「ひいおばあさんのお家①」
今日からまた四話を毎日朝10時に更新します。
「とうちゃ~く!」
「おつかれさま。やっぱり、時間かかったわねえ。ずっとじゅうたいしていたし」
「着かないかもって思ったよ。高速下りてから、空いててよかった。それよりこっちは空気がうまいなあ。久しぶりの長きょり運転だったけど、景色もいいしけっこう楽しかったよ」
「そう? 久しぶりだけど、思いきって来てよかった。ユウちゃんもちょっとのんびりできるといいわね!」
「おい、カイ? ソラ? おまえたち、起きてるんだろう?」
エヘヘ。ばれちゃったよ、カイ! なんで分かっちゃったのかな。
今日ぼくたちは、ひいおばあさんのお家に着いたんだ。きのうの夜に家を出たのに、気がついたら朝になってたんだよ。カイと二人で、ずっと起きていようね! って、言ってたのに。いつねちゃったんだろう。
みんなで車から下りて、う~んと伸びをしたら、にもつを持って、おみやげ持って、さあ行こう。
ひいおばあさんのお家は、たんぼや畑の中をずっと走ったところにあった。お母さんが、「この辺のたんぼや畑はひいおばあさんの所のなのよ」って言ってたけど、となりのお家が見えないじゃん。マンションしか住んだ事がないぼくとカイは、それだけでびっくりした。
緑の中にぽつんとある赤い屋根。うわあ~。大きいお家。それにあれ池? お家に池? なんか泳いでるのかな。あ、向こうにも三つ家があったよ。え? あれ家じゃないの? くら? くらって何? 倉庫みたいなもの? だって家みたいに大きいよ? それとなや? なやって? 農家だから、たんぼや畑で使う道具が置いてあるんだって。じゃあ、もう一つは? ふう~ん、はなれって言うんだね。え? あそこにとまるの? ええ~。ぼくたちあの大きなお家がいいなあ。いっぱいたんけんできるじゃん。
「お、アイちゃん良く来たな! ユウ君も運転つかれただろう? ほら入った、入った。そこの双子! あいかわらずそっくりだなぁ! おまえたちくらいのが沢山来てるから、なかよく遊べよ?」
「おじさん、ごぶさたしてます。しばらくおせわになりますね。あ、これみなさんでどうぞ!」
「なんだなんだ、アイちゃん。あのおてんばアイちゃんが、すっかりお母さんだなぁ。気をつかわねえでよかったのに。ありがとな。おれんとこの孫が、双子と同じ年頃だし、もうちっと大きいのもいるから、ほっといても平気だよ」
あれ。お父さんの後ろにかくれてたのに。だってなんだか、はずかしくなっちゃったんだもん。
「お久しぶりです。おせわになります。ほら、おまえたちもごあいさつしなさい」
お父さんにひょいと前に出されたぼくとカイ。
「「コンニチワ。ヨロシクオネガイシマス」」
あらら。ロボットみたいになっちゃった。おじさんは、「ガッハッハ」って大きな声で笑って、ガシガシとぼくたちの頭をなでてたけど……ちょっといたい。
大きなげんかんを入ったところに、女の子が二人立っていた。ぼくたちと同じくらいの子と、もっと小さいようち園くらいの子。その女の子の向こうにもだれかいるみたい。たくさんの人の声が聞こえてくる。大人の男の人の声や、お母さんみたいな女の人の声、ぼくたちみたいな声もしてる。
「おじゃまします」
「こんにちは」
「「オジャマシマス」」
まだ、ちょっとロボットみたいなぼくとカイ。女の子たちもだまったままだし、べつにいいよね? なんだかドキドキして、でもすごく楽しみで。げんかんを上がって、右側の部屋は、とても大きなたたみの部屋だった。大人の人が何人もいて、みんなでお酒をのんでるみたい。
「アイ姉、久しぶり~。ユウ兄さんも座って、座って。ゴメンね~。もう始めちゃったよ」
あ、このおばちゃんは知ってる。お母さんのいとこなんだって。おばちゃんって言うとおこるんだよ。お母さんよりも若いんだから、お姉さんとよびなさい! って、前に言ってたっけ。
「カイ、ソラ、おぼえてる? タマ姉ちゃんだよ~。おくに兄さんたちのところ子たちのがいるから遊んでおいで」
「それよりタマちゃん、おばあちゃんは?」
「ん? なんかねえ、ゲートボールに行っちゃったんだって。元気よねえ~」
うわあ~。ちいばあちゃんみたいなおばあさんなのかな。ぼくとカイは顔を見合わせてニヤッとしちゃった。
これから三日間。どんな楽しい日がまっているんだろう。よその家におとまりなんてはじめてだよ。ちいばあちゃんちはあるけどさ、おとなりだもん。
ワクワクしながら、おくの部屋へと行ったぼくとカイ。そこにはさっきの女の子たちと、大きなお兄ちゃんが三人、そしてぼくと同じくらいの男の子が一人。
さっきの部屋が小さく見えるくらい、今まで見たこともないような広い部屋で、ゴロゴロとねそべって、ゲームをしていたんだ。
一番大きなお兄ちゃんが立ち上がって、ぼくたちを見て声をかけてくれた。
「カイとソラ? 本当に双子なんだ。そっくりだなぁ。え? 青がソラで、緑がカイだね! りょうかい。いっしょにゲームやらない? ぼくはマモル。こっちがユウマ。それとリョウ。ぼくたちは、中学生だよ。よろしくな! それから君たちと同じ学年のタクマ。サキちゃんとマキちゃんには会ったでしょ? え、名前初めて知ったの? てれたのかな。まあ、いいや。人生ゲーム知ってる? じゃあやろう!」
うわあ~。中学生のお兄ちゃんが三人も。タクマ君はいっしょかあ。サキちゃんって子もそうかな。女の子ってよくわからないんだよね。さっきからずっとだまったまんまだし。なんでだろう。マキちゃんは、ニコニコしてるのにさ。でもなかよくなれたらいいなあ~。ね、カイ!
*つづく*
【「ひいおばあさんのお家」限定登場人物】
ひいおばあさん→お母さんの母方のおばあさん。
おじさん→お母さんのお母さんのお兄さん。双子には大伯父さん。農家。
タマ姉ちゃん→おじさんの末娘。本名は珠子。29才、独身。バリバリのキャリアウーマン。
マモルとリョウ→おじさんの長男(農家を継いでいる)の息子達。中三と中一の兄弟。
ユウマとタクマ→おじさんの次男(役所勤め)の息子達。中三と小学生の兄弟。マモル達と仲がいい。
サキとマキ→おじさんの弟(故人)の一人息子の子供達。小学生と幼稚園年少さんの姉妹。
ちなみにお母さんのお母さん、つまり母方のおばあちゃんはおじいちゃんと海外在住。おじいちゃんはまだ現役で仕事をしている。お母さんにはお兄さんがいるが、独身でこれまた海外駐在中の為、滅多に会えない。今回三人とも休暇が取れず帰国できなかった。
……という、裏話があったりします(笑)