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柱のない家  作者: B型Rh+
2/3

謎の関西人、神田凌。

 作者は関東人なので、関西人に妙なイメージと憧れをもっているかも知れません。多少は目を瞑ってやって下さいな。

 入学式。気がつけば、一時間以上座っているみたいだが心ここにあらずの俺にとってはあっという間だった。

「あいつ、大丈夫かな」

 式中考えていたのはもちろん健太郎のことだ。あいつはその後、公立高校の二次募集に応募してなんとか藤崎西高校(ふじさきにし)に合格した。それ自体はよいことで、野球部も有名で公立強豪校という評価を得ている。しかし、心配なのは性格による問題である。小学校からあいつを知っている俺は耐性ができて、かなりわがままだけど本質的な悪人ではない憎めないやつ、という境地に至ったが、少しでも荒っぽい先輩がいればすぐにトラブルを起こすだろう。

「暴力事件で退部。とか勘弁してくれよ……」

 と呟いて解散、クラスに戻るように。という指示に従う。

 



 そう、高校初日から呆けている訳にはいかない。剛とは別れたが、クラスに乗り込んでやろうじゃないか。野球部を作るにはあと7人必要なのだから。

 四十人弱が詰め込まれる教室には入学式を終えた生徒が流れ込んでいた。出席番号に合わせてそれぞれの席に座ろうとする中、ひとり異彩を放つ男が、いた。

「よろしくな。俺は神田凌や。大阪からきたんやで~」

 坊主頭のそいつは周りの人に無差別で関西弁攻撃を行っている。悲しきかな、神奈川県民たちはそれを防御する術を持たなかったようだ。が、ここで助け舟がきた。担任と思われる小柄な若い女性が入ってきたことで立っていた少数の生徒が席に着いた。最後にあの関西弁男が余った席に腰を下ろしたところで先生は自己紹介を始めた。

「はーい、こんにちは。私はこのクラスの担任の日暮里帆(ひぐれりほ)です。一年間よろしくね」 定型文を語り終えた日暮先生は、安堵しているように見えた。よく見ると結構美人さんだ。美しい、というよりかわいいの方が似合うタイプだが。

「せんせー、彼氏おんのー?」

 初対面で生徒が先生にまず聞かないセリフを関西弁男が聞く。

「ご想像にお任せします」

……またしても常套句で返す。練習の痕が伺えるな。なんだか意味もなく残念だが。

「んじゃ歳は?」

「ヒミツ」

「スリーサイズは?」

「ヒミツ」

 なんとも詮なき会話である。しかし関西弁男は諦めない。

「身長は?」

「155センチ」

「血液型は?」

「O型」

 どうやら方針を変えて答えられそうなものに絞ったらしい。そして答えられるものを準備している日暮女史……

「……で、歳は?」

「24」

……………………

 笑いは、一拍置いてやってきた。初日のホームルームからこの展開は予想できなかった。こんなに盛り上がることも、担任をテクニカルノックアウトする奴がクラスにいることも。



 日暮先生は一本取られた後切り替えて、皆さんも自己紹介しましょう。と提案した。何故か初日からまとまったクラスは、流れるようにそのイベントを受け入れた。

 先生は名前、出身中、趣味、一言あれば。というお題をだした。それに則り、地味な自己紹介が続く。やがて、クラスが意味もなく期待するあの男に番が回る。

「神田凌。カミサマの神に田んぼの田、それに凌ぐ(しのぐ)で神田凌や。大阪府立境(さかい)中学校出身。趣味は野球や。んで一言な。美人教師が担任でマジ感動したわ」

 野球、といったな。確かに。これなら俺の対応も変わってくるというものだ。そして俺の順番。

「佐野恭輔。横山市立矢島中学校出身。野球部作るから経験者は気軽に声をかけてくれ」

 短い演説だったが効果はてきめんだった。関西弁男改め神田は俺に興味を持ったようだった。


「佐野クンやっけ?野球部つくるんやろ。俺も入れてーな」

 放課後そう言ってきた。まあ狙い通りだ。

「ああ頼む。人数が集まるかもまだわからないからな」

「そうなんや~。ま、俺には期待してくれてええで」

 お喋りで実のない男だが、野球人としてはどうなのだろう。本人が期待しろと言っているのだからそうしてみるのもまた一興だろう。

「また明日」

 剛をクラスに待たせていたので、神田に別れを告げた。

「ほなな」


 


 剛のクラスには神田を上回る驚きの人物が待っていることを俺はまだ知らない。





 


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