「かけ足の夏休み」
今月の最終話です。
「楽しかったなあ~。また会いたいなあ~。みんな元気かなあ~」
ぼくはひいおばあさんの家に行った時の事を思い出してたんだ。
「ホントにね~。そうそうカイ、スイカわりできたじゃん! すごかったよね、あのスイカ畑! 井戸水で冷やしたスイカ、おいしかったねえ。種のとばしっこなんて、家じゃあできないもんね」
「おいしかったよねえ~。それにさ、お兄ちゃんたち、やさしかったし、マキちゃんも小さくてかわいかったし」
「お兄ちゃんたち、ケン玉上手かったよね! タクマもビックリしてたのが、なんだかおかしかったよ! 知らなかったのかな」
「はああ~。なんで楽しい事って、あっという間に終わっちゃうんだろう」
ひいおばあさんのお家から帰ってきたぼくたちだけど、終わらなかった自由けんきゅうやったり、お父さんとプールに行ったり。畑の野菜を取り終わる頃にはぼくたち二人とも日焼けして真っ黒だったよ。
自由けんきゅうは、ぼくが海で見つけた生き物のお話、ソラはひいおばあさんのお家で聞いたお米のお話を書いたんだよ。お米が育つまでと、育ってからお店で買うまでのお話を、おじさんに教えてもらったんだ。
だからもうこれで宿だいも終わりって思ってたのに!
「ねえソラ、できた?」
「もうちょっと。カイは?」
「ぼくもあと少しかな~」
今ぼくたちは、わすれてた「読書かんそう文」を書いているんだけど、なんでわすれてたんだろう。夏休みさいごの一日は、たっくさん遊ぼうって思ってたのにさ。同じマンションのたつや君をさそいに行ったら、
「ゴメン! かんそう文わすれててさ」
って言われて思い出したソラとぼく。あわてて帰って本だなを見て、本をえらんで、さっき読み終わって、書いてるところ。
『すごくおもしろかったです』
だけじゃいけないのかな。ええと、「どこがどんな風におもしろかったかも書いて下さい」ってプリントに書いてあるじゃん。全部おもしろかったじゃあダメだよね~。ソラはちがう本をえらんだから、教えてくれないだろうな~。こういうのソラの方がとくいなんだけどなあ~。
「「終わった~!!」」
あれ? もう空が赤いよ? えええ、これで夏休み終わっちゃったの?
ぼくもソラもやっと書き終わったと思ったら、夕方になっていたんだ。なんだか夏休みが始まった時よりも、夕方になるのが早いと思う。それにね、さっきまどを開けたらね、風がとってもすずしかったんだよ。ひいおばあさんのお家も朝とか夜とかすずしいなって思ったけど、ぼくたちといっしょに風もついてきたのかな。
なんだか終わっちゃったって感じがして、さびしいようなかなしいような、へんてこな気持ちになってきちゃった。
「カイ? ソラ? 終わったの? ちょっとおいで!」
お母さんの声が聞こえて、ぼくたちがリビングに行ってみると……。
「ほらこれ、さっき届いていたのよ!」
って、お母さんがくれたのは、お手紙だった。だれだろう。
「あ、サキちゃんだ!」
「ホントだ~! 早く開けてみて!」
「うん。読むよ! ええっと」
カイ君、ソラ君、お元気ですか。わたしもマキも元気でのこりの夏休みを楽しんでいます。
ひいおばあさんのお家では、なかよくしてくれて、どうもありがとう。
男の子の友だちができて、うれしかったです。
カイ君、おもしろいお話をいっぱいありがとう。わたしもちいばあちゃんに会いたいなあ。いろんな作せんも、おもしろかったです。
ソラ君、教えてもらった本を読んだよ。すごくおもしろかったです。また楽しい本を教えてね。
みんなとバイバイしてから、車の中でちょっと泣いちゃったけど、また会えるよね?
遠くはなれているけれど、二人ともずっとずっと友だちでいてね。
またお手紙を書くからね!
サキより。
「「お母さん、ハガキちょうだい! 二まい!」」
「えっ? 一まいじゃないの?」
「ううん。だってタクマにも書くんだもん!」
「うふふ、すっかり仲よし四人組だわねえ~」
「「また会える?」」
「もちろん! また行きましょうね! お母さんもイトコたちに久しぶりに会えて楽しかったわあ」
「「ぜったいだよ!!」」
*「かけ足の夏休み」おわり*
お読み下さって、本当にありがとうございました!
子供達の夏休みもあと少し。
最後まで沢山の思い出ができますように。
次回は9月の予定です。活動報告にてお知らせいたしますm(__)m