹が減ってるんだが、何とかならないかな。」
そうかと思い至ったのだろうが、もういつもの夕食の時間を結構すぎている。
もう一つ言っておこうか。
「ムスタン、お前さんと言い、ハリアーと言い、もっと報連相をちゃんと考えてくれないかな。
じっくり選ぶのも吟味するのも、味見するのも食材だけにしろとムスタンには言ったはずだぞ。」
「え?」
ハリアーが意味が分からないとムスタンを見る。
頭を掻きながら料理長はハリアーに自白する。
「俺もな、ユリオラと出来ちまって、お館様に叱られたばかりなんだ。ユリオラも妊娠してるんだ。ほんの昨日の事さ。
全く同じことをお前がするとは思いもしなかったから。そしてお館様が俺に言ったのと同じことをお前に言ったのがどうにもありがたくてな。
俺たちのお館様はお前が思うよりもあったけぇんだよ。
お前よりも俺よりももっと大きくて温かいんだ。お館様が若いからと侮るんじゃねぇぞ、この屋敷の全てのモンはお館様の”家族”なんだと。
そう仰るからにはオメェも俺もその家族の一員なんだろうさ。
俺はユリオラを幸せにする。それはお館様にとって”嬉しいこと”なんだと。
お前はクロトワを幸せにしろ。
不義理を働くんじゃねぇぞ、聖銀の巨人に焼かれたくなかったらな。」
そんなことがあったのは昨日のことだ。
そんなことがあった翌日の今日だが、調理師の二人には俺が満足に食事がとれていないのではないかと心配事があったのだろう。
「概ね問題ないよ。夕食は量よりも楽しかったかどうかが問題なんだ。たくさん食べてももう寝るだけだろう?年を取ってから太りたくもないからね、少し足りないくらいでちょうどいいんだよ。
俺のおかずが取られるのもそれはそれで楽しいじゃないか。だから、これでいいんだよ。
先に大盛りにしたりしないでくれよ?太ったらフィアに嫌われてしまうからな。」
笑顔で俺の話を聞いていた二人はそれで納得が言ったらしく、「今まで通りにしておきます。」と約束してくれた。
如月が帰ってきたのは夜も遅くになってからだったが、充実した時間を過ごしたのだろう如月は疲れたと言いながらも、仕事は上手くいっているという。
睦月も弥生も卯月も俺の膝に乗ってとうに夢の世界へと旅立っている。
如月が居なくともフィアもシロップもアニエスも母乳が出るので困らないのだが、睦月は少し寂しそうにしていた。
それを如月と話しながら遅い夜食を如月に食べさせていたのだが、それについては素直に「ごめんなさい。」と言っていた。俺にじゃなく睦月に言ってやってくれた方がいいと思うのだが。
「正直、如月がどんな理由でそこまで一生懸命に仕事に取り組んでいるのかは判らないが、子供たちに可哀想な事はしないでほしいんだ。
俺にも聞かせられないことなのか?」
「そんなことは無いけど。」
そう言いながらも如月は本当の理由をなかなか言おうとしない。
他の妻たちは俺の後ろに居るが、俺が今話しているのは如月だと、横から口を挟もうとはしない。
「わたし、貴方の負担になりたくないの。」
突然に告白されたような言葉だった。
今まで如月を負担だと思ったことは無かったし、フィアもシロップもアニエスも負担だと感じたことは一度もない。
「如月、どうして俺の負担になると思ったの。」
キョトンとした表情のままに尋ねる。
「たぶん、貴方には自覚が無いのよ。私、弥生が生まれた晩に貴方を見て本当に思ったの。忙しくしている最中だったわよね。私が弥生を産んだのは。」
「遠征から帰ってきた直後だったよな。」
「ええ、そうよ。貴方は私を求めてくれたし、私に子供をねだってくれた。私、何気なくありがたいという気持ちと、シロップちゃんやアニエスちゃんにも生まれるんだから、自分も欲しいと思ったの。
それでその日の晩に弥生を産むことにしたわ。
ソウタさんは私の出産が始まるまでずっと私の側に居てくれたでしょ?」
「ああ、当たり前だと思ったんだが。」
「そうね、貴方なら無条件にそう思うでしょう。でも何時間も私の出産が始まるまで寝ないで待っててくれたのよね。
私が出産した直後に貴方は弥生を抱き上げて喜んでくれていたわ。
その時、私思ったの。
ソウタさんは私たちの為に無理してるんじゃないかって。」
「あっ!」
そう言ったのはシロップとアニエスだった。
二人も俯いてしまい、今にも泣きだしそうになっている。
フィアは全く分からないという表情をしており、みんなの顔を順番に見回して首をかしげている。
俺にも自覚のない事だからか、フィアと一緒に首をかしげる。
「ほらね?だから私は私たちが負担になってるんじゃないかと思うのよ。ソウタさんは私たちのことはいつも考えてくれているわ。
でも、自分の事なんて考えてないじゃない。疲れているのも気が付いていないのよ?
