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【第106話】ゲルマン兵

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

ここまでに72,000PVを超えるアクセスを頂きまして本当に、深く感謝いたします。

数話、ソウタとフィアはお休みと思われます。

 アイアメリカの支援艦隊がイングリーンランドに到着したのは年明けすぐだった。

 正規空母を10隻、軽空母を12隻とそれを護衛する艦隊に、戦艦を主力とする打撃艦隊も6艦隊がデヴォンポート海軍基地に集結している。

 艦隊上空には常時100頭を超える飛龍が哨戒に当たっており、1000頭を超える飛龍と飛龍が暮らす空母を中心に最遠部を戦艦を中心とした護衛艦隊と打撃艦隊が取り巻くように集まっているのだが、当然港には収まりきらず一国を焼き尽くすに十分と思えるほどの戦力がひしめくような状態になっているのだ。

 遠英派遣艦隊、艦隊司令長官はまだ38歳と言う若さでありながら多数の戦闘を経験し、駆逐艦の魚雷装填手からの叩き上げだった。

 逞しい体つきと鋭い眼光を持ち、顔に刻まれた深い皺は多くの経験を積んだ者だけが持つ信頼感を滲ませている。

 アイアメリカが神国へ最初に侵攻した際には空母群を護衛する駆逐艦で追撃から空母を守るために神国の戦艦や巡洋艦を翻弄するべく、走り回って魚雷を放ち、主砲を撃ち、肉迫して見せた。

 しかし、神国には我々の信じる科学を超越した「聖銀の巨人」が居り、アジアの小国など何度も焼き尽くせるはずの我が艦隊はなすすべなく蹂躙を受けた。

 あれだけ犇めくようにいた飛龍部隊が敵の艦砲射撃で消えてなくなり、背後に潜ませておいた虎の子の巡洋艦部隊が消滅させられてしまった。

 その中でも、海に逃れた水兵たちを救出し、鹵獲された空母以外を守るために必死で操船を行ったのだが、目前に現れた聖銀の巨人には驚かされたものだった。

 生き物のように滑らかに動き、戦艦や戦車のような機械に見えるのだが、自らの意識で動いているかのように振る舞う巨人は、英語を話していた。

 虐殺が目的ではないようで、空母一隻を鹵獲された訳だが、その搭乗員の退艦を待ち、我々が立ち去るまで監視はするが、攻撃はしないと言った。

 あれから一年が過ぎ、戦力を取り戻したアイアメリカの艦隊は、万全の戦闘力を前面に空母主体ではなく、戦艦主体の編成で雪辱戦へと望んだのだった。

 諜報戦の成果として、あの聖銀の巨人は軍に所属している戦力でないことが判っている。一介の冒険者が巨人を所有し、先の海戦時には運悪く敵艦隊に同乗していたことを掴んでいた。

 そして、今回の海戦で迎え撃つ神国の艦隊には乗っていないことまで掴んでいたから、風向きが我々の方に向いていると自信を深めていたのだった。

 結果的には、聖銀の巨人の出る幕もない様な攻撃力が神国には備えられ、我々にはそれに対抗する術が無かったからか、一度目と同じように蹂躙されるしかなかったのだった。

 航空戦力とはすなわち飛龍であって、昼間に活動する生き物は夜の視界が利きにくい。

 それはどこの国でも当たり前のことで、神国でも変わらないはずだ。

 しかし、夜の闇に包まれた海域で始まった戦闘は神国から押し寄せてきた飛龍ではない航空戦力によって暴虐の限りを尽くされた。

 こちらには視認できない敵のかが飛来して攻撃を開始した。

 一つ一つの大きさは多分それほど大きなものではないようなのだが、攻撃力は決して小さくは無かった。

 戦艦や巡洋艦には高空から爆撃が行われ、上部構造の兵装の類が薙ぎ払われた。甲板を突き抜けたソレは艦内で爆発し、航行できなくなる艦が殆どだった。

 軽巡洋艦や駆逐艦は見えない敵が放つ魚雷を受け、腹に大穴をあけてあっという間に沈んでいったのだ。

 二度、三度と波状攻撃が行われ、ようやくに東の空が白み始めたころには殆どの戦闘艦が戦闘不能に陥っており、止めを刺すような攻撃のみが行われていた。

 見渡す限りの海面に人とモノがあふれ漂い、大型の艦艇でさえも多くが沈み始めている。

 私が艦長を務めている巡洋艦も、甲板の高さが海面と同じくらいになっており、もうどれだけも持たないだろうと思われる。

 明るくなった空を飛び回るそれは、矢のようなシルエットを持った機械だった。高空にも低空にも乱れ飛ぶそれは後部にプロペラを持つ機械で、中央部に人が乗っており、先端部から機銃を撃つ仕組みを持つようだ。

