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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
プロローグ
3/10

出会い 後編





「ダークエルフ!?」


 相棒さんが目を見開いて叫ぶ。

 ギルドの喧騒が、途端に遠くなった。


「ダークエルフ、また珍しいのが来たな」


 シオンが短く呟く。

 相棒さんの視線は、まだ私から離れない。


「それで、世界を巡って、五つのカラーから“雫”を集める。それをどうする?」


 聞かれて、私は一度、テーブルの下に隠していた手を膝の上で組んだ。

 視線を落とし、静かに言う。


「飲ませるのよ」

「……誰に?」


 問い返され、私は胸元へ視線を向ける。

 少し迷ってから、そっと口を開いた。


「ブルーテイル、…この子に」


 シオンたちになら見せても構わない。

 私は胸元にあるブローチに手を伸ばした。青く光るガラス玉の中で丸くなっていたそれが、微かに身じろぎをする。

 光に包まれて手のひらの上に移動したそれを見せると、相棒さんが息を呑むのがわかった。


「……これ、生き物?」

「ええ」


 両手に乗せたそれを、胸の高さまで持ち上げる。

 淡い青の光が、今にも消えそうに揺れていた。


「カラーから抽出できる雫というのは液体よ。一滴だけでいいの。一滴だけ飲む事ができれば、ブルーテイルの力が一部、蘇る」

「一部?」


 シオンは腕を組んだまま、視線を逸らさない。


「完全に力を戻すためには、五つのカラーすべての雫を飲まなければいけないの。しかも、雫を抽出するには条件があって、順番も決まってる」

「……面倒な話だな」

「ええ、とても」

「ええと、カラーってのは」


 相棒さんが口を挟む。


「世界のどこかにあるっていう、珍しい結晶の事だろ?高値で取り引きされてるって話はよく聞くよ」

「…………」

「んー、と、…レッド、ブルー、グリーン…、あと何があったっけな?」


 指折り数え、相棒さんは頭を悩ませる。

 私はブルーテイルをブローチの中に戻して、息を吐いた。


「レッド、ブルー、グリーン、ホワイト、そしてパープル。カラーは、世界を循環している“色”そのもの。結晶化するのは、ほんの一部で、市場で出回っているカラーだと言い張っているものはすべて、ただの宝石よ」


 二人の反応を見る。

 驚きはあるけれど、まだ半信半疑。


「今、世界のどこかで色の流れが歪んでる。ブルーテイルは、それを感じ取って弱っているの」


 言葉を選ぶ。


「雫を集めないと、この子は死ぬ。……それだけじゃない。放っておけば、いずれ世界もおかしくなって、取り返しのつかない事になるわ」

「世界がおかしく?」

「ブルーテイルと世界は繋がっている。この子が死ねば、世界も死ぬ。いわば、この子は世界そのものと言ってもいいわ」

「あー、」


 相棒さんが、困ったように頭を掻いた。


「そんな話、初耳だけど」

「知ってる人の方が少ないわ」

「……なんで、お前は知ってる」


 その問いに、私は少しだけ笑った。


「知ってしまったから」

「どこで?」

「それは言えないわ」


 ダークエルフだから、とは言わない。

 言ったところで、重さは伝わらない。


「依頼を受けるかどうかは、自由よ」


 私は依頼表を指で押さえる。


「でもこれは、お金のためだけの仕事じゃない。世界の命運を賭けた大切な仕事よ。……貴方には、正しい判断をしてほしい」


 シオンはしばらく黙っていた。

 やがて、相棒さんの方を見る。


「どう思う」

「嘘は言ってなさそうだけど、」


 相棒さんは依頼表を見つめ、もう一度依頼内容を確認した。


「でも」


 一拍置いて、彼は言葉を続ける。


「放っておくわけにはいかないよね」


 シオンは、ふっと息を吐いた。


「……期限は?」

「そんなに長くはかけられないわ」


 正直に言う。


「最初の雫を手に入れられなかったら、この子は目を覚まさなくなる。ひとつ雫を飲ませる事ができれば少しは猶予も生まれると思うから、最初のカラー到達までが鬼門ね」


 沈黙。

 そのあとでシオンは立ち上がり、依頼表を手に取った。


「わかった。依頼を受けよう」


 私は顔を上げる。


「話を聞いた以上、こいつの言う通り、放ってはおけないからな」


 視線が合う。


「お前もいいな」

「シオンがいいなら文句は言わないよ。…それに、これは特S級。女の子ひとりでやっていい事じゃないよ」

「…というわけだ。交渉は成立だな。カウンターで話をつけてくる」


 そう言って、シオンは私たちに背を向けて離れていく。

 二人の言葉を聞いて、胸の奥で何かがほどけた。


「ありがとう」


 その言葉は、思っていたよりも静かだった。

 ブルーテイルが、ブローチの中で、まるで聞いていたかのように微かに光る。


「貴方たちの名前を聞いてもいいかしら」

「オレはフィル。…で、あいつはシオン。よろしくね。君は?」

「………ルーンよ」


 名前を言うと、相棒さん…フィルは笑う。

 手を差し出して握手を求めてきたので、私はその手を握り、頷いた。


 この出会いは偶然か、それとも必然か。


 シオンとフィル。


 彼らとの出会いで、ブルーテイルと私の未来がどう転ぶのか。それは誰も知らないし、誰にも予測はできない。


 けれど、より良いものになる事を願う。



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