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カイとソラ  作者: 神 雪
24/27

「すき・すき・大すきの日」

 新しいお家になって、もうすぐ一か月。初めのころは、学校からついマンションの方に行っちゃって、あれ? ちがうじゃん! って商店がいを通って帰ったりしてたけど、ぼくもソラも、もう間ちがえなくなったんだ。お父さんもやっぱり最初は間ちがえそうになったんだって。みんな同じだなって笑ってた。


 お母さんのおなかはムクムク大きくなってきて、時どきグニ~と動いておもしろいんだ。スリスリしていると中からけっとばしているみたいで、その度にお母さんが「いてっ。もお~! 元気すぎる~」って笑ってる。ぼくとソラはドキドキして、だいじょうぶなのかなって心配になるんだけどさ、笑ってるってことは、きっとだいじょうぶなんだと思うんだ。


「う~。足が見えないよ~! カイ、ソラよろしく!」


 お母さんがこう言ったら、ぼく達の出番。ぼくとソラはくつしたはかせ係なんだ。こないだ豆まきして春が来たって言ってたけどさ、まだまだ寒いもんね。お母さんには元気な弟か妹を産んでもらわなくっちゃ。そのためにできることなら、なんだってやっちゃうよねぇ、ソラ。



 今日はチョコレートの日だと思ってたら、本当はバレンタインデーっていうんだって。すきな人にプレゼントする日みたい。日本ではなんでか女の子からチョコレートをあげる日になっちゃったけどね~って、グランマが言ってたよ。

 

 ふーん、そうなんだ~。でもさ、今日だけはチョコをいっぱい食べたっておこられないもんね~! もちろん、後ではみがきするけどさ。


 エヘヘ、ぼくたちはね、ちいばあちゃんからはチョコレートケーキ、お母さんとグランマからは動物のチョコレートとチョコレートクッキーをもらっちゃった。それにね、なんとサキちゃんとマキちゃんからも宅配便でキラキラした包みに入ったチョコレートが届いたんだよ! 


「良かったわね~! ちゃんとお礼言うのよ~」


 お母さんがニヤニヤしながら言ったけどさ、ちゃ~んと分かってるって。ちょっぴりドキドキしながらソラと電話してたら、お母さんったらこっちを見てニマ~としてさ。もお~! なんだかはずかしくなっちゃったじゃん! 


 電話が終わって、お父さんやお母さん、それにグランマ。みんなでちいばあちゃんのチョコレートケーキをモリモリ食べてたんだけど。


「ねえ、カイやソラはすきな子いないの?」


 なんてお母さんが聞いてきたんだ。思わずソラと顔を見合わせてさ


「「良くわかんないよ!!」」


 って答えたらね、


「なあんだ。つまんない。ようちえんまでは"お母さん"って答えてくれたのに」

「まあ、カイもソラも大きくなったって事だろ?」


 なんてお母さんもお父さんも言ってたけどさ、お母さんをすきっていうのと、どこかちがうのかなって思ったんだもん。


 なんでそんなにニヤニヤしてんのかなぁ。ソラもそう思ったみたいでね、二人でちょっとムッとしてたらグランマが教えてくれたんだ。


(アイ)ってば、ようちえんの時から、(ユウ)ちゃんのオヨメサンになる~っておいかけてたのよ~」

「「へえー!!」」

「そりゃあもう、ユウちゃんが遊びに来るたんびについて回って。(セイ)とユウちゃんが遊んでいるところに、むりやり入って行ったりね。セイは愛のお兄ちゃんなのにプンプンしてたけど、ユウちゃんやさしいから愛の相手をしてくれて」

「「ほうほう。それで?」」


 今度はぼくたちがニヤニヤしちゃった。


「それからもずうっと言ってたわね~。まさか本当にオヨメサンになるなんて思ってもみなかったけどね~。良かったわねえ、愛!」

「お母さん!!」


 思わずって感じでどなったお母さんの顔が真っ赤になってて、あれ? おこってるのかなってソラとびくびくしてたら、グランマがニマ~って笑ってね、


「そんなにてれなくったって良いじゃない! そういうところも昔っから変わらないわね~」


 お母さんは口をパクパクしていて。なんだ、おこってるんじゃなくって、はずかしかったんだって、またソラとニヤニヤしちゃった。そんなお母さんをすごくやさしい目でお父さんが見ていて、なんだかぼくもフワフワした気持ちになったんだ。


