「カガミよカガミ」
「行くよ、カイ」
「行こう、ソラ」
おふろあがりのポカポカした体におそろいのパジャマを着て、じゅんびのできあがり。
土曜日は、朝ぼくたちがねている間にお仕事に行って、ねちゃったあとに帰ってくるから、ちっとも会えないお父さんがいる日なんだ。だから土曜日の夜は、ぼくたちの一週間分の発表会をするんだよ。
くらくなってから、こっそりカーテンをあけたとき、まどがカガミみたいになるでしょ? そこにうつったぼくたちを見たときこれだ! って思ったんだ。それからずっと毎日ソラと二人でいっぱい練習したからさ、バッチリさ。
ぼくたちはふたごだから、ほかの人にわかるように、いつもはぼくが緑の服、ソラは青い服を着てるんだけど、パジャマだけはおそろいなんだ。うれしいよね、おそろい。今日の発表会はおそろいじゃないとだめだったからさ、パジャマがおそろいで本当によかったよ。
でもね、どうしてかお父さんやお母さんには、おそろいを着ていても、どっちがぼくでどっちがソラかわかるんだって。すごいよね。
リビングに着いたぼくたちを待っていたのは、ソファーにすわったお父さんとお母さん。ちゃんと発表会をまっててくれて、
「今日はなにかな~」
だって。ぼくとソラは顔を合わせてしんこきゅう。それからおじぎを一つして、いよいよはじめるよ。
「ソラと」
「カイの」
「「カガミよカガミ!」」
ぼくたちは、アニメの歌を歌いながら向かい合って、同じように動いたんだ。カガミを見ながら一人の人がおどっているように、ぼくの右手ソラの左手、ぼくの右足ソラの左足、ってね。
これね、けっこうたいへんだった。ソラが歌を歌おうよって言ってくれてよかったよ。歌に合わせておどればいいから、ぼくが右、右、ソラが左、左って言ってる時よりも合わせるのがらくちんになったんだ。
さあ、あとはクルッと回って決めポーズ。
「わっはっはっは!」
あれれ? ここは、はく手をくれるんじゃないの? ぼくとソラは二人とも、こしに手を当てて、おこってるよポーズをしたんだ。だって、お父さんってば、なみだが出るほど笑ってるんだもん。お母さんも口をかくしてたって、笑ってるの知ってるんだからね。ようやく笑っているのをやめたお父さんが、ぼくたちに言ったんだ。
「ゴメン、ゴメン、だってカイとソラ最後の最後で回るところが反対になってて、わっはっはっは!」
ぼくたちは、笑ってるお父さんとお母さんに向かって、人差し指を向けて声を合わせて言ったんだ。
「「次こそばい返しだ!」」
ぼくたちのへやにもどって、2だんベッドにねころんで、上のソラとこっそり笑ったんだ。
「作せん、だいせいこう!」
「うん。お父さん笑ってくれてよかったよね」
「お母さんも。お仕事ってつかれるもんね!」
*カガミよカガミおわり*