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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
1,三人の旅
16/18

放っておけない





 旧灯台をあとにした三人と少年は、夜の道を歩き、港町へと戻っていった。

 すっかり夜も更け、潮の匂いを含んだ風が街路を抜けていく。


 ギルドの建物が見えてきたころ、扉の前に立つひとりの影があった。

 ランタンの淡い灯りに照らされて、緑色の髪が揺れる。


「……!」


 旧灯台の方角から歩いてくる人影に気付き、リリアはぱっと顔を上げた。


「シオン!」


 それがシオンたちだと分かると、彼女は胸に手を当て、ほっと息を吐く。


「よかった……無事だった」


 そう言って駆け寄り、口元を緩ませる。


「待っていたのか」

「うん。依頼をしたのは私だし、…それに、なんだか落ち着かなくて。…って」


 その視線が、彼らの後ろにいる見知らぬ少年へと移った。


「……その子は?」

「っ、」

「こいつが、旧灯台の幽霊だ」

「え?」


 首を傾げるリリアに、シオンが簡潔に事情を説明する。

 話を聞くにつれ、リリアの表情は困惑から真剣なものへと変わっていった。


「そうだったの……」

「………、」


 少年は不安そうに一歩下がり、ルーンの背後に身を寄せる。

 その様子に、リリアはすぐに表情を和らげた。


「……大丈夫。ここは怖い場所じゃないわ」


 優しく声をかけてから、シオンたちを見る。


「とにかく、まずは報告ね。中に入りましょう」


 そして、シオンたちはギルドの中へ。


 ギルドの中は静まり返っていた。

 最低限の手続きを済ませ、旧灯台の依頼は無事完了として処理される。少年の件についても、記録に残すことになった。


「詳しいことは、また改めて調べます」

「助かる」

「ありがとうございます」


 そう言って、リリアは一礼した。

 ギルドを出て、シオンたちは向かい合う。


「それじゃあ、私は戻るね」

「ああ」

「ごめんね。変な依頼、頼んじゃって」

「構わない。どんな依頼だろうが、引き受けたからには遂行する。それが探求者(おれたち)だ」


 シオンの言葉に口元を緩ませ、リリアは背を向けて歩き出す。

 真っ直ぐ鍛冶屋方面へ歩いていく彼女を見送り、シオンたちはその後、少年を連れて宿屋へと向かった。



+



「ただいまー」


 宿屋の扉を開けると、ロビーにはまだ明かりが灯っていた。

 箒を手にしていたセシルが顔を上げ、三人の姿を瞳に映す。


「おかえり……って」


 彼女はすぐに、見慣れない少年に気付いた。


「……その子供、どうしたの?」


 かくかくしかじかと、リリアにもしたように簡単に事情を話すと、セシルは腕を組み、しばらく黙り込む。

 少年は居心地悪そうに視線を落とし、ルーンの服を掴んだ。


「なるほど。旧灯台の件の原因は、この子だったんだね」

「これで、騒ぎは治まるはずだ」

「それで、相談なのだけど…」

「うん。…このまま放っておくわけにはいかないね」


 そう言って、セシルは少年の前にしゃがみ込む。


「!」


 柔らかく微笑むと、少年は肩を震わせて眉尻を下げた。


「よく見ると、この子なかなか可愛いじゃないか。…気に入った。ここで働きな。掃除でも配膳でも、できることからでいいから」


 少年は目を見開き、言葉を失う。


「……ここで働く?…おれ、ここにいていいの?」

「もちろん」


 即答だった。


「寝る場所も、食べるものも、ちゃんとある。替えの服もね」

「…………」


 セシルは立ち上がり、シオンたちを見る。


「しばらく、この子はうちで預かるよ」

「頼む」


 シオンは短く頷いた。

 ルーンも、ほっとしたように肩の力を抜く。


 少年は、おずおずと頭を下げた。


「……あ、ありがとう…ございます」


 少年は言い、ルーンの服を強く握る。

 その声は未だ震えていたが、先程よりも遥かに落ち着いていた。



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