表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
1,三人の旅
17/23

南の大陸へ





 翌日、朝の光が港町を照らし始める頃。


 セシルのもとで宿屋の従業員として働き始めた少年に「すぐに戻る」と約束したシオンたちは、依頼で稼いだお金で南の大陸行きの船のチケットを購入し、旅に出た。


 港を出た船は、ゆっくりと陸地を離れていく。

 甲板に立つルーンは、手すりに肘をつき、進行方向をまっすぐ見つめていた。彼女の視線の先には、まだ見えない南の大陸がある。


 そして、その地には――カラー・レッドがあった。


 早く見つけなければ。

 ブルーテイルに雫を飲ませなければならない。


 そう思いながら、ルーンはそっと手を伸ばし、肩に乗った小さな生き物に触れた。

 ブルーテイルは「きゅ」と小さく鳴き、安心したように身体を震わせる。


「ルーン」


 そのとき、背後から声がかかる。

 振り返ると、シオンが立っていた。


「南の大陸までは、まだまだ時間がある。部屋で休んだらどうだ?」


 ルーンは一瞬だけ迷うように視線を揺らし、それから静かに首を振る。


「……いいえ。ここにいるわ。…フィルは?」

「船酔い。部屋のベッドで倒れてる」

「船酔い…。それは大変ね。大丈夫なの?」

「あの様子だと、4〜5回は吐くだろうな」


 シオンは小さく息を吐き、ルーンの隣に立った。

 手すりに背を預け、腕を組む。

 紺色の髪が潮風に揺れ、陽の光を受けてきらりと光った。


 ルーンは、そんなシオンの横顔をじっと見つめていた。

 その視線に気づき、シオンが首を傾げる。


「……どうかしたか?」

「…別に」


 短くそう答え、ルーンは視線を海へ戻す。


 それきり、二人の間に会話はなくなった。

 波の音と、空を舞うカモメの鳴き声だけが、静かに二人の間を通り抜けていく。


「…………」


 しばらくして、今度はシオンがルーンを見る番だった。

 紫色の長い髪が風に揺れ、肩に乗るブルーテイルは、落ち着きなく周囲を見回している。


 ルーンが髪をかき上げたとき、ふとシオンの視線に気づいた。


「……何?」


 その問いに、シオンは少しだけ言葉を選ぶように間を置いてから口を開く。


「前から、気になってたことがある」


 ルーンは無言で、続きを促す。


「ダークエルフは、人里離れた山奥で一生を過ごす種族だって聞いてる。生まれてから死ぬまで、ほとんど外に出ない……そういう連中だって」


 ルーンの表情は変わらない。


「それなのに、お前は集落を離れて、こうして外の世界にいる。……なぜだ?」


 シオンは視線を逸らさず、続けた。


「ブルーテイルのため、って言うのは分かってる。そいつに雫を飲ませなきゃ、世界が崩壊する……それも聞いた」


 一度、息を吸ってから、さらに言葉を重ねる。


「でも、なんで“ダークエルフのお前”が、それを背負ってるんだ?…ブルーテイルとは、どこで出会った?」


 ルーンはその問いを聞き終えると、静かに息を吐いた。

 潮風が紫の髪を揺らす。


「……そうね。貴方には知る権利があるわ。ここにフィルがいないのが残念だけど、話さないとね」


 そして、少しの沈黙のあと――

 彼女は、静かに口を開いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