そんなんじゃいつかきっと倒れてしまうわ。」
なんとなく言いたいことが判ったような気がする。
俺は俺の体を大事にしろと如月なりに心配してくれていたのだろう。
如月は事あるごとに俺の体を心配してくれていたからな。
「如月、俺は自分が疲れているか元気でいるか、ちゃんと判ってやっているんだがな。
心の傷は如月にもフィアにもわかるだろ?体の消耗は判りにくいかもしれないが、フィアには判ってる。
俺が危なくなるほどに心身が消耗していれば、フィアが止めてくれるよ。俺とフィアが契約を交わすという事は、フィアが辛ければ俺も辛いし、俺が元気ならフィアも元気でいられるんだよ。」
「はい。ソウタさんが私と契約を交わしたことによって私は”不死の体”を手に入れましたが、同時にソウタさんは”不滅”を手に入れているんです。」
「不滅?」
アニエスがフィアの言葉を繰り返す。
「あれ?言ってませんでしたか?」
何の罪もありません。的なキョトンとした表情でフィアが語り出す。
「いや、俺も正直聞いてはいないが。」
「滅ばないって事なんですか?」
シロップも目じりに溜まった涙を拭いながら聞いてくる。
「はい、シロップちゃんの言ってくれたことが正解です。サキュバスと契約を交わすという事は、不死を与え、不滅を手に入れることになるんです。
不滅とは、肉体の不滅。精神の不滅、魔力の不滅、形のある物、ないものを問わずに無くならないという事を言います。
ですから私たちと毎晩エッチな事をしても全然平気ですし、一度に私たち全員を相手にしてもまだ足りないくらいなんです。
如月ちゃんが心配していることは良く判りましたが、どれもソウタさんにとっては無くなることのない物ばかりですよ?」
そ、そうだったんだ。初めて聞いたが、道理で俺はいつまでも元気なわけだ。
「ちょ、フィアちゃん?ソウタさんは疲れないの?」
「はい、疲れませんよ?」
あったりまえ。という表情で言われても全員が納得していない。
「魔力もなくならないんですか?」
「もちろんです。どれだけ使ってもなくなりませんよ。」
ほんとかよ?
「いつまでも私たちと一緒に居てくれるんですか?」
「私たちもいつまでも一緒ですよ?」
「「「「え?」」」」
俺とアニエスとシロップと如月が声を合わせた。
アストラル的な精神論で言えば、「死んでも一緒だよ。」という事は一度は言ってみたいセリフともいえるが、今のフィアの言葉から察するにそうではないような気がする。
「フィア?今のからするとフィアと俺はずっと死なない?」
「はい。シロップちゃんもアニエスちゃんも如月ちゃんもです。多分殺されても死にませんよ。」
ええと?
シロップを見ると「え?」という表情で、アニエスを見ると「はい?」という顔をしてる。
如月を見るとキョトンとしており、「は?」と顔に書いてある。
サキュバスと契約するという事についてはサンコウのクレハさんに聞いたことがすべてだったが、今フィアから聞いたことはその中には含まれていなかった。
「フィア、俺とフィアは契約を結んでフィアは不死になったよね。」
「なりました。」
そんないい笑顔で言われても。
「シロップとアニエスと如月はなんでなの?」
「ソウタさん、種付けしたじゃないですか。不滅を持つ者が認めた相手はみんな不滅の加護を与えられています。ソウタさんが男性だったので、認められる者と言うのは自分と契りを結んだ女性の事ですよ。如月ちゃんだってソウタさんの子を産んだんですから一緒です。
シロップちゃんもアニエスちゃんももう、歳をとっても体が老いていくことはありません。如月ちゃんと一緒です。」
「「「「えええ!?」」」」
全然知らなかったよ、おい?