 人が飛龍ではなく、機械に乗って空を飛んでいるという事実が俄かには信じられなかったが、どの機械も舞うように飛び、人の意志を受けて自由に行動しているらしい。

 これを持つに至る経緯と言うのもにも興味があるが、私が所属する艦隊はもう戦闘継続能力を失ってしまっていた。視界に映った後方の補給艦隊は無傷のようで、神国の兵たちがその全てを屠ってしまうような考えもないのだろうと不思議と安堵する部分があった。

 戦闘力は奪うが、人命を奪うつもりはないのだろう。

 艦隊司令から打電があり、総員退去が発令された。これによって海戦は終わりを告げ、敵の空を飛ぶ機械も全てが引き上げて行ったのだった。

 母国にたどり着いた時に艦隊司令が居ないことを知らされ、神国の海に没したことを公表された。それ以後に、私たち士官連中から幾度も聴取が行われ、戦闘の様子を事細かに報告することになった。

 大半が闇の中で行われたことだったので、艦内にある戦闘指揮所に居たような者には何も答えるモノは無かったであろう。私たち艦橋に居た者たちでさえ、闇夜に上がる火の手と火達磨で海中に没していく艦艇をしか見てはいなかったのだから。

 彼我の戦力差があまりにも大きく、何度挑んだところで蹴散らされて終わりだと報告したが、聴取を受けたほとんどの士官たちは二度と神国とは争いたくないと言ったそうで、アイアメリカの政府はしばらくの間は距離を置くという結論を出したと聞いた。

 その後も神国への諜報は続けられているのだが、もたらされる情報は情報分析将校たちにも戸惑うばかりのモノだったという。

 ヤマノベ公爵という貴族一人が神国全体に様々な奇跡を齎している。

 南方連合国に発生する魔物による災害を聖銀の巨人を使役して意図も容易く討伐して見せた。

 我が国の飛龍部隊を瞬時に消滅させた新型弾頭を開発した。

 潜水艦を発見する仕組みを開発し、最新鋭の攻撃型潜水艦が神国に限っては近づくことさえできない。

 飛龍用に開発された空母は空を飛ぶ飛行機用の空母に改装され、我が艦隊を襲撃した。

 飛行機と言うそれは、魔法でも何でもなく工業製品で、どれも魔法を使えない一般兵から選ばれた者たちが操縦しているのだという事だ。

 しかし、仕組みも原理も判らない飛行機を我が国が手に入れるためには10年では足りないだろうと思うのだ。

 そして国内の変貌。様々な仕組みが構築されていき、社会制度や統治機構がグングンと進化し続けているらしい。富める者と貧しい者の差が縮まり始め、国内に巣食っていたテロリストや狂信者たちをも公爵自らが調伏し、産業が活発に動き始めていることも驚くべきポイントだ。

 そうであるうえに、公爵は魔法使いであり、剣士としても他者の追従を許さない高みにあるのだと報告されていた。

 冒険者ランクS、レベル10なのだそうだ。魔法量は数字に表す必要さえなく、魔剣を振るいエンシェントドラゴンさえも倒している。

 妻にしたサキュバスと共にSランク、レベル10の二人が駆け巡る神国は隷属させたり、従属を強いるような国ではないのだろう。

 白人優越主義と言う遺伝子に刷り込まれた精神論を今日から改めることは難しいかもしれないが、いずれ手を取ることも考えて行かなければ、アイアメリカの海洋戦略もアジアでの商圏拡大もない物になってしまうだろう。

 アジア一帯は神国を中心にまとまり、各国が共存の道を歩み始めていると聞いている。

 公爵のような強者を擁しながら神国はアジア各国を隷属させるでもなく、共存共栄の道を探りながら結束を強めているそうだ。

 乗り遅れた西華には哀れみしか感じないが、それも国を指導する立場の者たちが私利私欲に塗れ、先見を誤ったからだろう。

 いつか、ヤマノベ公爵とテーブルを囲んでみたいと思わせられるのだ。

 白人でなくとも強者は居て、より良い世界を求めることができると証明してくれているのだから。

 反して、白人優越主義を強力に推し進め、イウロペの様々な国を併呑しながら勢力を拡大し、生粋のゲーマニアンを1等臣民、イウロペの白人種を2等臣民などと呼び、格付けに応じた隷属を強いているのがゲーマニアンで新しく選ばれ、総統閣下などと言う立場に立った小男もいる。

