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カイとソラ  作者: 神 雪
27/27

そしていつかの春のある日

本日二話更新です。

お気をつけ下さいませ。


(^▽^)えぴろーぐだよ!(^O^)



「ソラ! 待ったか?」


 真っ黒に日焼けして精悍(せいかん)な顔付きになったカイが、破顔(はがん)しながらホームの階段(かいだん)()りてきた。大きな荷物(にもつ)軽々(かるがる)(かた)にかけた姿(すがた)をマジマジと(なが)めて、ふっとぼくも()みがこぼれる。


「久しぶりだね! カイ! ぼくも今着いたところだよ。それにしても、すごい荷物だね」

「ああこれ? ちょっと外に行ってたからさ、あいつらに土産(みやげ)ばっかり増えちゃって」

「今回は東南アジアの方だっけ? ブログは見てたよ。もうすっかり船乗りじゃん?」

「船乗りって言うな! 海洋学者と呼んでくれよ。……かなり未来のだけどさ」

「アハハ、ゴメン。それにしてもカイが学者を目指すなんてねぇ」

「何言ってんだ。そういうソラだって、()たようなもんじゃね~か」

「うん。まあそうなんだけどね。それにしてもカイが象牙(ぞうげ)(とう)の住人になるなんて、思いもしなかったよ」

「それはオレもビックリ! まあ、ほとんど海に出てるけどな。それよりソラ、本当に良かったのか? 飛行士の道じゃなくて」

「そこはね、ぼくだって悩んだけどさ。じっくり研究している方が(しょう)に合ってるんだよ。宇宙は広くて、わからない事だらけだからね。星を見ているだけで幸せなんだ」

「そうか。……うん。ソラの原点だもんな」


 そう言ってぼくに(こぶし)()き出したカイ。それにコツッと自分の拳を当てて、今はもう別々の道を歩み始めているぼくの大事な相棒(あいぼう)を見つめた。


「ん? なんだ?」


 そういえば……と、思い出したのは、ひいおばあさんの家で見た満天(まんてん)の星空。あれから随分(ずいぶん)()ったけれど、大型の天体望遠鏡から見る星々は今もなお変わらずぼくを(とら)えてやまない。そうか、そうだな。確かにあれが原点だな。そうそう、カイを心配させちゃったっけ。思い出したら(なつ)かしくて、なんだか笑いたくなって。思わずクスクスしてたらカイが怪訝(けげん)そうな顔になってしまった。


「ゴメン、ゴメン。いやね、ひいおばあさんの家に初めて行った時の事とか思い出してさ。カイにも心配かけたりしたなって」

「あ~! まあな~。あの頃は双子って全部一緒のはずだって思ってたからなぁ。そのすぐ後にあいつらが産まれて、二卵性だったし男女だったしで、随分(ずいぶん)柔軟(じゅうなん)になったと思うわ、オレも」

「確かにね~。あれだけ似てない双子も珍しいよね。(リク)は名前通りドッシリ落ち着いてるし、(アン)は母さんそっくりになっちゃって、父さんなんかデレデレだしね!」

「そりゃあ、オレ達だって変わらないだろう?」

「違いない」


 懐かしい()が家に向かって、カイと肩を(なら)べてのんびり駅前商店(がい)を歩きながら、笑い合う。


 今日はその双子達の誕生日(たんじょうび)だ。

 ぼくもカイも大学進学を契機(けいき)にそれぞれ家を出たけれど、毎年この日だけは絶対に帰って来ようと決めていた。


 ぼくたちの大事な弟と妹は元気だろうか? 父さんや母さんは変わりないかな。ちいばあちゃんも元気かな。時々、グランパやグランマと旅行に行ったりしてるらしく、旅先から写真付きのメールを送ってくれるちいばあちゃん。今でも変わらずぼくたちの味方で、ぼくたちの応援団長(おうえんだんちょう)だ。ようやく正座から解放されたぼくたちの代わりに、きっと陸と杏が正座させられているに違いない。


 あの日(ちか)った「ずっと守るよ」という言葉をふと思い出した。


「ねえカイ。ぼくたちは守れているのかな?」

「ベッタリくっついてるのが守るって事じゃないだろ? オレもソラもあいつらに何かあったらいつだって飛んで行くし、話を聞いてやれる。それで良いんじゃないか?」


 脈絡(みゃくりゃく)のない言葉をちゃんと拾い上げてくれるのは、双子ならではなのだろうか。いや、違うな。きっとそれだけぼくをわかってくれているんだろう。


「そっか。そうだな」


 カイの言葉はいつでもぼくを思考の海から(すく)い上げてくれる。そのおおらかさと真っ直ぐな(ひとみ)にどれだけ助けられてきたことだろう。カイと双子で本当に良かった。


「サンキュ、カイ」


 並んでいるカイに拳を向けると、日焼けした拳がコツンとぶつかった。




 久しぶりの我が家の庭では薄紅(うすべに)色したあんずの花が満開だ。今は陸が手入れしているらしい花壇(かだん)では、パンジーやチューリップの蕾が春の風に()れている。今年は暖かいらしく、気の早い桜の花も一つ、二つ、ほころんでいる(よう)だ。弟妹達が産まれた日の事を思い出しながら、立ち止まって庭を見回してからカイと顔を合わせ、玄関へと足を進める。

 

 玄関のチャイムを鳴らした途端(とたん)、二階から()け降りる(さわ)がしい足音が聞こえてきた。


「「カイ兄ちゃん、ソラ兄ちゃん、お帰りなさ~い!」」


 ドアがガバッと開いたと思ったら、双子の弟妹の声がした。

 ぼくとカイは二人でクスッと笑って返事をしたんだ。


「「ただいま!!」」


 


★『カイとソラ』これにて完結★

(^▽^)後書きの様なお知らせ(^O^)


「おいしい春」分から季節を追いながら双子の日常をお届けしていこうと決意して一年。

少しは成長させられたでしょうか?

長い間双子にお付き合い下さった皆様。

平仮名満載のお話を最後までお読み下さって、本当にありがとうございましたm(__)m

皆様に励まされながらの一年と少しでした。

子供目線の一人称の視野の狭さに四苦八苦しながらの拙い文章でしたが、少しでも笑顔になって頂けたら幸せです。


エピローグではちょっと先の未来を覗いてみました。

"それからどうなったの?"

これが少しでも解消され、めでたしめでたしとなっていると良いのですが。


そしてお知らせです。

子供目線ではお伝え出来なかった裏側や背景等、主に筆者の趣味とストレス発散の為の番外編をこれからマッタリとお届けして参ります。

もう既に書き始めていますが、近々ジャンル変更等あるようなので、それを待ってからの投稿となります。

現時点では文芸の「ヒューマンドラマ」での投稿を予定しています。

様々な視点、文体の寄せ鍋の様なお話となる予定ですので、よろしければ覗いてやって下さいませ。

それでは皆様。

(^▽^)「本当にありがとうございました!」(^O^)


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