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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
2、カラーを求めて
24/25

北東の森へ





 港町を離れると、潮の匂いは次第に薄れ、代わりに土と草の匂いが風に混じり始めた。

 石畳は、いつしか踏み固められた街道へと変わり、シオン、ルーン、フィル、そしてジェイクの四人は、北東へと続く道を並んで歩く。


「いやぁ、久しぶりだな。若い連中と旅するのは」


 先頭を歩きながら、ジェイクは肩越しに振り返って口元を緩めた。


「昔は毎日こんな感じで、仲間と魔獣を追い回してたもんだ」

「……そうか」


 シオンは短く答えるだけで、視線は前方から外さない。

 ジェイクはそれを気にした様子もなく、鼻で笑った。


「相変わらず無愛想だな、お前は」


 ルーンは二人の様子を横目で見ながら、フィルの歩調に目を向けた。

 フィルは少し後ろを歩き、時折、無意識に右手を見つめている。


「……フィル?」


 声をかけると、彼はハッとして顔を上げた。


「な、なに?」

「掌、どうかしたの?」


 ルーンの問いに、フィルは一瞬だけ言葉に詰まる。


「え?あ、いや……なんでもない。さっきの戦闘で痺れちゃって。でも、もう…大丈夫」


 そう言って笑おうとするが、どこかぎこちない。


「……そう」


 ルーンはそれ以上追及せず、ただ一度だけ、心配そうに彼を見つめた。


「…………」


 ジェイクはそのやり取りをちらりと見て、片眉を上げたが、すぐに前を向いた。


「それにしても……」


 今度はシオンが口を開いた。


「お前が通行証なんて持ってるとはな」

「ん?…ああ。まぁ、前までは持ってなかったんだけどな」


 ジェイクは軽く肩を竦める。


「前に、王都の連中とでかい依頼を片付けてな。その時に貰ったものだ」


 それ以上は語らず、ジェイクはそれきり黙った。

 シオンも深くは聞かなかった。


「お、見えてきたぜ」


 やがて、道の先に濃い緑の影が見え始める。

 森だ。木々が重なり合い、空を覆い隠すように枝を広げている。

 その手前、街道の脇には人工物らしき影も見え、検問所の存在を感じさせた。


「…………」


 ルーンは胸元のブローチにそっと触れる。

 中でブルーテイルが小さく身じろぎし、きゅう、と微かな声が伝わってきた。


「……もうすぐだからね」


 ルーンは呟く。


 そして四人は足を止めることなく、森と検問所へと続く道を進んでいった。



+


 街道の先に見えていた人工物は、近づくにつれてはっきりとした形を帯びてきた。

 石造りの門と、その両脇に立つ見張り塔。門の前には槍を持った兵士たちが数人、直立して通行人を監視している。


「止まれ。ここは通行証を持っていないものは通れない」


 門のそばまで歩いて行くと、門番のひとりが低い声で告げた。

 ジェイクは一歩前に出て、慣れた様子で懐に手を入れる。そして、取り出した四角い板を兵士の目の前に差し出した。


「これでいいか?」


 兵士はそれを受け取り、刻まれた王都の紋章に目を落とす。

 その紋章を見た兵士は、一瞬だけ目を見開いた。


「……失礼しました。探求者ジェイク殿」


 通行証を返しながら、兵士は姿勢を正す。


「貴殿は、我が王都の恩人だと聞いています。お目にかかれて光栄です」


 その様子を見て、フィルは小さく目を丸くし、ルーンは驚いたようにジェイクを見た。


「恩人って?」


 ルーンが小さく呟くと、ジェイクは肩を竦めて振り返る。


「大袈裟に言ってるだけだ」

「ん?…おい、そこの女」


 もうひとりの門番が、ルーンの方へ視線を向けた。

 小柄な体形。紫色の長い髪。そして、髪から覗く先端が黒く染まった耳が彼の瞳に映る。


「……貴様、ダークエルフだな。ダークエルフがここで何をしている?」


 その声色には、わずかな警戒が滲んでいた。


「…………」


 ルーンは門番を見つめる。

 その瞬間、シオンが一歩前に出た。


「問題はないだろ。彼女は俺たちの仲間だ」


 兵士はシオンとルーンを見比べ、数秒考えたあと、小さく頷いた。


「……まぁ、いいだろう。通行を許可する。最近、魔獣の動きが活発だ。気を付けろよ」


 門が、軋む音を立てて開かれる。


「奴らも仕事だからな。…気にすんな」

「平気よ」


 ジェイクの言葉に、ルーンは表情を崩さずに答える。

 門が完全に開かれ、四人はそのままその間を抜けて検問所の向こう側へと進んだ。



+



 門をくぐった瞬間、空気が変わった。

 街道の先は、より濃い緑と静けさに包まれている。


「……さて、こっからだな」


 ジェイクが呟く。


 ルーンは胸元のブローチにもう一度手を当てた。

 ブルーテイルは静かにしていたが、その奥に、何かを感じ取っているようだった。


「レッドは近いわ」


 そう呟いて、ルーンは森の奥を見つめる。


 四人は視線を交わし合い、そして無言で森へと足を踏み入れた。



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