 劇場政治に長けたこの小男は、宰相に劇場の支配人をさせ、選民思想を根付かせつつある。

 一種の熱病とも取れるこの政治形態には吐き気を催すような一面と、内側に入ってしまうと病に侵されたような夢の世界を漂う、不思議な空間に捕らわれる。視界を奪われる視野狭窄に惑わされ、正常な思考を停止してしまう甘美な毒を与えられるようになる。

 自分たちこそが世界の頂点であり、自分たちの思うように世界が迎合することが当たり前のように感じられてしまうらしい。

 抵抗勢力となるインディーラを4等臣民と呼び、西華やローレシアなどは殲滅対象として膨大な軍事力を持って叩き伏せることさえも楽しみであるかのようだ。

 イウロペの中にあって、地政学的に一歩離れた場所にあるイングリーンランドはその熱病にうかされることもなく、抵抗を続けてはいるのだが旗色は決して良くはない。

 アイアメリカの宗主国としての歴史もあり、海峡を隔てたおかげで蹂躙されもせず、協力するでもなかった訳だが、早々に併呑されたフランソワからドーバーの街への砲撃に始まり、海峡を越えようとするゲーマニアン艦隊に脅かされ、明日をも知れない恐怖におびえることになってしまっていた。

 共栄圏思想に基づき、結託を深めたアジア各国と神国による強大な戦力によって東進を阻まれ、あまつさえ抑え込まれたゲーマニアンは西へと追い落とされて本国さえも地上戦艦に焼き払われたものの、小男が存命しており、再び力を蓄えつつあることが判っている。

 とは言うものの、世界最強を謳っていた地中海艦隊はその陸上戦艦になす術もなく殲滅され、地上戦力も海上戦力も今は無きに等しい状況となっている。

 この機を逃さずにゲーマニアンを殲滅するには、アイアメリカも今しかないという判断をせざるを得なかった。

 そうして結集された我が艦隊は、この後にイングリーンランドの海軍と共同でゲーマニアンの国力を奪うための殲滅戦を仕掛けることになっている。

 その東から睨みを利かせる神国の陸上戦艦はいまではローレシアに迫ろうというゲーマニアンの陸上戦力を殲滅し、ローレシアや近隣の諸国連合と分厚い包囲網を構築している。

 圧倒的な戦力はイウロペの各国が供出した戦力を容易く踏み潰し、蹂躙して東進を完全に諦めさせるに至っているし、軍事力のことごとくを奪われたゲーマニアンを鎮圧するのが難題ではないと思うほどに疲弊しているようにも見えたのだ。

 未だに48cm列車砲やUボートと呼称される潜水艦部隊には手を焼かされているものの、圧倒的な戦力は認められず、今が好機としか考えられなかった。


 二日間の休養を経て、全ての艦隊がゲーマニアンを調伏するために行動を開始した。

 デヴォンポート海軍基地を出港した艦隊は東へと進路を取り、ドーバー海峡を目指す。

 煩わしい列車砲から血祭りにあげようというのだ。これを足掛かりに内陸部に進攻しようという目論見もある。

 別動の空母打撃部隊もセーヌ川河口のル・アーブルからパリをめがけて航空戦力による奇襲攻撃を敢行している。

 散発的な反撃もあるにはあるが、大挙して押し寄せる戦艦級の艦隊にゲーマニアンの北洋艦隊と潜水艦部隊は有効には機能していないように見える。我が艦隊から出撃した飛龍部隊も早速に列車砲と軌道を爆撃して、大きな成果を上げているという報告が入っているし、ゲーマニアン得意の戦車電撃部隊も先行する威力偵察部隊には捉えられていないようだ。


 大規模な戦闘のないままに空母機動部隊はパリを占領することに成功し、地上部隊の展開を急いでいる。フランソワの国民から歓迎を受け、まるで凱旋でもしているかのような進軍の様子だと連絡が入っている。

 気を引き締めて、警戒を怠るなと檄を飛ばし、簡単すぎることに警戒を強めざるを得なかった。

 地上部隊が展開を始め、一週間ほどが過ぎてパリから東進した地上軍は国境も超え、シュツットガルト工業地帯を蹂躙している。

 空母機動部隊から地上へと上陸し、フランソワ陸上部隊とベルギー陸軍の支援を受け、一大勢力となった多国籍軍はゲーマニアンに侵入してから北上し、ベルリンを目指している。

