【小説技術】140字小説の冒頭技法
■はじめに
冒頭は難しい。
小説というのは、読者が作品に対して何の興味もないところから始めないといけない。
言ってみれば、自己紹介の第一印象だけで自分を好きになってもらわないといけないようなもの。
自己紹介とは何の自己紹介かって、作品の紹介だ。
ということは好印象を与えながら同時に、この物語が何に関するストーリーなのか。テーマを提示しつつ、この後の展開へ読み進めたくなるような「謎」も提示しないといけない。
小説における基本にして、高難度テクニック、それが冒頭だ。
こんなの素人にやれといっても、そうそう出来るものではない。なので小説を書くハードルが高くなってしまう。だからテンプレートが便利に使われるわけだけど。
さらにこれが140字小説という字数制限の中でやるとしたら。冒頭は一文か二文、長くて三文。
たったそれだけの最短で、上記のような紹介をやらないといけない。
だから無駄は書けない。
セリフやアクションから入るのは贅沢。プロローグのポエムなんて、まず無理だ。
そんな無茶な「140字小説の冒頭」をどう書くか。ちょっとした提案をしてみたい。
■冒頭の基礎
冒頭でよく使う手が5W1Hだ。
何を、誰が、いつ、どこで、なぜ、どのように。
これだけ書けば、まず間違いない。だが140字小説では、ちょっと長すぎる。
そもそも「場面」というのは、時間、空間、出来事、登場人物の四要素から成る。
これだけ書けば、冒頭の場面として大丈夫だろう。140字小説でもこれが使えるかもしれない。
だがボクは他に、冒頭として使えそうな基準を見つけた。
■ネタの選別法
参考となった本は枡田省司著『ゲームデザイン脳』だ。
この中に「見込みのありそうなネタの選別法」というのがある。
それは「○○が××したら、楽しいと思わないか?」と自問自答することだそうだ。
例えば「自分の子孫がどうなるか見てみたくないか?」という問いが、あの名作ゲームの元になっているという。
この「xがyならどうなる?」という問いを、そのまま140字小説の冒頭に置いてしまえば良いのではないか?
とボクは思いついた。
■作例
実際に「xがyならどうなる?」という形での冒頭を作ったらどうなるか。いくつか考えてみた。
《例a》古くから続く王国は滅びようとしていた。
《例b》私は突然、佐藤君に告白されてしまった。
《例c》月の夜にだけ咲く花がある。
書かれているのは結局、作品の根本コンセプトだ。だから、そりゃあ「何の話か」が読者に伝わりやすいのは当然。
経験上、140字小説ではこのくらい親切にしておかないと、伝わらないもの。
可読性は高いに越したことはない。
また作品コンセプトが明確になった分、オチやすくもなるはずだ。
《例a》いや王国は滅ぼされるまでもなく、内部の旧弊で瓦解しかけていた。
《例b》そのこと、今から言うの!? アンタも突然だねえ。
《例c》花の咲く夜は、月も満開に輝くのだった。
ただしそのためには、作品のコンセプトを「xがyならどうなる?」という一文にまとめる、要約力が必要になる。
結局は基礎力次第というわけだ。そこは各自で映画の分析でもして頑張ってくれ。
■まとめ
10字ホラーなど、字数制限のあるショートショートでは、一語に複数の意味を込めるのは基本となる。それは俳句や短句といった領域の手法に近いだろう。
同じように、140字小説の冒頭にどれだけの意味が込められるかは、作品の出来を左右すると言って良い。
この技法、あえて使わないという手もあるだろうし。もちろん長編小説の冒頭でも使えるはずだ。
以上はしょせん、たくさんある冒頭技法の一つに過ぎない。
良くいますよね。「自分はテンプレ小説なんかに頼らない」みたいな人。しかし「分かりやすいテンプレ」に頼らないのなら、その分を自分の技量によって補わなくてはならないだろう。
そう、冒頭の自己紹介力がないと、脱テンプレ作品を書いたって、わけわからん作品になって終わりになる、ということだ。
皆さんもこれを一例として、冒頭を意識してゆこう。




