「お正月」
冬休みシリーズ(?)第二弾です。
「おい、ソラ起きろ!」
「なあに?、まだねむいよ~」
「ほら、カイも起きろ!」
「やだよ、ねむい」
「いいもん見せてやるから、早く起きろって!」
「「! いいものって、なあに?」」
「それは、起きてこないとなあ……」
いいものって何だろう? ぼくたちはお父さんにユサユサと起こされて、ねむい目をゴシゴシこすりながら、起き上がったんだ。
あれっ? 時計を見たら5時ってなってる。
うわあ、もう夕方なのかなあ。朝ごはんもお昼ごはんもわすれちゃったの~? それに、きょうって、お正月じゃなかったっけ?
あわててベッドからおりて、カイと二人できょうそうするみたいに、つくえの上においてあった服を着て、二人してリビングに行ってみると、お父さんが待っていて、
「それじゃあ、ちょっとさむいから、二人ともセーターとジャンパー、手ぶくろ、マフラー、ぼうしをつけて、もう一度集合!」
カイもぼくも、もちろんちいばあちゃんからの、とっておきモコモコセーターを着たよ!
お外に行くのかなあ~、なんてカイと話しながら、リビングにもどってみると、お父さんもお出かけのジャンパーを着ていたんだ。
「じゃあ、行こうか」
「あれっ? お母さんは?」
ぼくが聞くと、
「お母さんは、夜おそくまでお仕事していたから、もう少しねかせてあげような!」
「でも、もう夕方でしょ?」
こんどはカイが聞くと、
「ああ、ちがう、ちがう。まだ朝だよ」
「「ええ~? 朝なの~? まっくらだよ~」」
「そう、だから、しずかにな? これから、男だけのひみつのお出かけだぞ!」
どこに行くんだろう? ぼうけんみたいだねって、カイとニッコリしちゃったよ。
そうして、お父さんとぼくとカイの三人で電車にのって、ついたところは、まっくらな海だったんだ。
ぼくたちのほかにも、なん人かの人たちがいたんだけど、まっくらな海と小さく光ってる星と、白っぽく見える雲は今まで見たことがなかったし、ザザーンと聞こえるなみの音もなんだかこわかった。
ぼくもカイも、お父さんの手をぎゅうっとにぎって、お父さんにピトっとくっついちゃった。お父さんはちょっと笑って、
「もう少しかな。海の方を見ててごらん?」
海と空は、おんなじくらい色をしていたんだけど、そこに赤いせんが見えてね、それがだんだんとのびていって、海のむこうがわの島みたいなのが出てきてね、その間も赤い色はどんどん大きくなって、どんどん広がっていって、むこうがわの島みたいのがもえているみたいだったんだ。
またちょっとこわくなっちゃったぼくが、お父さんを見てみたら、
「ほら、はつ日の出だぞ!」
だって。
「「ええ~? あれってお日さまなのお~?」」
カイもびっくりしたみたい。思わずそろっちゃったよ。
お日さまの光はだんだんとまぶしくなって見れなくなっちゃったけれど、ぼくたちもほかの人たちも、しずかにしずかに海のむこうをじいっと見ていたんだ。
そうしてたらね、いつのまにか、空も明るくなっていて、こわかった海もいつもの海にもどっていたんだよ。
なんだかドキドキしたし、声を出しちゃいけないって思ったし、いつものお日さまと、どこかちがって見えてね、きれいで、大きくて、ちょっぴりこわくて。ぼくたちの知らないお日さまを見ているみたいだったんだ。
すっかり明るくなってから、お父さんが教えてくれたんだ。
「いつか、カイとソラが大きくなったら、この海と空がある場所で、三人ではつ日の出を見たかったんだよ。お父さんもお前たちくらいの時に、お父さんのお父さんにつれてきてもらったんだ。むねがいっぱいになったのを、今でもおぼえているんだよ。雲はあったけど、見ることができて本当によかったよ」
それからおうちに帰ってね、お母さんももう起きてたからさ、「明けましておめでとう」をしてから、カイと二人でいっぱいお日さまのことを話したんだ。
お母さんは、ニコニコしながら、ぼくやカイの話しを聞いてね、
「はつ日の出、見られてよかったわねえ。たのしかった?」
だって。ぼくたちは、声をそろえて答えたよ!
「「とってもたのしかったよ!!」」
おもちの入ったおぞうにも、おせちりょうりもおいしかったけれど、お年玉もすごくうれしかったんだけど、ぼくたちのむねのところにね、まだあの時の赤いお日さまの光が入ってるみたいだったんだ。
お父さんが、むねがいっぱいって言ったのって、このことなのかな。
あっ、ちゃんと、はつもうでにも行ってきたよ。カイにね、何をおねがいしたのか聞いてみたんだけど、ぼくといっしょだったから、びっくりしたんだ。それはね、
「「来年も、はつ日の出をみんなで見られますように!!」」
*「お正月」おわり*
双子も新学期がスタートしました。
次のお話の更新は未定ですが、また聞かせてくれたらお届けしたいと思います。
ご閲覧、ありがとうございましたm(__)m