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カイとソラ  作者: 神 雪
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「春の大作せん」

 お母さんが入院してからひと月がたった。ぼくもカイも、さびしくなんてないよ! だって、うれしい事のじゅんびだからね。ぼくたちはだいじょうぶ。本当だってば。グランマやお父さんが、「がまんするなよ~」って言うけどね? がまんなんてしてないよって言っても、笑うなんてひどいよね。


 お母さんのビックリニュースには、ぼくもカイもおどろいちゃったけれど。

 大きなおなかだなあ~って思ってたけれど、まさか二人も入ってるなんて!!

 もちろんぼくたちはグランマやお父さんにしつもんしたよ。


「えええ、一人じゃないの? もしかして双子なの~?」

「そうみたいだなぁ」

「どっち?」

「何が?」

「だからぁ、妹なの? 弟なの?」

「さあねぇ。お父さんもどちらか楽しみにしているんだよ」


 ……あやしい。


 お父さんは、ぜったい知ってるんだと思うんだ。でも、こうなったお父さんはぜったいに教えてくれないんだって、ぼくもカイも分かっているから、お母さんに聞こうと思ったんだけど。


「ねえ、お母さん。赤ちゃん達は妹?」

「それとも弟?」

「うふふ~! どっちかしら。カイもソラも、どっちだと思う?」


 なあんて、病院のベッドにねころんで、入院前よりも大きくなったおなかをスリスリしながらぼくたちに聞いてきたお母さん。


「「もお~!!」」


 でもね、本当はどっちでも良いんだ。妹だって、弟だって、いっぱいかわいがっちゃうよね、カイ!


 お母さん、もう一人で起き上がれないんだって。ごはんもベッドだよ~って、大変そうだったんだ。ぼくたち子どもがお母さんに会えるのは土曜日と日曜日だけなんだけど、そんなお母さんを見ているとね、病院で良かったなって思うんだ。だって家にはウイーンって動くベッドもないし、かんごふさんだっていないしね。


「早く帰りたいよ~! 思いっきり、からいものが食べたい~!」


 なんだか、お母さんが子どもになっちゃったみたいで、ぼくたちは、大笑いしちゃった。グランマやお父さんは土曜日や日曜日だけじゃなくても会えるから、いつもぼくたちのメッセージをスマホでとって届けてくれるし、お母さんからのメッセージも届けてくれる。だからもうちょっとだけ、がんばろうね、お母さん。


 それにね、まだ作せんだって、終わっていないんだもの。もっとあったかくなるまで、お母さんも赤ちゃん達も待っててね!




 お母さんが入院した日の夜、ぼくとカイは一つのおふとんにくるまって、ぬくぬくしながら作せんかいぎをしたんだ。


 お兄ちゃんは赤ちゃんに何ができるんだろう? 生まれてからじゃなくてね、今何ができるんだろう? 待ってるだけじゃいやだよね。何かしたいよねって。


 こういう時、カイってすごいんだ! ぼくたちができる事をすぐに思いついてくれたんだよ!



「あ、ソラ。もっと右。うん。いい感じ~!」

「こっちはどうする? ああそっかぁ。植えちゃうと、どんな色がさくか分からなくなっちゃうね!」


 そう。ぼくたちの作せんは、赤ちゃん達がよろこんで見てくれるような、春のお花をいっぱい植えて、お庭をきれいにしちゃう作せんなんだ。学校から帰ってから、毎日土をほってひりょうとまぜてフカフカの土にしてきたんだけど、今日やっと植えられる! お顔みたいな色いろな色のパンジー。まだ小さいけれど、きっと赤ちゃんが来るころにはさいてくれるはずのチューリップ。グランマ達がいない間もがんばっていた水仙や、フリージア、そしてかわいい黄色のクロッカス。ほかにもたくさんの苗をじゅんびしたんだ。


 お庭には花だんの周りに、お花のさく木がたくさんあるんだ。今はうめの花が終わったばかりだけど、もももあんずも、もうちょっとでさきそうだし、サクラの枝の先っぽもなんだか赤くなってきた。


 赤ちゃん達やお母さん、よろこんでくれるかな? 


 それとね、市民のう園の方も、ちゃんとじゅんびしてるんだよ! ちいばあちゃんといっしょにね、今年は赤ちゃんがちょっと大きくなってから食べられるものにしよう! って、三人でそうだんしながら植えたんだよ。ニンジンやかぶ、じゃがいもとサツマイモ、ほうれん草。育つのはまだまだ先だけどね、カイもぼくもおいしく食べてくれるように、がんばるからね!



 赤ちゃん達のお部屋も、お父さんやグランマがちゃんと用意して、小さなベッドやぬいぐるみ、クルクル回るメリーゴーランドだって待ってるよ!


 ドキドキとワクワク、そしてがんばろうっていう気持ち。

 春が近づいてくるのといっしょに、だんだん、だんだん大きくふくらんできたんだ。


 カイの緑の風船とぼくの青い風船も赤ちゃん達のベッドにむすんでおこう。

 いっぱいにふくらんだぼく達の気持ちがつまった風船。


 少しずつあたたかくなってきた春の風の中、えんがわにすわってぼくとカイはかんせいしたばかりのお庭をじっと見ながら、空が赤くなるまでそんな話をしていたんだ。

 なんだかちょっとずつ、本当にちょっとずつだけど、お兄ちゃんの気持ちってこういうのかなって思ったよ。

 



 ──そして、ぼくたちは、お兄ちゃんになった。 それはポカポカとしたお日さまが、色とりどりにさいたお花達に「おはよう」ってあいさつしたみたいな、良く晴れてあたたかい、キラキラとした朝の事だった。



*「春の大作せん」おしまい* 明日につづく。

お読み下さってありがとうございます!

次回更新明日3/27(日)朝10時

最終話エピローグは3/27午後3時

(^▽^)よろしくお願いします(^O^)

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