あのトウトの地震の時にシロップとアニエスを匿ったサキュバスとの番もそれで永きを生きていたって事なのか?
「フィ、フィアちゃん。アニエスちゃんと私も如月ちゃんみたいな寿命になっているの?」
「そうですよ。ずっと一緒ですね。」
最初の脱落者はアニエスだった。
俺に寄り掛かるように倒れて来て、意識を失っていた。
シロップは両手をワキワキさせていたが、訳の分からない取り乱し方だ。
「か、カーリオは?」
「成人くらいまでは普通に成長するでしょう。」
「そのあとは?」
「死なないと思いますけど。」
シロップも脱落した。やっぱり俺に向かって倒れてきた。
唯一堪えているのは如月だが、すでに目一杯と言う風に見える。
「フィア、ユイは?」
「ユイはサキュバスですから、15歳でゲオルク様に貰ってもらわなければ死んでしまいます。今私のお腹の中に生まれた命もサキュバスです。
やっぱり15歳には誰かに嫁がなければなりません。そう言う点ではカーリオちゃんやクレイオちゃんが羨ましいです。」
知らなかった。
「睦月はどうなの?やっぱりみんなと同じように死なないのかしら?」
「それは判りません。もともと魔剣の寿命と言うモノも判りませんし、少なくとも如月ちゃんは折れても死なないと思います。睦月ちゃんがサキュバスの契約を受け継いでいてもいなくても元々寿命は長いのではないですか?」
「そ、そうね、そうだったわ。ごめんなさい。」
俺も一瞬どうしようかと思ったのだが、カーリオやクレイオについては驚くよりないが、睦月や弥生、卯月はもともと魔剣だからな。1000年の寿命ではないだろう。
「如月が折れてもというのは?」
「不滅の加護を持つ者に認められるという事は、破滅を許されないという事です。つまりは折れるとか刃毀れするとかそう言う不滅に反することにはならないと思いますよ。」
如月を見ると必死に俺たちの話を聞いている。
「ソウタさん、サキュバスの血と契約を交わすという事は悠久の時間をその伴侶と過ごすという事になるんです。ご迷惑でしたか。
それと、シロップちゃん、アニエスちゃんにも謝らないといけません。
お二人を巻き込んでしまいました。彼女たちにはこれからの時間を耐えられるでしょうか。」
「それもそうだが、娘たちが心配だ。みんな俺たちのような寿命を持つのだろう?シロップやアニエスは少なくとも俺の妻である以上は俺の側に居られるし、フィアとも一緒に居られる。
娘たちが大きくなって誰かと結婚する時が問題だよ。
誰と結婚しても自分だけがいつまでも死なないんじゃそれは辛いんじゃないか?」
「いえ、それは誰と契りを結ぶかです。カーリオちゃんやクレイオちゃんが普通の人種と契りを結べばその種族と同じ寿命形態になるでしょう。今はソウタさんの血を多く引いていますが、それは伴侶を見つけるまでの事です。
それより心配なのはシロップちゃんとアニエスちゃんです。
そうなったとき、確実に子供が母親よりも先に死にますから。」
そうか。たしかに二人は俺の妻である限り俺に併せた寿命形態か。
そうであれば娘が人種と結婚すればその子は人の寿命を歩むことになるだろう。
自分の産んだ子が人と交われば人の寿命を全うする。しかし自分には永久の寿命がある。
耐えられるだろうか。
「大丈夫ですよ。ソウタさんと共にある限りシロップちゃんも私もついていけます。子供たちが何を選ぶかはこの先の事ですし、少なくとも私たちはソウタさんと離れずに済みます。
娘たちが誰を選び、どのような人生を歩むかは娘たちに選ばせてやりたいと思います。」
気丈にそう答えるのは意識を戻したアニエスだ。
シロップの髪を撫でながら自分の気持ちを伝えてくれるアニエスに微笑んで見せると、アニエスも微笑みを返してくれたのだ。