 一方、ドーバー海峡を解放し、オーランディア海軍の導きによって上陸部隊を陸揚げし、オーランディア陸軍と共に国境を越え、ブレーメンでデルマーク陸軍、空軍と合流を果たした。

 デルマーク空軍は独自の飛龍攻撃部隊を編成しており、一人の龍騎兵に自身が乗る一頭の飛龍と無人の飛龍二頭を従え、三頭で編隊を組み、爆撃を専門でこなす部隊を擁していた。


 ここまでのところではゲーマニアンの大きな反撃もなく、事前に得ていた情報通りに進軍のルートを定めて成果を上げている。

 成果は上がっているのだが、それが逆に不安を煽るのだ。

 何かを間違っていないか?見落としているのではないか。そんな不安を払拭ふっしょくできる材料がない事と、予定調和であるかのような進軍の度合いがどうにも腑に落ちないとしか言いようがないのだ。

 副官以下の士官連中は思うがままの進軍に喜んでいるものの、作戦士官と部隊を統率する大隊長クラスの者たちにも同様の不安を覚えている者がいるようで、しきりと「進軍に変更はないか?」と尋ねてくるのだ。

 一度不安を覚えると、どうしても慎重にならざるを得ないのだが、それを咎めるように言う者たちもおり、バランスを図ることが私の仕事になりつつある。

 自然と慎重にならざるを得ない進軍に、時には大胆なスピードを加えながらも撤退を視野に入れた配置を心掛けるようになるのだった。

 元来、アイアメリカの民族気質としてフロンティアスピリッツを前面に、押せ押せの突撃精神が旺盛ではあるハズなのだが、拭えない不安が俯瞰ふかんした状況観察を怠ることを許さないのだった。これは指揮官としてか、責任者としての勘と言うモノかもしれなかった。


 更に二日が過ぎ、その順調さに気持ちの悪ささえ覚えるほどであったものだ。

 敵対した戦闘車輌の撃破数は優に800を超え、当たり前に考えれば大隊規模以上を殲滅したことになるハズだ。しかし、気持ちの悪いほどに快調に進軍する自軍をかんがみるに、増々に膨れ上がる不安が吐き気を催すほどに膨らんできている。

 まるでいらなくなった戦車を俺たちに処分させているようにも見えたのだ。

 歩兵、砲兵の類が少なく、純粋に車両を撃破しながら進んだのだが、その違和感だけは半端ない物だったのだから。

 「おかしい。」

 ここまでくるとさすがに誰もがその違和感を口に登らせる。

 「そうだろう?この違和感を誰か説明できるか?」

 副官の一言に、周りを見渡して意見を求める。

 最初からそうで有ったのだが、車両には操縦者や砲手はいる。それらの搭乗する車両を打破すれば戦死者もいるだろう。それでも敵の戦車小隊や中隊規模の軍事力を突破してもなんの手応えもないのだ。

 当然敵は反撃もするし、攻めても来れば逃げ惑うこともあるのだが、まるでそれらの全てが嘘であるかのように思えてしまう。

 表現のしようもないのだが、傀儡くぐつを相手にするような、操り人形を相手にしているような違和感しかないのだ。

 感情を伴わない攻撃に、恐怖心のかけらもない逃げ惑う姿。

 そして気が付いてしまった。

 その大多数が女性だった。

 見る限りでは年若い娘と言うしかないほどの年齢の者が殆どだ。

 兵士としての訓練を受けたとは思えない年齢の者まで見受けられる。その娘たちがどうにか戦車を動かしながら連合軍に突撃をすると思ってもらえればよいだろうか?

 鳥肌が立つほどの戦慄を覚えたものだ。

 下は15歳ほどから、年上でも25歳くらいまでの街中で見かけるような女性たちしかいなかった。殆どの者たちは見目好い少女や女性たちだが、明らかに目が死んでいる。

 服装もまちまちで兵士が着るような衣装を纏っているものは皆無だった。ワンピース姿の者も居れば、七分丈のパンツ姿にデニムのシャツを着ているような女性に、学校帰りの生徒のような制服姿の少女の姿も結構多い。

 「なんだこれは!?」

 憤りにも似た怒声を上げてしまう。

 「全隊攻撃中止!敵車輌から娘たちを引きずり出せ!!」

 操縦さえままならない戦車に味方車輌を体当たりさせ、行動にもたついている間に我が軍の兵士たちが敵車輌に乗り込み、砲手や装填手、操縦手を引きずり出す。やはり、どの車両からも兵士と言う兵士は出てこなかった。

