表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カイとソラ  作者: 神 雪
19/27

「10月終わりの一日は」

「「トリック オア トリート!!」」


「わあ! ああ、びっくりした! なんだい、これ。きもだめしにはおそいんじゃあないかい?」


「「びっくりした? やったね!! 作せん大せいこう!!」」




 十月になって、風が冷たくなってきたよ。葉っぱもね、だんだんと黄色っぽくなってきてさ、秋だねえってソラと二人でなんだかしみじみしちゃったよ。そろそろドングリも落ちてるかな? うちの近くの公園には、ドングリがなる木がないんだよね。今度、大きな公園まで行って、ひろってこようね、ソラ。リスとかいたら取られちゃうけど。あの公園、カラスしか見ないんだよね。いたらいいのに。リスがドングリほおばってるとこ見てみたいなあ。


 そうそう、運動会も終わったよ! ぼくもソラも、かけっこで二位だったんだ。もうちょっとで一位だったんだけど。来年はぜったい一位を取るんだ! でもさ、今年は別に走ったけど、いっしょに走る事になったらどうなるんだろう。負けたくないなあ。だってぼくの方がほんのちょっぴりお兄ちゃんなんだもん。


「いくらソラにだって、負けられないものはあるんだよ」


 って、ソラに言ったらさ、ソラってば


「じゃあぼくは、理科と国語は負けないもん!」


 なんて言ってた。まあね、ぼくは社会や算数の方がすきだけど。それよりも体育がすきなんだけど。だからちょっぴりくやしい運動会だったんだ。ひさしぶりのおべんとうは、すんごくおいしかったけど。タコさんウインナーやからあげ。それとおいなりさん。いつもきゅう食だから、おべんとうって特別って感じがするよね。ソラと二人で、おべんとう作ってるお母さんの後ろで思わずおどっちゃったよ。お母さん「朝からうるさい!」なんておこってたけどさ、秋って運動会や遠足があるから、楽しくなっちゃうよね。


 それとこの間、やきゅうのチームにも入ってね、せ番ごうはまだないけれど、いいにおいのするグローブもつやつやのバットもぼくの宝物なんだ。ソラはやきゅうはやらないけど、今度ちいばあちゃんにテニスを教えてもらうんだって言ってたよ。ちいばあちゃんったら、「ばあちゃんの後ろでたまひろいするのはカイだからね! キャッチボールの練習さ!」だってさ。たのむよ、ソラ。あんまり遠くに飛ばさないでね!



 運動会が終わっちゃって、リビングのソファーでソラと二人でゴロゴロしてた時だった。台所で夕ごはんの用意をしてたお母さんが、深緑色したカボチャを持ってぼく達を見て言ったんだ。


「そういえば、もうすぐハロウィンねえ」


「「なあに? それ」」


「お母さんもよく知らないんだけどね? 外国の行事だったかな。子ども達がオバケやようかいのかっこうをして、お家を回って"トリック オア トリート"って言うの」


「「トリック オア トリート?」」


「うん。なんだっけ。ええと"おかしをくれなきゃ、いたずらするぞ"だったかな」


「「へえ~!!」」


 ぼくもソラもワクワクしたよ! 商店がいに顔があるへんてこなカボチャがいっぱいあったけど、これもハロウィンのなんだって。おかしをくれなきゃいたずらなんて、いつもだったら「正座のけい」だもんね! おこられないで、いたずらできるなんて、すごいよね!


「ねえ、ソラ。だれをおどろかせちゃおうか?」


「お母さんは知ってるから、お父さん? でもなあ~、お母さんから聞いちゃうよね? じゃあやっぱり」


「「ちいばあちゃん!!」」



 ぼくたちは、お母さんやお父さんにも手伝ってもらいながら、ハロウィンオバケになっちゃおうって、じゅんびを始めたんだ。


 黒い画用紙で作ったぼうし(シルクハットって言うんだって)に、ムラサキ色したふろしきのマント。マントに黒い画用紙で作ったコウモリをくっつけて、ぼうしにもお父さんが細いハリガネでコウモリをくっつけてくれた。あとはお母さんの黒いシャツとスパッツ。ちょっと大きかったけどさ、他に黒い服がなかったんだもん。こうしてぼくは"きゅうけつき"っていうのになっちゃった! あっ、上のくちびるにテープで下向きに白いおり紙のキバもつけたよ。すぐに落ちちゃうから、つけてからはあんまりしゃべれないんだけど。


 ソラはね、シーツをかぶって、目だけ出してね、白い服はお父さんのシャツ。やっぱり大きかったけど、たら~んってのばしたまんま、「うらめしや~!」って言えばいいって、お父さんが言ってたんだ。目のところをくりぬいて、その下にデッカイ口を書いたらできあがり! なんだかカワイイオバケになったソラ。


 おかしをもらえなかった時のいたずらもちゃんと考えたんだ。お母さんにおけしょう道具をかりてね、ちいばあちゃんをオシャレにしちゃおうって事になったんだ。始めはくすぐろうかとか、チョコレートだらけにしちゃおうかとかって考えたんだけどね、チョコレートなんてつけたら


「お前達! 食べ物をそまつにするんじゃないよ! そこに正座しなさい!」


 なんてぜったいに言われちゃいそうだもん。くすぐるのだって、やり返されそうだしさ。それでソラオバケの口を書いてる時に思いついたんだよ。思わずソラとハモっちゃった。


「「おけしょう!!」」




 でもね、ちいばあちゃんをびっくりさせるのは大せいこうだったけど、ちいばあちゃんちって、おかしがいっぱいあるんだよ。ぼくもソラも、持てないくらいのおかしをもらっちゃってさ、いたずらのおけしょうはできなかったんだ。


 ちょっぴりガッカリだったけど、ちいばあちゃんを家まで連れてきてね、ハロウィンパーティーをしたんだよ! カボチャに入ったカボチャスープにカボチャコロッケ、それにカボチャサラダ。おまけにカボチャクッキーまであったんだよ。


「「しばらくカボチャは見たくない!!」」


 お父さんもお母さんもちいばあちゃんもみんなゲラゲラ笑ってね、とっても楽しい夜だったよ!



「「ハッピー ハロウィン♪」」


*「10月終わりの一日は」 おしまい*

お読み下さってありがとうございました!

楽しいハロウィンを♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