「フィアちゃん、私、ソウタさんと一緒の寿命を得られてとても嬉しいです。多分シロップちゃんもそう思うでしょう。
簡単なことなんですよ。
娘たちがソウタさんを選んだら良いだけなんですから。」
「え?それはないだろう。」
「ダメですか?クレイオも今度生まれる子もどんな人生を歩むにしても、選択肢の一つとして残しておきたいんです。
私やシロップちゃんが享受できたこれまでの幸せは、フィアちゃんの血との契約でこれからも続いて行くことが判りました。それはとてもうれしいことでもあるんです。
如月ちゃんもそうでしょう?私たちがわずかの時間を一緒するだけじゃなくてこれからもずっと、ずっと一緒に居られればソウタさんとも同じ時間を過ごせますから。」
「・・・」
「如月ちゃん?」
何かを考え込んでいるような様子だ。
フィアに向かって徐に口を開いた。
「フィアちゃん、この間まではそんなこと何にも言ってなかったわよね。どうして急にそんなことを?」
確かに。
「そう言えば、・・そうですね。私、何で急にこんなことを言い出したんでしょう。」
確かに。ってか、自分でそれを言うのかよ。
無意識に発動してしまった鑑定眼でフィアを見る。
「な!?」
フィア=ヤマノベ
ランクSI
レベル21
体力126,600
魔力900,000
器用431,000
敏捷976,700
筋力322,640
耐久551,100
ランクSIってなんだ?レベル21ってなんだよ。
パラメータが壊れてるのか?各項目は20までだろ?何十万という単位になってる。いつからこうなった、確かにレベル10を超えようって意気込んではいたが、フィアが21になってる。
「フィアのパラメータがおかしい。多分それが原因で記憶が解放されたか、新しい知識が解放されたんだろう。」
「本当です。なんですかこれ?」
自分でも驚いているようだが、俺の方も大概になってた。
ランクSS
レベル46
どっちがすごいとか、なんかどうでもよくなってきた。
「如月、俺とフィアのランクやレベルがおかしい。聞いていたそれぞれの上限値を越えてしまってるんだ。」
「だ、大丈夫なのそれ?」
「ソウタさん、大丈夫ですか?」
「ソウタさんのレベルは幾つですか?」
「大丈夫というか、特に都合の悪いことは無い。フィアのランクがSIでレベルが21だ。俺のランクがSSで、レベルが46だ。」
「46!?そんなレベルは存在しません。私だって21ってどうなってしまったんでしょう。」
「フィアちゃん、ソウタさん、大丈夫なんですか?」
目が開いていたのかシロップも心配そうにしている。
シロップの髪を撫でながら頷いて見せると、心配そうではあるものの体調には心配がない事だけは伝わったようだ。
「取り敢えず、如月を抱いてもいいか?」
「ばっ!?今そんな雰囲気じゃなかったでしょう?」
「いや、考えても答えの出ないことは考えないでおこうかなと。」
驚いている如月を小脇に抱えて、寝室へとみんなを誘った。
食堂の片づけをシロップとアニエスがやってくれると言い、俺の後ろにフィアがついてきた。
如月の子供たちを右手に抱え、左わきに如月を抱えて寝室まで歩くと、如月は文句だかなんだか判らないことを叫んでいる。
「あなた聞いてるの?私は貴方とは100年も一緒に居られないと思ってたのよ?だからその間だけは貴方に尽していこうって思ってたのに、死なないって?ずっといるっていうの!?
1000年も10000年もずっとこうなの?はぁ、それじゃ多分生まれる子供、11人じゃ済まないでしょうに?」
「そうだなぁ、多分1000人産んでも少ない方だろうなぁ。」
「しみじみ言ってんじゃないわよ。ちょっとフィアちゃん!助けなさいよ!」
「私も1000人は欲しいですね。」
前話(第111話)と同じ日に「あっち」も更新しています。
それぞれによろしくと言う事でお願いします。




