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カイとソラ  作者: 神 雪
14/27

「ひいおばあさんのお家②」

 ぼくとカイが、ひいおばあさんに会ったのは、着いた日の夕方だった。



 あれからゲームをしたり、これからやろうって事を話したり、ぼくもカイもすごく楽しかったんだ。学校にも友だちがいっぱいいるけれど、学年のちがうお兄ちゃんたちと話したりした事なんてあんまりなかったし、大人じゃないけど、大人の人みたいに見えたり、住んでいるところで言葉がちがってたりするのもおもしろいよね。


「ちがうって、楽しいね!」


 って、カイが言ってたけれど、ぼくもそう思う。学校がちがうと教わってる事もちがったり、学年がちがうとすきなアニメがちがっていたり、本なんかもかん字がいっぱいで、とってもむずかしそうだったし。


 でも、分からない事を教えてくれるお兄ちゃん達は、ものすごくかっこよくって、お兄ちゃんがいるタクマ君はいいなあ~と思ったんだ。タクマ君は、


「ええ? でもさ、双子の方がいつもいっしょだからいいなあって思う」


 うん。いっしょは楽しいけどさ、でもお兄ちゃんは、ぼくたちがどれだけがんばったって、できないもんなあ~。



「カイ、ソラ、ひいおばあさん帰ってきたよ! ちょっとおいで!」


 お母さんがぼくたちをよびにきて、連れて行かれたところは、げんかんからまっすぐの小さなお部屋だった。テレビがあって、ふとんがないコタツがあって、そのむこうに小さなおばあさんがちょこんと座っていたんだ。


 ざぶとんが大きく見えるくらい、小さなおばあさんは、ニコニコしながら


「よおぐきたなあ。カイもソラも大きぐなって。ゆっぐりしてお行き」


「「コンニチハ。ヨロシクオネガイシマス」」


 うわっ。またロボットのふっかつだよ。


 でもさあ、こんな小さなおばあさんが、ゲートボールやっちゃうなんて、ホントかな。なんだか信じられないよ。


「ねえ、おばあさん、ゲートボールやっちゃうって本当?」


 思わず、聞いちゃったぼくに、


「そうだよ。今日は大会だったんだあ。負けちまったけどよお。ぐやしいから、次は勝つよう」


 ひいおばあさんは、すごくかっこよく笑って、


「さあて、少し昼ねさしてくっから。遊んでおいで」


 そう言って立ち上がったひいおばあさんの背中は、ちょっと曲がってて、ますます小さく見えたんだ。


「なんだか、かわいいおばあさん」


 カイが横でつぶやいた。うん。ぼくもそう思った!




 その日の夕ごはんはすごかった。


「ばあちゃん、米寿(べいじゅ)おめでとうございます!!」


 おじさんの大きな声のあとで、ぼくたちもそろって


「「「「おめでとうございます!!!!」」」」」



 今日はひいおばあさんの88回目のおたん生日なんだって。お米っていう字が八十八って書くから米寿だっておじさんが教えてくれたんだけど、ちょっとちがうよね? ケーキがないけどさ、ローソクがいっぱいすぎて、のせられないからかな。でもね、ひいおばあさんはケーキがなくたって、すごくうれしそうだったよ。


 ぼくたちが昼に遊んでいた大きな部屋に、机がいくつもならんでね、大人は大人だけで集まって、お酒を飲んでいたし、ぼくたちはぼくたちで集まって、もりもりご飯を食べたんだ。ここで作ってるお米も野菜もすごくおいしくって、ぼくもカイもはじめておかわりしちゃったくらい。


 そんなぼくたちのようすを、ひいおばあさんは真ん中でニコニコしながら見てて、時々ちょこっと食べながら、いつ見てもニコニコしてたんだよ。やっぱりかわいいなあ。


 そんなぼくのひとり言が聞こえちゃったみたいで、お兄ちゃんや女の子たちが笑ってた。


「ばあちゃんがかわいいって?」


「「うん。だってちっちゃいんだもん」」


 思わずいっしょに言っちゃったぼくとカイ。


「おっ、さすが双子。よくそろうなあ。やっぱり考える事って似てるの?」


「いっしょになること多いよね、ソラ」


「じゃんけんとか、あいこばっかりだしねえ、カイ」


 そこからじゃんけん大会。サキちゃんもやっとぼくたちになれてくれたみたいで、いっしょにじゃんけんしたよ。ぼくとカイがあいこばっかりなのを見て、みんな大声で笑ってた。へんなのかなあ。これがふつうだと思ってたよ。そんなぼくたちをひいおばあさんも大人の人たちも、ニコニコして見てたみたい。あとでお父さんから


「楽しそうだったなあ」


 って、言われちゃった。



 夕ごはんのあと、タクマ君たちに連れていかれたのは、お家のうらにある大きな木がいっぱいあるところだった。秋には、クリやカキがとれるんだって。カイがいいなあ~って、うらやましそうだったよ。


 そうして歩いた先にあったのは、たくさんの木の中でも一番大きい木だった。クヌギって言うんだって。そこに何かいるみたい。そおっと近づいてぼくたちが見たのは


「「あ、かぶと虫!!」」


 お兄ちゃんたちが、ぼくとカイにオスとメスを一ぴきずつつかまえてくれて、その向こうの木にいたクワガタもくれたんだ。夕方、ぼくたちをびっくりさせようって、木にシロップをぬっていたんだって。お兄ちゃんたちは、小さなケースも用意してくれていて、土やかれた葉っぱを入れて、そこにかぶと虫を入れたんだけど、すぐに土の中にもぐっちゃった。はずかしかったのかな。


「「ありがとう!!」」


 はじめて木にいるかぶと虫を見たぼくたちは、うれしくってずっとドキドキが止まらなかった。

 ツヤツヤした体もカッコイイ角も、強そうで、すごくきれいだった。デパートで見たかぶと虫よりもずっと強そうなぼくだけのかぶと虫。大事にするからね。



 男の子だけ集まってねることになったお部屋で、いつまでもかぶと虫がいるケースをながめてるぼくたちに、マモルお兄ちゃんがクスクス笑いながら、


「ほら、もう電気消すぞ! 明日早起きして畑やたんぼに行くんだろう? お休み」


 !! そうだった! 明日はおじさんにくっついてたんぼや畑を見せてもらうんだ。お兄ちゃんたちは、学校で部活っていうのがあるから行けないけど、タクマ君やサキちゃんはいっしょに行くって言ってた。ぼくたちも畑で野菜を作ってるから、すごく楽しみだよ!


「「おやすみなさ~い!!」」


 


*つづく* 

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