「クリスマス プレゼント」
ぼくたちの家のおとなりには、大すきなおばあちゃんが一人ですんでいるんだ。
一人だけれど、とっても元気なおばあちゃんで、山にものぼっちゃうし、テニスなんかもしているし、マフラーなんかもスイスイあんじゃって、ごはんだってとってもおいしいスーパーおばあちゃんなんだ。
お母さんなんて、時どき「ししょう」ってよんでるよ。
ぼくたちがうまれる前からずっとおとなりだったから、ほかに家ぞくのいなかったお父さんや、家ぞくが遠くにいるお母さんには、本当のお母さんみたいなんだって。
おばあちゃんは、山口ちさっていう名前だから、ぼくたちは、ちいばあちゃんってよんでるんだ。
いつもいろんなお話をしてくれたり、聞いてくれるんだけど、ぼくたちがいたずらして、おこったちいばあちゃんはすごくこわいんだよ。
「せいざのけい」が、まってるんだ。ちいばあちゃんが、もういいよっていうまで、ずっとせいざしてるから、足はしびれるし、もうたいへん。すぐにごめんなさいをしたくなるけど、ギロッとにらんで「ちゃんと、はんせいするまでダメよ」って言うんだよ。
そんな元気いっぱいのちいばあちゃんが、今はおとなりにいないんだ。
秋になって、山のぼりに行ったちいばあちゃんは、おいしそうなキノコを見つけて取ろうとしたらしいんだけど、クキッて足をひねっちゃったんだ。
いっしょに行った友だちに助けてもらって、なんとか山から下りたけれど、そのあとはまっすぐ病院にはこばれちゃったんだって。
病院から電話がかかってきて、ぼくたちは本当にびっくりしたよ。
お母さんもぼくたちもすぐに病院にとんでったんだけど、足のほかにはケガもなくてピンピンしているちいばあちゃんを見て、思わずみんなでないちゃった。
「もう、山のぼりはダメです!」
って、なきながら言ったお母さんに、
「心配かけてごめんなさいね、でもまだまだ、だいじょうぶだよ」
なんて言う、ちいばあちゃん。ぼくたちは声をそろえて言っちゃった。
「「ちいばあちゃん、そこにせいざしなさい!」」
ちいばあちゃんは大声でワハハと笑って、
「ゴメン、ゴメン。足が治ったらね! カイとソラにおこられちゃったから、山のぼりはあきらめるよ」
だって。本当にダメだからね。ちいばあちゃん。
ちいばあちゃんの足は、けっこう大ケガだったんだって。だからまだ病院にいるんだ。
でもとなり町だから、ぼくたちも時どき会いに行ってるよ。あずかったピーちゃんのことや、作せんだって、ちいばあちゃんにきいてもらわなくちゃいけないもん。
なんたってぼくたちは、なかまで家ぞくなんだから。
今日は、ぼくたち二人で、クリスマスプレゼントをわたしに行ったんだ。ダンボールと紙ねんどに絵の具で色をつけた、しゃしん立てだよ。まん中をくりぬくのが、すんごくたいへんだったけどさ。
ちゃんとしゃしんが入るようにしたくって、お母さんにないしょでカッターを持ってきてダンボールを切っていたら、すぐにばれちゃって、おこられちゃった。でもね、それを見ていたお父さんが、そこだけかわりに切ってくれたんだ。さっすがお父さん。
「ちいばあちゃん、よろこんでくれるかな」
「だいじょうぶだよ。がんばったもん」
「そうだよね、だいじょうぶだよね」
ちよっぴり心配だったけれど、「「メリークリスマス!」」って言って二人でわたしたんだ。
「うれしいねえ、なにかな~?」
リボンをつけた、ぼくたちのプレゼントのつつみ紙をあけた時、ちいばあちゃんのまんまるの目から、ポロロンとなみだがおっこちて、ぼくたちに手でおいでおいでをしてね、ぎゅうっとしてくれたんだ。
「こんなにすてきなプレゼントをありがとうね。ああ、早く帰らなくっちゃね」
ぼくたちもちいばあちゃんから、クリスマスプレゼントをもらったよ。緑と青のモコモコあったかセーター! 病院でこっそり作ってくれていたんだ。
もちろんとってもうれしくて、かわりばんこに、ちいばあちゃんをぎゅうっとしたよ。
ちいばあちゃんは、いつもと同じお花のにおいがして、いつもみたいにあったかくて、ぼくたちもポロロンとなみだがおっこちちゃった。
おかしいなあ、とってもうれしくてたまらないのに。なんだか、むねのへんがキュウッとしたんだよ。ちいばあちゃんのポロロンがうつったのかな。
ぼくたちがバイバイした時、ちいばあちゃんのとなりには、
「ちいばあちゃん早く元気になってね」って書いた大きな紙を持った、ぼくたち家ぞくとピーちゃんがうつったしゃしんが入った青と緑のしゃしん立てが、ちゃあんとかざられていたんだよ。
「「メリークリスマス!!」」
*「クリスマス プレゼント」おわり*
《ご閲覧御礼*おまけ 帰り道》
「ねえソラ、クリスマスプレゼントはうれしいけどさ、あれはいらないよね!」
「アレ? ああ、通知表!、うん、うん、いらないね~」
「だって、二人ともおんなじだし、一まいでいいじゃん?」
「今日のは、いっこだけ、ちがってたよ?」
「あれね~。なんで、じゅぎょう中は集中しましょう、って書かれたのかな?」
「ぼく、わかった気がするよ」
「なに、なに? 教えてよ」
「だってカイ、はなと口の間にえんぴつはさんで、あそんでたでしょ?」
「あれかあ~」
「みんな、笑ってたし!」
「落ちないようにやるのって、むずかしいんだよ?」
お読みいただいてありがとうございました。
カイとソラも冬休みです。
また二人がお話を聞かせてくれたらお届けしたいと思います。
その時には、活動報告にてお知らせいたします。