 うれしいようなあったかいような、みんながそんな気持ちになった時だった。


「いった~っ!」


 お母さんがこしのところをおさえて、ゆかに座りこんだんだ。


「どうした?」


 お父さんがお母さんのところにしゃがんで、こしのところをさすりながら聞いたんだけど、お母さんは話ができないみたいだった。グランマは病院へ電話している。


 ぼくとソラは、なんにもできなくって、お母さんやお父さんやグランマを見ているしかなかったんだ。二人でギュッと手をつないで、頭の中で、どうしよう、どうしようって思ってた。

 

 グランマの電話が終わって、とりあえずお母さんを病院へ連れて行くって事になった。


「それじゃあ、お義母さん行ってきます。カイ、ソラ。心配しないで、るす番たのんだぞ!」

「「分かった!!」」



 ──ううん。分かってなんかいなかった。なんだかそういう風に言わなくちゃって思ってただけだ。だって、さっきまでみんなで笑ってたのに。お母さん、どうしちゃったんだろう。赤ちゃんは春まで出てこないって言ってたのに。ぼくとソラはだまったまんま、食べ終わったお皿をかたづけて、二人でずっと手をつないでいたんだ。


「……ねえ、カイ」

「うん、ソラ。きっとだいじょうぶだよ」

「そうだよね?」

「そうだよ」


 グランマはそんなぼくたちの頭をなでてから、またどこかに電話しているみたいだった。

 

 しばらくしてからげんかんからピンポンという音がしたんだ。こんな時にだれだろうって思ったら、げんかんに行ったグランマと入ってきたのは


「「ちいばあちゃん!?」」

「おじゃまさま。なんだい、おまえ達。しょんぼりして」

「「だって~」」

「なあに、だいじょうぶさ! だっておまえ達の弟か妹だろう?」


 そうだった! ぼくたちお兄ちゃんになるんだった! そうしてソラの顔を見た時、今度はお家の電話が鳴って、ぼくたちは飛び上がった。


「あ、ユウちゃん? うん。はい。あらそうなの? じゃあまだまだなのね? うん。じゃ、持っていくわ。あらだいじょうぶよ。ちい先生が来てくれてるから。じゃああとで」


 グランマが取った電話はお父さんからだったみたい。


「あのね、お母さんはなんともないって! ちょっと早く赤ちゃんが出てこようって思ったみたいだけど、やっぱりあったかくなるまで待つことにしたらしいわ。だけどお医者さんは、あわてんぼうの赤ちゃんみたいだから産まれるまでは病院にいた方が良いよって言ったんですって。だからしばらくお母さんは入院する事になったの」


「本当にだいじょうぶなの?」

「お母さんに会えないの?」


 ぼくとソラがグランマを見上げて聞いたら、グランマはすごくホッとした顔をしてたんだ。


「本当にだいじょうぶよ! それでね、これからグランマ、お母さんの着がえとかを持って病院へ行ってくるわ。それからカイやソラがお母さんにいつ会いに行けるのか、ちゃんと聞いてきてあげる!」

 

 ぼくたちもグランマの顔を見てね、なんだかホッとしたんだ。


「うん。分かった。グランマよろしくね?」

「ぼくたちだいじょうぶってお母さんに言ってね?」


「まかせて! じゃあ行ってきま~す。ちい先生、すみません。よろしくお願いします」

「ハイハイ。愛ちゃんによろしくね!」

「「行ってらっしゃ~い!!」」


 そうして急いで出かけて行ったグランマを見おくったぼくとソラとちいばあちゃん。


「「はあぁぁぁぁ~!」」


 ソラと二人でソファーにぐったりと座って、思わずため息ついちゃった。


「なんだい、ため息なんかついて。しっかりおし。だっておまえ達」

「「もうすぐお兄ちゃん!!」

「だろう?」


 ちいばあちゃんの大きな笑い声がひびいて、ぼくとソラもいっしょに笑っちゃった。

 うん。ぼくたちはだいじょうぶ。

 どこかに行っちゃったと思った、うれしいようなあったかいような気持ちが帰ってきたみたい。おまけに、急に家の中までポカポカとしてきたみたいだったんだ。


 春までもう少し。お兄ちゃん達は、ゆっくり待ってるからね!




 そのあといっしょに帰ってきたお父さんとグランマが、お母さんからのメッセージをスマホで見せてくれた。


「カイ~、ソラ~。心配かけてゴメ~ン。お母さんもおなかの赤ちゃん(・・)も元気よ~! お母さん、さびしいけどがんばるわ~! グランマとお父さんときょう力して待っててね~! 二人とも大すきよ~!」


「「………………赤ちゃんたち(・・)?!」」



*「すき・すき・大すきの日」おしまい*

お読み下さって、ありがとうございます!

ステキなバレンタインの一日になりますように。

次回本編最終回です。

(^▽^)(^O^)「お楽しみに~♪」

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