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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
2、カラーを求めて
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それは過保護なのか





 森の奥地に、足音が近づく。


 荒れた木々の間を抜け、最初に姿を現したのはリースレッドだった。

 その後ろに、集落の長が続く。


「……どうやら、気配はここで途切れておるの」


 長が低く呟く。

 リースレッドは周囲の惨状を一瞥した。


 抉れた地面。砕けた岩。

 濃く残る魔力の残滓。


「(何だこれは。何があった…?)」


 鋭い視線が森の奥を捉える。


「!」


 そして――見つけた。


 少し離れた場所。

 倒れた少年と、妹・ルーンの姿。


「ル――」


 声を掛けようとして、リースレッドは口を止めた。


 様子が、妙だ。


 フィルは地面に寝かされたまま、片手を伸ばし、その指先はルーンの頬へ。

 そしてルーンは、彼の方へ顔を向け、涙を流している。


「───」


 暗がりの森。二人きり。

 今にも抱き合いそうな距離。


 それだけの情報で、リースレッドの脳裏には一つの仮説が浮かんだ。


 瞬間、彼の姿が掻き消える。


 刹那。

 風を裂く速さで彼らとの距離を詰めた。


「――っ!」


 気配に気づくより早く、リースレッドの手がフィルの胸ぐらを掴み、強引に引き上げる。


「貴様!何をしている!!」


 フィルの身体が宙に浮く。


「……えっ!?」

「兄さん!?」


 ルーンが目を見開く。


 フィルも、何が起きたのかわからず、視界を揺らした。


「っ、え、お、お兄さん!?」

「貴様に兄と呼ばれる筋合いはない!!」


 リースレッドの瞳は怒りに燃えている。


「弱っている振りをして、ルーンに手を出したのか!」

「は?ち、違っ……!」


 力の入らない身体で抗うが、腕に力が入らない。


「に、兄さん!」


 ルーンが慌てて立ち上がる。


「落ち着いて!違うの!フィルは、…えっと、あっ、わ、私を魔獣から守ってくれて、それで…!」

「魔獣から守った…?」


 胸ぐらを掴む手に、さらに力がこもる。


「だからと言って、それが俺の大事な妹に手を出していい理由にはならんだろ!」

「ぐ、……うぅ…」


 フィルの足が、地面から完全に浮いた。


「リースレッド」


 そこで、低く、しかしよく通る声が響く。


 長だ。


 いつの間にか、長はリースレッドのすぐ後ろに立っていて、芯のある声で彼を落ち着かせる。


「手を離せ」

「しかし、長――」

「状況を見ろ」


 静かな一言。

 その声音には逆らえない重みがあった。


「…………」


 リースレッドは息を荒げながら、周囲を見渡す。


 破壊された森。

 残る異様な魔力の痕跡。

 そして、ボロボロの体のフィルと涙を流すルーン。


「……っ」


 そこでようやく、怒りの色がわずかに揺らぐ。

 それでも、簡単には納得できない。


「……本当に、何もなかったのだな?」


 疑うような視線を、フィルへ向ける。

 フィルは苦しそうに咳き込みながら答えた。


「……そんな余裕、……ないです……。余裕あったって、ないです……っ。はなしてください、ぐるじぃ」


 ルーンがリースレッドの腕を掴む。


「本当に違うの。フィルは……私を守ろうとしてくれただけだから…」


 その震える声に、リースレッドは一瞬言葉を失う。


「リースレッド」


 長が、一歩前に出る。

 静かながらも、強い声音。


「過保護もほどほどにせい」

「……」

「ルーンの言葉が真実ならば、この少年がいなければ、もっと被害が出ていた可能性もある」


 リースレッドは歯を食いしばる。

 しばらくの沈黙。


 そして――

 乱暴に、フィルを地面へ下ろした。


「……次に妙な真似をしたら、容赦せん」


 低く告げる。


 フィルは苦笑にもならない表情で、地面に手をついた。


「……げほっ…。き、肝に銘じておきます」


 ルーンはほっと息をつき、再びフィルの側に膝をつく。


「フィル、大丈夫?」

「ああ…なんとか」

「……刻印は…?」

「…もう何ともない。…ブルーテイルのおかげだ」

「きゅうっ」


 リースレッドと長には聞こえないように、小声でルーンとフィルは言葉をかわす。


 リースレッドはその様子を見つめながらも、完全には視線を緩めなかった。




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