「さぷらいず」
今日はお父さんのたん生日。そしてお母さんのたん生日。年はちがうけれど、同じ日がたん生日なんて、なんだかふしぎだよね。毎年この日に近い日曜日にみんなでおいわいをするんだ。今年はちょうど日曜日で良かったよ!
「ねえカイ、今年は何にする?」
「そうだなあ。あ、あれもういいんじゃない?」
「あれ? ああ、サツマイモ?」
「うん。おいもを使って何が作れるか、ちいばあちゃんに聞いてみようよ」
ぼくたちの畑もずいぶんさみしくなってきたんだけど、ちびポテトの横にこっそりうえていたサツマイモ。葉っぱがモリモリのびた時は、ちいばあちゃんとカイとぼくたちで、お父さんやお母さんからかくすのが大変だったんだ。だって、びっくりしてもらいたかったんだもん。夏が終わってから、畑に行くのはちいばあちゃんとぼくたちだけになったから、ばれていないと思うんだけど。
ちいばあちゃんとそうだんしたぼくたちは、「スイートポテト」っていうのを作る事にしたんだ。金曜日のほうかごに、ちいばあちゃんと畑に行って、でかポテトとサツマイモをほってきたよ。もうちびポテトじゃあなくなってたジャガイモと、ちょっとひょろひょろなサツマイモをリュックサックにつめて、ヨイショと持ってきたんだけど、けっこう重くてぼくもカイもびっくりしたんだ。
そしてきのう、ちいばあちゃんのお家で教えてもらいながら「スイートポテト」を作ったんだけど、アマアマホコホコで、おいしくできたんだ! お父さんやお母さん、喜んでくれるかな?
ちいばあちゃんは、お料理を作ってくれるんだって。取ってきたジャガイモを使ったサラダと、からあげでもしようかって言ってたよ。お花とケーキはいつもお父さんが買ってくるんだ。お母さんへのプレゼントなんだって。お母さんからは、お父さんの好きなお酒をおくるみたい。リボンのついたハコを見つけて、「これなあに?」って聞いちゃったんだ。そしたら「お父さんにはまだないしょよ」って言ってたお母さん。「もちろんだよ!」ってぼくとカイ。うれしいヒミツってとってもうれしいもんね!
「「お父さん、お母さん。おたん生日、おめでとう!!」」
「これからお手紙を読みます。はじめはカイからお父さんへ」
「お父さん、おたん生日おめでとう。いつもお仕事してくれてありがとう。これからも元気でいてほしいから、あんまりお酒はのまないで、体を大事にしてください。それと、また今度キャッチボールをしてください。カイとソラより」
「ハハハ。ありがとう。そうだなあ、たまにはお酒もゆるしてくれよ? 量は少なくするからさ」
お父さんは頭をゴシゴシしながら、ぼく達を見て笑って言ったんだ。うん。飲みすぎないなら良いよ!
「次にソラからお母さんへの手紙です」
「お母さん、おたん生日おめでとう。いつもおいしいごはんをありがとう。さいきんちょっと太ったみたいだから、これからいっしょに運動しようね。ぼくとカイもいっしょに運動するからね。食べすぎに注意してください。ソラとカイより」
あれえ~? なんでみんな笑っているんだろう。カイもぼくもなんで笑っているのか分からないから、思わず顔を見合わせちゃったよ。まあいっか。太ったなんて書いちゃって、おこられるかなって思ったんだけど、笑ってくれたからいいよね!
それから二人で作ったスイートポテトをプレゼント! ハコを開けたお父さんもお母さんも「すごい!」って喜んでくれたんだ! 「うちの畑のサツマイモだよ!」って言ったら、「へえー」なんてびっくりしてたけど、なんでかニヤニヤしてたんだよねえ。あれ? ばれちゃってたのかな? でもいいや。作ったスイートポテトにはびっくりしてくれたもん。
「「やったね!!」」
ぼくたちはちいばあちゃんとハイタッチ。ちいばあちゃんが作ったおいしいお料理を食べて、お父さんが買ってきたケーキを食べて、ぼくたちが作ったスイートポテトも食べたらおなかいっぱい。
「「苦しい~!!」」
でもね、みんなニコニコしてたから、すごくうれしくなっちゃった。
使ったお皿を洗ったのはカイとぼく。喜んでくれて良かったねってカイと話しながら、お皿をふいて。これで今日のおたん生日会も終わりだと思ったんだけど。
「カイ、ソラ。今日はありがとう! 二人に大事な話があるんだ」
お父さんがまじめな顔をしてたから、ぼくたちはドキドキした。なんだろう。
「……実はな、お母さんは太ったんじゃないんだ」
ここまで言ったお父さんは、なんでかお母さんと顔を見合わせ、ちいばあちゃんの顔も見て、ニヤッと笑ってた。お母さんやちいばあちゃんまでクスクス笑ってるし。
「ゴホン。ええと、お母さんのおなかには、お肉じゃなくて、赤ちゃんがいるんだよ!」
赤ちゃん!? 赤ちゃんって、赤ちゃん!? 見えないけど赤ちゃん?
ぼくもカイもポカ~ンと口を開けちゃった。ええと、ええと。
「「赤ちゃん!?」」
「そうよ! 春には二人ともお兄ちゃんになるの!」
お母さんはポコッとしたおなかをなでながら、ニコニコして言ったんだ。
「「お兄ちゃん!?」」
「そうだぞ! これからお母さんのおなかはもっともっと大きくなっちゃうから、二人ともお手伝いしっかりたのんだぞ!」
「「もちろん!!」」
うわあ~! うわあ~!! うわわわぁ~!!! どうしよう。ドキドキが止まらない。
「カイ~! 赤ちゃんだって!」
「う、うん。 お兄ちゃんだってさ、ソラ!」
ぼくはカイにだきついちゃった。カイもドキドキしてるみたいで、二人分のドキドキがどんどんふえて、どんどん上ってきて、二人いっしょにさけんじゃった!
「「ありがとう!! 空海さん!!」」
お父さんもお母さんもちいばあちゃんも、そんなぼくたちを、ポカンとして見てたんだ。
*「さぷらいず」おわり*
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