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ブルーテイル・ハピリス  作者: aki.
1,三人の旅
15/18

謎の少年





 扉の向こうにいたのは、拍子抜けするほど普通の少年だった。


 年の頃は十歳前後だろうか。

 薄汚れた服に身を包み、痩せた身体で床に座り込みながら、ブルーテイルを必死の形相で探している。


「だーもー!ちょこまかと!どこいったんだ!あの青いの!!」


 少年の声が、旧灯台の最上階に響く。


「……」


 剣を構えたまま、シオンは一瞬だけ動きを止める。

 フィルも盾を下ろし、目を丸くした。


「え……子供……?」


 ルーンは静かに一歩前へ出て、少年の前へ。


「幽霊の正体はあなたね?」

「!」


 声を掛けられて、少年はびくりと肩を震わせる。

 三人の存在に気付いた彼は慌てて立ち上がり、後ずさった。

 その時、部屋の隅にいたブルーテイルが少年の頭にぴょんと飛び乗る。


「ちょ!?なんでここまで…!!」

「きゅいっ」

「! あ、こいつ!!」


 自身の頭の上に乗るブルーテイルに気付き、少年は両手を伸ばす。

 彼の両手にすっぽりとおさまったブルーテイルは尻尾を振り、鳴き声をあげた。


「………この青いの、お姉さんの?」

「質問しているのはこっちよ。…もう一度聞くわ。幽霊の正体はあなたね?」

「う、…」


 ルーンの鋭い視線に言葉が詰まり、少年は視線を泳がせたあと、小さく頷く。


「……そ、そうだよ。おれだよ」


 その答えに、フィルは思わず声を荒げた。


「な、なんでそんなことしたんだよ!めっちゃ怖かったんだからな!」


 少年は肩をすくめ、視線を床に落とす。


「……だって、怖かったから」

「怖い?」

「…ここに来る人たちが、怖かったから」


 その声は、先ほどまでの威勢のいいものとは違い、ひどくか細かった。


「こ、怖かったからって、逆に怖がらせていいわけじゃないでしょ!」

「っ、……ご、ごめんなさい!」

「フィル、落ち着いて」


 ルーンはしゃがみ込み、少年と目線を合わせる。


「あなた、ずっとここにいたの?」


 少年はしばらく考え込むように眉を寄せ、それから首を横に振った。


「わかんない。気が付いたら、この灯台に倒れてて…」


 フィルとシオンが顔を見合わせる。


「名前は?」


 ルーンの問いに、少年は口を開きかけて――止まった。


「……それも、わかんない」


 声を震わせて、不安そうに続ける。

 沈黙が落ち、フィルは気まずそうに頭をかきながら少年を見た。


「……えっと、つまり…君は、記憶喪失って事?」

「きおくそうしつ……、」


 その言葉に、少年は顔を伏せる。

 ブルーテイルが少年の両手から抜け出し、腕を伝って、再び頭の上に乗った。


 ルーンは、ふと問いを重ねる。


「……何か、覚えていることは?」

「?」


 少年はしばらく黙り込み、それから、ぽつりと言った。


「……ひとつだけ」


 顔を上げ、その瞳に微かな光が宿る。


「女の子を…探してた。気がする」

「女の子?」

「うん。名前は…わかんない。でも……」


 胸の奥を押さえ、少年は言葉を絞り出す。


「必ず探し出すって、約束したんだ。…きっと、見つけ出すって。そしたら、また一緒に暮らそうって、…約束したんだ」


 それだけは、はっきりと覚えていた。


 果たしてそれが誰なのか。

 なぜ探しているのか。

 それらはすべて、霧の中に沈んでいる。


「その女の子は、この灯台に?」

「…ううん。ここにはおれしかいないから」

「そう…」


 ルーンは静かに立ち上がり、シオンとフィルを振り返った。


「……このまま放っておくわけにはいかないわ」


 シオンは短く頷いた。


「町に連れて行こう。ギルドにも話を通す」

「フィルも、それでいいわね」

「え?…あ、うん。シオンたちがそうしたいのなら、」


 彼らの言葉を聞き、ルーンは顔を少年の方へ戻す。


「…おれを、連れて行くの?」

「大丈夫よ。私たちのそばにいれば平気だから」

「…………」


 できるだけ優しい口調でルーンは言う。


 少年は一瞬、戸惑ったように瞬きをし――

 それから、ゆっくりと頷いた。


 ブルーテイルが彼の頭から離れ、ルーンの肩へ戻る。

 旧灯台に漂っていた不穏な気配は、すっかり消え去っていた。



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