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カイとソラ  作者: 神 雪
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「ひいおばあさんのお家③」

 やっぱりあのはなれにねなきゃいけないのかな~って思ってたけど、男の子は大きい方の家、ーーオモヤって言うんだってーーにみんないっしょに、ならんでねたんだよ。かぶと虫がゴソゴソいってる音が聞こえるなあ~って思ったてたら朝になってた。あれっ? 夜はどこに行っちゃったんだろう。


「お~い! おいてくぞ~!」


 って、おじさんのでっかい声が聞こえて、ぼくたちはビックリしてとび起きた。ちょっと寒いくらいの朝。おじさんについて行ったぼくとカイとタクマ君。サキちゃんはいなかった。ねぼうしたのかな。サキちゃんたち女の子は、はなれにねたみたいだから、起こさなかったのかも。


「おはよう、カイ君、ソラ君」


「カイでいいよ。おはようタクマ君」


「え? じゃあぼくの事もタクマってよんでね。なんだかうれしいな。ユウマ兄ちゃんもお父さんやお母さんもタクなんだもん」


「ぼくもソラってよんで、おはようタクマ」


「タクマもひいおばあさんと住んでるの?」


「ううん。ちょっとはなれた町の方。でもときどき遊びにくるよ」


「いいなあ~。ぼくたちはじめて来たよ、ねえソラ」


「うん。ここって全部大きいよね! お家もたんぼも、空も!」



 そんな事を話しながらおじさんの後ろをついて行ったぼくたち。白っぽかったけしきが、きれいな緑に変わったなあ~と思ったら、周りは全部たんぼになってたんだ。


「「うわあ~!」」


 すごい、すごい!、すごい!! 一面の緑。緑の先っぽには、何かついてるみたい。え? あれがお米なの? おじさんは動きながら、お米のようすを見てるみたいだった。お米たちの上をトンボがスイーっととんでいて、なんだか気持ちよさそうだ。


「うん。いい感じだな。今年も良い米がとれるぞ~!」


「「もうわかるの?」」


「わかるぞ! ほれ、ここがびっしりつまっているだろう?」


「あ、ほんとだ!」


 来た道を戻って、お家の近くまで帰ってきたところは畑になっている。ここは、お家で食べる野菜を植えているんだって。それでもぼくたちの市民のう園よりもずっとずっと大きかった。それにいろんな野菜があるみたい。くだものはないのかな。カイがちょっとざんねんそうな顔をしてる。


「カイ君、ソラ君、タクマ君、ひどい! なんで先に行っちゃうの? いっしょに行くって言ったのに!」


 真っ赤なトマトがいっぱいなっている、その向こうから大きな声がして、ぼくたちはビクっとした。そこには、プンプンとおこってるサキちゃんが、ドーンと立っていたんだ。手には細長い緑のものを持っている。


「おお、サキちゃん起きたかい? ああ、ばあちゃんと来たのか。じゃあオレは帰るから、野菜いっぱいとって来いよ!」


 ええ~! おじさん置いて行かないで~。おこってるサキちゃんは、昨日よりも大きく見えてすごくこわい。


「「「ゴメン!」」」


 もう、ぼくたちはすぐにあやまった。だって、おこってるお母さんみたいにこわい。ううん、お母さんよりもこわそう。ぼくはなんだか学校のそうじの時間を思い出した。カイとほうきで遊んでた時に聞いた女の子の声にそっくりだったんだもん。


「まあまあ、サキちゃん、そのくらいにしておあげ。ほれ、みんなで朝ご飯で食べる野菜さとって」


 助かった~。ぼくたちは、ホッとしてキョロキョロ見回した。あれ? ひいおばあさんの声がしたのに。どこにいるんだろう。まだおこってるみたいなサキちゃんから目をそらして、辺りをさがしてみたら……いた!


