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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
2、カラーを求めて
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合流





 集落を離れたルーンたちは、港町を抜け、シオンたちのいる街へとたどり着いた。


 空はすっかり陽が落ち、街には夜の気配が満ちている。

 長旅の疲れもあり、彼女たちは迷うことなく宿屋へ足を運んだ。

 扉を開けて中に入ると、カウンターに立っていた女性がすぐにこちらに気づき、にこやかに微笑む。


「いらっしゃいませ」


 ルーンは一歩進み出て、落ち着いた声で尋ねた。


「シオンという男性を待たせているのだけど、ここに泊まっているかしら?」


 女性は手元の宿帳に目を落とし、指でなぞるように確認する。

 そして、少ししてからこくりと頷いた。


「はい、二階のお部屋でご宿泊ですよ」


 部屋の場所を教えてもらい、ルーンたちは礼を言って階段を上がった。

 二階の廊下を進み、目的の部屋の前でルーンは軽く扉を叩く。


「はーい」


 中から聞こえてきたのは、聞き慣れたフィラーラの声だった。


 ガチャリと扉が開く。

 扉の先にいたルーンの姿を見ると、フィラーラはぱっと表情を明るくする。


「ルーン!」

「!」


 勢いよく抱きつかれ、ルーンはわずかに目を丸くした。

 部屋に足を踏み入れると、ベッドに腰掛けていたジェイクがこちらを見て口を開く。


「お。やっと戻ってきたか」


 その言葉に軽く頷きながら、ルーンとフィルは室内を見回す。


 いつもと変わらぬメンバーだけど、ひとりだけ彼女たちの知らない人物がいた。

 テーブルのそばにはシオン――そして、そこには見知らぬドワーフの少年がいる。

 少年はテーブルに置かれた赤い鉱石をじっと見つめ、何やら細かな作業をしていた。


「誰?」


 ルーンとフィルが同時に首を傾げる。


「ガルシア」


 フィラーラはそれだけを答えた。

 しかし、名前だけでは当然ながら疑問は解決しない。


 二人がさらに問いかけようとした、そのとき――


「できたー!!」


 ガルシアが勢いよく声を上げた。


 手にしていた道具を鉱石のそばに置き、彼は赤い鉱石を両手で持ち上げて食い入るように見つめ、満足げに頷く。


「うん!我ながら完璧なんじゃないかな!……どう?」


 そう言ってシオンに鉱石を差し出す。


「……ああ。これなら渡しても問題ないだろうな」


 シオンは淡々と答え、労わるようにガルシアの肩を軽く叩いた。

 その様子を見て、ルーンとフィルは顔を見合わせる。


 説明が欲しい――そう口にすると、ジェイクが肩を竦め、ガルシアと出会った経緯を語り始めた。


 かくかくしかじか。


 話を聞くにつれ、二人の表情が少しずつ変わっていく。

 どうやら、自分たちがいない間にシオンたちも相当な騒動に巻き込まれていたらしい。


「…………」


 事情を理解したルーンは、静かにテーブルへ歩み寄った。

 ガルシアが手に持つものがひとつ。そしてテーブルの上には、もう二つの赤い鉱石が並んでいる。


 置かれている二つは、どちらもわずかに歪な形をしていた。

 ルーンはそのうちの一つを手に取り、じっと見つめる。


「(寸分違わぬ偽物を作って、それを騎士団に渡す……)」


 果たして、うまくいくのだろうか。

 胸の奥に小さな不安が芽生える。


 こんなことをしても――ガルシアは、また捕まってしまうのではないか。

 その懸念を口にすると、シオンも静かに頷いた。


「ああ。俺もそれは考えていた」


 低い声が返る。


「たとえ鉱石を渡しても、もう狙われないという保証はない。……渡した直後に拘束される可能性もある」


 部屋の空気が、わずかに張り詰めた。


「だから――」


 ジェイクが続ける。


 だから、騎士団に鉱石を届けに行く役目はシオンと自分が引き受け、ガルシアはフィラーラと共に宿に残り、ここで帰りを待つ。


「それ、大丈夫なの?代わりに貴方たちが捕まらないかしら?」


 眉尻を下げて尋ねると、シオンは迷いなく頷いた。


「問題ない」


 短く、しかし確かな声だった。

 その横で、ジェイクが軽い調子で口を挟む。


「そんなわけで、ホワイトのもとへ行くのは王都に行ったあとだ。問題ないよな?」


 ルーンは少しだけ考え、やがて静かに頷く。


「……ええ、それは大丈夫よ」


 その返答に、ガルシアが申し訳なさそうに眉を下げた。


「……オレのために、ごめん」


 すると、フィラーラがにっと笑う。


「困った時、お互い様」


 その言葉に、張りつめていた空気がほんの少しだけ和らいだ。



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