 年端もいかない少女たちが散々に集まり、我が軍もかなりの混乱状態にある。

 「いや!、離して!!あんた達を討たないと私たちが殺される!」

 狂乱状態の女性たちを集め、拘束し、様子を見るにどの娘もまるで暗示にでもかかっているかのようにただひたすらに私たちを討とうという意志だけで突き動かされているかのように見える。

 「私の中に悪魔が居るの。悪魔に喰われたのよ!」

 捕まえた女性たちが口々に同じようなことを言う。その意味は分からないが、尋常でない数の女性たちが異口同音に切羽詰った様子である意味、死に物狂いとしか思えない態度を見せるのだが、私たちを殺すことが生存の唯一の手段であるかのような物言いだ。

 離れてみれば街中ですれ違い、綺麗だと思うような娘たちなのだが、余りにも必至すぎる目が異常性を訴えている。

 そして、変化は突然に起こった。

 私の側近くに居た女性に変化が現れたのも突然だったが、それが伝染するように周辺の女性たちにも同じような変化が訪れた。

 一言で言うならば弾けた?もしくは裏返しになったとでも表現すればいいのだろうか。

 拘束され、身の自由を奪われた少女の体が弾けるように膨らみ、骨格が異常に折れ曲がったうえで醜くも表面積を増した後に一気に。いっきに肌と内臓が入れ替わるかのような変化を見せたのだ。

 「ぼひゅん!」

 軽い衝撃音と共に次々と少女たちが裏返っていった。

 内臓をぶち撒けるように、体内から骨格の全てを吐き出すように目の前で少女たちが肉塊に変わり果てて行った。

 醜悪な血煙と腐敗臭のようなこらえられない嘔吐感を催す臭いを撒き散らして内臓を晒して見せた。

 そのまま崩れ落ちるように地べたに伏せる肉の塊は動くこともせずに、蠢動を繰り返している。私が吐き気を堪えることができたのは周りの兵士たちが我先にと胃の中の内容物を地面にぶち撒けたからで、状況把握を怠ることができなかったお蔭で醜態をさらすことも回避できたと言っていい。

 50人を超すような年端もいかぬ少女たちが次々と肉の塊に還っていき、血臭を辺り一面に、目も当てられないほどの範囲で披露すれば、我が軍においてもその行動が正常ならざるを得ないのは仕方のないことだと言えるのだ。

 その条件も判らない上に、捕えれば肉に変わる者たちをどうすればいいというのだろうか。

 周辺の稼働可能な敵対する車両から拘束した女性たちの全て・・がこのような姿に変わり、次の戦線への転戦を躊躇ためらわわせるのだ。

 これは一体なんだ?

 反撃の意志があるのかも判らない素人集団が目の前に立ちはだかり、これを排除するのはいとも容易い。

 しかし、相手を捕えてみれば意思の有無にかかわらずに自害する。

 それはまるで呪いのように。多分、本人たちの好むと好まざるとに関わらずに。

 シンとした静寂が訪れ、我が隊の戦闘車輌のアイドリングしているエンジン音のみが環境音として耳に届いてくる。

 私たちはいったい何と戦っているのか?

 いつからゲーマニアンは少女たちを戦場に駆り立てることとなった?

 祖国を守るための兵たちはどこへ行ったというのだろうか?

 様々な疑問が去来し、全ての兵卒に次の行動への疑問を抱かせるのだった。


 本日の進軍をここまでとして、兵士たちにキャンプを張らせた。

 自分の中でも整理のつかないことが一兵卒までに理解が及ぶとは考えられなかったのだ。

 夕闇の頃を過ぎ、夜の帳がおりてからも周辺警戒を解くことはできなかった。自分たちの身を守るために。

 恐怖に駆られるように身の回りを守ろうという強迫観念にとらわれていたと思う。誰とはなしにそうしなければならないと理解し、臨戦態勢のままただ、血臭を避けるように場所を変えてまんじりともしない夜を明かすことになったのだった。

ヨーロッパ戦線のオカルトな気持ち悪さを味わっていただくことになろうかと思います。

エッチもなし、グロだけはあり、フィアもシロップもアニエスも如月も出てこなくてこれがContractor with Bloodなのか?と言うアクセスしていただくことが申し訳なくなるような数話をお楽しみください?

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