 ワサワサとした草のしげみの向こうにしゃがんでた、ひいおばあさん。小さくて見えなかったよ! ひいおばあさんも、サキちゃんと同じ細長い緑を持っている。


「おばあさん、それなあに?」


「アスパラだよ」


「え? これって草じゃないの?」


 草だと思ってたのは、アスパラの葉っぱみたい。そこからニョキニョキ生えてるアスパラ。こんな風に生えるんだ~。あ、あれってナス? ナスって花もムラサキなんだなあ。


「ホントごめん」


「あ、そのカゴ持つよ?」


 野菜ばっかり見ていたぼくがふり返ったら、タクマとカイがサキちゃんをかこんでた。いけない。ぼくも!


「サキちゃん、ごめんね。サキ行っちゃって」


 プッっとだれかがふきだす音がしたと思ったら、タクマとカイ、そしてサキちゃんもつられたみたいに笑い出した。え? なんか変な事、言っちゃった? まじめにあやまったのに。でも、サキちゃんがゆるしてくれたみたいでよかったよ~。



 取り立て野菜たっぷりの朝ごはんをモリモリ食べたぼくたち。今日は、お父さんとサキちゃんたち家族、それとタクマといっしょに、大きな湖や沼を見に行くんだって。


 サキちゃんの家族もぼくたちみたいに遠くから来てるから、ひいおばあさんの家には、なかなか来られないんだって言ってた。みんな近くにいて、会えるなんていいなあ~って思ってたけど、ぼくとカイだけじゃなかったんだね。サキちゃんが朝プンプンとしていたわけが、わかったような気がしたよ。マキちゃんはまだ小さいし、あんまり知らないところで一人はさびしいもんね。



 なんでかお母さんのかわりにタマ姉ちゃんがついて来たけど、向こう側が見えないくらい大きい湖はお日様の光が当たって、キラキラしてすごくきれいだったし、沼も湖みたいだった。おもしろかったのは、沼の水の色が場所がちがうと変わって見えるんだ。こい緑、赤っぽい色、エメラルドグリーン。大きな白鳥の形のボートをヨイショヨイショとこぎながら、ふしぎだよねえ~、でもすごくきれい、なんて話をしたぼくたち。


 色んなところをいっしょに見ているうちに、どんどんなかよくなった気がしたよ。あと少ししかいっしょにいられないなんて、すごくさびしい。でもまだ一日あるもん。さびしくなんてなってるヒマないよね!



 帰り道に行ったお城の近くで、首をふる赤い牛の置物をちいばあちゃんのおみやげに買ったんだ。アカベコって言うんだって。サキちゃんは、赤い小さなふたのついた入れ物を買ってた。宝物を入れるんだって言ってたよ。ぼくとカイとタクマは、タマ姉ちゃんにケン玉を買ってもらったんだ。明日、いっぱい練習しなくちゃ。近くに住んでるけれど、タクマも持ってなかったんだって。おそろいだねってタクマもうれしそうだったよ。



 毎日、こんなにもりだくさんだと楽しいのにね。 ねえカイ!


 さあ、夜はお家たんけんしなくっちゃ。なんかね、四百五十年くらいたってるお家なんだって。ヒミツがいっぱいありそうだよね!


「かくし部屋があるんだよ!」


 って、タクマが言ってたんだよ。小さなドアを開けると、せまいかいだんがあって、立てないくらいの小さなお部屋があったり、台所のところのかいだんは、屋根うら部屋に続いていたり。マモルお兄ちゃんとリョウお兄ちゃんのお部屋の向こうにも小さなお部屋がかくれてるんだって。楽しみだなぁ。


 それにね、明日はみんなでおはかまいりして、そのあとに、スイカ畑に行くんだって! あったよ~。くだもの! それもスイカ! カイってば、バンザイなんて言ってたよ。

 最後の夜は、花火もやるんだって! 庭にある池の大きなきれいなコイがビックリしそうだよねえ。


 そういえばちょっと前まで、トイレって外にあったみたい。お家の中にできて良かったよ! だってすごく真っくらなんだもん。


 星だって、ぼくたちんの家よりもずっとたくさん見えるんだよ。星ってこんなにいっぱいあったんだって、カイとビックリしちゃったよ。カイが「なんだかこわい」なんて言ってたけど、本当に、こわいくらいきれいだったんだ。


 あ~あ。帰りたくないなあ~。ずっと夏休みでもいいのにな。




*「ひいおばあさんのお家」おわり*


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