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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
1,三人の旅
6/9

町の外は魔獣だらけ





 二時間後。

 町の出入り口で、三人は合流した。


 先に着いていたフィルとルーンの前に、シオンが姿を現す。背にはいつもより少し軽そうな荷物袋を担いでいた。


「ほら。新しい武器だ」


 シオンはそう言って、袋の中から武具を取り出す。


 剣と盾、そしてブレスレット。

 盾を渡され、フィルはそれをまじまじと見つめた。


「……今までのより、少し軽い?」

「ああ。剣と盾は、今使っているものよりも少し軽い。ブレスレットは……ルーン用だ」


 そう言って、ブレスレットを彼女の方へ差し出す。

 ダークエルフは剣や弓といった物理武器はほとんど使わず、魔法を主体とした戦闘を得意とする種族だと、シオンは知識として記憶していた。

 ブレスレットに嵌め込まれた宝石は、魔法攻撃力をわずかに上昇させる効果を持つ。最安値で売られていたものだったが、それでも実用には十分だった。


「ありがとう」


 ルーンは受け取り、静かに手首にはめる。


 次に、フィルが荷物袋を開けた。

 中に入っていたのは、紙袋に詰められたパンと、少量の果物だけ。

 それを見た瞬間、シオンの眉間に皺が寄る。


「……何だ、これは?」


 予想通りの反応に、フィルは眉尻を下げた。


「その……ルーンが、超偏食でして」


 事情を説明すると、シオンは紙袋の中を覗き込み、しばらく黙ってパンを見つめていた。


 軽く睨まれる覚悟をしていたフィルだったが――


「そうか」


 と、シオンはそれだけ言って、紙袋をフィルに返した。

 フィルは、ほっと息を吐く。


「(お、怒られないでよかった……!)」


 シオンは感情を表に出すタイプではない。それが冷淡だと誤解され、たまに激昂されることもあるが、実際には違う。

 そうした誤解を、その都度フォローしてきたのがフィルだった。


 そして、三人はもう一度地図を広げ、遺跡の位置を確認する。


「それじゃあ、行きましょう」


 ルーンの言葉にシオンたちは頷き、遺跡を目指して彼女たちは町を後にした。



+


 町の外には、多くの魔獣が生息していた。


 そのほとんどは、こちらから攻撃を仕掛けなければ襲ってこない安全な存在だ。しかし、稀に好戦的な魔獣が混じっていて、そうした個体は問答無用で襲いかかってくる。

 そういった理由から、この世界では探求者に限らず、一般人であっても町の外に出る際は武器の携帯が義務付けられていた。


 町を出てから三十分。

 現在、シオンたちは、まさにその“例外”と遭遇していた。


 前列には、大盾を構えたフィル。

 その背後で、シオンが剣を構える。

 ルーンは少し後ろで、パンの入った紙袋を大事そうに抱えながら、足元に魔法陣を展開していた。


 彼らの前に立ちはだかるのは、狼型の魔獣。


[グルルルルッ]


 牙を剥き出しにし、赤く染まった両眼で三人を睨みつけている。


「この大陸の魔獣は、血気盛んなのね」


 ルーンが静かに言う。


 次の瞬間、彼女の魔法が発動した。

 赤い光がシオンとフィルの身体を包み込む。


 攻撃時の威力を高める補助魔法だ。


「行くぞ!」


 シオンが叫ぶと、先に動いたのはフィルだった。

 盾を構え、地面を蹴る。

 盾の表面が光を帯び、彼はそのまま魔獣に体当たりした。


《シールドアタック》

 ズドン、と鈍い衝撃が走り、魔獣の身体が後方へ吹き飛ばされる。


 だが、それだけで終わる相手ではない。

 魔獣はすぐに体勢を立て直し、前足で地面を蹴って突進してきた。


「シオン!」


 フィルは盾を構えたまま後退し、シオンと入れ替わる。

 その瞬間、ルーンの放った炎の魔法が魔獣に直撃した。


 一瞬、視界を奪われたその隙を逃さず、シオンが剣を振り抜く。


「たあッ!」


 鋭い一閃。

 身体が裂け、次の瞬間、魔獣は霧のようにその場から消え去った。


 シオンは剣に付着した黒い血を一振りして払い、鞘に収める。

 彼の足元に、赤と黒、二枚のコインが落ちた。


「…………」


 シオンはそれを拾い上げ、そのうちの一枚…赤いコインをフィルに渡す。


「フィル」

「おっ、さんきゅー」

「……何、それ?」


 ルーンの頭上に、疑問符が浮かぶ。


 その二枚のコインは、探求者にとって非常に重要なものだった。

 フィルが、簡単に説明する。


「魔獣を倒すと、こういうコインが出るんだ。一枚で金貨二十枚分の価値があって、売れば、かなりの額になるんだよ」

「魔獣を倒して、お金が出てくるの?」

「知らない人からしたら吃驚するよね。オレも、最初見た時仰天したもん」


 魔獣退治は、常に金欠と隣り合わせの探求者にとって、ありがたい収入源だった。中には、それだけを専門にする者も少なくない。


 説明を聞き終え、ルーンはふと考えた。


「…もしかしてだけど、シオンたちもそうなの?」


 尋ねると、二人は揃って首を振った。


「違う」


 コインを荷物袋にしまいながら、シオンが言う。


「魔獣退治だけが目的なら、最初からお前の依頼は受けていない」


 そう言って、彼は先に歩き出した。

 口元を緩ませ、フィルは受け取ったコインをポケットに収める。


「そのコイン、売るの?」

「お金が必要ならね。行こう。遺跡はまだ先だ」

「…………」


 シオンに続き、フィルも再び歩き出す。

 二人の背を見つめて、ルーンは顎に手を添えて考え込んだ。

 魔獣がコインになるなんて、どういう原理なのだろう。


「ルーン!何してんの、おいてくよ!」

「!」


 遠くからフィルの声が聞こえ、ハッとして彼女も走り出す。


 考えるのはやめておこう。



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