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カイとソラ  作者: 神 雪
22/27

「新しい年のスタートは」前編

「今年も初日の出を見られて良かったね! カイ」

「ほんと、ほんと。(セイ)ちゃんもいっしょに見れたし、海もすご~くきれいだったし」

「カイってば、海好きだよね~。やっぱり名前がカイだから?」

「ええっ? 名前の事なんか考えた事ないよ。でも、なんだか海を見てるとうれしくなっちゃうんだ」

「それって、ぼくが星を見てる時と同じかもしれないね」

「あ、ぼくさあ、温泉行ったときにそう思ったよ!」


 今ぼくたちは、お正月休みが終わって海の向こうへと帰るグランパを、お父さんの運転する車で空港に送りに来たところ。誠ちゃんは、初日の出を見ておぞうに食べたらすぐに帰っちゃったんだけど、グランパは明日までお休みなんだって。おなかの大きくなったお母さんを助けるために、グランマはまだぼくたちのお家にいるんだけど、グランパはお仕事だから帰っちゃうんだ。


「冬休み、みんながいて楽しかったね!」

「うん。ちょっぴりさびしくなっちゃうね、カイ」


 そんな事を話してたら、すぐにグランパが飛行機に乗る時間になっちゃった。


「それじゃあまた。カイ、ソラ、元気でがんばれよ! お母さんやグランマをよろしくな。ユウ君、アイを(たの)む。それと、(れい)(けん)、考えといてくれ」


「「グランパも元気でね~! お仕事がんばってね!!」」


(あい)やお義母(かあ)さんの事はおまかせ下さい。それと……なるべく早くご連絡(れんらく)します。お義父(とう)さんにもしばらくご不便(ふべん)をおかけしますが、どうぞお元気で」


「ありがとう。次に会う時は、もっと家ぞくがふえてるんだな。春になるのが楽しみだ!」


 グランパはそう言うと、ぼくたちの頭をゴシゴシとなでて、大きく手をふりながらゲートの向こうへと行っちゃった。


 あ、あの飛行機かな? しばらくして飛び立った飛行機を手をふって見送ったぼくたちは、お父さんの車でお家に帰ろうと車に乗りこんだんだけど……さっきのグランパの「れいのけん」って一体なんだろう。


「「ねえお父さん。"れいのけん"ってなあに?」」


 なんだかカイも気になってたみたいで、声がそろっちゃった。そんなぼくたちをバックミラーでちらっと見てお父さんはククって笑った。


「なんだ、気になるか? そうだよなあ。お前達にも関係(かんけい)があるから、相談(そうだん)にのってくれるかい?」


「「そうだん?!」」


 ぼくもカイも、せなかをピシッとのばした。だって、初めて言われたんだもん。うれしくって、ニヤニヤしそうになっちゃう口をいっしょうけんめいとじて、ぼくもカイもだまってお父さんのお話を聞こうとしたんだ。


「ハハハ。そんなにかしこまらなくっていいぞ? あのな、グランパとグランマだけど、今年の四月に日本に帰って来るんだって」


「ほんと? あ、誠ちゃんは?」


「セイのヤツは、あっちの会社に(つと)めているし、日本にもどって仕事をする気はないらしい。それにな、あっちにかわいいカノジョができたみたいだから、向こうにずっといるんじゃないかな」


「「えええ~! 誠ちゃんってば、ドクシンキゾクなんて言ってたのに~!!」」


 プリプリしたぼくたちを見て笑ったお父さんだったけど、急にとってもまじめな顔をしたのが分かった。ぼくたちもプリプリしてたのをやめて、まじめな顔になっちゃった。


「まあそんなわけで、グランパ達は帰って来るんだけど、グランパのお家は広いだろう? 二人で住むには広すぎるし、お父さん達はぎゃくに家族が()えるから、お家を交換(こうかん)するのはどうかって言われたんだよ」


 グランパのお家は、ぼくたちのお家からも歩いて行ける所にあるんだ。駅前商店がいをはさんでちょうど反たいがわにあるお庭も広い二かい建てのお家で、いつか帰って来た時のためにって、去年リフォームってのをして屋根やかべ、お家の中もピカピカになったばかりだった。

 一かいには台所やトイレやお風呂、それとリビングの他に二つ。二かいにも三つの部屋とトイレがある大きなお家だったから、グランパ達がもどって来たら、ぼくたちもお泊りできるねって、カイと楽しみにしてたんだけど。


「それって、今のお家を引っ()すって事?」


 ぼくがだまって考えている間、カイがお父さんにきいた。


「うん。同じ学区内だから転校はしなくて良いけどね。だけど、赤ちゃんが産まれてからだと大変だから、引っ越すなら早い方が良いと思うんだ。もちろん引っ越すなら全部おまかせパックだけどね!」


 だまっちゃったぼくたちに、お父さんがちょっと笑って言ったけど、ぼくたちはびっくりしすぎて何にも言えなくなっちゃった。


 だって、ずっとずっといるって思ってたし、引っ越すなんて考えた事なかったんだもん。そんなぼくたちを見て、お父さんが言った。


「お父さんにとっても、今の家はお父さんのお父さんやお母さんが残してくれた家だし、お母さんやお前達と()ごしてきた大事なところだ。だけどね、そんな大事な場所にグランパやグランマが住んでくれるなら、うれしいなって思ったんだ。それにね、これから大きくなるお前達やこれから産まれて来る赤ちゃんの事を考えるとちょっとせまいかなとは思ってたんだよ」


「お父さんはそれで良いの?」


 ぼくが聞くと


「うん。お父さんは、このお休み中にセイやグランパ、お母さんとも話して考える時間があったからね。だけど大事な事だから、カイやソラの意見も聞いてから返事をしたいって思ったんだよ」


「ちょっと考えても良い?」

「だって今はびっくりしちゃって考えられないんだもん」


 ぼくとカイはお父さんにそう返事をした。


 車の中ではテレビアニメの音楽が流れていたんだけど、だれもきいていないみたいだった。いつもなら、いっしょに歌うんだけどな。頭の中はお父さんから聞いたお話でいっぱいになっちゃって、お家に着いたのも気がつかなかった。



 「ただいま」って帰ったお家は、なんだか知らないお家になっちゃったみたいだった。おかしいなあ。朝出た時にはなんにも思わなかったのに。もしかしたら引っ越すかもって聞いただけで、こんな気持ちになるなんて。カイを見たら、カイもなんだかキョロキョロお家を見回してた。


 お正月のおもちで作ったおしるこを食べたカイとぼくだけど、いつもならうれしいあまいおしるこの味が、今日はなんだかちがう気がして、カイもぼくもだまって食べた。そんなぼくたちを見たお母さんが心配そうな顔をして見ていたのは分かったけれど、お父さんがそんなお母さんとグランマに小さな声で何か話しかけていた。きっとぼくたちに話した事を言ってたんじゃないかな。


 おしるこを食べたぼくたちは、二人だけで部屋で話す事にしたんだ。




*つづく*


お読み下さって、ありがとうございます!

明日の10時に後編を公開します(^▽^)(^O^)

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